パナソニックやノキアなど、360度動画を使った商用システムまとめ【Inter BEE2016】
商用の360度動画撮影というと、複数台のカメラを用意して撮影するのが一般的だったが、最近ではコンシューマーモデルと同じように、1つのデバイスで撮影できるシステムも登場している。11月16日から幕張メッセで開催された「Inter BEE2016」でも、こういった商用撮影向けの360度カメラを展示しているブースを見かけた。
フォーサーズ系マウントの記事と360flyに続いて、まとめてレポートしていこう。
パナソニック「Project PHAROS」
パナソニックブースで展示されていたのが、同社が開発中の360度カメラの施策モデル「Project PHAROS」。円筒形のカメラ本体には4つのレンズが装備されており、それぞれが4Kでの動画撮影に対応。出力も4系統になっており、リアルタイムでスティッチング処理を行なうベースユニットへと接続されている(関連記事)。
Project PHAROSのカメラ部分。
カメラからの情報はベースユニットへと送られる
Project PHAROSの特徴は処理スピードの速さ。4つのカメラからの映像を360度にスティッチングして出力するまで約0.3秒。出力時の遅延が少ないためリアルタイムでの中継などにピッタリで、試作機ながらなんどか中継イベントでテスト配信に使われているとのこと。
スティッチング後の処理もキレイでつなぎ目やカメラごとの差がなく自然。
すでに数時間の配信にも耐えられるほどの完成度だが、製品化については価格なども含めて未定。発売されれば商用360度中継用機材の本命となりそうだ。
ノキア「OZO」
ケータイメーカーとして知名度の高いノキアが開発した360度カメラ「OZO」。球形の本体に8つのカメラとマイクを装備して、映像だけでなく音も3Dサラウンドで記録できるシステムだ(関連記事)。日本ではノキアが直販するという話しも出ているようだが、Inter BEE2016ではこの販売権を交渉中のエヌジーシーがブースにてデモを行なっていた。
フィンランドのノキアが開発し、すでに海外では発売済みのOZO。
小さな穴が録音用のマイク。
OZOは本体内にバッテリーと500GBのSSDを搭載し、単体で45分までの動画撮影にも対応。撮影した動画は、PCなどに送りスティッチング処理を行なう。エヌジーシーのブースではこれらOZOを使ってリアルタイムでの360度動画配信を行なうシステムをテストしていた。
付きだした部分にバッテリーやSSDを搭載している。
PCには8つのカメラの映像が表示されており、リアルタイムで処理。
ネックとなるのは価格で、海外では4万5000ドルで日本円に換算すると500万円近い。そのためエヌジーシーでは販売だけでなく、レンタルでの提供も計画しているとのこと。高機能な360度カメラが低価格で利用できるようになれば、360度配信のイベントも増えそうだ。
WONDER VISION TECHNO LABORATORY
「Sphere 5.2」
360度カメラではないが、それを映し出す大がかりな投影システム「Sphere 5.2」をWONDER VISION TECHNO LABORATORYのブースでデモを行なっていた。
アミューズメントパークの施設のような「Sphere 5.2」
Sphere 5.2は組み立て式の巨大なプロジェクター装置で、スクリーンが半円状になっているため、没入感のある映像が投影可能。さらに座席遊動や送風、3Dサラウンドといった装置を組み合わせることで、よりリアルな映像体験を実現できるとのこと。
プロジェクターからの映像を湾曲した鏡に反射させて投影する。
装置の組み立てには電動昇降フレームを使っているため、クレーンなど大がかりな準備が必要なく、訓練なしで手軽に設置出来るのがポイント。またパネルを組み合わせることで、上下のみの半円や全体を覆う360度スクリーンなどの構成にも対応できる。
目の前に映像が広がり没入感とリアル度は抜群。
こちらも試作モデルで発売時期や価格は未定だが、市販化されれば、イベント会場やアミューズメントパークで、360度動画を使った体感イベントを多く見かけられるようになりそうだ。
(TEXT by 中山智)
●関連リンク
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