カンファレンス「バーチャルエンタメの最前線と未来を徹底解剖」を取材 今後を見据える重要な視点の数々に震えた

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2026年2月27日(金)、HIRAC FUNDが主催するカンファレンス「バーチャルエンタメの最前線と未来を徹底解剖 バーチャル市場の現在地」が開催されました。

ベルサール六本木にて開催されたこのイベントには、Brave group社、THINKR社、ウタイテ社の経営陣が登壇し、事業戦略やビジョンを発表。さらに、国内外の著名なリサーチャーおよびインベストメントバンカー(投資銀行業務担当者)らを招いて、さまざまな視点からバーチャル市場の可能性を語り合いました。

本イベントの内容は、関連会社の業務内容や業績などに多く触れるものが多いため、イベントの全容はある程度伏せつつお届けすることをご理解ください。

第一部:マーケットセッション:バーチャル市場の現在地

第一部として組まれたのは、「マーケットセッション:バーチャル市場の現在地」と題したプログラムです。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券でバイス・プレジデントとして務める林赳央氏、矢野経済研究所で調査員として務める土井輝美氏、千葉工業大学非常勤講師として活躍する山野弘樹氏の3人が登壇し、お互いの自己紹介を終えて本題に入りました。

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Xより引用

人物紹介

哲学研究者 / 千葉工業大学非常勤講師 山野 弘樹 氏

1994年生まれ。2025年、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。同年より千葉工業大学非常勤講師。専門は現代フランス哲学、およびVTuberスタディーズ。主著に『独学の思考法』(講談社現代新書、2022年)、『VTuberの哲学』(春秋社、2024年)、『VTuber学』(共編/岩波書店、2024年)、『20代からの文章読解』(大和書房、2025年)、『対話の思考法』(角川新書、2025年)があります。2019年、日本哲学会優秀論文賞受賞。2021年、日仏哲学会若手研究者奨励賞受賞。

矢野経済研究所 ×ビジネス 調査員 土井 輝美 氏

上智大学法学部卒。2020年矢野経済研究所入社。2022年よりオタク市場など産業横断的に熱量の高い分野を調査する×ビジネスチームに異動。主な調査対象はVTuber・同人誌・インディーゲーム市場。発刊実績としては、『2025年 VTuber市場の徹底研究 ~消費者調査編』、『2025年 VTuber市場の徹底研究 ~市場調査編』。その他、2022年9月発刊「2022 クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究 ~市場分析編~」に寄稿。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券 バイス・プレジデント 林 赳央 氏

2018年 三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。インダストリーセクターを中心に、資金調達やM&Aなどの投資銀行業務に従事。2019年よりスタートアップ・アクセラレーションチームに異動し、スタートアップの新規開拓や資金調達業務に従事。

まずスタートしたのは、土井氏によるVTuber市場に関する調査からです。

「VTuberというのが2016年12月、年末頃に存在として生まれて、今ちょうど9年が経とうとしているんですけれども、その中で市場が大きく成長しています」

「2021年段階と比べまして、今ちょうど4倍ぐらいに成長し、現状の予想としては2025年度として1260億円で予想がされています」

「しかも、これらはあくまで“VTuber事務所”の売上をベースに予想しているので、個人でVTuberをされている人々の、VTuber事務所からIPを借りてグッズを販売している売上は含まれていません」

こういった具体的な数字を挙げ、矢野経済研究所での自身の調査を基に説明しました。

主にVTuberの収益がライブストリーミング、イベント、グッズ、BtoBを通じて構成されていることをあきらかにし、「ライブストリーミングでの収益を皆さんは真っ先に思い浮かべるかと思いますが、プラットフォーム経由で収益を上げる構造になっているので、プラットフォーム側が手数料を変えると収益が大きく変わってしまう構造になっています」と指摘。「VTuber事務所の多くが、イベント、グッズ、その他のところで収益を上げようとしています」と説明しました。

イベントの動員力が年々高まっている点、VTuberグッズがアニメルックな見た目であることからアニメグッズのように販売・購入しやすい点、またVTuberの見た目を版権として貸し出したり、インフルエンサーとして自身の声や配信を通して紹介するインフルエンサーとなり、IP兼インフルエンサーとしてBtoBビジネスに加わる点など、VTuberのビジネスモデルについて解説しました。

ほかにも男女別のアンケートや事務所の認知率について、また個人で活躍するVTuberについても触れ、徐々に幅広い世代に知られるようになっていることを指摘しました。


続いて、山野氏によるVTuberの変遷・歴史について話が移ります。

山野氏はまずVTuber文化・歴史の時代区分として、以下のように分けました。

黎明期 2016年12月~2018年1月(生アニメからの系譜と多様性)

変革期 2018年2月~2020年1月(箱文化/ライブ配信文化の勃興)

成長期 2020年2月~2023年3月(巣ごもり需要期の到来)

拡大期 2023年4月~現在(VTuber文化の発展と拡散)

黎明期は「生アニメからの系譜と多様性」とし、キズナアイの登場から「バーチャルYouTuber」という言葉が定着。動画投稿メインのスタイルが主流だったと解説し、変革期は「箱文化/ライブ配信文化の勃興」と題し、にじさんじなどの登場により、生放送(ライブ配信)形式が定着。グループ(箱)単位での推し活動の萌芽が見られると話しました。

2020年2月以降の成長期は「巣ごもり需要期の到来」とし、パンデミックによる外出自粛の影響で、自宅で楽しめるコンテンツとして爆発的に普及し、ホロライブの海外進出なども加速したと表現。

2023年4月から現在にかけては「VTuber文化の発展と拡散」として、ネットの枠を超えて一般社会や多業種へと文化が浸透しているフェーズだと示しました。

歴史をあらためて見直す中で、土井氏は「いろんな分野と接続でき、コンテンツでありながらメディアでもある」とVTuberの特質に触れました。


2人の説明を聞いた林氏は、「投資家の評価としてはどうか?」とコメントを求められ、「日本のエンタメ産業が、外貨を稼ぐことができそうな期待値・成長性の高い産業になりつつある」と切り出し、「ファンのエンゲージメントがすごく熱いことで支えられていると思うんです」とコメント。エンタメ事業から見て新興であるVTuber事業ですが、成長の高い領域として投資したい投資家がすごく増えていて、関心が非常に高まっていると明かしました。

また土井氏は「ほかのオタク市場などを見ていても、この規模感でこれだけの伸び率の市場は今のところ思い浮かばない」とし、「特に阻害要因がなく、さらに海外へ市場を伸ばしていくと考えると、間違いなく市場として確立していくんだろうなと感じています」と断言しました。


3人が今後注目している分野や動きとして、e-SportsシーンやAI分野を挙げ、特にAI分野に関しては林氏が

「いろんなものが自動化したり省人化している中で、物語を求めているなというのをものすごく感じるので。バーチャルに限らず、アイドルとか、eスポーツもそうですけど、文脈だったり、裏側のコンテクストのあるコンテンツというものの需要は、なくならないどころかむしろ盛り上がっていくんだろう」

「もう一つがベッティングです。AIによって自動化されると同時に、海外ではいろんなものがベッティングの対象になり始めています。外貨流出にも繋がる話になるので、規制などがもし緩和される方向に進めば、今後日本で盛り上がっていくと思います」

と語り、バーチャルエンターテイメント事業が一過性のブームとしてではなく、一つの産業として今後新たな成長領域になりそうな立ち位置にいると話を締め、プログラムは終了しました。


第二部:マネジメントセッション:各社の戦略および今後の展望

第2部は、Brave group社 代表取締役CEO 野口圭登氏、THINKR社 取締役CFO 山口直樹氏、ウタイテ社 取締役CFO 茅子桐氏の3人が登壇し、「マネジメントセッション:各社の戦略および今後の展望」としてさまざまな話題を語り合いました。

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人物紹介

Brave group社 代表取締役CEO 野口 圭登 氏

2011年の在学中に株式会社Vapesを創業。2016年に同社を株式会社ベネッセホールディングスへ事業譲渡、50社以上のスタートアップへのエンジェル投資、共同創業を経て、2020年に株式会社Brave group代表取締役に就任(現任)。

THINKR社 取締役CFO 山口 直樹 氏

新卒で大手証券会社に入社後、通信・メディア・IT業界を中心に、資金調達やM&Aなどの投資銀行業務に従事。その後、M&Aブティックファームにて、クロスボーダー案件、カーブアウト案件など、数多くのM&A案件のエクセキューションを担当。

2024年春より株式会社THINKRに参画し、総額50億円の資金調達およびエイベックスグループからのスピンアウト案件を主導。現在、取締役CFOとして、経営企画、財務・資金調達、M&Aなどの領域を管掌。

ウタイテ社 取締役CFO 茅 子桐 氏

中国出身。米ミネルバ大学一期生最優等賞で卒業。その後、日本のカルチャー好きを理由に来日。

ソフトバンクグループにて事業開発、米国上場株投資を経て、ソフトバンク・ビジョン・ファンド日本チームに初期メンバーとして参画。その後、日本最大級のVCグロービス・キャピタル・パートナーズを経て、株式会社ウタイテに参画。

まず冒頭に明かしたのは、「実は僕ら3人とも仲良し」だということ。意外な情報で会場を驚かせ、3人ともプライベートで連絡を取り合う仲で、笑顔を見せながらプログラムが進みました。

まずBrave group社の野口氏は自社について、「事業領域的にはVTuberがメインですが、それ以外の領域として、IPコンテンツのグッズ制作会社やアニメ制作事業、トレーディングカードゲーム事業も展開するなど、VTuber事業以外の領域を多角的に展開しています」と説明しました。

新規事業のスタートや経営統合(M&A)を積極的に行い、韓国で活動するStelLiveやバーチャルアーティストグループ・HIMEHINAを擁するStudio LaRaなどがグループ会社としてあり、加えて海外展開としてフランスやアメリカでのグループ会社を設立しています。「多分世界でも一番VTuberプロジェクトに挑戦している会社かなと思っております」と口にしていましたが、経営会社の数や所属タレントの多さから見ても、その言葉は何も間違っていません。


次に山口氏がTHINKR社(KAMITSUBAKI STUDIO)について、「コンテンツを作ることに魂を捧げている会社だと自負しています」と話を切り出しました。

2024年にエイベックス傘下のクリエイティブスタジオから独立。バーチャルアーティスト事業の運営を行っており、所属アーティストの花譜を筆頭に、ライブ公演、ライセンスビジネス、グッズの展開、音楽ビジネスとして外せない原盤権・著作権ビジネスに加え、近年にはゲーム作品/アニメ作品といったメディア展開も取り組んでいると説明しました。

会社の特徴として、「世界観や物語性というところを非常に重要視しています」と話し、「クリエイティブの内製化を進めて、音楽、作詞・作曲ができるコンポーザー、イラストレーター、ミュージックビデオなどを作る映像クリエイターなど多種多様なクリエイティブ人材を内製化しています」と語りました。ステートメントにある「まだ見ぬ誰かの孤独、絶望を上書きして、半径5m以内に優しい革命を起こし続けること」という強烈なメッセージとともに、一丸となって動いていますと話しました。


最後に、ウタイテ社の茅氏です。上記のプロフィールにあるように中国出身の茅氏は、アメリカの学校で学んでいる最中も「日本のアニメ、ゲーム、音楽などが好きで、いつの間にか日本語が喋れるようになった」というほど、日本のカルチャーを愛しています。

学業を修めた後はソフトバンクに加わり、投資関連業務に従事。VCで務めた後、2023年に創業したウタイテ社に途中から加わりました。

「現在メンバーは200人を超えていて、速いスピードで成長しています」と語る茅氏。「今回バーチャルエンターテイメントという形で呼ばれていますが、同じエンタメ事業でも、うちの事業はリアルな人間の方をメインにしています」としつつ、「ベンチマークにしているのはHYBEさん」と目線はやはり海外に向いています。

自社内の組織・カルチャーについて問われると、三社三様の違いが浮き彫りとなりました。

Brave groupではグループ会社が20社近くあり、いろんなカルチャーの会社が集まっている現在、「いかに事業に集中できる環境を提供するか、やりやすいような座組を取ってあげるか」を考えているそうです。通常であれば親会社から子会社へ指令や命令を行き届かせるのが普通ですが、実際には反対に「子会社を輝かせるための下支えをしている親会社みたいな感じ」だと語りました。

Brave groupではこういうことをしているので、あなた方もこういうふうにしてくださいというふうに押し付けてしまうと、かえって崩壊に繋がってしまうところもあるので、守ってもらうところは守ってもらい、逆に各会社のカルチャーを尊重しています

このように野口氏はBrave groupをまとめました。

山口氏はKAMITSUBAKI STUDIOのカルチャーについて、「PIEDPIPERを筆頭に、他のクリエイターやプロデューサーも育っていて、プロデューサーポートフォリオおよび個々のクリエイターたちが制作している作品群が強みになっています」としました。逆に「どういった使命感やメッセージを作品として、ビジネスへとつなげていくかの翻訳部分が課題」とも明かしました。

茅氏は自社のカルチャーについて、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まる中で、これまでは共通のカルチャーや組織としての一体感を築くことを優先してきたと説明した。事業発信についてもその土台づくりを重視してきたが、足元では組織としてのまとまりも出てきており、今後は発信を強めて行きたいとのこと。

「グローバルな観点で、いま熱い地域はどこだと思いますか?」という問いに、真っ先に「中国」「韓国」の名前が上がりました。

「昨年弊社アーティストのワンマンライブを上海で開催する予定で、外交情勢の影響もあって前日に中止となってしまったのですが、これまで中国におけるマーケティングを自社で踏み込んでやってこなかったのにも関わらず、チケットは事前完売し、国境を超えて支持を得られていることがわかりました」(山口氏)

「中国の社会情勢として、Empty nest youthと呼ばれる大都市に上京して、孤独感を抱えながら一人暮らしをする若者層の人口が1億人近くいると聞いています。そういった層に弊社のコンテンツが寄り添うものになればいいなと思います」(山口氏)

「上海の街中を歩くと、コスプレをしている人を自然に見かけるほど、アニメやコスプレといったカルチャーが日常に根付いていると感じます。エンタメ文化に対する受容性の高さは、市場としての大きな可能性を感じさせます」(茅氏)

「Braveでは色んな国にチャレンジさせてもらっていますが、いま一番伸びているのは韓国です。バーチャルアイドルとかへの抵抗感が国全体でなくなってきてる感じがします」(野口氏)

「StelLiveでのライブを見させてもらったけども、7割位が日本語の曲。ボカロ曲だけじゃなくてMrs. Green Appleでアガってる。PLAVEも中国や日本で人気が高く、K-POPの影響でグローバル前提でやってる韓国らしい」(野口氏)

このように隣国の中国・韓国をそれぞれ挙げ、それぞれのお国事情も相まってファンの需要熱が高まりつつあると認識した上で、今後注目しているのが伝わりました。

最後は3人それぞれが挨拶し、この日のトークプログラムは終了しました。

バーチャル市場と文化的変遷を追いかけ、現在トップランナーとして走る各社の現在を知れるイベントとして開催された本イベント。それぞれのプログラムを個々に開催しても良さそうなほど充実した内容で、VTuber~バーチャルタレントシーンを追いかけている筆者も知らない話もあったりと、楽しめたイベントとなりました。


(TEXT by 草野虹


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