HTC直伝「虎の巻」! VIVEのベースステーション&トラッカーのトラブルを回避するには?【CEDEC】
8月30日〜9月1日まで開催しているゲーム開発者向けイベント「CEDEC 2017」。数あるVR系のセッションの中から、初日の30日にHTCが実施した「HTC VIVEの中〜上級者向け利用方法と今後の新製品について」のセッションについて本記事では取り上げる(最新の2018年版記事はこちら)。
登壇者はVIVE JAPANでDirector of Sales Operationを担当する西川美優さん。英雄伝説シリーズや大戦略、アトラス、ポピュラスといったPCゲームで育ち、逆にドラゴンクエストを始めとする家庭用ゲームを経験してこなかったという、剛のフレンズっぷりエピソードがとても素敵だ。
5月にGoogleが発表したスタンドアロン型Daydreamについても言及。スマホもPCも、トラッキング用のセンサーすら不要で、頭部の6DoFトラッキングを実現。少し精度は落ちるが、3DoFのDaydream用コントローラーで、メニューなども直感的に指示できる。
スタンドアロン型VRでは、配信プラットフォームとしてGoogle Playを利用。PC向けVRでは、VALVEのコンテンツ配信プラットフォーム「Steam」と組んでいるのと同じ図式だ。
そう、VIVEはVALVEの「SteamVR」という構想に基づいてHTCが製造しているというのを知らない方が意外と多く、VALVEが試作中の手を再現するモーションコントローラー「Knuckles」についてもHTCのほうに問い合わせが来るそうで……。
KnucklesはSteamVRの一環なので、HTCが製造することが明かされているわけではない。
というわけで開発キットがほしい場合は、西川さんがVALVEの日本担当を紹介してくれるというので、問い合わせてみてはいかがだろう。ただし、VALVEに日本法人はなく、担当者も日本語が喋れないので英語での交渉となる。
VALVEやGoogleといった他社と組んで、ハイエンドからローエンドまでVRの世界を広めていくのがHTC。
今回のセッションは、VRの可能性やVIVEの導入事例を語るというものではなく、よく開発者からもらう質問についてまとめて回答するという上級者向けのQ&Aとなっていた。その分、会場に集まったVIVEに興味のあるメンバーはかなり満足できたレベルだったのではないだろうか。
めちゃくちゃ役立つので全文起こし……と行きたいところだが、残念ながら取材ルールで禁止されているので、ここではつまずきがちなベースステーションとトラッカーのトラブル対処法ついてまとめていく。
Q.ベースステーションの最適な設置場所は?
回答としては、まずはトラッキングの仕組みを理解して工夫すべしというもの。VIVEは2つのベースステーションを対角線上に並べて赤外線のレーザーを照射し、その間にあるゴーグルやモーションコントローラー、VIVEトラッカーの位置を検出している。
勘違いしがちなのは、このベースステーションはカメラではなく、単純に赤外線を発射しているだけということ。PANORAでも過去に取り上げたことがあるが、ベースステーションは、1)「ブリンカー」と呼ばれるフラッシュが点灯、2)下から上にレーザーを照射、3)ブリンカーが点灯、4)左から右にレーザーを照射──という動きを高速に繰り返している。
ゴーグルやコントローラー、トラッカーには受光部が用意されており、この光の到達時間や角度などから計算して位置を割り出すという方式だ。2つで1組のベースステーションと、VIVEを動作させるPCは直でつながれて1対1となっていないため、同じスペースに複数のVIVEがあると、ほかのブリンカーやレーザーを誤認して、うまくトラッキングできないという不具合が起こってしまう。
なので、「ベースステーションから出る赤外線レーザーをさえぎらない&反射させない場所」が最適な設置場所となる。
基本的にベースステーションは高さ2m以上の位置に置いて、120度の角度で下向きにすべし。
VIVEのブースが隣り合う場合、2m以上の高さの布やパーティションで区切るべし。話には出なかったが、この壁を超えてブリンカーの光が漏れて干渉する可能性もあるので、ベースステーションに傘をつけて上方向に光を出さないようにすると万全だ。
公称では最大5mの対角線上までベースステーションは設置できるので、隣り合ったブースが近い場合はベースステーションをまとめる手もアリ。
不安定な場合に使いたいのが、Sync Cable。通常、ベースステーションは片方を「B」モード、もう片方を「C」モードにして運用する。ただ、それでも不安定な場合は、同梱されているSync Cableをベースステーションにブスッとさして、「A」「B」モードで運用すべし。
壁や床が鏡やガラスといったツルツルな面の場合、赤外線が反射してトラッキングが不安定になる。
基本のまとめ。赤外線を使ったワイヤレスマイク、屋外での展示における直射日光など、さまざまなリスクを頭に入れて運用しよう。
ベースステーションの置き方の珍しい事例も紹介してくれた。ハンググライダーのような展示では、下から上むきに置くことも。
ジャンプVR「暗殺教室」の事例では、前後で挟んで最大8台のVIVEを運用。
さらに「リトルプリンスVR」の事例では、半円状に並べることで1組のベースステーションで最大10台のVIVEを運用。
国内最大規模としては、円形のブース中央に2組のベースステーションをB/Cモードで隣り合わせて置き、その周囲に円形にVIVEを並べることで20台のVIVEを運用した事例もある。
さらにPANORAでもレポートした「CORRIDOR」の事例では、公称の限界を超えて対角9mで運用しているとのこと。逆にいうと9mは届くので、展示会で道を挟んで目の前のブースがVIVEを運用しているときは警戒が必要ということだ。
Q.ベースステーションを3つ以上設置して、プレイエリアを広げたい
トラッキング範囲をより広げるために、ベースステーションを3つ以上設置したいという話もよくもらうが、現状のSteamVR Tracking 1.0では非対応。
ただ、SteamVRも進化しており、次期バージョンのSteamVR Tracking 2.0では3つ以上に対応予定。広さについては公表されていないため、開発者ページを「F5」しているとそのうち現れるかも?(アカン)
TS4231のチップ搭載であれば後方互換も確保。
Q.Trackerは最大何台まで同時使用できるのか
VIVEトラッカーといえば、今年3月に開発者向けバージョンが登場しさまざまなものに装着してVR内に位置を反映してくれる周辺機器だ。まだまだ謎に包まれているところが多いトラッカーについても、現状わかっているTipsが披露された。
PANORAでもインタビューで語っていただいた某新宿のロケーションVR施設にある某ハメハのコンテンツで確認された事例で、7台までは安定してて動作するとのこと。ただし、5台を2セットで運用する場合は、使ってないほうは給電を止める方がいい。
Q.Trackerを複数使用するとトラッキングが不安定になる
このケースではトラッカーと対になったドングルを自分で用意したハブにまとめて差すのではなく、付属のクレードルとUSBケーブルを利用したうえで、ドングル同士やドングルとPCを離すと安定する。
Q.Trackerを複数のブースで多数使用するとトラッキングが不安定になる
これもまたまたハードコアな質問だが、ロケーションVRの展示などでトラッカーを活用したコンテンツを複数展示する場合、ブース間にある壁にアルミホイルを埋め込んで電磁波を遮断した上、赤外線が反射しないようにその表面を覆うのが最適だ。
なお、トラッカーの不具合は、VR内で小刻みに震えたり、勝手にツイーっと移動していったり、SteamVR上でアイコンが点滅したりといった症状を指している。
Q.Trackerが不安定で、2.4G帯の干渉が疑われる
これは素直に無線LANやBluetoothなど、鑑賞する要素を減らすべし。
Q.Trackerよりも、コントローラー3台目以降を使いたい
実はVIVEのモーションコントローラーは、ゴーグル内に刺さった2つのドングルと対になっている。なので、3本目以降を追加したい場合は、トラッカーを購入し、トラッカーはあえて捨てて(!!!!)、そのドングルとモーションコントローラーをペアリングすると使えるようになるとのこと。
*CEDEC 2017記事まとめはこちら
(TEXT by aMinoru Hirota)
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