女性声優が教える、ボイスチェンジャーを使ったかわいい女声の出し方のコツ 「バ美ボ」講座レポート

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IVRは22日、東京都上野にあるカフェスペース・Vkawaii道場にて、声優の鈴木南名子さんを講師に招いたセミナー「現役声優が教える、美少女ボイス講習会!」を開催した(ニュース記事)。

 

90人を超える応募から選ばれた8人がバーカウンターに並び、ティアックのボイスチェンジャー機材「MiNiSTUDIO CREATOR US-42W」を使いながらかわいい台詞を女声で読み上げるトレーニングを行なった。約3時間に渡る濃密な時間をまとめていこう。

 

ちなみに会場となったカフェの表には巨大なQRコードが掲げられており……。

 

スマホで撮影すると看板が現れるというAR仕様だった。

 

いきなりのスパルタ教育に戸惑うメンバー

ここ数ヵ月、バーチャルYouTuber(VTuber)業界で注目されているトレンドのひとつに「バ美肉」(ばびにく)がある。「バーチャル美少女受肉」という言葉の略で、主に男性クリエイターが自分で作った女性キャラクターの「魂」も担当し、ボイスチェンジャーなどを使って女声まで含めてキャラを演じるという行為を指す。

とにかくすごいのが、本当にかわいい女の子キャラにしか感じられない点だ。PANORAが10月末に開催したイベント「バ美肉ナイトクラブ」でも、魔王マグロナちゃん、兎鞠(とまり)まりちゃん、竹花ノートさんら、トップ「バ美ピ」(バ美肉ピープル)の芸術としか思えないかわいさに会場の熱狂が収まらなかった。

もともとネットでは、10年以上前から女声でしゃべれたり歌えたりできる「両声類」と呼ばれる男性が注目を集めていたが、現在ではVTuberの仕組みが知られたことで見た目も含めて女性キャラを作り込めるようになったわけだ。

そんな彼女(彼?)たちに憧れて、バ美肉なVTuberになりたいという方々も多く、ニーズを汲んで今回の「バ美ボ」(バーチャル美少女ボイス)講座が開かれた。

セミナーの流れとしては、まず講師の鈴木さんや協力団体であるVR法人HIKKY、機材を提供しているティアックの紹介があったうえで、いきなり参加者自身がくじ引きで引き当てた台詞を女声で読み上げて収録するというスパルタ方式だった。どれくらいスパルタかといえば……

「お兄ちゃん! 早く起きて! はやく起きないとくすぐっちゃうぞー!!!」

「ふああ〜。眠いよお……。キミも眠いの? よしよし、じゃあ二度寝しちゃおうか?」

「せんぱい! せんぱいのために、お弁当作ってきちゃいました。食べてくれますか?」

……といった文章を、いきなりボイチェンをかましてしゃべるというハードなものだ。その後、鈴木さんが1人1人のクセを把握して発声や演技を個別指導し、みんなで再収録した同じセリフのビフォア・アフターを聞き比べて終わりという内容だった。

女声どころか、人生で演技したのは数えるほどの機会しかない筆者にとってはすべてが新鮮な体験で、鈴木さんが伝授してくれるノウハウに「学びしかない」と感動しきりだった。

ちなみに参加者には「オニャンコポンじゃ!」の挨拶で一気に知名度を上げたバ美肉界の新星・オニャンコポンさんの姿もあり、このセミナーに対する期待度の高さをうかがわせた。

 

目指したいかわいいは何なのか?

さて、かわいい声を出すというと、みなさんどんなコツを想像するだろうか。ボイスチェンジャーまかせで、なんとなく高い声で話せば「バ美ボ」になると思っていないだろうか(筆者は漠然とそう考えていた)。

今回、講座を受けて筆者が学んだのは、下記の3段階を経てかわいいを作り込んでいくという手法だった。

1.想像……目指すかわいいキャラ像を明確に思い描く
2.発声……芯のない顔から抜けるような発声に慣れる
3.演技……かわいさや説得力が増すしゃべり方を会得

第一に重要だと感じたのは「想像」で、どんなかわいいを目指すのかというゴール設定だ。

例えばひとくちに女性VTuberといっても、キズナアイちゃんの頭から抜けるような声、シロちゃんのちょっとふにゃふにゃしたような声、モイラ様のウィスパーボイス、物述有栖ちゃんのロリボイスなど、さまざまな「かわいい」が存在している。

別にVTuberに限らず、自分の好きなアニメやゲームの女性キャラだったり、「自分の描いたキャラはこんな風なしゃべり方」というコンセプトの「かわいい」でもいいだろう。もちろん最初からユニークでかわいい声が出せるという天才(聞けばオニャンコポンさんは4日でできたとのこと)もいるものの、自分はどの声・しゃべり方に近づけたいのかという目標を明確に定めて、それを声真似するほうが上達が実感しやすい。

鈴木さんはプロなだけあって、どういう風に声を作って演じればその「かわいい」になるのかを心得ているのがスゴく、参加者の目の前でキャラを瞬時に分析し、アイちゃん、シロちゃん、輝夜月ちゃんと、VTuberの声真似を次々披露して全員を驚かせていた。彼女のような職人芸に達するにはトレーニングが必要だろうが、第一歩の基準として自分がやりたい「かわいい」を頭の中に持っておくことは重要だ。

そして理想がわかったうえで、自分の出せる声の特性を分析すれば、目指す声に合っていて出しやすいのかどうかも判別しやすくなる。合っていない場合は方向転換すればいい。

余談だが、日本語の「かわいい」は、複数の概念が入り混じった広い範囲をさす言葉だろう。英語で言えば、cute=子供や小動物のようなかわいさ、pretty=大人っぽくてきれい、charming=魅力的・素敵というのもすべて「かわいい」と言えるし、原宿に象徴されるようなKAWAIIは個性的で素敵だろう。オタク文脈で「萌える」=「心がぴょんぴょんする」のような癒しやときめきが混ざった感情に使うこともある。自分が目指すものだけでなく、ほかのかわいいも判別できるようにしておくと、バ美ボで演じ分けるという高みに登れるかもしれない。

 

裏声に地声を少し残す発声を意識しよう

第二に意識したいのは「発声」で、声をどこから出すかという意識と呼吸法の2点が重要だと感じた。

まず声を出す場所だが、鈴木さんは男性が女性の声を出すコツを「芯を抜く」と表現していた。ここでいう「芯」とは喉仏を震わせるような低音で、喉を使わずに顔から声を出すようなイメージになる。具体的には、眉間ではなく、「鼻腔共鳴」を出す鼻の中間あたりだ。

「そもそもの前提として、男性の声は胸から鳴っている芯のある音だと思うのですが、この声だとボイチェンをかけたときにオカマ感が拭えなくなってしまう。ただ、全部裏声だとボイスチェンジャーを通した際に電子音ぽくなってしまうので、そこは地声をちょっと残して、なるべくミックスボイスに寄せるようにすると、素敵に聞こえるオリジナル声になると思われます」(鈴木さん)

ミックスボイスとは、地声と裏声を混ぜたような声のこと。初めての練習のコツとしては、ひとまず裏声でセリフを読んでみて、そこからどうかわいくしていくのか裏声のバリエーションを試して調整するのがいいそうだ。

VTuberの声の出し方についても解説してくれた。キズナアイちゃんの「はいどうもー」は、頭の上の方でミックスボイスでしゃべるイメージで、ミライアカリちゃんもアイちゃんと同じ系統だ。シロちゃんは鼻のあたりでしゃべっている感じ。「みてみて!! コレ、エビ!!」のような輝夜月ちゃんは、喉の辺を使うイメージになる。

このうち、バ美ボでの実現が難しいのは輝夜月ちゃんというのが鈴木さんの見解だ。理由は、地声が強いものの変換は男感が強くなってしまうから。一方でシロちゃんのような萌え系はやりやすく、魔王マグロナちゃんをはじめとするバ美肉VTuberの方々も同じだと言う。鈴木さんは「シロちゃんのような方向を目指すのが早いかもしれない」とアドバイスしていた。

呼吸法については、お腹に空気を溜め、股の間から抜くような感じだ。

「一番は肩に力が入りがちなので、リラックスした状態で声を出すこと。空気をおなかに貯めておけるのが腹式呼吸で、胸式呼吸で空気を貯めようとするとしゃべりにくくなってしまう。おなかに息を溜めた状態で『あー』と声を出すと、股の間が広がる感じになると思います。それは胸式だと感じられない感覚」(鈴木さん)

発声は日々意識しないと身についてこないとのことで、この辺はやはり練習あるのみだ。

 

かわいい演技を研究して真似しよう

その発声という基礎がある程度できたうえで、大切になってくるのが「演技」だ。

例えば、ロリボイスを出したい場合、2音ほど上げ下げしながらしゃべるとそれっぽく聞こえる。逆に大人の女性の魅力を出す場合は、平坦にして息の成分を多くするといい。また、今回のように話しかけるセリフでは、言っている相手を目の前に具体的に想像することで言葉の真実味が増すとのこと。

要するに普通の演技指導で、鈴木さんによれば「アニメやVTuberなどで女の子のかわいいしゃべり方を研究すると、声自体がかわいくなくてもかわいく見える」とのこと。声真似しながら、どこから声を出しているイメージなのか、アクセントをどこに置いているのか、息はどう抜いているのかなどを学んだり、今回のように上手い方に指導してもらうことで練習していこう。

ちなみに参加者8人の中では、オニャンコポンさんがすでに「発声」の段階をクリアーしていたので、鈴木さんは「あなたならより高みに行ける!」と指導に力を入れていた。

他にもバ美ボを実現する上で障壁になると筆者が感じたのは、女性の声を演じているという気恥ずかしさだった。これに関しては、目の前で普通に喋っていた鈴木さんがパッと役に入って空気が変わることを目にして、そうした瞬時に気持ちを切り替えるトレーニングも必要だと実感した。

なお、バ美ボに関してはティアックさんがYouTubeに投稿している動画も参考になるのでぜひチェックしてほしい。

 

 

 

 
今回の主旨から外れるが、さらにいえばキャラのかわいさは声だけではなく、所作にも宿っている。月ノ美兎ちゃんは声をぶりぶりにかわいくしているわけではないが、なにかトラブルが起こって焦って素が出た際のギャップがかわいい(と筆者は思う)。

いわゆる「かわいいムーブ」のような、マグロナちゃんの髪や、兎鞠まりちゃんの耳など、揺れものを使う手もありだろう。バ美肉を目指す方は、かわいいのPDCAを回しまくって、自分なりのスタイルを確立していってほしい。

 
2017年12月に起こったVTuberムーブメントで立役者の一人である「バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん」ことねこますさんは、狐娘の見た目なのに声は男性そのまま、でも面白いし個性的でかわいいからアリという突破口を切り開いた。

次いで2018年6月頃から「魔王マグロナ」として配信を始めたukyo_rstさんが、見た目も動きも声も「全部俺」で担当するバ美肉という新しい地平線を築いている。

最近では、スマホアプリ「SHOWROOM V」に収録されたジョイマン高木さんや筆者のようなおじさんアバターの中に、リアルかわいい女の子が魂として入る「バお肉」(バーチャルおじさん受肉)という現象もあったりする。

テクノロジーとアートを駆使し、なりたいキャラにれる世界がVTuberやVRChatで広がっているのが平成最後の2018年なのだ。IVRでは、12月8、15日にもゲストにKawaiiVoiceの伝道師である「じょん」さんを招いて同様のセミナーを開催するとのこと(イベント募集ページはこちらこちら)。競争倍率は高いと思われるが、興味のある方はぜひとも参加してみてはいかがだろう。

 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
●関連リンク
【少人数制】現役声優が教える、美少女ボイス講習会!
12月8日【Vkawaii道場 #1】両声類「じょんさん」に学ぶ、”KawaiiVoice”の作り方!
12月15日【Vkawaii道場 #2】両声類「じょんさん」に学ぶ、”KawaiiVoice”の作り方!
鈴木南名子(Twitter)
Vカツ
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ティアック

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