SIE開発者が語る、中学生でもわかるVRの基礎 GAME ON「おしえて! PlayStation VR」レポ

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5月14日、東京・台場地区にある日本未来科学館で開催されている企画展「GAME ON 〜ゲームってなんでおもしろい?〜」において、バーチャルリアリティー(VR)、そしてPlayStation 4向けのVRゴーグル「PlayStation VR」(PS VR)についてわかりやすく解説するイベント「おしえて! PlayStation VR」が開催された。

 
内容は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の開発担当者に出演してもらい、中学生(PlayStation VRの対象年齢は12歳以上です)でもわかるようにVRとはなにか、そしてそれを実現するためにどのような工夫をしたのかを説明するというもの。

 
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登壇したのはSIEグローバル商品企画部1課課長の高橋泰生氏。1999年にソニーに入社し主にディスプレーなどを担当。2010年2月にソニー・コンピュータエンタテイメントに移ってハードウェアの商品企画を担当、PS VRの開発には初期段階から携わっている。聞き手は、角川アスキー総研の中西氏。

 

ゲームの中に入って遊べるVR

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まずはVR自体について。従来のゲームがプレイヤーがテレビを通して客観的に見るものだとしたら、VRはその世界に入って遊ぶものになる。いくつかの要素で「プレゼンス」(実在感)を維持していくことで、あたかも自分がその世界に入っているような体験ができる、ということだ。

 
実在感を維持するのに何が必要かというと、ざっくり言って

 
・目の前にディスプレー(3D対応)を用意する
・そのディスプレーを拡大して視界いっぱいに広げる光学レンズを付ける
・ヘッドトラッキング機能を付けて頭が動いたときに映像を追従するようにする。そのためにはジャイロや加速度センサーだけでなく位置を検知できるポジショントラッキングが必要(前後の動きなどを検出するため)
・キャラクターの発する音をその位置から発しているように演算して発生する(3Dオーディオ)
・PS VRではコントローラー「DualShock 4」(ライトバー)やモーションコントローラー「PlayStation Move」(スフィア)の動きを検出する

 
……といった要素が揃えば、視覚・聴覚・操作はフォローできる、ということになる。

 
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実在感を得るための要素。

 
これをPS VRでは、以下のように実現している。

 
フルHDの5.7インチ有機ELディスプレーを搭載(サイドバイサイドにより両眼960×1080ドットの3D表示)
応答速度の高い有機ELディスプレーを採用し、秒間120フレーム(通常のゲームで使用されるフレームレートは秒間60フレーム)を実現。また、全ピクセルにRGBを搭載して色の再現性を高めている。ほぼPS VR向けのカスタムではあるが、このような小型で高性能なディスプレーが搭載できたのはスマートフォンの普及のおかげとも。

 
視野角100度を実現するために拡大レンズをディスプレーの前に搭載
複数枚のレンズを置くとそれだけ重くなるので1枚のレンズで中央部分ははっきりと見え、端の部分はぼやけて見えるような設計となっている。レンズのプロトタイプは多数作られた。

 
3Dオーディオを用いて周りの音を実現
独自技術により、高さを含めた位置情報に基づく3Dオーディオを実現。こちらはPS VRのシステムに同梱するプロセッサユニットが変換する。ヘッドホンは同梱のものでなくてもOK。

 
PlayStation CameraでPS VRやDS4/Moveの位置を検出
PS VRのトラッキングライトは青のみだが、DS4のライトバー、Moveのスフィアは色が変えられる。

 
さらにプラス:使いやすさを追求し、実在感を壊さない工夫
前方にディスプレーやレンズがあって重くなっているため、後部に重りを入れて重心が中央になるようにバランスを取る、バンドの位置、ライトシール、内蔵マイクの搭載など、使いやすさの工夫も。
 
 
さらにプラス:VRゲームをみんなで楽しむための「ソーシャルスクリーン」
SIE WWSの開発チームから、VRで何を遊んでいるのかをテレビを通じてわかるようにしたい、という要望があってソーシャルスクリーンがつくられた。一時期は両目用の映像が同時に出ていたそうだが、結果として左目用の加工前の映像になった。その後、開発チームから「別の画面がテレビから出ると別の遊びができるんじゃない?」ということで搭載されたのが「PLAYROOM VR」でお馴染みのセパレートモードになっている。

 
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ソーシャルスクリーン。

 

PS VRは前方3m、横1.9mがトラッキングエリア

 
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PS VRの成り立ちについても言及されたが、このあたりの話題は「台北ゲームショウ2016」の記事で紹介しているのでそちらを参照していただきたい。なおスライド中には、GAME ON界隈では「スペースインベーダーを真剣に遊ぶ50代男性」として知られるSIE WWSプレジデント吉田氏もちょいちょい登場していましたが、会場の反応はやや鈍めでした……。

 
高橋氏は「ゲームとVRの相性は非常にいい」とはしながらもゲーム以外のいろいろな分野でVRを使ってほしいと語った。VRの用途では教育、ライブイベント(スポーツやコンサート)、コミュニケーションなどにも応用ができるという。しかしながら、VRの世界「だけ」では生活をしたくはない、リアルの世界での体験があるからこそ、VRが楽しい体験になるとも語っていた。

 
最後に、来場者から募集した質問に高橋氏が答えた。

 
Q:PS VRを遊ぶにはどれくらいの広さが必要? また、動きまわって遊ぶこともできるの?
A:前方3m、横1.9mのスペースが認識可能な範囲。基本的には座って遊ぶもの、ではあるが、そのエリア内であればある程度は動き回っても問題はない。

 
Q:VRの機械は今後どこまで進化しますか?コンタクトレンズサイズにはなりませんか?
A:将来的にはなってほしいのだけど、技術の進化が進まないと小型化は難しい。PS VRの原型も4年前にできていたが、発売するのは今年。もちろんVRの技術が進めば小型化の技術も出てくると思うが今はそれを待たないといけない(具体的な目標年も答えなかった)。

 
Q:PS VRは光でトラッキングをしますが、他社さんのVR HMDは光を使うものが少ない。なぜ光を使うのか?
A:PS VRは光(可視光)を使ってPS Cameraをトラッキングするが、他のVR HMDでは赤外線(IR)を使うものがあり、それだと光っているようには見えない、というのもがあります。良し悪しはあって、PS VRの場合は光の色も変わっていることが検出できるので、Move(のスフィアやDS4のライトバー)も色を変えておけば同時に検出できます。しかし、IRに色はないので、パターンを変えてやらないと別のものをトラッキングできないため、そのためのアルゴリズムを入れて対応する形になります。ほかにも磁気を使う方式などあるのですが、PS VRではPS Moveで培った、カメラを使って光でトラッキングするシステムを使っています。
(筆者補足:2010年前後のGDCやCEDECなどではPS Moveのための画像処理のセッションが組まれていた)

 
Q:「The Deep(仮)」の体験をしたときに潮の香りを感じたり、コンクリートの映像をVRで見ると体がひんやりした感じになったのですが、VRを使って次に支配したいのはどんな感覚ですか?
A:視覚情報と聴覚情報は過去の体験に結び付けやすいんですね。この情報と過去の経験から「こんな匂いがする」「こんな風が吹いている」という感覚を呼び起こすことをやっているわけです。視覚と聴覚は実現できているのでじゃあ次はどこを、匂いか、それとも触覚か。コントローラは振動はするんですけど、それの細かいものとか。研究はいろいろやっているんですけど、具体的に狙いを定めてそこをやっていこうというのはまだ定まってないです。

 
Q:VRの次に作りたいものはありますか?
A:私はVRをやりたくてやってるわけではなくて、もともとはディスプレーのエンジニアをやっていたのですが。で、知覚情報をうまくやることで別の世界に行けちゃう、VRの中にどんどん入って行けちゃう、ということが体験の中でできるようになってきたので、その別世界でなにができるかというところですね。「マトリックス」の世界みたいに脳にジャックインして中を直接操作して……というのが将来的にできてくるのかもしれないですけど、それが本当にいい体験なのかはわかりません。完全に別世界に行って、どういうソリューションで体験としていいものができていくのか、というのは研究材料としても、実際に商品として出していくための検討をすることは面白いことですので、それを引き続きやっていっていきたい、と思っています。

 
最後に高橋氏はVRの未来をこう語ってこのイベントを締めくくった。

 
「(VRは)もっと身近になっていくと思います。実際に素晴らしい体験ができるコンテンツがいっぱいあります。別世界の中でもいろいろな体験が身近にできるようになり、より楽しい世界が広がっていくと思っていますので。そうなると『VR』からバーチャルという言葉は消えていくと思います。普通の生活の中で今ここにいる、とうこと以外の行動として、外出するような感じで、普通の生活の中にVRが取り込まれていくのかなあ、と思っています」

 
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GAME ONの会場にPS VRの体験コーナーが用意されていることもあって、会場はVRに興味津々の聴講者でほぼ満員だった。

 
 
なお、PlayStation VRが現在日本で唯一体験できる「GAME ON」の開催は5月30日まで。チケットは19歳以上1500円、18歳以下は750円(土曜のみ650円)。PS VRの体験整理券はオープン時から企画展入口で配布される。

 
また、20日・27日の金曜日はナイトイベント「『GAME ON』アフター5」が開催されるため、「GAME ON」のオープン時間を20時まで延長することが決定している(開催日は16:30よりアフター5チケットが屋外チケットブースにて発売される。19歳以上1000円・18歳以下500円)。延長時間内の体験整理券は16:45から企画展入り口で配布される。

 
体験できるゲームは4種類に増えており、「THE PLAYROOM VR」(VRプレイヤー一人+通常コントローラ4人での対戦形式)、「The London Heist(仮)」「The Deep(仮)」に加え、Enhance Gamesの「Rez Infinite」が楽しめる。ちなみに会場内には元祖「Rez」(PlayStation 2版)も用意されているので、もし遊べたら「Rez」の進化を体験するのもいいだろう。

 
また、「GAME ON」アフター5では、展示終了後の20時より、東京展ならではのゲームの歴史を紐解くイベントを実施している。去る13日はタイトーで「スペースインベーダー」を開発した西角友宏氏を迎えて「スペースインベーダーはいかにして生まれたか」を開催して、好評を博した。

 
20日はセガの数々の業務用・家庭用ハードの設計に携わった方々を招き「セガハードの歴史を語りつくす」が、27日はナムコ(現バンダイナムコエンターテイメント)の伝説的なゲームである「パックマン」の開発者の岩谷徹氏と「ゼビウス」の開発者である遠藤雅伸氏を迎えて「岩谷徹×遠藤雅伸/ゲームとゲームの未来を語る」というかなり意欲的な内容のトークショーを開催する。こちらも興味がある方はチェックしてみていただきたい。

 
(TEXT by 岩井省吾、PHOTO by Minoru Hirota

 
 
●関連リンク
PlayStation VR
GAME ON 〜ゲームってなんでおもしろい?〜

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