女児向けアニメの金字塔「プリキュア」が、VRChatにやってくる。
VRイベント「プリキュアバーチャルワールド」。12月9〜10日にかけて開催される、ミュージックステージ、キャラクターショー、キャラクターグリーティングなど、プリキュアづくしなコンテンツであふれる一大イベントだ。
「プリキュアがVRChatにやってくる」という事実だけでも驚きな上に、特設ワールドを開設し、プリキュア本人が登場するライブまで行われるという内容に、多くの人が耳を疑っただろう。筆者も「あのプリキュアが……!?」と驚愕した一人だ。
そんな「VRChat初上陸」となる「プリキュア」だが、はたしてその内容はどのようなものになっているのか。今回筆者は、「プリキュアバーチャルワールド」のメイン会場と、ミュージックステージおよびキャラクターショーを先行体験する機会を得た。本記事にて、とてつもない気合が伝わる本イベントの魅力を先駆けてお伝えする。
誰でも入場OK メイン会場にはプリキュアの世界観が詰まってる!
まず案内いただいたのは、12月3日より先行公開されたメイン会場ワールド「Precure Virtual World」。今回のイベントで唯一、誰でも無料で入場可能なエリアだ。
コンセプトは「空に浮かぶプリキュアのテーマパーク」。広大な敷地には、プリキュアにまつわる様々なコンテンツが用意されている。
中央にあるのは「ファンシーセントラル」。ワールド内を一周する「ハートの乗り物」の駅だ。
乗車することでワールドを一望しつつ、様々な浮島へと足を運ぶことができる。
駅の2階には、「Yes!プリキュア5」「ハートキャッチプリキュア!」「スマイルプリキュア!」の名場面が並ぶギャラリーと、シアタールームがある。
先に挙げた3作品に登場するプリキュアの変身バンクアニメが常時再生されており、12月9日と12月10日には、特定の時間に各作品の第1話が上映予定だ。シリーズを見た人はもちろん、プリキュアをよく知らない人でも、ここで第1話を見て「こんな作品なのか」と知ることができるだろう。
駅にはたまに「ハートキャッチプリキュア!」の妖精、シプレとコフレが現れ、イベント全体のアナウンスをしてくれる。見かけたらラッキーです~!
「ファミリアタウン」では後述するキャラクターショーが開催される(実際の会場ワールドは別に用意)。景観のよい街並みに、広めのスペースも用意されているので、写真撮影やライブ後の感想戦にちょうどよさそうだ。
「フュージョンシティ」には、ミュージックステージへの入口がある。大きな音楽ホールの近くには、「スマイルプリキュア!」に1話だけ登場した「ハッピーロボ」が堂々と屹立している。ちなみにこの「ハッピーロボ」、2分おきに動き出すそうなので、じっくり眺めてみるのもアリだ。
入場口近くの「フラフィーエントランス」には、プリキュア関連グッズが並ぶストアがある。イベント開催を記念して制作されたリアルグッズは、描かれているプリキュアは全て今回のための描きおろし。グッズ種類自体も豊富で、力の入れようが伝わる。
そして、本イベントで出演するプリキュアのデジタルフィギュアや、アバター制作アプリ「MakeAvatar」で自分のアバターが着用できるシリーズに登場する学校の制服など、デジタルグッズも制作されている。ここまで著名なIPが、ここまでデジタルグッズに力を入れているのは稀だろう。デジタルフィギュアもそうだが、作中に登場する制服を、ユーザーが自由に着ることができる衣装として販売しているのは、なかなかにすごい。
無料公開ワールドとしてはかなりボリューミーな仕上がりになっており、フレンドと遊びに行くだけでもかなり楽しめるだろう。「MakeAvatar」で制服を着て来場すれば、プリキュアの世界に身も心も包まれるはずだ。そして、12月9日と10日には、プリキュアが現地に登場するキャラクターグリーティングも開催予定だ。
目の前にプリキュアが……! ミュージックステージに感動を隠せない
次に、有料コンテンツのミュージックステージを先行体験した。ここではドレスコードが存在し、会場入口で観覧用アバターに着替える必要がある。また、動画配信やFlying Camera、「Space Drag」などのアバター座標移動は禁止なのでご注意。
ミュージックステージは「Yes!プリキュア5GoGo!」「ハートキャッチプリキュア!」「スマイルプリキュア!」の3シリーズそれぞれからプリキュアが出演する。今回は時間の都合で、筆者が特に思い入れのある「スマイルプリキュア!」のステージを1曲体験した。
曲目は、「スマイルプリキュア!」OPテーマ「Let’s go!スマイルプリキュア!」だ。
率直に申し上げよう。ちょっと涙が出た。
プリキュアが、目の前に立っていて、歌って踊っている。シリーズを知っている人にとっては、もうそれで十分。「VR持っててよかった……」と心の底から思える。”僕はついにプリキュアに出会った”のだ。
そんな感傷を抜きにしても、正真正銘のプリキュア楽曲を、正真正銘本物のプリキュアが眼前で歌っている姿は、これ以上となく「公式でやってほしいこと」そのものだ。ステージ構成はシンプルだが、歌詞が背後に飛び出す演出も含めて、ステージ上はとても華やかに輝いている。
ちなみにステージは円形で、観客は全方位から観覧することができる。もちろんベストアングルは正面だが、左右や後方から見ても発見があるだろう。
うれしいことに、ミュージックステージには12月17日までアーカイブ期間が設けられている。期間中は何度もこのステージが観覧できるのだ。もちろんプリキュアだけでなく、ゲストアーティストのステージもアーカイブ対象に含まれる。本番期間に楽しんだ後、アーカイブを何度も鑑賞しながら、ベストショットを狙う……という楽しみ方もできるだろう。
ここは紛れもない「プリキュアの世界」 必見のキャラクターショー
もうひとつの有料コンテンツである「バーチャルキャラクターショー」も体験させてもらった。こちらでもミュージックステージと同様のドレスコードが設定されている。
会場は「ファミリアタウン」の広場。メイン会場ワールドと基本的な構造は同じだ。
違いは、「2階席」に相当する場所があること、そしてペンライトがあること。このペンライトはショーの中で必須になるので、必ず手に取っておこう。
ショー開演前には、観覧中の諸注意や、推奨設定などの案内がある。特にVRChatのオーディオなどの設定は非常に丁寧だ。「VRChatになじみのない人にもわかるように」という配慮が伝わる。
さて、キャラクターショーの内容だが、本記事ではその様子を全部はお伝えできないので、公式の先行公開動画をまずはご確認いただきたい。
間違いなく言えるのは、「このショーは絶っっっ対に観るべき!」だ。
あなたが子供のころ、デパートの屋上で見たキャラクターショーが、より表現豊かに、より没入度を向上させて実現している。プリキュアの世界そのものな空間で、花咲つぼみが、来海えりかが、アニメそのままの姿でそこに存在していた。細かなポイントだが、「来海えりかは”来海えりかの動き”を忠実にやっていた」のも見逃せない。
デザトリアンとの戦いは、まぎれもなくアニメそのものの光景が眼前に広がっていた。エフェクトが炸裂する格闘戦に、大迫力の必殺技。そして、訪れるピンチに、”わたしたち”ができることは……きっと、その手にあるペンライトが役立つはずだ。
これ以上とない「プリキュアの3D/VRコンテンツ」であり、プリキュアの世界に入り込める唯一にして最強のコンテンツだ。少なくとも、当時『ハートキャッチプリキュア!』を見ていた人は、絶対に見に行くべきだと断言できる。そのくらい素晴らしい体験だった。
「かつてプリキュアを見ていた人」へ
メイン会場ワールドはもちろん、「プリキュア」というIPをこれでもかとフル活用したミュージックステージとキャラクターショー、さらにはデジタルグッズと、「プリキュアバーチャルワールド」の力の入れようは尋常ではない。
東映アニメーションの担当者・田中氏によれば、「プリキュアバーチャルワールド」が始動するきっかけのひとつとなったのは、2021年末に開催された「SANRIO Virtual Festival」とのこと。現地で観覧したことで「これをプリキュアでも出来たらきっとすごいことになる!」という思いからプロジェクトが動き出し、昨年夏から本格始動したとのことだ。
また、20周年を迎えるビッグタイトルであるがゆえに、「生半可なものは作れない」というプレッシャーがあったらしく、力の入れようはそれが影響しているようだ。筆者所感だが、そんなプレッシャーも跳ね飛ばすクオリティが見事実現していたのはたしかだ。
そして、こうしたメタバース施策が実施された背景には、「プリキュア」のメインターゲット層も関わってくる。子ども向けアニメであるため、成長していくにつれてプリキュアから離れていってしまう、というのがシリーズの課題だそうだ。
それゆえ『プリキュアバーチャルワールド』は「かつてプリキュアを見ていた人」へリーチするべく、過去シリーズの作品を選定されたとのことだ。
このあたりの動きは、『Yes!プリキュア5GoGo!』を原作とした大人向けの新作『キボウノチカラ~オトナプリキュア‘23~』が放映された展開とリンクするところだ。もちろん、VR 環境のハードルは高いため、「Zaiko」での配信も合わせて実施される。「より多くの人に体験してほしい」と語る田中氏もまた、「プリキュア」が好きな一人とのことだ。担当者のコンテンツ愛とともに、世代を超えてファンをつなぐ一大イベントを、ぜひその現地で目撃してほしい。
©東映アニメーション
©Gugenka®
(TEXT by 浅田カズラ)