「ソードオブガルガンチュア」発売 クリエイター・新氏に聞く、VRならではの剣戟体験に込めた思い
よむネコは7日、VRオンラインアクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」を発売した。価格は1990円。対応するVRゴーグルは、Oculus Rift、Oculus Quest、HTC Vive、Windows Mixed Reality。
「ソード・オブ・ガルガンチュア」 各ストアにて、販売開始しました!
Oculus Store Rift https://t.co/68NoeVzAC2
Oculus Store Quest https://t.co/swVSWfZbMN
Steamhttps://t.co/PqqpZBb54p#GargantuaVR #ガルガンチュアVR #ソードオブガルガンチュア pic.twitter.com/oJmKkqVqU3— ガルガンチュア新清士 (@kiyoshi_shin) June 6, 2019
プレイヤーは剣や盾などの武器を手にし、迫り来る敵の攻撃を避けながら実際に相手を切りつけて倒して、難易度の異なる50以上のステージを進めていく。シングルプレーに加えて、最大4人の協力マルチプレーにも対応。ボイスチャットで仲間と状況を共有しながら敵に立ち向かうことが可能だ。見上げなければ視界に入らない巨大なボス・ガルガンチュアと対峙し、あなたは生き残れるか──。
VRゲームといえばガンシューティングが多い中、本作はなぜ剣戟にこだわったのか。また、開発においてどんなところが難しかったのか。リリースを記念して、よむネコの新清士氏にインタビューした。
「剣戟でのVRらしさとは何か?」を突き詰めた
──2017年の開発スタートからようやく発売を迎えられた今の率直な気持ちを教えてください。
新 やっとみなさんのお手元に届けられるということに、まずはほっとしています。ありがたいことに前評判もよく、こうした状態でお送りできたのは何よりも様々な形で、ご支援頂いたユーザーのみなさまのおかげです。
本格的なVRゲームの開発は、スタートした2年前に想像していたよりも、はるかに大変な道のりでした。まだまだケーススタディが少なく、参考になる事例や情報も限られている中、マルチの剣戟ゲームという世界初の前例のないものを開発する難しさを痛感しながらの日々でした。本当に自分たちが進んでいる方向が正しいのかどうか迷いながら、開発を続けていたというのが偽らざる状況でした。
しかし、2月と4月に行ったクローズドβテストで、多くの方から生の声としてたくさんのフィードバックをいただいたことで、自分たちの進むべきゲームの最終形が見えてきました。そしていただいた意見を元に大量の調整を行い、ゲームが面白くなってきたという確実な手応えを得られるようになりました。
5月のオープンβを通じて、みなさまの期待に応えられる水準にゲームがたどり着きつつあるということは、確信に変わりました。参加頂いたユーザーの方々には、感謝の気持ちしかありません。
日本製の「世界初のVR向けのマルチプレイ剣戟ゲーム」として胸を張って、みなさんにお届けできる今は思っています。
──一番こだわったところは?
新 本作は「剣戟でのVRらしさとは何か?」ということを大きなテーマとして突き詰めて開発したゲームです。コンシューマ機でも、スマートフォンでも体験ができない「VRだからこそ」の剣戟体験を作り上げることに力を入れました。
われわれなりにたどり着いた答えは、「空間を使った遊び」をどう幅を広げて実現するかでした。
これまでのコンシューマ機では、当然ながら、強攻撃や弱攻撃、回避などをボタンで表現するのが普通です。一方で、VRでは実際の手を動かして、敵に剣を斬りつけたりすることになります。しかし、それだけでは同じ動きを繰り返すだけになってしまう。
多くのVRゲームが抱えている課題点は、同じ身体の動きをすることを前提としているという点です。これはコンシューマ機のボタンを押してプレイするのを、VRにおける人の動きにも当てはめているからなのですが、同じ動きは疲れるし、すぐに飽きてしまうので、VRゲームの幅に限界を生んでいるひとつの要因になっていました。
そうした体験にならない形を模索する中、可能性として見いだしたのが、敵が斬りつけてくる剣を受け止めて、はじいて、斬り返すという一連の行動です。むやみやたらに剣を斬りつけて倒すのではなく、様々な角度から攻撃してくる敵の動きを読んで、適切にその攻撃を受けて、斬り返すことになると、プレイヤーの腕は様々な動きをするようになります。これが「空間を使った遊び」で、これこそ「VRらしい剣戟」を構成する重要な要素だと考えるようになりました。
この体験を実現するためのアタリ判定の開発が難しかったです。VRでは、標準的な速度である90fps(90分の1秒)という非常に短い間に、動いている敵の剣と、プレイヤーの剣とが適切にぶつかっているのかどうかを判定して処理しなければなりません。うまく処理できなければ、剣は交差してもぶつかることなく突き抜けてしまいゲームとしての面白さは消滅します。
銃のゲームの場合には、弾を撃っても着弾するまでに、コンマ数秒の計算できる時間があり、その間に処理できます。剣のゲームはその時間がありません。このアタリ判定の部分を実現することが最もこだわった部分です。しかも、それを4人でのマルチプレイで実現することが、技術的にも最大のハードルで最も苦労した点でした。
VR酔い対策、わかりやすいUIにこだわった
──話を聞いているだけで、タイミング調整にものすごく時間がかかったのだと感じました。ほかにも苦労された点が多そうです。
新 とにかく、前例のないVRゲームを開発することは、何から何まで本当に難しいことでした。
例えば、移動はワープではなく、よりプレイヤーが自然に感じられるよう、コントローラーを使うと開発の早い段階で決めましたが、VR酔いをどのように防止するのかというのは大きな課題でした。私自身、VR酔いしやすいため、VR酔いを感じるゲームは絶対に多くの人に受け入れられないことはわかっていました。
なので、開発の初期段階では、酔いを抑える方法を徹底して研究し、知りうる限りのVR酔いを押さえるテクニックを試していきました。まずは、移動速度を人間が歩く程度の速度にまで落としました。一方で、一瞬ダッシュできる仕組みのステップ移動を追加することで、ゲームのスピード感が損なわれないように注意しています。「トンネル効果」と呼ばれる、移動中は視線の中心部分以外を暗くすることで、酔いを減らすテクニックも入れています。テストを繰り返し、最終的に酔うという人は、大きなイベントで調査しても5%程度にまで抑えることができました。
VR内におけるUI開発も難しかったです。UIは、まだ世界中のゲームでもベストな答えを出ていません。本作でも3回はゼロから作り直しました。初期は、VRの体験が壊れないように、すべてVR内でのボタンやスイッチを手で触るといった形で表現していましたが、初めてプレイするユーザーが、そもそもわからなくて操作ができないという問題が発覚しました。また、何度も使うUIでは、そうした手の動きを繰り返す作業は、非常に面倒に感じられました。
結局、現在のゲーム的なUIに落ち着いていきました。初めてプレイする方でも迷うことなく、すぐに適応してもらえるので、今は、この方法が正しかったと考えています。VR的にならないとしても、ゲームの本質に関わらないUIはシンプルなわかりやすい形にすることが望ましいという教訓を得ました。
こうした実際に開発して苦労してみなければわからなかったVR的なノウハウが山ほどあります。
──ほかのVRクリエイターにとっても、非常に学びが多い話だと思います。先ほどもちらっと出ていたVRならではの体験について、「ここを見て欲しい!」という点を教えてください。
新 ぜひ体験して頂きたいのが、自分がどんどんと敵を倒すことで上達していく感覚です。本作は、剣戟のゲームとして防御と回避が大きなポイントになるようにデザインしました。最初は戸惑うかもしれませんが、身体を傾けることで一瞬のダッシュができる「ステップ移動」を習得し、難敵の猛攻をうまく避け、斬り返して倒せたときは最高に気持ちいいと思います。
また、身体を大きく動かして、敵に攻撃をすることも重要です。大きな身体の動きで攻撃するほど、攻撃力が大きくなるよう仕組みにしてあります。斬るでも、突くでも、30種類のそれぞれの武器の特性により効果が違うので、その辺もぜひ試して探ってみて欲しいところです。
そして、難敵と戦い続けているうちに、どんどんとゲームと身体感覚とのシンクロが増していくはずです。VRの世界に実際に入り込んでいる感覚が強くなっていくと思います。「VRならでは」とは、VRの世界に本当に自分が存在するという強烈な体験です。それを引き起こせるところまで、到達できたと思っています。
──運動量がすごくて、ダイエットにもよさそうですね(笑)。最後に、「これは楽しいからぜひやって」というオススメのステージや体験を教えてください。
新 シングル面も豊富に用意していますが、何よりも遊んで頂きたいのが、4人マルチでの協力プレイです。クロスプレイに対応し、Oculus Rift、HTC VIVE、Windows Mixed RealityといったPC向けVRハードだけでなく、Oculus Questにも対応しました。マルチプレイの体験は、シングルプレイとは大きく違う、これはまた別世界が広がっています。
マルチプレイの難易度は3種類用意してありますが、プレイヤーのプレイのうまさに応じて、登場してくる敵がリアルタイムで変わる仕組みです。最も難しい難易度のものは、4人できちんと役割分担をして、ネイティブで対応しているボイスチャットで声を掛け合いながら戦わなければ、敵に勝つことは難しいと思います。
そして、4人マルチでプレイできる巨人ガルガンチュアとの戦いが控えています。VRならではの巨大さと、そこから繰り出される激しい攻撃をくぐり抜けて、打ち勝ってください。マルチプレイは本当に楽しいので、ぜひ友達を誘ってプレイして頂けるとうれしいです。
また、シングルも、マルチも、スコア機能を搭載しています。上位ユーザーは限定武器が入手できるスコアチャレンジのイベントも開催する予定なので、ぜひ様々な攻略方法を探って、世界ランキングの上位を狙ってみてください。
ゲームはリリース後も継続的にアップデートしていく予定です。まだまだ、進化していくので、その過程も、ユーザーのみなさまと一緒に進めていければと思っています。
(TEXT by Minoru Hirota)
●関連リンク
・公式サイト
・販売ページ(Oculus Rift)
・販売ページ(Oculus Quest)
・販売ページ(Steam)
・よむネコ