7月11日の18時から、「『THE IDOLM@STER 765プロダクション所属星井美希特別生配信』in SHOWROOM」の生配信がSHOWROOMのアイドルカテゴリーにて行われました(関連記事)。
ゲームやアニメでお馴染みの「THE IDOLM@STER」が、シリーズ初となるアイドルによる映像の生配信として、芸能事務所「765プロダクション」に所属する星井美希さんの番組を敢行。画面の向こうに映し出されていたのは、ゲームやアニメで見てきた星井さんそのもので、配信終了後に「そこに生の星井美希がいた」と感激したファンも多かったはず。
公式発表によれば、30分ほどの配信に詰めかけた視聴者は9万人を超えたとのこと。Twitterでは「#星井美希」や「バンナム」がトレンド上位に入り、語彙力をなくした感動のツイートがタイムラインを埋めていました。ネットを震撼させるほどのインパクトを生み出した、彼女の存在感とは何だったのか。これまでゲームやアニメなどで星井美希さんを見続けてきて、舞台「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE」にも10回以上通った筆者(田端秀輝)が考察していきます。
横浜のステージで魅せられたアイドルの存在感
星井美希さんは、スタイル抜群の体で激しいダンスで魅せてくれるという将来が楽しみな15歳のアイドルです。小悪魔的な振る舞いも魅力のひとつ。その一方で、今回の配信でもオリジナルギフトとなっていたおにぎりやいちごババロアが大好だったり、気が抜けるとすぐ「あふぅ」とあくびをしながら寝てしまうマイペースさなどのギャップもファンに愛されています。
THE IDOLM@STERはもともと「アイドルプロデュース」の作品であるため、アニメやゲームを通じて、私たちファンは「プロデューサー」の視点でアイドルと接してきました。
それを覆す体験になったのが、2018年~2020年に横浜・DMM VR THEATER(2020年4月で閉館)にて開催した「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE」でした。ステージに立つアイドルと現実のダンサーとのコンビネーション、観客とアイドルとの掛け合い、そして客席の熱狂──。765プロダクションのアイドルが見せたのは「リアルタイム」のライブパフォーマンスで、体験した観客全員が「そこに765プロのアイドルがいた……」と驚きを口にしていました。私が10回以上劇場に通ったのも、彼女たちの存在感が病みつきになったからです。
*参考リンク
https://asobimotto.bandainamcoent.co.jp/395/
https://www.bandainamcostudios.com/works/episode/214
星井さんのSHOWROOM配信は、今年2月末に開催予定であったこの舞台の主演公演が新型コロナウイルスの影響により中止となったことが発端となっています。しかし、そのことがきっかけで、チケットが取れた人以外も今回の配信を通じて、星井さんの活躍を堪能することができました。 まずは、番組で何が起こったかをファン目線でまとめていきます。
名前呼びあり、フリートークあり、歌ありな「あふぅTV」
配信は、星井さん自身がカメラを調整するところからスタート。彼女が後ろに下がると、ステージ衣装を着た全身とともに765プロダクションの事務所の一室が映し出されます。よく見ると、段ボールは片付けられてないしホワイドボードにはスケジュールが書き込まれたまま……。雑然、いや生活感あふれる場所で配信するようです。
SHOWROOMでは、配信画面の下に視聴者のアバターが表示され、ギフトを多く送った人ほど最前列の中央など目立つ位置に動く仕組みになっています。
星井さんは、カメラの近くにあると思われるモニターでそんな視聴者のアバターを見ながら、他のSHOWROOMの配信番組と同じように名前を読み上げていきます。さらに、視聴者おにぎりやいちごババロアといったギフトでもファンの姿を感じていたようです。
この日の配信は、中止になってしまったイベントの代わりに「そこそこ一生懸命考えて」「いま流行っている動画配信っていうのをやれば、離れていてもみんなとおしゃべりもできちゃうし、チケットが取れなかった人も楽しんでもらえるかもって」というところで企画したと説明していました。
番組名にある「生配信」という言葉がひっかる星井さんは、もっとかわいい名前にしたいと視聴者にリクエスト。彼女の好物やこれまでしてきた仕事にちなんだ名前が挙げられる中、「あふぅ」という星井さんの口癖(あくびするときの音)から、「あふぅTV」という名前に決まりました。
続いて「ミキとみんなでおしゃべりね」ということで、フリートークのコーナーに。最初は星井さんの好物であるおにぎりに関するトークで、視聴者を巻き込んで3分半も繰り広げていました。番組前に食べたのが明太チーズドリアのおにぎりという報告から、視聴者の好きなおにぎりの具を聞いて、挙げられる具材のひとつひとつにうっとりする星井さん。そしておにぎり派の彼女が「おにぎらず」のよさを視聴者に聞くと、おにぎりとは違って米がふわっとする意見に惹かれて「今度ママにお願いしてみようかな」「自分でも挑戦してみようかな」と、「お米愛」を口にしていました。
視聴者からの質問に答えるコーナーでは、高速で流れるコメント欄に驚きながらも、あとでちゃんと読むとフォロー。「最近は何している?」という質問には「ソファでゆっくりして、その後寝ている」、「何時に起きた?」という質問には悩みながら「朝だよ!お昼までは寝てないよ」、「最近欲しいものは」という問いには「お昼寝の時間」と答えつつも、寝ているばかりだと教育係も兼ねてる「律子、さん」(同じ事務所所属アイドルの秋月律子さん)からの小言を恐れている様子も。サンドイッチは、塗られているからしマヨネーズのせいで苦手だったが、前よりは食べられるようなったという成長の様子も教えてくれました。
続いて動画配信についてリサーチをしていた星井さんの提案で、「スクショタイム」が始まります。最初が「眠たい」のポーズで始まったのは彼女らしいのですが、その後視聴者のリクエストに応えて、「子猫」「せくちー」「ウサギ」「女豹」「投げキッス」「きゅんっ!としたヴァンパイア」などのポーズを取っていきます。「律子、さん」のポーズは同僚だけにより意識してマネをしていたように見えました。
そしていよいよライブコーナーに。準備の間は「しばらくお待ちください♪」画像と共に、ASMRとして星井さんの寝息音声が流れました。これは貴重です。
ライブコーナーでは、星井さんのソロ曲「Day of the future」を生披露しました。アップテンポに合わせた回転やジャンプキックなどのキレのあるパフォーマンスの中、間奏ではカメラ越しのファンに対して笑顔でアピールをし、最後はセクシーなポーズで決めます。
ライブ後、息を切らせながら「キラキラしてたー?」と視聴者に感想を求めて、「今、いろいろ大変だけど、ミキもそこそこ頑張るから、みんなも無理しすぎないで(中略)そこそこ頑張ってね」と星井さんらしいエールと「また絶対会えるから!」という約束をして、今回の「あふぅTV」を締めました。
ちなみに配信終了後、音声を切り忘れていたのか、765プロダクションのプロデューサーとの「みんながそこにいた感じがしたの」「やってよかったって感じ」と手ごたえを感じていた会話が流れていました。それにしても「頑張ったから誉めてほしいの」とせびるシーンもあって……羨ましいな、星井さんのプロデューサー。
言動や非言語的要素など、すべてが「星井美希」だった
と、ここまで配信番組の様子をレポートしましたが、改めて内容を振り返ると、アイドルの配信番組としては基本に忠実な形でした。
765プロダクションのアイドルの中で唯一、中止になったイベントの代わりの配信ということで、用意していたライブパートは見応えたっぷりでしたが、トーク内容についてはそこまで無茶なことはせず、むしろ大枠の構成台本通りに進行していった印象もあります。星井さんは自身のCDのトークコーナーで堂々と寝てしまうこともあったので、今回は安全策をとったのだと考えられますが、ハプニングによる生々しさは少なかったと思います。
動きについても、そもそも星井さんは今回の生配信……「あふぅTV」が初めてではなく、ゲームやアニメなどで活躍した姿をずっと見せ続けてきています。それゆえ、単純にリアルタイムで動いているだけでは「星井美希」という存在を感じさせるのは難しいはず。
何が「そこに生の星井美希がいた」と直感させたのか。私見ですが、以下の3つの重なりが彼女の顕現を支えたと考えています。
1)これまでと連続した「星井美希」としての存在感
当たり前のことですが、今回の「あふぅTV」で聞く星井さんの声はこれまでゲームなどで聞いてきた星井さんでした。トークの内容もおにぎりの話に夢中になったり、同僚アイドルへの呼び方など、細部までこれまで見てきた星井さんと基本的に同じでした。
2)視聴者とのコミュニケーションによる、同時性の担保による存在感
ライブのように観客の声は伝わらないけれど、コメントやギフトを使う事で視聴者が出演者に熱を伝えて、そして出演者も視聴者に事前に決めれれていない応答を返すことができるというSHOWROOMのようなプラットフォームが効果的に使われているのではないでしょうか。
3)非言語の立ち居振る舞いが生む、生の存在感
リアルタイム配信中の星井さんの立ち居振る舞いがひとつひとつも、存在を際立てていました。例えば、以下のような点です。
視聴者のコメントを見るたびにモニターに近づいて覗き込むために、頻繁に前後に移動する。
ライブの大サビにおけるロングトーンで目をつぶって渾身の力で歌う。
クールな歌なのに歌えることの楽しさで、表情までも楽しくみえる。
歌終わりに(声も動きも表情も)息を整えながらトークを始めるところ。
これらの非言語的な要素が今まで見てきた彼女そのままであったり、あるいは見せたことはなかったけど星井さんなら当然するだろうと思わせる動きでした。もう少し細かい話を言えば、生配信で見せた星井さんの動きはゲームのように洗練されたものではないですが、大味ながらも生々しさを強調していた印象で、それが存在感を引き立てていたのだと思います。
以上の三要素が重なり合って、ゲームやアニメを飛び出した「『そこに』『生の』『星井美希が』がいた」という感覚が生まれたのでないでしょうか。
なお今回の配信については、より多くの人が配信の模様を観れるように、当初予定していなかったアーカイブ化も検討中とのこと。「伝説の配信」でしたので、見逃したという方は公開された際にぜひチェックしておきたいところです。そして願わくば、また次の生配信…「あふぅTV」を見てみたいです!
c窪岡俊之 cBANDAI NAMCO Entertainment Inc.
(TEXT by 田端秀輝、協力 パルボナ)
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