株式会社壽屋
株式会社壽屋(本社:東京都立川市/代表取締役社長:清水一行)は、KDDI高輪本社ビル内のイベントスペース「TSUNAGU BASE」にて「第2回デジタルアパレルデザインコンテスト」を開催しました。 2026年8月22日(土)のDay1(チーム編成・制作開始)に続き、2026年9月26日(土)には成果発表会および授賞式となるDay2を行いました。
「バトンのつなぎ方」をテーマに、服飾を学ぶ学生やパタンナー、3Dモデラー、VRクリエイターなど59名が全10チームに分かれ、約1か月にわたってデジタルアパレルを共同制作。当日は各チームが作品と制作過程を発表し、審査の結果、Team Cの「乾いた遠雷」が最優秀賞に選ばれました。

開催概要
・名称:第2回デジタルアパレルデザインコンテスト
・テーマ:バトンのつなぎ方
・主催:デジタルアパレルデザインコンテスト運営事務局
・ 株式会社壽屋(企画・運営)
・ 株式会社ブックリスタ(運営・インフラ等)
・ 株式会社ユカアンドアルファ(CLO導入企業・学校向け広報・技術支援等)
・ CLO Virtual Fashion(ソフトウェア支援・技術支援等)
・ 株式会社トライデントワークス(会場運営)
・Day1:2026年8月22日(土)/チーム編成・制作開始
・Day2:2026年9月26日(土)/成果発表会・授賞式
・会場:KDDI株式会社 高輪本社 イベントスペース「TSUNAGU BASE」
・制作参加者:59名・全10チーム
・公式ページ:https://enraise.net/portfolio/dadc_admin
服づくりの知識と3D・VRの技術をつなぐ共同制作
デジタルアパレルは、バーチャル空間でアバターなどが着用する衣服を、デジタルデータとして制作するものです。現実の服づくりで培われたデザインや型紙制作の知識と、3Dモデル制作・VRへの実装技術を組み合わせることで、布の質感や動きを表現するとともに、現実の衣服では難しい変化や演出も取り入れられます。
本コンテストでは、完成作品の見た目だけでなく、異なる専門性を持つメンバーが、デザイン、パターン制作、3Dモデル制作、VR実装といった各工程で、どのように意図や情報を受け渡すかにも焦点を当てました。8月22日(土)のDay1では、セミナーを通じて各分野の知見を共有し、チームごとにコンセプトや役割分担を検討。そこで始まった共創は、約1か月の制作を経て、実際にバーチャル空間で着用できる作品へと結実しました。
関連情報:第2回デジタルアパレルデザインコンテスト Day1開催レポート
Day2では、全10チームが制作したデジタルアパレルをソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」で収録した動画作品を上映。衣服のコンセプト、制作上の工夫、工程間の連携についてプレゼンテーションを行いました。審査員は、作品の完成度、服飾技術の活用、分野を越えた連携などについて協議し、主要4賞と各企業・団体の賞を決定しました。

主要4賞の受賞作品
最優秀賞:Team C「乾いた遠雷」
最優秀賞を受賞した「乾いた遠雷」は、絵を描きたいのに描けないという感覚を、降りそうで降らない空と遠くの雷に重ねた作品です。創作が停滞する時間も次の一歩へ向かう過程と捉え、再び描き出す直前の予感を衣服と映像で表現しました。
半透明のレインウェアは、フードを被るとカラフルな水玉が雨のように降り始める仕掛けを採用。暗い室内から明るい外へ走り出す映像と衣服の変化を連動させ、物語を届けました。制作では、服飾側の知識を活かした布のシミュレーションや布端の構造調整に加え、3Dデータの軽量化、透け感や揺れの調整を実施。VRChat上でチーム全体が見え方や動きを検証しました。
審査員からは、デザインの着想と、それを着用して動けるデジタルアパレルへ仕上げた技術、映像のドラマ性、最終調整の完成度が高く評価されました。
作品動画を見る:Team C「乾いた遠雷」

冠スポンサー賞(西武信用金庫賞):ノア(NOA)
ノア(NOA)は、十五夜をモチーフにしたドレスを制作しました。アバターの模型を採寸するところから服づくりを進め、オーガンジーの透け感や光沢、コルセットの重みに、天の川や星屑を思わせるきらめきを組み合わせました。
服飾側と3D側で、フリルのボリュームやスカートの動きに対する認識をすり合わせながら制作しました。袖のフリルや、スカートが動いたときの見え方については、画面を共有して相談。データを書き出す際には、アバターを傾けたり、風を当ててスカートを膨らませたりと、試行錯誤を重ねました。互いの「当たり前の違い」に向き合い、求める形や動きを具体的に共有したことが、作品の仕上がりにつながっています。
コトブキヤ賞では滑らかなスカートの動きと服飾側の力を引き出した制作プロセスが、ホビージャパン賞ではデジタルならではの星の表現が評価されました。
作品動画を見る:ノア(NOA)「Waltz of the Moon Rabbit」
技術賞:ぽかぽか天使界隈
ぽかぽか天使界隈は、最終的な作品の魅力と各メンバーの専門性を大切にしながら、制作全体を方向づける「ディレクション」の重要性を示しました。後工程で動かしやすいモデルを前段階から意識し、メンバーでVRChatを体験して使用環境も共有しました。
制作を進める中では、デザインの意図やキャラクター性、シルエットなど、各担当者が「守りたいもの」を共有。その先で、それらの優先順位を誰が判断するのかという課題も見えてきました。チームは、制作全体を方向づける人が最初から関わることで、工程をより円滑につなげられるのではないかと振り返りました。
発表では、担当工程を仕上げるだけでなく、他分野の事情を理解し、作品全体のために判断できるクリエイターになることを提案。審査員は制作進行力を高く評価し、VRChat Creator Awardでは、ユーザーの好みを捉えた作品の魅力にも評価が寄せられました。
作品動画を見る:ぽかぽか天使界隈
デザイン賞:High Motion「COMBINE」
High Motionは、メンバーの技術を組み合わせるという考えを、直線的でアクティブなデザインに落とし込みました。課題アバターの髪型や髪色との統一感も評価されたポイントです。
週ごとのミーティングに加え、制作途中の状態をこまめに共有し、意見を反映することで、認識のずれや手戻りを抑えました。担当者が作業を終えてから次の工程へ渡すのではなく、途中段階から他のメンバーの意見を取り入れる流れが自然に生まれたといいます。完成後に大きくやり直す前に、チーム内で方向性を確かめることが、制作を円滑に進めるポイントとなりました。
DynaFont賞では、フォントを衣服の世界観に合う形で取り入れ、映像も含めて表現を統一した点が評価されました。
作品動画を見る:High Motion「COMBINE」
受賞結果一覧
- 最優秀賞:Team C
- 冠スポンサー賞(西武信用金庫賞):ノア(NOA)
- 技術賞:ぽかぽか天使界隈
- デザイン賞:High Motion
- ホビージャパン賞:ノア(NOA)
- GuriArt賞:遠POSE
- ワコール賞:ぽかぽか天使界隈
- DynaFont賞:High Motion
- VRChat Creator Award:ぽかぽか天使界隈
- KDDI賞:MAKULAB/まくらぼ
- コトブキヤ賞:ノア(NOA)
- ENRAI賞:High Motion
- ユカアンドアルファ賞:MAKULAB/まくらぼ
- CLO賞:遠POSE
- トライデントワークス賞:チームドラゴン
審査員総括:完成品だけでなく、制作過程にも価値がある
審査員総括では、完成した作品の評価に加え、専門分野を越えて対話し、一つの作品を作り上げた過程そのものの価値が語られました。作品を作る力だけでなく、映像やプレゼンテーションを通じて、専門外の人にもその魅力を届ける力の重要性にも言及がありました。
また、デジタルアパレルは、現実の服を再現するだけでなく、物理的な制約を越えた着こなしや変化によって、自己表現の可能性を広げるものとして紹介されました。学生に向けては、VRを自分の作品やブランドを発信する選択肢として捉え、制作を続けながらポートフォリオを蓄積してほしいというメッセージが送られました。
さらに、制作時のデータを長期的に保存し、将来のバーチャル空間で再び活用する可能性や、接客用アバター、現実と仮想空間を組み合わせるXRへの展開にも議論が広がりました。
衣服の制作にとどまらず、作品の保存や発信、日常のサービスへと、デジタルアパレルの活用を広く捉える視点が示されました。
参加者の声:制作を通じて見えた、連携の手応えと課題
Day1で共有された期待や課題は、実際の共同制作を通じて、より具体的な経験へと変わりました。
遠POSEの参加者は、バーチャルとリアルの両方で衣服を制作し、デジタルという新しい世界に触れた手応えを語りました。一方で、デザインの意図を他の担当者へ伝える難しさや、限られた発表時間で作品の魅力を届けることの重要性も実感したといいます。遠方のメンバーともVRChatで再び集まれる可能性に触れ、今回のつながりを今後も大切にしたいという思いが聞かれました。
ぽかぽか天使界隈でパタンナーとして参加したメンバーは、普段の仕事と制作を両立する大変さを振り返りながら、無事にDay2を迎えられた安堵と、次に挑戦したいことへの意欲を語りました。
Dr.Groupのリーダーは、専門性の高いメンバーによって制作がスムーズに進んだ一方、悩みや課題をチーム全体で共有する機会が十分ではなかったと振り返りました。各工程を滞りなく進めるだけでなく、次の工程から前の工程へ提案し、互いに学び合うことも、よりよい連携につながるという気づきが示されました。
参加者の声からは、作品を完成させた達成感とともに、意図を伝える難しさや、課題をチームで共有する大切さが見えてきました。完成した作品に加え、専門性の違いをどう理解し、制作の途中でどう相談するかを実践できたことも、本コンテストの成果の一つです。実際の共同制作を通じて、参加者それぞれが連携について具体的な気づきを得る機会となりました。
つないだバトンを、新たな表現の可能性へ
Day1で始まった異分野の対話は、約1か月の共同制作を経て、10チームそれぞれの作品として形になりました。今回の「バトンのつなぎ方」は、担当工程を順番に引き継ぐだけでなく、互いの専門性を理解し、確認や修正を重ねながら、一つの表現をつくり上げる実践となりました。
デジタルアパレルは、服づくりの知識と3D・VRの技術が出会うことで、ファッションの表現や創作の場を広げる可能性を持っています。本コンテストで生まれた作品と、分野を越えて協働した経験が、参加者の次の挑戦へとつながり、リアルとバーチャルの双方に新たな表現をひらくきっかけとなることを期待しています。
全10チームの動画作品はこちら
各チームが制作したデジタルアパレルの動画作品は、ENRAIの作品ページでご覧いただけます。
