360度でも3時間超の撮影が可能 ポリゴンマジック「VOOR」の撮影システムの秘密に迫る

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VRゴーグルといえば、今のところゲームをを中心に注目を集めているが、非エンターテイメントの分野でも応用が注目されており、続々と企業やクリエイターが参入してきています。一方、発展途上な分野だけあって、多くのクリエイターやプランナーがいまだ手探りで挑んでいる部分も大きいのも事実。

 
そんな背景を受け、非エンターテイメントにおけるVR活用の知見をシェアして、日本のVRのクリエイティブの質を高めるという目的のために、PANORAでは7月より「ポストモーテムVR」という月次トークイベントを開催しております。

 
 
*第2回は9月12日に開催 → ポストモーテムVR #02 360度化するライブ配信の今

 
 
第1回として8月3日に開催した「ポストモーテムVR #01 VRに適した360度映像を撮るには」では、VRスタートアップの株式会社リ・インベンションとVRプロジェクト「VOOR」(ブール)に取り組む、ポリゴンマジック株式会社のLobbyStudio 映像舞台事業 統括プロデューサー、川端基夫氏による「ライブ撮影で生きる VOORプロジェクト 3時間超の360度撮影」を講演。さらに筆者(PANROA 広田)による「結婚式VR撮影で学んだ、HMD向き映像の撮影・編集方法」という2本立てでお送りして、かなり濃いトークに会場が沸いておりました。

 

 
かなり貴重な内容だったため、今回はポリゴンマジックの川端氏による講演の一部を記事としてまとめていきましょう。

 
 

ベターだがベストではないGoProの撮影システム

 
講演で一番興味深かったのは、講演タイトルにもある3時間超という撮影時間でした。

 
話すと長くなりますが、360度撮影システムは熱がこもりやすく、画質をある程度確保したまま長時間撮影するのが難しい状況があります。そこで3Dやライブの映像など、さまざまな専門家から構成されているVOORチームでは、独自のリグ(固定具)を開発し、ソニーのデジタル一眼レフ「α7SII」と、サムヤンの魚眼レンズ「8mm F2.8 UMC FISH-EYE II ブラック」を4台組み合わせて撮影しているとのこと。

 
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もう少し状況を整理すると、現在、プロ向けの360度撮影において、よく使われるカメラといえば、小型アクションカメラ「GoPro」を複数台組み合わせたシステムになります。

 
自前で用意したいくつかのGoProを「360Heros」や「Freedom360」といったリグで組み合わせたり、「Entaniya Fisheye」やiZugar製品といったGoProを改造してレンズを交換するタイプなど、さまざまな製品がリリースされております。この8月には、GoPro自体も「Omni」という自社製リグをリリースしました。

 
なぜGoProのシステムを選ぶかといえば、画質や持ち運びやすさが挙げられるでしょう。360度カメラといえばリコーの「THETA」シリーズが有名ですが、最新のTHETA Sでは、360度動画を撮影した際の解像度が1920×960ドットで、フレームレートが30fps、映像のビットレートも16Mbps前後と、VRゴーグルで見るには若干荒さが目立ってしまう感じです。

 
フルHDというとテレビではかなり精細な画質ですが、360度動画ではぐるりと見渡す360度の全周で1920ドットとなってしまい、VRゴーグルの視野角を100度とすると、実際に見える範囲が533ドット相当とかなり低めです。さらに間近にディスプレーがある関係で、ドットが目立ちがち。

 
YouTubeなどに投稿して、PCやスマートフォンでぐるぐる回して見る分にはそこまで気にならないのですが、VRゴーグルという用途では最低でも4K/60fpsは欲しいところです(本当は8Kほしいところですが、今度は視聴できるマシンが限定されてしまうという問題も)。

 
そんなわけで4K/60fps/ProTuneモードで60Mbpsで撮影可能なGoProのシステムにアドバンテージが出てくるわけですが、実際に360度撮影で運用してみるとGoProのシステムにも死角があることがわかります。

 
例えば、連続撮影時間。GoProの最新モデルの最上位機種である「Hero4 Black」は、だいたい1時間ぐらいの連続撮影時間をうたっていますが、360度撮影の場合は30分がいいところです。なぜかといえば、複数のGoProを組み合わせて撮影することで熱がこもって暴走してしまい、撮影が強制終了してしまうから。

 
GoPro本家のOmniでは、カメラを離して配置し、外部バッテリーを併用することで最長3時間もの連続撮影を実現するとうたっているものの、さらに画質の問題も残ります。直前で「GoProを選ぶのは画質の面が大きい」といっておきながらアレですが、実はとことんこだわるともの足りない部分もあるのです。特に暗所でのノイズや、明るいところでの白飛びしがちなダイナミックレンジの狭さなどは気になるところ。

 
撮影時に各カメラの状態をプレビューできないのも使いにくいです。というわけで、業務用途の360度撮影においてより高い画質や使い勝手を求める場合は、ノキアのOZOのような3桁万円超のカメラに投資するか、一眼レフor業務用ビデオカメラに魚眼レンズを装着したシステムを使うことになります。

 
 

3D360度など最先端の撮影をもっとリーズナブルに

 
えらい長々とした前置きでしたが、というわけでVOORチームでは2014年から360度撮影をスタートし、試行錯誤の末、先のα7SII+魚眼レンズのシステムに行き着いたとのこと。

 
さらにα7SIIはHDMIケーブルでサードパーティー製のHDD/SSDレコーダーにつなぐことで非圧縮で4K録画できるようになるため、ATOMOSの「NINJA ASSASSIN」を4台用意。これにより画質とプレビューしながらの撮影を実現しています。本システムはGoProより熱に強く、3時間超のライブを撮影した実績もあるそうです。

 
ちなみに川端氏は、360度撮影の作業において大変なのは「データの取り込みに時間がかかるところ」と語っていました。確かに非圧縮の4Kデータを数時間となると、かなり膨大になりそうです。これから360度撮影を始める方は、ストレージ周りもきちんと用意しておく必要があるでしょう。

 
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ほかにも撮影では、オリジナルのVRリグを使ったGoPro10台による3D360度映像の制作や……。

 
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国内では数台しかないと言われている、同時に複数のバイノーラル録音が可能な「3DIO Free Space Omni」を導入。ヘッドトラッキングに対応したSDKも開発しているそうです。

 
こうした3D360度撮影など先端の挑戦をしつつ、とてもリーズナブルな価格で提供しているのも、VOORチームならではの強みだそうです。

 
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同社で提供するVOORは、「Virtual Optimization Overtake Reality」の略で、単純に撮影だけでなくトータルソリューションとして提供しているのも大きいです。ビューワーやアプリも提供していて、撮った後に360度コンテンツをネットで公開して、アプリで課金してもらうといった流れも実現できます。

 
ポリゴンマジック自体は、「裏方」の受注仕事が多いためあまり表に出てこないそうですが、かなり大手クライアントの実績を積んできているとのこと。これから360度撮影を考えている方は、ぜひチェックしてみましょう。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
●関連リンク
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ポリゴンマジック

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