「VR市場の90%はビジネス分野になる」 NVIDIAが語るビジネスでVRの取り組み
1月26日、NVIDIAは秋葉原にて「NVIDIA PRO VR DAY 2017」を開催。オープニングセッションでは、同社のバイスプレジデントであるボブ・ペティ氏が登壇し、VR技術への取り組みや、VRを採用したサービスなど最新の市場動向などが発表されました。
プレゼンを行ったNVIDIAのボブ・ペティ氏。
ペティ氏によると現在のVR技術の環境は、5年前にはSFの世界、2年前でも何年も先だと思われてた環境がすでに整っているとのこと。さらにVR/AR市場は今後も伸び続け、2025年には800億ドル(約9兆円)の規模になると予測。
ただし、個人が動画を視聴したりゲームを楽しんだりといった、パーソナルエンタテイメントの領域は市場に10%。残りの90%、700億ドル(約8兆円)はビジネス分野になると、多くのアナリストが指摘しています。
VRが今後求められるポイントとして、ペティ氏は4つのポイント「グラフィックス/ディスプレイ」、「オーディオ」、「タッチ/物理演算」、「キャプチャー」を上げています。
グラフィックス/ディスプレイに関しては、自然な映像として見るためには、2枚の1512×1680ドットのディスプレーで90fpsが再生可能なスペックが最低限のスペックとのこと。この要求は現状ではかなり高く、画像処理能力のさらなる向上と効率化が求められます。
リアルさを追求するためにはグラフィックスのスペックが必要。
オーディオに関しては、映像とあった位置で再生されないと視聴者の脳が混乱してしまう問題があります。これを解決するためには反射や回り込みといった音の特性も考慮した音響処理が必要となってきます。
タッチ/物理演算は、いわゆる触覚系にあたり処理です。よりリアルさ感じるためには、目で見たり、耳で聞いたりする感覚だけでなく、触れたものの堅さなどを再現する技術の普及も必要となってきます。
最後のキャプチャーは、VR映像、360度動画の取り込みです。いくら再生デバイスがスペックアップしても、そもそも録画する機器が高画質で撮影できなければリアルさは追求できません。
この4つの問題について、NVIDIAではSDKやソフトウェアをリリースしてすでに取り組んでいるとのこと。現状でもハイレベルなVR映像が作り出せるようになっています。
こういったNVIDIAのPro向けの技術を使ったビジネス分野でVR/AR市場が広がっており、ペティ氏から、すでに導入されている活用例も紹介されました。
VR技術についてNVIDIAの各種取り組み。
例えば日産ではクルマのメンテナンスやエンジンなどの構成をレクチャーするためにVR/ARを導入。権利の関係で日産の導入例はスライド撮影できませんでしたが、クルマをネジ1本の部品単位で忠実に再現し、完成車からパーツ別に一気に分解など、VRならではの見せ方ができます。
また高層ビルを建てた場合、街での景観がどのようになるかをシミュレーションしたケース。関係者が同じ場所に集まらなくても、VR空間で同じデータを同時に見ることで、ビルの外観やデザインをチェックしディスカッションできます。
スライドではシンガポールに建築されるビルが例として紹介された。
ちなみにNVIDIAは現在新社屋をシリコンバレーに建設中。NVIDIAではこの新社屋をVR空間上に再現しており、ビル全体をシミュレートして歩き回れる状態とのこと。このシステムを使って同社のCEOジェンスン・ファン氏は、毎日この仮想のビルの中を歩き回り、壁紙や照明などの屋内デザインに対して意見を出しているとのことです。
「NVIDIA PRO VR DAY 2017」ではセッションのほか、VRを活用したサービスを展示したコーナーも併設され、最新のビジネス市場での活用例を実体験できました。
SCSK
「VR Collaboration」では、同じ空間に複数人が入り込み、コミュニケーションをとりながら、同じクルマのデザインレビューなどが体験できる。
ASK
ビル内をVR空間にシミュレートして歩き回れる「BIM」を展示。グラフィックスにはNVIDIAの「Quadro P5000」を使用。
LUUMISCAPHE
自動車ショールームをVR化し、クルマの中をのぞき込むといった実車を見る感覚で楽しめる。さらにクルマの色を変えたり、背景を変えることで車体への映り込み具合をチェックすることも可能。
(TEXT by Satoru Nakayama)
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