6/25、ホロスターズ・水無世燐央の卒業3Dライブが担う意味 詳しくない人にこそ見てほしい理由

LINEで送る
Pocket

普段VTuberシーンを追っている人なら、なんらかの形で「ホロスターズで最近いろいろあったらしい」という話を見聞きしているだろう。大まかな流れとしては、ある日突然運営によるホロスターズへの活動サポート縮小が発表され、後日追い打ちをかけるように、所属タレント6名の配信活動終了(実質の卒業)が決定した。

執筆時点で4名がすでに最後の配信を終え、次は6月25日、ホロスターズグループ「UPROAR!!」(アップロー)所属の水無世燐央(みなせりお)さんの番だ。彼はその卒業配信で、3Dライブの開催を予定している。

ホロスターズタレントの主催としては、おそらく最後になるであろう3Dライブ。筆者はこれを、ひとりでも多くの人に見てもらいたい。その背景にはさまざまな文脈があり、企業所属の男性VTuberの歴史においてひとつの区切りとなり得るものだからだ。

本コラムでは、この春界隈を激震させたホロスターズの縮小・卒業騒動を振り返りつつ、燐央さんの卒業3Dライブが担う意味について紹介する。


“縮小”によって失われたもの

事の発端は2026年4月。カバー株式会社はホロスターズの運営体制の変更について発表した。その内容は、「会社主導による各種施策」「自社スタジオを利用したタレント配信」「記念日をはじめとした各種グッズの新規発売」「オリジナル楽曲制作、リリース」……これらが制限・終了されるというもの。

普段ホロスターズを追っていない人は、具体的に何が変わるのかややピンと来ないかもしれない。所属タレントの一人・影山シエンさんのポストがわかりやすい。

視聴者層に馴染み深い言葉に翻訳してあること、そしてその内容のインパクトからこのポストは瞬く間に拡散され、後に3万RPを超えた。

シエンさんは「無くなる」と表記しているが、公式のリリースに「制限」ともある通り、タレントや状況によって条件は異なる模様。たとえば夕刻ロベルさんは、自身の代名詞でもある年末の恒例企画「除夜のケツ」を、今年もスタジオを利用して実施できると発表している。

しかし希望があるのは現状それぐらいで、その他の項目について改善の見通しは立っていない。ホロスターズはこれまでに3回の全体ライブを開催しており、J:COMホール八王子、Zepp DiverCity、豊洲PITと規模を拡大してきていたこともあって、次の開催を期待する声も多かった。しかし会社がこのようなリリースを出し、その後の卒業ラッシュもあって、現体制での全体ライブの可能性は潰えることとなった。

「自社スタジオを利用したタレント配信」もファンのショックが大きい項目のため、少し説明しておきたい。すでに配信活動終了を迎えたタレントを含むホロスターズの12名は全員が3D化を果たしており、誕生日や周年の記念日には、3Dの体を用いた配信ライブや企画番組などをYouTube上で行うのが通例だった。

それらはカバー社が保有するスタジオを利用して制作されていたが、今後はできなくなるというわけだ。なお外部の3Dスタジオの利用は認められるようだが、かけたコストを今後の活動で回収できる見込みがない限り、個人の手出しは現実的ではない。誰かの3Dライブにゲストで呼ばれるなどの例外を除き、タレントが3Dで動く様子は見ることができなくなる。

……はずだった。


水無世燐央が3Dライブを個人制作

先の体制変更、いわゆる「縮小」を受け、ホロスターズからは6名が卒業を決意し、6~7月にかけて各々の最後の配信が行われることとなった。表記上は「配信活動終了」だが、カバーはその扱いについて「『卒業』の一つの形」と説明している

そして6月8日から10日にかけて、4名の卒業配信が続々と行われた。アイドルとしてどうあるべきか人一倍悩んできた花咲(はなさき)みやびさんは、自身のオリジナル曲やホロスターズ全体曲を盛り込んだ歌枠。続く岸堂天真(きしどうてんま)さんは限られた期間にゲーム形式の配信を作り上げ、音楽メインの活動をしてきた律可(りっか)さんはソウルフルな弾き語り枠。軽妙なトークでファンや共演者を湧かせてきたアルランディスさんは、いつも通りの明るい雑談配信。準備期間もそのためのリソースもほとんどない中で、奇しくも、それぞれの活動スタイルを象徴するような卒業を見せてきた。

次は少し期間が空いて、6月25日に燐央さんの3Dライブが控えている。といってもすでに説明した通り、カバーのスタジオを利用することはできない。そう、彼は3Dライブを個人制作しているのである。スタジオの利用料金に加えて、各曲の音源や映像演出にもコストがかかるはず。しかも、ゲストは19名。マネージャーがサポートに入っているようだが、いかに膨大な作業を抱えているか、筆者には想像もつかない。

ホロスターズからは10名が出演する。つまり、すでに卒業配信を終えたタレントも含まれているのだ。「卒業」ではなく「配信活動終了」という形だからこそ、成立する出演。事業縮小が発表されたとき、「もう推しの3Dを見ることはできないかもしれない」「全体ライブはもうないだろう」と嘆く声は多かった。そんな背景もあって、このライブは燐央さんのファンだけでなく、他のホロスターズメンバーのファンも期待を向けている。

縮小発表以来暗い空気が満ちていたファンダムにおいて、燐央さんがこのライブを告知したときには、一筋の光を見たかのようにコメント欄が沸いた。

ただし一点注意しなければならないのは、このライブはあくまで水無世燐央の卒業ライブだということ。ホロスターズタレントの出演が多いとはいえ、箱ライブのような空気感や、縮小・卒業ラッシュを前提としたエモーショナルさを期待するのは避けておいた方が良さそうだ。

本ライブへの臨み方について、特にホロスターズファンの読者は、燐央さんも紹介している下記の切り抜きを参照されたい。あらかじめ「ホロスタ曲は歌わない」「出演するメンバー全員が同時に並び立つタイミングはない」といったこともアナウンスされており、それらの理由も語られている。

とはいえ、視聴者側の素直な感情として「推しの最後の3Dが見られてうれしい」という気持ちが混じるのは致し方ないだろう。むしろそうであるからこそ、主催に対する感謝・応援の気持ちも強まるはずだ。

運営のサポートが失われたなかで、燐央さんの「どうしても3Dライブがしたい!」という熱意によって実現した3Dライブ。当日はあまり気負わず純粋な気持ちでパフォーマンスを楽しみ、彼の門出を彩るために多くの同志が集った、その奇跡を祝おう。


ライブをより楽しむための注目ポイント

ここでは、ホロスターズをあまり知らない読者に向けて、このライブの見どころとなりそうなポイントを紹介したい。

まずホロスターズタレントのうち卒業組の3Dに関しては、おそらくは見納めの機会になる。そもそも、男性VTuberの3Dをあまり見たことがないという人も多いかもしれない。3Dライブでは、大きな体が放つ存在感や躍動感、さらに男子校のようなワイワイガヤガヤとした雰囲気を体感できるはずだ。

ちなみに主役の燐央さんは幽霊VTuberなので、これまでの3D配信では影が描写されていなかった。また飼い猫の「ルカ」さんも3D化しており、ふわふわの愛らしい姿で視聴者に癒しをもたらしてきた。そうした細かい演出やアセットが今回どこまで反映されるかはわからないが、ひとつのポイントとして紹介しておこう。

続いて、燐央さんはVTuber界屈指のハイトーンボイスの持ち主。歌ってみたでは女性ボーカル曲やボカロ曲を原キーで歌いこなし、コラボや全体曲では高音で楽曲にニュアンスを追加してきた。彼が加わったことで、ホロスターズの音楽表現の幅は大きく広がったと言えよう。これまでの3Dライブでは星街すいせいさん、ときのそらさん、常闇トワさんといったホロライブの女性タレントともデュエットを披露し、美しいユニゾンを響かせてきた。

だからこそ今回のゲストとの共演の中では、ハモリや歌詞割りにも注目したい。なおゲストパートは収録、本人は生歌となることが明かされている。生歌パフォーマンスについても、彼は人一倍のこだわりを見せてきた。

そして何より、このスケジュール感でホロスターズENや外部からも、合わせて9名が参加する点。燐央さんが発信している情報ではまだシルエットしか明かされていないが、出演者はおおよそ特定可能だ。

短い準備期間でのオファーに応えた彼らは、決して急繕いの人選ではなく、以前から燐央さんの活動を追っているファンからすれば納得の面々といえる。この活動を通して出会い、関係性を築いてきたゲストと、どんな曲を歌うのだろうか。


男性アイドルVTuberとして重ねてきた出会い、その集大成のライブ

ライブ開催の発表を見たとき、筆者としては実のところ意外ではなく、むしろ「さすが水無世燐央」と思わされた。これだけの規模の3Dライブを1~2ヵ月で制作するバイタリティは、人並み外れた所業とはいえ、彼がしてきた活動の延長たり得る内容ではあるからだ。

というのも燐央さんはこれまで、自身の歌唱力を磨くだけでなく、「誰かと歌うこと」にも価値を見出してきた。その最たる例が、デビュー1周年記念と3周年記念の際に行われた「歌凸」配信である。ホロライブIDのクレイジー・オリーさんの配信を参考にしており、あらかじめゲストに用意してもらった歌唱動画を流しつつリアルタイムで自分も歌うことで、疑似的なデュエットを実現するというもの。ホロスターズやホロライブのタレントはもちろん、にじさんじやにじさんじEN・KR、Neo-Porte、ぶいすぽっ!などからも参加があった。

他にも2024年の誕生日配信で行われた凸待ちでは、突然DECO*27さんが登場。かねてより交流があったことが初めて明かされ、「普段の感じで良いんだよね?」「ホロスタメンバーの次ぐらいに一緒にご飯行ってる」などと親しげに語りながら2人の世界に入ってしまい、視聴者がやや置いてけぼりになるほどだった。またこのとき同じく凸に来た俳優の長江崚行さんは、後に自身が初めて作詞作曲を務めた「カムパネルラ」を燐央さんに提供した。

ホロスターズでも箱内外問わずコラボに積極的なタイプで、他タレントからは「陽キャ」と評されることも多かった憐央さん。人との出会いを大切にしてきた彼だからこそ、今回これだけのゲストが集まったのであろう。

ホロスターズの縮小によって、多くのファンが「もう見られないもの」を意識せざるを得なくなった。その中で行われるこの卒業3Dライブは、失われるものへの惜別だけではなく、彼が紡いできたつながりの集大成でもある。先述した、ホロスターズ全体が抱えている文脈を抜きにしても、リアルタイムで視聴しておく価値がある。


幽霊になってしまった青年が、大切な仲間と出会い、たくさんの人を愛し、愛され、輝く一等星になる──。デビュー時に彼が綴った、夢物語。その結末をぜひ見届けてほしい。


(TEXT by ヒガキユウカ

●関連リンク
水無世燐央(公式サイト)
水無世燐央(X)
水無世燐央(YouTube)
ホロスターズ