香港産Webカムモーキャプ「AniLive 动互播」開発リーダーにインタビュー アバターのカスタマイズ機能も搭載?
「AniLive 动互播(以下、AniLive)」は香港のベンチャー企業であるNoble Fortune Development(以下、NFD)が開発中のWebカメラモーションキャプチャーソフトだ。Webカメラに映るユーザーの顔を認識してCGのアバターに表情をリアルタイムで再現させる、つまり現在バーチャルユーチューバーの多くが使用しているソフトウェア「FaceRig」と同じジャンルとなる。
AniLiveはSteamで発売予定ではあるもののアーリーアクセスで未だに販売開始されておらず、AniLiveのFacebookアカウントにベータテストを希望するメッセージを送っても返事が来るとは限らない状況だ。
そこで、PANORAはFacebook上で開発元にコンタクトを試み、前回はベータ版のSteamキーを入手してレビューを行い、今回は開発元のNFDにメールインタビューを行った。AniLiveの詳細について知りたい方は関連記事(香港産Webカメラモーキャプ「AniLive 动互播」β版レビュー クロマキー合成いらずで手軽に配信)を先に参照してほしい。
なお、インタビューの質問は英語で行ったがNFDの開発チームリーダーのJoseph Lam氏からは回答が日本語に翻訳された形で送られてきたので、この記事ではNFDからの回答の日本語文をもとに誤字脱字を修正したものを掲載する。
1. AniLiveの開発を始めた理由は何でしょうか?
こちらは長年CGムービーをつくる専門チームですので、2DやCGアニメーションはいつも専門的な技術と大量の人手や資源を用いることしか作成できないことをとても理解しています。しかし、アニメに熱意を持っていて自分のアニメが作りたい方が沢山いると思います。例えば、今世の中で流行っているユーチューバーのような、自分が撮影した映像をネットにアップして世間にシェアすることです。この仕組みで自分が創作したアニメを見せたい人はきっといます。実写の映像とは違って自分の顔を見せる必要がないのは自作アニメの一つの利点でもあります。
2. AniLiveはPVで「Real-Time Anime Engine」や「Anyone can be Anime character(翻訳:誰でもアニメキャラクターになれる)」など「ANIME」を強調しています。これはAniLiveはアニメファンを意識して作られたということですか?
そうですね、こちらが2.5次元を企画していることはPVからわかると思います。このようなテイストはより面白いアニメを創造できると考えています。もちろんもっとリアルな、繊細なテイストに対応できるようなアバターも追求しています。
3. AniLiveはYouTubeやTwitch、ニコニコなどのライブ配信サービスに対応する予定はありますか?
今ではしばらくOBS※1のような機能にて解決できますが、これからAniLiveにて配信機能を内装することも企画しています。
※1…OBSは「Open Broadcaster Software」というフリーソフトの略称。YouYubeやTwitch、ニコニコなど様々なライブ配信サービスに対応している。
4. AniLiveのUIは非常にシンプルで扱いやすいですが、UIを構成するにあたって気を付けたことはありますか?
そもそもAniLiveはユーザーに「CGソフトを使用している」よりも「ゲームをプレイしている」という感覚で使ってもらえるように設計しました。そういうわけで、UIもシンプルなスタイルにしました。
5. AniLiveはユーザーによるカスタマイズ機能を追加する予定がありますか?(例として、アバターのカスタマイズ機能やUnityパッケージのインストールなど)
これはAniLiveのこれからの開発で重要な課題です。今までAniLiveを体験したユーザーからもこのような質問を頂きました。こちらは2つの案を考えています。1つはこちらが開発したキャラクター生成システムです。ユーザーは大量の素材からオリジナルのキャラを作成できます。もう1つはユーザーが別のCGソフトにて作成したモデルを直接AniLiveに導入することです。※2
※2…別ソフトで作成したCGの具体的な形式や導入方法は明らかにされなかった。
6. ボイスチェンジャー機能を搭載する予定はありますか?
これも沢山のユーザーがリクエストしてくれたことです。こちらはハイクオリティーの音声変更システムを開発したので、いまは協力出来るパートナーを探しています。
7. AniLiveはサードパーティのソフトウェア、具体的にはLive2DやE-moteなどのリアルタイム2Dアニメ生成ソフトを対応させる予定はありますか?
Live2DとE-moteは2Dイラストにてモーションをつける機能であり、3DCGを動かせるAniLiveとは違う次元の表現方法です。こちらはまずAniLiveの機能を完全に開発を終了しましたら、他の機能を導入することを考えています。
8. Steamでのアーリーアクセスの開始はいつを予定していますか?
こちらはAniLiveを一ヶ月内に配信できることを目指しています。しかし、まずはユーザーに「面白くプレイできる」という感想を持ってもらえるように目指しています。※3
※3…もともとは2018年2月中にSteamにてアーリーアクセスとして販売開始予定だった。
9. SteamでのAniLiveの販売価格をドル、もしくは日本円で教えてください。
今想定しているのは1400円です。また、配信開始から30日以内は40%Off(840円)に値下げするスペシャルサービスがあります。※4
※4…ドル価格は明かされなかったが、日本円と価格差はなく1ドル100円計算として14ドル前後だと思われる。
10. 2018年におけるAniLiveの計画を教えてください。
2018年にてAniLiveに導入予定のいくつかの目標があります。
1. キャラクター作成システムと3DCGモデル導入システム
2. カメラにて指定のモーションを判断できるシステム※5
3. 人物の実写映像からアニメーションを作成するシステム(開発中)
4. 文字からアニメーションを作成するシステム(開発中)
※5…AniLiveには指定のキーまたはUIのボタンを押すことでアバターに喜怒哀楽の感情表現や猫、ジャンプなどのモーションをさせるAni Keyという機能がある。ここで言及されているのはWebカメラに映ったユーザーの動きから当てはまるモーションを判断・再生する機能だと思われる。
注目点はアバターのカスタマイズ機能
筆者は「AniLiveは同ジャンル・同プラットフォーム上にFaceRigという強力な先駆者がいる状況でどうやって戦うのか」を尋ねるべくインタビューで質問する内容を決めた。
AniLiveをFaceRigと比較する上で特に多くの読者が気になったことは「Live2Dに対応するかどうか」ではないだろうか。日本人がFaceRigでLive2Dを求める理由として「アニメキャラっぽさが日本人の受けが良い」ことに加えて「独自に3DCGモデルを制作する以外に個性のあるアバターを作る手段としてLive2Dとそれに伴うイラスト制作がもっとも容易である」ことが強いと筆者は考えている。
FaceRig内蔵機能でユーザーがオリジナルのアバターを作ることはほぼ不可能(FaceRigの標準アバターを使用しているバーチャルユーチューバーも存在する)な上に、3DCGモデリングの学習を一から始めるよりは2Dイラストで顔のパーツを描く方が圧倒的に障壁が低いためだ。
だが、上記の回答からわかるようにAniLiveはあくまで3次元・3DCGのアバターを特徴としている。AniLiveではアバターに様々なモーションで感情表現をさせたり、3DCG空間をアバターが動き回るといった機能があることから2Dイラストとの相性は良いとは言えないだろう(2Dイラスト風を3DCG空間で実現させるLive2D Euclidも存在する)。
また、AniLiveの開発元が香港に存在することやPV・製品名で「ANIME」を強調していること、インタビューでAniLiveに今後アバター生成機能を追加する予定があると説明していることから、もしAniLiveにアニメ風キャラクターを手軽に生成できる機能が搭載されれば日本人ユーザーにとってもオリジナルのアバターを生成する手段、あるいは放送用ソフトウェアの選択肢としてAniLiveが強い存在感を示すことになるのではないだろうか。
(TEXT by ぱソんこ/編集:花茂未来)
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