
KAMITSUBAKI STUDIOは2月28日、所属するバーチャルシンガー・花譜(かふ)、理芽(りめ)、春猿火(はるさるひ)、ヰ世界情緒(いせかいじょうちょ)、幸祜(ここ)ら5人によるグループ「V.W.P」のライブ「現象Ⅳ-反転運命-」を開催した。
本ライブについては1月21日に2026年3月末から充電期間に入ることを発表しており、その前のラストステージという位置付けになる。会場となったぴあアリーナMMには1万人近い観客が集まり、”集大成”となるパフォーマンスを見届けた。その「魔女」たち5人の結実を、文章に集約をしていこう。
冒頭からテンション上がりっぱなしの選曲
筆者が会場に着いて客席へ移動している間、周囲からはガヤガヤとした騒がしい雰囲気が伝わってきた。穏やかなBGMが流れる中で女性の声が聞こえ、客席がそれに歓声で応える。席に着いてしっかり聞くと、V.W.Pの5人がマイクを通さず生の声で客席に向かって何かシャウトしているではないか。先ほどの喧騒は、それに気づいた観客らが応えていた歓声だったのだ。
開演18時になると、上演中の諸注意をV.W.Pの5人が順番にアナウンスしていく。途中で笑いを挟みながらアナウンスすると、会場の緊張感はほぐれ、ライブ開始へとつながっていった。
そしてオープニングムービーが流れ始める。荒れた大地の上を、決戦の大地へと向かうように歩みを進める5人。これまでのライブ、MV、アニメ作品の映像が背景に流れ、V.W.Pというグループが生み出してきたイメージやメッセージを今ここに集約せんとする決意が見て取れた。
5人それぞれの語りから、バンド隊によるイントロダクションが奏でられる。ギターリフがラウドに始まり、少しずつメロディーとアンサンブルが変化して、最初を飾る楽曲「魔女(真)」へと移っていった。
とはいえ、原曲の「魔女(真)」のようなシンフォニックな響きに加わり、プロトタイプでもある「魔女」とも違う、バンド隊による力強さに満ち溢れたサウンドである。赤、青、薄い黄色、ピンク、白といった5人に合わせたペンライトが客席の中で揺れ、さらにステージからの照明やサーチライトも会場内をカラフルに染めていく。
間を置くことなく2曲目「飛翔」へ。センターポジションは花譜から理芽へと変わり、ミドルテンポのゆるいところからグッとギアを上げてアップテンポとなる曲展開で、逆に終始柔らかい歌声を発していく5人が目を引く。
ゆっくりと手を左右に振って曲を終えると、ハイハットのカウントからダダッダダッダ!というリズムが鳴らされ、観客は即座に「V!W!P!」とレスポンスする。春猿火がセンターに立ち「定命」がスタートした。
タムをメインに使ったドラミングとうねるように低くなっていくベースサウンド、アップテンポなロックサウンド。さきほどの優しげな声から一変して、荒っぽくガナるように歌って観客を煽る5人に引っ張られ、自然とハイ!ハイ!とコールが起こる。
今度はヰ世界情緒がセンターポジションに立ち、他の4人もポジションをそれぞれ変える。イントロのストリングス部分で5人それぞれがキメポーズをパッパッと取っていく。
「みんな~?飛ばしていくぞ~!」と冒頭に可愛らしく観客を煽るヰ世界情緒だが、歌い始めるとかっこよさを増したキリッとした歌声を会場にぶつける。ソリッドなロックサウンドと駆け足なグルーヴに、5人の歌声はそれぞれ刹那的な危うさを滾らせながら響いていく。
5曲目に披露したのは、センターに幸祜を擁した「未遂」だ。先程までのつんのめるようなタテノリから、ヨコノリのダンサブルなグルーヴへ。鍵盤の音色がオシャレな彩りを加えつつ、パワフルなドラミングは先程までの爆発力をそのまま維持する。
本当なら洒落たムードの曲が、少しだけワイルドな響きを持ってズンズンと鳴っていく。「現地で初めて披露する曲です!」とMCしつつ歌う幸祜をはじめ、この曲を大きな会場で表現できている喜びが会場内を満たした。
この日最初のMCに入る。5人それぞれが名乗る挨拶から、笑顔いっぱいで5人は喋り始める。「今日楽しみでしたか?」とレスポンスをもらい、「今日なに食べたーー!?」と振っていく幸祜。途中から理芽が4人に挙手を促し、手を挙げた幸祜と花譜から「配信サイトで視聴してもらうよう」にと話を引き出していく。
ライブ恒例となった”乾杯”コール(メンバーと観客で一緒に水を飲む)をし、客席フロアごとにコール&レスポンスを促したり、ウェーブを起こしてみせる。これらをやりきると「今日はありがとうございました~」とボケてみせ、5人ともに明るい振る舞いで会場をひとしきり盛り上げたのだった。
そんな和やかなムードから一変し、6曲目「愛詩」では5人のボーカルが美しい響きとともに始まり、主題歌であったアニメ「未ル わたしのみらい」の映像がムービーに使われる。
クラシカルなギターリフの響きから始まった「玩具」では、コロコロとグルーヴやリズム感が変わる中でも、確かなボーカルを見せる。続く「欲望」「再会」ではセンターポジションに立った春猿火とヰ世界情緒が、それぞれ力強い歌声で会場を震わせる。

約2年ぶり、5人での「同盟」に熱狂
「V.W.P DISCOTHEQUE」では、激しいトランスサウンドと12基ほどのレーザーライトが会場を妖しく、よりボルテージを上げていく。機械的なテックサウンドの無機質さに続くように、可不・星界・裏命・狐子・羽累の音楽的同位体5人による「V.I.P」(Virtual Isotope Phenomenon)が登場し、総勢10人のメンバーがステージに勢揃いした。
この場面でで歌われたのは「電脳」と「言霊」、そして「機械の声」だ。

「電脳」「言霊」は”multilingual ver.”として原曲とは違い、ビート&ベースを強めたエレクトロニカなサウンドへアレンジされたもの。シンセやギターといったリードを担う楽器がそれほど前に出ておらず、10人のボーカル・ハーモニーの歌声でグッと聞き手を引きつける。
極めつけは「機械の声」だ。冷たく重いビートとAIと人間のやり取りを描いたストーリーを、10人のボーカルリレーで表現していく。やり切れぬ悲しみが余韻・余情として残り、観客たちは静かに、しかし長い拍手でもって10人の歌唱を賞賛した。
ここからメンバー一人ひとりのソロパートへ。春猿火による「距離。」から、理芽「閃光だった」、ヰ世界情緒「BREATHE」、幸祜「シャングリラ」、花譜「ひとえに壊れて」と、2025年にテレビアニメ作品として公開された「神椿市建設中。」のエンディングテーマを歌っていく。曲間はほとんどなく矢継ぎ早に、ミドルテンポ、バラード、ダンサブルなサウンドといった五者五様の楽曲を披露した。





長く関わってきた「神椿市建設中。」の世界観から離れ、再度V.W.Pの世界観へ。ウィスパーボイスを活かした花譜の歌声から始まり、5人はリードとコーラスを合わせ、いますぐにも果ててしまいそうなほどの弱々しさに少しずつ力がこもっていくような、そんなリレーションが交わしていった。
「点灯」を歌い終えると、続くのは鍵盤から始まる「追憶」だ。5人の 優しく柔らかな声が集まる中、木漏れ日の中で花冠を互いの頭の上に乗せ合い、笑い合う5人のムービーが流れる。まるで心を溶かしていくようだ。
続く楽曲は「歌姫」である。ここまでの3曲は2026年にリリースしたばかりの「反転」と同じ曲順でもある。ポップなサウンドでありつつひと癖ある楽曲展開を持つこの楽曲を、5人それぞれ明るく歌っていく。
この日のバンドメンバー6人を一人ひとり紹介した後、ライブはいよいよ佳境へ。「みなさんの声をもっと響かせてください!」と煽ってから始まったのは「同盟」だ。「Virtual Witch Phenomenon!」とメンバー5人と観客がいっせいに合唱し、ダンサブルなビートと5人のパワフルな歌声に心も体も躍らせる。
V.W.Pのライブでは何度も披露されてきた楽曲で、”メンバーの歌声とともに観客も一緒に声をあげる”コール&レスポンスを通して、一体感を強く感じさせる楽曲へと成長してきた楽曲、いうなればV.W.Pとファンとともにあった1曲だ。
しかも幸祜が一時期活動休止だったこともあり、彼女を含めた5人で「同盟」を披露するのは「神椿代々木決戦二〇二四」以来約2年ぶりである。「5人の”同盟”聞きたかったよね!?」と彼女が煽るのも、5人揃っての披露に胸を躍らせていたからにほかならない。
アップテンポな楽曲と一体感ある大声援で一気に観客のボルテージも最高潮へと達し、そのまま本編は終わりを迎えた。爽快感と意外性あふれる終幕に、すぐさまアンコールの歓声が生まれる。「活動休止直前のラストライブがこのまま終わるわけがない!」という期待感と願いを感じずにはいられない。
「ライブ後も私たちの、あなたの物語は続いていきます」
会場がスッと暗転し、アンコールを迎えた。荒れた大地に立つ5人、その背後に5枚のステンドグラスが現れる。ステンドグラスには光が差し込み、5人の姿をくっきりと照らし出すが、全身を映すにはなお暗く見えづらい。
背中、手元、耳元、胸元、腕とさまざまなカットで姿を捉え、最後は5人全員を捉えると、新衣装「姫連雀」がお披露目された。そのままアンコール1曲目「幻界」へ。どことなくシティポップライクなイントロからグルーヴィなサウンドに乗って5人のボーカルもソウルフルだ。

アンコール2曲目は一転してしっとりとした「終点」。ステージ頭上には細長い円柱状の照明がスッと現れ、やわらかな5人の歌声とともに光を優しく灯す。
「アンコールありがとうございます!」と挨拶をし、5人それぞれ新衣装を観客へアピールする。筆者は客席上方から見ていたが、黒い衣装に黄色の差し色がワンポイントとして映え、きらびやかな印象を与えてくれる。
アンコール3曲目は「言葉」。センターに立った理芽が「いっくっぞー!」と明るく煽ると、アップテンポに合わせて5人はガナり声も含めたパワフルな歌唱やラップを見せ、会場を盛り上げていく。会場からは自然と「ハイ!ハイ!」と歓声が起こり、続くロック色の強い「命海」も幸祜を筆頭に5人がグイグイと歌っていく。
アップテンポな2曲を歌うと、花譜がセンターに立ってとある曲を披露する。スクリーンで流れるムービーに「現象」という文字が流れ、これまでのライブタイトルを回収するような1曲だと知る。ダンスビートと言葉遊びや韻踏みが混ざり合った楽曲なのだが、「こんな曲あったかな?」と思う。歌い終えると、なんとこの曲はこの日初披露となる新曲だと明かされた。会場から驚きの声が少々あがっていた。
記念の写真撮影を終え、最後のMCとなる時間を迎える5人。右腕をグッと曲げて前に出して「チャリで来た」とボケる幸祜と笑う4人。水を飲もうとする5人に「お水どう!?」「かんぱーい!」と観客から声がかかり、思わずむせてしまったヰ世界情緒。あらためてV.W.Pの活動休止について幸祜が切り出そうとした瞬間、出だしで噛んでしまった。アンコールになっても、メンバー・観客ともども和やかな空気を感じ取っていた。
改めて記すが、V.W.Pは2026年3月末に充電期間に入ることを発表しており、この日のライブはその前のラストステージとして開催された。
だがこの日のライブには、活動休止にまつわる”悲壮感”が挟まる余地などどこにもなかった。MCをすれば5人の仲睦まじいやり取りがあり、観客へレスポンスを求めいくつかの質問を投げてくれ、何よりライブの中で充実のパフォーマンスの数々を見せてくれた。
ぴあアリーナMMを完全に自分たちの色に染め上げ、スケール感の大きいアーティストへと進化したとハッキリ示したのだった。
ライブ途中に新衣装や新曲をお披露目していること、事前に”今後の活動再開を考えた”上でのINTERVALと謳っていること、そもそも5人それぞれのソロ活動が継続していることも含めれば、今日集まったファンの中で悲壮感を強く持った方は少ない、と思うひともいるだろう。
花譜は最後にこんなMCをしてくれた。
「ライブが終わった後も、まだまだ私たちの、あなたの物語は続いていきます。これからもみんなと一緒に歩いていきたいです」
この6曲目となるアンコール曲、そして活動休止前最後の楽曲に選ばれたのは「共鳴」だった。「My Name is……」と5人が自己紹介して始まるこの曲で、5人は原曲にはなかったコーラスやボーカルの表現を次々と披露し、観客のあいだにある中空を七色の照明が会場を彩っていった。
レッツシングアウトボーイ
レッツシングアウトガール
とりあえずみんなで言ってみよう
ベイビーアイラービュー
愛があれば
私たち最強なんだからこの先も
歌えるように
笑えるように
救えるように
そんなところで本日はおあとがよろしいようで
ラストサビの歌詞は、まさに彼女たちからファンへのメッセージである。ライブのフィナーレ、そして活動の一旦休止を宣言するにふさわしい1曲だった。
筆者は2022年4月に開催された初ワンマンライブ「現象」から、彼女たちのワンマンライブや出演機会を鑑賞し、たびたび執筆させてもらう機会をいただいてきた。
初ワンマンライブでたどたどしいやり取りを見せていた5人が、いまやこれほど笑顔いっぱいに圧倒的パフォーマンスを披露するようになった。その変化を思い出して、胸が熱くならないというのは多少嘘になる。
だからこそ、少々のあいだ5人でのパフォーマンスが見られなくなるのは、少々寂しい。アルバム5枚目にしてキャリアぶっちぎりの名盤「反転」をリリースしたことも、この寂しさをより強くさせている。
5人の魔女が新たなフェーズとともに再始動することを、今のうちに心から願っておこうと思う。

●セットリスト
1.魔女(真)
2.飛翔
3.定命
4.切り札
5.未遂
6.愛詩
7.玩具
8.欲望
9.再会
10.V.W.P DISCOTHEQUE
11.電脳 multilingual ver.
12.言霊 multilingual ver.
13.機械の声
14.距離。
15.閃光だった
16.BREATHE
17.シャングリラ
18.ひとえに壊れて
19.点灯
20.追憶
21.歌姫
22.同盟
*アンコール
23.幻界
24.終点
25.言葉
26.命海
27.現象
28.共鳴
(TEXT by 草野虹、Photo by Sotaro Goto)
●関連リンク
・現象Ⅳ-反転運命-(アーカイブ)
・V.W.P(X)
・V.W.P(YouTube)
・V.W.P(公式サイト)
・KAMITSUBAKI STUDIO
