VRらしいゲームとは何か——コロプラ馬場氏、バンナム原田氏、レゾネア水口氏の3人が激論

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グリーとVRコンソーシアムが10日に開催したVR専門のカンファレンスイベント「Japan VR Summit」。「VRで生まれるヒットゲーム」と題したセッションでは、コロプラ代表取締役社長の馬場功淳氏、バンダイナムコエンターテインメント Worldwide Planning & Development Unit 部長・鉄拳プロジェクトリーダー・ゲームディレクター/チーフプロデューサーの原田勝弘氏、レゾネア代表・エンハンス・ゲームズCEOの水口哲也氏という3名が登壇。Mogura VRの共同代表・編集長である久保田瞬氏をモデレーターに、VRゲームの制作における現状や期待、ノウハウをざっくばらんに語った。

 
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馬場氏

 
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原田氏

 
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水口氏

 
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久保田氏

 
中でも興味深かったのが、「VRについて今までのゲームづくりと違う点を教えてください」というお題についての会話だ。馬場氏から「現実があまり好きではない。できれば仮想がいいんじゃないかとずっと思っていた」という衝撃の発言が飛び出すなど、VRクリエイターにとってかなり興味深い内容なので、ぜひご一読あれ。

 

「どちらかというと、現実があまり好きではない」

 
馬場 モバイルと比べると、VRのゲームはその中に入ってしまうので当然、臨場感はあるわけですが、ともすれば「これVRでやる必要はある?」と思ってしまうこともある。そこで「VRらしさはとは何か」という議論になる。実際、当社が出しているものでテニスゲームの「VR Tennis Online」でも、ゲームとしては非常に面白いのですが、「これ2Dディスプレーでよくね?」とずっと開発陣と言っていた。

 
最終的に思いついたのは、スキルを使うとテニスボールが頭の上でくるくる回るというもの(笑)。無理やりVR感を出すみたいな。あとは、相手がどう球を打つのか見るので、ダブルスがよかったことにも気づきました。ここでようやくVR感が出たねという。「VRならでは」というのを突き詰めていくと、意外に難しい。

 
ただ、出始めのこの時期は、ユーザーも「VRらしさ」を求めてくる。例えば、ハイエンドゲーム機がリリースされたときには、ハイポリできれいな映像じゃないとユーザーは遊んでくれなかったけど、最近では、そうじゃなくても受け入れられている。現状においてVR感を出すのは大事だけど、VRが当たり前になってきた瞬間に今のゲームをそのまま移植しても構わないんじゃないかと僕は思っています。

 
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VR Tennis Onlineは、Oculusのローンチタイトル30本のうちの1本

 
久保田 その移植のやり方は、VR Tennis Onlineのように「VRらしさ」を要素として散りばめるという感じですか?

 
馬場 いや、別にバーチャル空間の中にテレビが置いてあって、普通のゲームを遊ぶぐらいで全然構わないと思います。ユーザーは今後、おそらくVR空間から出たくないと思うようになる。そうしたら普通のゲームもあっていいんじゃないかなと。

 
水口 馬場さんはスマートフォン業界からかなり早いタイミングでVR業界に入りましたよね。それがスゴい。僕や原田さんとか、伝統的なアーケードや家庭用から来た人は、(今のVRムーブメントに)なんとなく「あっ、待ってた」という感覚があったと思う。

 
原田 そうそう。

 
水口 馬場さんみたいな人が、あのタイミングで社をかけて「VRに行きます!」というのは、すごいインパクトだったと思う。

 
馬場 それはですね、僕はどちらかというと、現実があまり好きではない

 
一同 (笑)

 
馬場 できればバーチャルがいいんじゃないかとずっと思っていたので、だから「ようやく来たか」みたいな気持ちはあります。

 
水口 それは僕と同じ考え方ですね。でもVRってきっとスーパーリアルな方向と、スーパーアンリアルな方向の両方を拡張させていくと思うんですよね。スーパーリアルを突き詰めていくと、多分あるところからはちょっと停滞していくんだけど、スーパーアンリアルな方向は際限ない。

 
先ほどのテニスの球がぐるぐる回るというのも、ある意味スーパーアンリアルなわけだけど、そっちの方が面白い。今までモバイルゲームが、四角い画面の中で作ってきた「お作法」が、VRでどう置き換わっていくのか。結構チャレンジではあるけど、全然違うものになるんだろうなと、なんとなく思っています。

 
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水口氏はPlayStation VR向けに「Rez Infinite」を製作中(関連記事

 
馬場 いや、(作法の置き換えは)ありますよ。まだわれわれが発明しきれていない、「VRならではのゲーム体験」はどうかというと、例えば、当社でもOculus Touch向けにコンテンツをつくっていて、一昨日ぐらいにレビューをしたのですが、メニュー操作のほとんどが手を動かすのではなく、Touchについているボタンを使うのです。

 
せっかくバーチャル空間に手が出ているのに、実際に操作するのはボタン。もちろん手を使う場面もあるんですけど、これは空間にパネルを出して、手で操作すればいいんじゃないかって。だから(まだクリエイターが)慣れていないんです。そういう形でわれわれデベロッパーで感のいい人が、今からVR空間ならではのインターフェースや表現方法を開発していかなければならない。その先にVRらしさが出てくるんじゃないか。

 
スマートフォンもそうでしたよね。最初にタッチパネルで「どこ触ってもいい」と言われたときに、つくる側は「えっ、どこ触っていいって言われても……」となってしまった。ボタンを押したときのフィードバックもないし、初期のアプリは「ボタンがどこにあるの?」という面倒くさい状況だった。

 
でも、そのうちガイドラインができて、「戻るボタンは左に置きましょう」とか「色はこうしましょう」といった決まりが出てきた。今、VRはまさにいまそのタイミング。われわれがつくりながら、作法や「らしさ」を見つけていくときなんじゃないかと思う。

 
原田 意外とそこが落とし穴で、僕らも過去にやったんですが、みんな「マイノリティーリポート」とか映画やSFの影響を受けて(手での操作を)やりたがる。でも長年、VRゲームを開発していると、最後は、コントローラーをVRの中に出現させて、手元で操作できるようにしてあげたほうがいいというのはというところに戻ってきてしまう。センサーでコントローラーの位置を検知して常にどこにあるか分かるように表示してあげて、例えば音声で「コントローラー」というと下から出てきて掴ませるとか。

 
人間の指でユーザーインターフェースを操作するというのは、割と理にかなっているんです。だからVRの中でだいたいカッコいいことをやり始めるのを見ると、「ああこれはダメだな」と思ってしまう。

 
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原田氏といえば、PlayStation VR向け「サマーレッスン」(関連記事)のほか、お台場のVRアトラクション施設「VR ZONE Project i Can」の巨大ロボ搭乗体験「アーガイルシフト」にも関わっている(関連記事)。

 
水口 腕も疲れるしね。考えてみたら映像って、誕生した瞬間からずっと四角い画面に縛られてきているじゃないですか。映画の世界からずっと。それはアーケードだろうが、モバイルだろうが、コンシューマーだろうが、結局、その中にそこに押し込めなきゃいけないということをやってきたんですよね、僕らは。

 
逆に言うと「制約がクリエイティブを生む」ということももちろんあるんだけれど、今回はその制約が完全に取っ払われる。なんでもOKというか、そこに世界があって、どこを見てもいいし、何をしてもいい。ボタンを押してもいいし、触ってもいいし、例えばKinect的なものを使うのでもいい。この状況は結構スゴいことですよね。

 
原田 スゴいことなんですけど、さっきおっしゃられた今まで作り方の文法が通用しないという話につながっている。例えば、四角い画面に対してのカメラなら、(クリエイターが)見せたい方向を見せれた。主人公が「しまった!!」といったら、そっちの方向にカメラをパンすればいいんですけど、VRは自分がカメラなので視線誘導がすごく難しい。

 
だからキャラクターがせっかく喋ってたのによそ見したら、怒らせる、もしくは何か意識させるようなことで視線誘導させる。私生活で普段僕らが感じている緊張感とかをうまく利用して見せてあげるとかが必要になる。本当は右に曲がらせたいんだけど、あまりにも自由なので、そこは何かで誘導しなければならない。3Dサラウンドだったりとか、何かに気づかせてあげなければいけない。

 
とにかく今までだったら、「ここのアニメーションが面倒臭いから」となったらカメラを動かして声だけにすることができたじゃないですか。「先生ちょっと横向いて」とゲームの中でキャラクターが言ったときに、VRでは下手すると(見ていて欲しい時に)プレイヤーがキャラクターの方を向くかもしれないので、手を抜けない。完全につくらなきゃいけない。

 
今までカメラはある意味制約なんですけど、それは演出上すごく都合が良くて、そういうのが一切使えなくなったのが、割とコストにつながってくるのでしんどいです。

 
(Reported by Minoru Hirota

 
 
●関連リンク
Japan VR Summit

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