AZKi SOLO LiVE 2025「Departure」レポート みんながいるから、歌い続けられます

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ホロライブ0期生として活躍しているAZKiさんのソロライブ 「AZKi SOLO LiVE 2025 “Departure”」 が、11月19日(水)に横浜のぴあアリーナMMで開催された。AZKi史上最大規模となる初のアリーナ公演は、2018年11月15日(木)に「Virtual Diva AZKi」としてデビューして以来の歩みを辿りながら、新たな「Departure」(出発)へと繋がる物語性も強いライブだった。

2022年3月まで所属していたイノナカミュージック時代の盟友でもある星街すいせいさんもゲストとして参加した、全20曲のワンマンライブをPANORAは、配信映像で取材。ダイジェストでレポートする。なお、SPAWNZAIKOによる配信視聴チケットは、2025年12月19日(金)の20時まで販売。アーカイブ視聴期間は、2025年12月19日(金)の23時59分までとなっている。

【チラ見せ】AZKi SOLO LiVE 2025 “Departure”【ぴあアリーナMM】


初期曲のメドレーも披露!

このライブに先駆けて11月15日(水)に「Re:Start」「Re:Birth」という2枚のEPを同時リリースしたAZKiさん。「Re:Start」には最新曲、「Re:Birth」にはイノナカミュージック時代の楽曲のリアレンジ版が収録されており、その内容からも約1年ぶりのワンマンライブは、過去と現在を繋ぐ架け橋になりそうな予感がしていた。

ライブは不思議な時計の映像からスタート。文字盤には、α、β、γの3つの文字が書かれている。これは、AZKiさんがこれまでに歩んできた世界線(ルート)の名前。2022年7月での活動終了が決まっていた最初の「ルートα」。活動継続を決めて異なる世界線を歩んでいった「ルートβ」。ビクターエンタテインメントでのメジャーデビュー(現在は音楽活動の拠点もホロライブ)から現在まで続く「ルートγ」。そして、それらのルートのマークが書かれた時計を見上げている現在のAZKiさんの後ろ姿が見える。

画面は美しい空に変わり、未来感やバーチャル感を前面に押し出していた1st&2nd衣装や、大胆なイメージチェンジで周囲を驚かせた3rd衣装のAZKiさんが足下だけ登場。最後は、この「Departure」のメインビジュアルに描かれたAZKiさんが大きく映る。魔法の杖のようなスタンドマイクを持ち、ゴージャスな装飾が印象的だ。

オープニング映像が終わると、大歓声の中、ライブのメインビジュアルに描かれた衣装を着たAZKiさんが登場。冒頭から新衣装3Dモデルの初お披露目だ。ステージの床に置かれたマイクを手に取り最初に歌ったのは、「Re:Start」の収録曲「未来カンパネラ」。冒頭がアカペラにアレンジされ、巨大なぴあアリーナにAZKiさんの美しい歌声だけが響いていく。

最新衣装&最新曲で幕を開けた約1年ぶりのワンマンライブ。ところが、1曲目を歌い終えると同時に、衣装が黒基調のカラーリングに変化。しかも、ステージの上部には、「α」の文字が浮かんでいる。その意図が分からないうちにAZKiさんが歌い始めたのは、1stオリジナル曲「Creating world」。その後も、「リアルメランコリー」「フェリシア」「I can’t control myself」「ひかりのまち」と5thシングルまでをメドレーで披露していく。さらに、ジャケットやMVに湊あくあさんを起用したことでも話題となった7th「Fake.Fake.Fake」も歌った。ステージ上の「α」は、その楽曲がどのルートの時代の曲かを示しているのだろう。可愛いポップスから熱いロックまで、AZKiさんの歌声の魅力がギュッと詰まったメドレーだった。

最初のMCから「見渡す限り『開拓者』(AZKiさんのファンネーム)~」と声を上げ、すでに少し涙腺が緩んでいそうなAZKiさん。MCの最後では、「今回のライブなんですが、これまでAZKiが歩んできた軌跡。そして、これから歩んで行く未来。そのすべてをみんなと一緒に1つの物語として繋いでいくようなライブにしたいと思っています」とライブのコンセプトを解説。続いて「from A to Z(Re:arrange ver.)」「without U(Re:arrange ver.)」と、「Re:Birth」の収録曲を続けて披露した。

「without U(Re:arrange ver.)」のラスト、ブラックな最新衣装のAZKiさんの前に、1st衣装のAZKiさんが登場。向かい合った2人のAZKiさんは、手のひらを合わせて一緒に目を閉じる。すると、1st衣装のAZKiさんは、光の粒子となって消えていってしまった。きっと、その思いなどは手のひらから今のAZKiさんに伝わっているのだろう。

そして、ステージ上部の「α」が「β」へと変わると、AZKiさんの姿もチェンジ。カラーライズ衣装となったAZKiさんは、お洒落なラップも印象的な「Intersection」を熱唱。間奏でバンドメンバーを一人一人紹介するときのエア演奏が可愛い。


過去のAZKiたちを見送っていく

シームレスに衣装のカラーチェンジを行いながら、6曲目に「画面の中の君が好き」、7曲目に「オーバーライト」を披露。続くMCでは、観客とのコールアンドレスポンスを行った他、AZKiさんからの質問に観客が答える場面も。配信映像では客席の様子が分からなかったが、「AZKiがデビューした時から観てた人―」という質問に、どのくらいの観客が反応したのか気になった。

MC明けの8曲目と9曲目は、「Re:Birth」の収録曲。現在の通常衣装である4th衣装に着替えたAZKiさんは、「フロンティアローカス(Re:arrange ver.)」「青い夢(Re:arrange ver.)」を続けて披露した。「青い夢(Re:arrange ver.)」では、アリーナ全体が青い光で染まり、静かで神秘的な海のようだ。現地の観客の目には、どのような光景が映っていたのか気になる。

曲のラスト、AZKiさんの左右に、2nd衣装のAZKiさんと、3rd衣装のAZKiさんが登場。3人が手を繋いだ後、まるで天に昇るように2ndと3rdのAZKiさんは浮上。1st衣装のAZKiさんと同じく光となって消えていった。

そして、一人になったAZKiさんがドレス衣装に着替えて歌うのは、AZKiさん自身も作詞・作曲に参加した「afterglow」「canopus」。アリーナを埋めつくす大勢の開拓者の前で、過去のAZKiさんたちとお別れして見送った今のAZKiさんが、自ら綴った言葉を歌い上げていく。ライブであり大切な儀式のようでもある不思議な時間だった。

そんなエモーショナルな空気を「可愛い」でぶち壊してしまうことができるのが、人気配信者でもある現在のAZKiさん。ピンクのゆるふわ衣装姿で登場すると、人気の「ω猫」を可愛く、「にゃんにゃん」と披露。観客席を大歓喜させている最中、ステージ上のルート表記は「γ」へと変わった。続くMCの最後、ライブがすでに後半戦に入っていることを告げるAZKiさん。

「ここからは、もっともっと、みんなの心の奥まで音楽を届けていきたいと思います。だから、安心してね。この物語のエンドロールはまだまだ終わらないから」

再び白い最新衣装に着替えたAZKiさんが13曲目に歌ったのは、γルートの初期、ビクターエンタテインメント所属時にリリースした「エンドロールは終わらない」。一気にクライマックス感が高まる中、活動初期から現在まで変わらないAZKiさんの代表曲「いのち(2024 ver.)」を熱唱。オンライン取材だったこのライブ、個人的に現地で生の歌声を聴きたいと特に強く思ったのは、この曲だった。


すいちゃんとの新曲も披露!

AZKiさんの姿がステージから消え、画面には長い階段が映っている。その階段の前に立ち上り始めるのは、1st衣装のAZKiさんだ。懐かしい映像も流れる中、前へ進みながら、2nd衣装、3rd衣装と変わっていく。そして、4th衣装になったAZKiさんは、目の前に現れた巨大な扉を扉を開き、光の中へと進んでいく。

すると、ステージには、ブラックバージョンの最新衣装に身を包んだAZKiさんと、最初期衣装をモチーフにした3D衣装姿の星街すいせいさんが登場。歌うのは、当然、二人のデュエット曲「The Last Frontier」。しかも、2024年の「hololive 5th fes. Capture the Moment」で披露された「The Last Frontier – 5th fes. Live ver. -」だ。

2021年にオリジナル版が制作された当時、作詞と作曲を担当したAZKiさんは、ルートαを進行中でプロジェクト終了が既定路線。そのため、自分が去った後も、星街さんには活躍し続けて欲しいという思いを歌詞に込めていたのだが、その後、AZKiさんがルートβに移行し、星街さんと共にホロライブで活動を続けていくことに。そして、2024年の「hololive 5th fes. Capture the Moment」で、この曲を披露する際、星街さんの提案で歌詞を改変。二人が共に歩んでいく曲となったのだ。

それ以来となる「The Last Frontier – 5th fes. Live ver. -」の披露に、会場中が感動的な空気に包まれる。さらに、「5th fes」のステージでは、サプライズで星街さんがAZKiさんに向けて書いた手紙を読んだのだが、今回は反撃とばかりにAZKiさんが手紙の返事を朗読。本当に何も知らなかった様子の星街さんは、何度も頷きながら聞いていたが、危うく涙腺が崩壊しそうになったようだ。

星街さんに対するサプライズの後は、観客へのサプライズ。AZKiさんと星街さんのユニット「AS_tar」の新曲が初披露されたのだ。爽やかで新たな始まりを感じさせる曲「Going My Way」は、二人の関係性にも、このライブのコンセプトにもぴったり。ある意味、披露するシチュエーションを選ぶ「The Last Frontier」とは異なり、日常感を感じる曲でもある。最後は、二人でハートを作った後にハグ。こんな場面をこの先、何度も観たいものだ。


新曲 「Farewell」 もサプライズ披露

白い衣装に着替えたAZKiさんが17曲目に歌うのは、「Re:Start」に収録された新曲「白明」。切なくも強い思いを歌った曲は、優しくも力強いAZKiさんの歌声にぴったり。ゆっくりと振られる白いペンライトが美しく、想像以上にライブ映えする曲だと感じた。

次の曲がラストだと告げた後、最後のMCでこのライブに対する思いを語るAZKiさん。これまでの道のりを一緒に歩んで来た開拓者たちに繰り返し感謝を伝えていく。

「でもさ、今日のライブのタイトル、覚えているよね? そう、Departure、出発です。だから、今日が終わりじゃない。ここから、また新しい物語が始まっていきます。これからもみんなと一緒に新しい未来を歩いて行きたいです。みんな、付いてきてくれますか?(歓声)ありがとうございます。最後の曲は、これまで一緒に歩んで来た日々。そして、これからの希望を込めて作りました。今日という出発の日にぴったりな1曲です。それでは、最後の曲、聴いてください。『雨のち晴れ晴れ』

気がつくと奇麗な花が咲き誇っていたステージで、優しく伸びやかな歌声を響かせるAZKiさん。ステージの上にあったルート表記は、花びらのようなマークに変わっていた。最後、観客席に向けて笑顔で手を差し伸べたAZKiさんの姿がステージから消えると、すぐにアンコールを求める声が聞こえて来た。

パンツルックにライブTシャツ姿でステージに戻ってきたAZKiさんが歌うアンコールの1曲目は、「Re:Start」収録曲「オキドキ」。AZKiさんの登場と同時に、天井から大量のバルーンが投下されたかと思うと、終盤には銀テープも発射。配信越しでも会場の盛り上がりが伝わってくる。

そして、最後の曲の前に、「このライブには、もう一つ大事なテーマがありました」と語り始めるAZKiさん

「出発するということは何かにさよならを告げること。何かと勇気を持って決別すること。もちろん、積み上げてきた全てとお別れするわけじゃないです。これまで上手く伝えきれなかった思いとか。思い描いていた形にできなくて、胸の奥にずっとしまっていた葛藤とか。もういなくなってしまえばいいんじゃないかと思った気持ちとか。その心の奥にある痛みとだけは、ちゃんと向き合って。言葉にして、今日、この場所でお別れをしたかったんです。新しい私で、これからもホロライブで、もっとみんなにたくさんのありがとうを伝えていけるように、この思いを歌にすることが大切だと思いました。だから、AZKiが今日、この日のために曲を作ってきました」

曲のタイトルは、英語で「別れ」を意味する「Farewell」

「今日のライブは過去の自分とのお別れ。そして、この曲でその思いに1つの区切りをつけます。でも、それは決して悲しいお別れではありません。ここから先に進むための優しくて力強いお別れ。そして、新しい出発のための歌です。開拓者のみんな、AZKiと未来に進んでくれて、本当にありがとう。今日のこと、絶対に絶対に忘れません」

AZKiさんの人生と魂がこもった歌声に、静かに聴き入ってしまう。おそらく、ぴあアリーナの観客も同じ感覚なのだろう。そして、最後にAZKiさんが語りかける。

「みんなの声と思いが、私をここまで導いてくれました。みんながいるから、私は歌い続けられます。だから、これからも一緒に最高の未来を作っていこうね。今日は本当にありがとうございました」

AZKiさんは、花びらとなってステージから退場。こうして、AZKi史上最大規模のワンマンライブは終幕した。さまざまな思いをぴあアリーナで開放したAZKiさん。きっと、ますます身軽になって、さらに精力的な活動を続けていくことだろう。

© COVER


(TEXT by Daisuke Marumoto

●関連リンク
「AZKi SOLO LiVE 2025 “Departure”」公式サイト
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