“バーチャルに息を吹き込む”
をスローガンに活動するVRアクター集団『カソウ舞踏団』
バーチャル上で活躍するアクターとして、企業からのモーションアクター依頼を始め、メタバース空間での演劇、ダンスなど「3Dモデルを動かすスペシャリスト」として幅広く活動を行っています。
現在団長のyoikami氏の指導の下、えーすけ氏、たらこ氏、koua氏の3人がアクターとして活動していますが、意外にも3人とも現実でのアクター経験は無く、VRを遊び始めてから初めてアクターの仕事を始めたそうです。
デジタルとフィジカルが融合する新しいバーチャルワーク。
今回はそんなカソウ舞踏団の生い立ちから、メタバース空間で仕事をすることについて、団員3人それぞれの持つ思いについてお話を伺いました。
▼団長yoikami氏のフォーカス記事はこちら
身体に縛られず表現できるバーチャルでのダンスの魅力について。VRパフォーマーyoikamiさんインタビュー
ただ動くだけじゃない、本人になりきる事がアクターの仕事
VRアクターとしてメタバース空間内のイベントに精力的に出演されていて、現在人気急上昇中のカソウ舞踏団ですが、カソウ舞踏団が活動を開始したのはいつ頃からになりますか。
たらこ 正式に活動の告知をしたのが昨年の4月頃になります。
バーチャル空間でのアクター業とは具体的にどのようなことをするのでしょうか。
えーすけ カソウ舞踏団の活動の幅は広いですが、基本はモーションアクターが多く、そのほかバーチャルイベントの進行役やスタッフ、賑やかしであったりをやっています。
分かりやすいのだとVtuberさんの新曲MVのダンスの動きを担当したり、あとはメタバース向けに発売されている3Dアバターの宣伝動画の役者として、アバターを着て動いたり。
アバターを着てアクションすることが仕事です。
それもただ動くだけではなく、『バーチャルに息を吹き込む』を理念に活動をしています。
例えば今取材をされているやぎこさんがモーション依頼をしてくれたとして、やぎこさんのアバターを着て踊ってくださいというオーダーを貰った時、バチバチにブレイクダンスとかヘッドスピンとかしてたら『これは私じゃない!』ってなるじゃないですか(笑)
そうではなくて、やぎこさんの普段の動きの癖であったり、しぐさであったりを理解して、『こういう癖がある、こういう時にこういう動きをするんだな』っていうのをしっかり捉えて、ご本人の動きを再現する事を心がけています。
そうすると他の人が見ても『アクターが入ってるんだな』じゃなくて、本人がやってるんだなって思ってもらえると思うんですね。
なるほど、となるとモーションアクターというのはパフォーマーというよりも黒子に近いお仕事をされるのですね。
たらこ そうですね。イメージを挙げるなら昔の声優さんみたいな。
声優さんの名前は分からないけど、キャラクターとして役に出てくるみたいな感じです。
敷居の高かったモーション依頼
えーすけ モーションを作りたい時はMMD手打ちモーションで作ることも可能なわけですが、手打ちモーションだと小刻みな動きの表現が難しく、すべてが同一の動きになってしまうので個性が出しづらい部分があります。
お辞儀1つでも胸に手を当ててお辞儀する人とか、ゆっくりと頭を下げる人であったりとか、人それぞれ違うと思うんですよ。
我々はそういった細かな部分の動きを読み取って、そのキャラクターに合う動きを提供しています。
たらこ もちろん手打ちモーションでも魅力的な動きを再現できる事もあるんですが、精度の高いモーションを手打ちで作ろうとするとものすごい時間がかかってしまいます。
それを複数のアバターでオーダーすると1つのモーションに何百万円という金額がかかってしまうんですね。
また、現実で専用のモーションスタジオを貸し切りにしてモーションを撮ろうとしても同じくとんでもない金額がかかってしまいます。
でも私たちはVRのメタバース空間内でモーションを録画するので、スタジオ代がかからず、比較的低コストでモーションを提供することが出来るんです。
なので、これまで資金力のある大手の企業しか依頼できなかったモーション撮りが、比較的多くの方に提供できるようになったのではないかなと。
私もそうですが、ここに集まっているえーすけさん、kouaさんは今も自宅からメタバース空間に集まっています。メタバース空間でのモーション録画ならお客様に目の前でモーションを見てもらえるのでその場でリテイクも受けれますし、撮ったモーションを即時に納品出来ます。
納品のスピードに関しては即日どころか撮った1~2時間後にはもう納品できるくらい。
モーションアクターの仕事は需要が高いお仕事なのですか?
たらこ そうですね、特に『モーションが欲しいけど専用のスタジオが無い』という企業さんには重宝されているようです。
現実のスタジオで専用の機材を用いてアクションをしてもらうというのは多々ありますが、メタバース空間内でモーションアクターをされているのはかなり珍しいですよね。
それこそこれまで大きなゲーム会社でないとなかなかできなかったモーションの仕事が、カソウ舞踏団の誕生により個人Vtuberさんや個人事業で活動している3Dモデラーさんでも依頼できる身近な存在になったのではないでしょうか。
カソウ舞踏団の始まりは?
現在カソウ舞踏団は団長のyoikamiさんを含め、えーすけさん、たらこさん、kouaさんの4人で活動していらっしゃいますが、みなさんそれぞれどのような経緯で入団されたのですか?
えーすけ もともとカソウ舞踏団は俺とyoikamiさんとの話の流れで誕生したグループなんですよ。
自分は一昨年の4月頃からVRChatを始めたんですけど、一昨年12月にVRChat上で開催されたアバターファッションショー『バーチャルコレクション』というイベントにモデルとして出演させてもらったんです。
自分が当時珍しい男性アバター使いだったので、イベント主催のはいえろ(@omeme_1231)さんから男性アバターモデルとして出演して欲しいとお声かけを頂いて。
メタバース空間でフルトラッキングで動いて遊ぶのはもともとやっていたことなんですが、いざステージに立つといつもの動きとは全然違うものが求められて…。
そんな時、yoikamiさんがモーションアクターの仕事をしているという風の噂を聞きつけたんです。
そこでいきなり押しかけて『教えてください!』って頭下げて。
バーチャルコレクションのイベントが終わった後も、アクターとしてもっと上を目指したくてyoikamiさんのところで教わっていました。そんな中『VRでのモーションアクターのような仕事があればいいね』って2人で話していたのがカソウ舞踏団の始まりです。
えーすけさんは現実の方でアクターの経験があったりするんですか?
えーすけ いや、ないですね(笑) 自分は一切未経験で。
カソウ舞踏団に入ってから声の出し方とか、立ち振る舞いだとか、モーションアクターとしての動き方を全部教わりました。
やりたいと思った時にすぐ始められる、メタバースの良いところ
たらこさんはもともとVR内でダンサーとして活躍されていらっしゃいましたよね。
たらこ そうですね。もともとQuest2を使って3点トラッキングで色々なアバターを着ながらダンスを楽しんでいました。途中からフルトラになって、全身を動かしてダンスをしていたのですが、ダンスを踊っている中で『このアバターだったらどんな動きをするんだろう』というのが常に頭の中にひっかかっていたんです。
自分の動きばっかりしててもこの子の動きじゃない…って、自分の中で納得いかない部分があったりして。
あと、yoikamiさんの真似っ子をしてアバターの宣伝動画を撮ってたりしたんですが、それもあって『この子だったらどういう動きをしたら見栄えがいいんだろう』というのは常に考えていました。
そうした中『カソウ舞踏団っていうのが出来るから一緒にやらない?』って声かけてもらったのが入団したキッカケですね。
私ももちろん現実で役者をやった経験はないですし、ダンスもVRを買ってから始めた事です。
なんとなく、役者さんって幼少期から教育を受けて…というようなイメージがありますが…。
たらこ 年齢で言えば2人とも成人してから始めた事ですね。
そうだったのですね。 kouaさんはどうですか?
koua 私は学生時代に声優に興味があって、どこかで演じてみたいなという気持ちを抱いていたのですが、社会人になってからはそういった気持もすっかり忘れてしまっていて…。
そんな中、カソウ舞踏団の稽古を間近で見させてもらう機会が何回かあったんですね。
それで『あ、面白そうだな』と。
自分もやってみたいと思って稽古にも混ぜてもらっていたんです。
最初は全然ダメダメだったんですけど(笑)
でも何度も練習に混ぜてもらって。ある日yoikamiさんに『自分もやってみたいです!』って言ってみたら、『じゃあ一緒にやってみる?』ってお話を頂いて。それで入団しました。
私もVRを買う前まで一切アクターの経験はないですね。
みなさんVRからアクターの道に進んだのですね。
リアルだと良くも悪くも年齢が見た目で分かるので、『この年齢で新しいことを始めるのは…』と委縮してしまう人も多いのではないかと思うのですが、メタバース空間ならやりたい時にやりたいことを出来るのがいいですね。
メタバースで仕事として活動するという事
カソウ舞踏団の稽古は何度か見学させて頂いたことがあるのですが、かなり本格的というか。結構厳しい指導もありますよね。
kouaさんは後から加入されていますが、厳しい指導を目の前にしていたらぶっちゃけ入団するのも結構勇気が必要だったんじゃないでしょうか。
koua まぁ、入団前はちょっと舞い上がっていた部分もありまして…
入団してからは『あれ!?厳しいぞ?』って…(笑)
えーすけ 確かに厳しい面はありますが、俺としてはまだ優しいと思います。バーチャルだから殴られることは無いし(笑)
koua 確かに(笑)
えーすけ ただ、今の様々あるVRのコミュニティのなかでは間違いなく厳しい部類にあるっていうのは間違いないんじゃないかな。
たらこ 遊びじゃないっていう部分では確かに。
みなさんが稽古を受けている姿を見ていると『あ、この人たち本気なんだな』っていうのが伝わってきます。
プロとしての覚悟というか、仕事としてアクター業を請け負うための厳しさというのがありますよね。
たらこ 何をやっても褒めてもらえる場所ではなくて。
気が抜けてたら注意されますし、ちゃんと評価される場所ではあります。
えーすけ yoikamiさんの叱咤激励はめちゃくちゃ的確に飛んでくるんですよね。
お客さんの事を考えてのものなので。
仕事としてやっている以上、1回出したものって撤回が出来ないんです。
たらこ もちろん、我々の根幹としては『アクターが楽しいからやってる』っていう部分があるので、厳しいのも楽しいの内でやっています。団長も『楽しくなくなったらいつでも辞めていいし、いつでも帰ってきていい』って言ってくれてるので。
仕事でアクターをやるとなると自分思い通りに決められない事や、ストイックな部分を求められ事もあるかと思うのですが、みなさん趣味として活動を続けるのではなく、仕事として活動しようと思ったのはなぜでしょうか?
koua 少し打算的なお話ですが、規模が拡大し続けるメタバース、VR市場。
そこでアクター業を営む団長にアクターとしてメタバースに関わるチャンスをいただけたため、ぜひ仕事としてチャレンジしたいと思いました。
VRのお仕事に関してはまだまだ未知数なところがありますが、 私自身が将来的にどのようなことができるのかを考え、VR技術の活用の幅が広がっていく度に対応できるような汎用性が高いものを目指したいです。
えーすけ アクターとして動いてみて、とある人達が感動してくれたんです。
そこで人をもっと感動させたい…もっと感情を揺さぶりたい!と強く思っていたので、やれるところまでやってみたい。その気持ちで仕事として取り組もうと思いました。
自分がどこまで感情を動かせるかのか、全力で何か取り組むということが少なかったわたしには刺激的でもあり…楽しんでやって気づいたら今ですね(笑)
最初は正直に言うと何も考えていませんでしたが、それがよかったのかもしれません。
たらこ 私は本当に趣味の延長線上で今の位置にいる感じですね。
yoikamiさんと一緒に活動してる中、私の持っているスキルが商業の目線から褒めていただける事があり、折角なら自分のやりたいことへもっと注力して…という良いサイクルを築きたいと思ったから今があります。
傍から見れば考えが甘いかも知れませんが、ある程度捨て身の覚悟で行かないとできないと思ったので「えいっ」と飛び込んでみました。
VR史に名を遺す存在になりたい。カソウ舞踏団の今後
昨年から活動を初めて、メタバースのコミュニティの中ではカソウ舞踏団の名前が大きくなってきていると思うのですが、それに対して思う事はありますか。
えーすけ もっとデカくしたいなって俺は思うな。
団長のyoikamiさんはともかく、我々3名はまだまだ知名度も無いですし。
たらこ メタバースコミュニティ内はもちろんですが、コミュニティ外でも名前が通るようにしたいですね。VR内であれば『このイベントに出演しました』とか『こういうことしてます』って言うと割と知ってくれている方が多いんですね。ありがたいことに。
でも外に出た瞬間からはまだまだ赤子のような存在なので。
モーションアクター集団としてこういうことが出来るんだよって言うのをしっかり外に発信して、企業の方とかに『ここにだったら任せても大丈夫そうだな』って思っていただけるようになりたいです。
えーすけ メンバー全員、カソウ舞踏団だけで食っていけるようにしたいですね!
たらこ VR史に名を遺すくらい胸を張れる存在になりたいです。
ありがとうございます。
最後に何かご宣伝などございますか?
えーすけ VRChatの中では黒猫洋品店主催のアバター劇場『テアトロ・ガットネーロ』というイベントで定期的に公演を行っています。
カソウ舞踏団のアクターとしての姿が見れる舞台なのでぜひ遊びに来てください。
それからモーションアクターの仕事も受け付けています。
3Dモデルの宣伝動画の撮影、モーション撮影、VTuberさんのダンス動画のアクターなど、カソウ舞踏団へのお仕事連絡はカソウ舞踏団HPのcontact欄、またはメールにてお問合せお願いします。
また、カソウ舞踏団TwitterのDMや団長や団員への直接連絡などからもお話は通ります。
可能性ばかりのメタバース、バーチャルの世界。まずはお気軽にご相談、ご連絡ください。
カソウ舞踏団
■公式サイト https://kaso-butoudan.studio.site/
■公式Twitter https://twitter.com/kaso_butoudan
<投稿者プロフィール>
みつあみ やぎこ
バーチャルライフマガジン編集長
やぎこだよっ!
バーチャルの楽しいことたくさん発信していくよ!