戦場ではドローンは兵器として見られてしまう──人道支援のために先端技術ができることは?
去る6月30日、東京・テレコムセンター内「MONO」で「人道支援のためのXR(及び最先端技術)シンポジウム」が開催された。これは6月24、25日に予選が、7月2日に最終審査がそれぞれ実施され、弊誌も主催の一団体として参加した「Japan XR Hackathon 2017」の一環として開催された。ハッカソンの前に開催されなかった理由は「このシンポジウムによって製作者の視野を狭めたくなかった」のが理由とのこと。シンポジウム自体に関してはグローバルグランドスポンサーのNoitomによってYouTubeでビデオが公開されているので、ここでは手短に説明したい。
赤十字国際委員会のVRツールプロジェクトヘッド、Christian Rouffaer氏がVR体験開発に関する姿勢と苦労を述べた。赤十字は「積極的な中立性」を七原則の一つに挙げており、すべての関係当局とも積極的に対話しながら活動を続けていくが、このVRツール開発でもそれは揺らぐことなく中立性を保持して開発が続けられている。
VR制作ユニットはタイのバンコクに8名のスタッフが常駐、15名のコンサルタントが世界各地に点在。360度の実写映像ではなく、あくまでもCG映像ベースのインタラクティブ作品を製作し、著作権は赤十字が持つ。
先進国では日常的かつ平和的にドローンが活用されているが、戦禍の国ではドローンが兵器として使われているため、ドローンを使用した体験は現地では受け入れられない、という現実も語られた。そういう話はゲームだけ、という話だったのだが、現実が創作を追い抜いた、という重い例に。
続けてSIlicon Valley Virtual Reality(SVVC)の創設者、Karl Krantz氏がxRなどの技術革新による人道支援の現状と未来を語る。
SVVCの活動と現状。
Oculus、HTC、NOKIA(OZO)による支援プロジェクトを紹介。
コンピュータが人間の脳と同じ能力を持つには、という目標を掲げて、コンピュータが1秒間で何万回の計算ができるのかを示した図。約60年でとりあえず「億倍」の域に達することに。
低高度衛星によるインターネットによって低レイテンシー、高速ネットを世界各地で使用できる。
しかもこれは極めて近い将来だ。2020年代後半にはネットのつながらない地域は世界からなくなるといわれる。
TANGOなどで使われるAR技術が一般化することで、現実世界がコンピューターに蓄積される日も遠くはない、
在日スイス大使館 科学技術部の鈴木恭子氏は「テクノロジーが限界の壁を打ち破る」というテーマで、チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)が企画・主催した「サイバスロン」という能力をアシストする技術を使った競技を紹介。
ちなみにスイスでは「VRを使ったアニュアルレポート」を配信している。スイスを一つの島に例えていろいろな情報を紹介する。
「サイバスロン」は2016年に第1回大会を開催。車いす、義手、義足といった現代社会でも日常的に使われているものに加え、脳コンピュータインターフェイスや、強化外骨格(「エグゾスケルトン」と言いました!)などを使用した競技も行われた。ちなみに日本からは4種目3チームが参加。
技術側が可能性(と現状の限界)を見せることで障害を持つ人々が社会参加への障壁を取りはらえる、というのが目標の一つである。
競技会だけでなくシンポジウムや体験会なども開催された。筆者も体験してみたいです(特にエグゾスケルトンレース)。
次回開催は2020年の予定だが、2019年には日本で車いすレースの大会の開催を目指して準備中とのこと。
講演終了後は参加者から活発に質問が飛び交った。
ドローンやエグゾスケルトン、低高度衛星ネットワークなど映画やゲームなどのサイエンスフィクションで語られた技術が現実になり、それを社会でどう使うか、という時代となってきている。同様にxRという技術がどのように社会に貢献できるのかが今後の課題といえるだろう。
(TEXT by Shogo Iwai)
●関連リンク
・Japan XR Hackathon 2017
・Noitom YouTubeチャンネル
・赤十字国際委員会(日本語)
・Silicon Valley Virtual Reality(英語)
・在日スイス大使館科学技術部
・ETH Zurich: Cybathlon(英語)