
バーチャルタレント事務所のRe:AcTが、2026年7月12日にSUPERNOVA KAWASAKIで「Re:AcT SUMMER FES 2026」を実施した。
設立8周年を迎えたRe:AcT。前半ではRe:AcTオリジナル楽曲を中心にした「CURRENT」、後半は夏にピッタリなアッパーな楽曲をカバー歌唱していく「HEAT UP NIGHT」の2公演が開催された(アーカイブページ)。
筆者は昼公演として行われたライブ「CURRENT」へ足を運び、その熱狂を見守った。8周年を迎えたRe:AcTは、いまどういった立ち位置と足跡を辿ってきたか、それがアリアリと見えてきた。
ムシムシとした暑さがただよう15時半。外の熱気に負けないくらいの観客たちの期待とともに、本公演はスタートした。


ダンスポップからアイドルソングへ
声色で魅せた「CURRENT」前半戦
1曲目は「Translucent」。本公演で3Dビジュアルを持つ11人のシンガーがズラリと並んで歌唱していった。昨年途中から活動をストップしている花鋏キョウを除く、現在活動中のシンガーたちが並び立った。

前半戦となった「CURRENT」は、これまでRe:AcT所属のメンバーが歌ってきた楽曲を現在のメンバーがそれぞれにカバーしていくという内容で、ある意味、事務所の今までを振り返っていく内容となっていた。
さてRe:AcTでは8年の中でさまざまな楽曲をリリースしてきた。そのなかでメインとなる楽曲、およびファンから支持される楽曲といえば
・クラブシンガー然としたダンスポップ
・アイドルを意識したキュートなアイドルソング
・アニソン直系のギター&シンセが噛み合ったアニソン
こういったタイプの楽曲ではないだろうか。
例えば4曲目にレイラ・サマと杏夜くもりが歌唱した「First Blue」や、6曲目に魔光リサと猫乃ユキノが歌唱した「Starry」、稀羽すうと獅子神レオナが歌唱した「トロイメライ(The Herb Shop Remix)」「レイニーデイリーファンキー(KARUT Remix)」と、BPMの違いはあれどダンスサウンドに寄せた楽曲でライブ前半を盛り上げていった。
MCを終えて次に披露されたのは、パッション溢れるアイドル曲だ。
鈴花いのり、音羽奏來、神凪アンナ、不知名イヲ、燈明寺かぐらの5人が「Bye Bye バッドエンド」を元気に歌うと、続いては猫乃ユキノの「♡Sweet Biting Cat♡」を丸餅つきみと音伽ねむがカバーしていった。

この記事を読む読者のかたは、可愛らしい、愛らしい、キュートさを訴えるこういったアイドル曲を歌うとき、声色にどれだけ注意が向くだろうか。
キンとした硬質な声もあれば、高い声色だがドライさを持っているシンガー、発声・発音の影響ですこしねちっこい響きのボイスなどさまざまあるが、この3曲の選曲と人選はピッタリだった。
「Bye Bye バッドエンド」では5人の声色がそれぞれバラバラだったことで、一つフレーズを歌った瞬間にファンの方は「あの子だ!」とすぐに気付けるほど。「♡Sweet Biting Cat♡」を歌った2人はウィスパーな響きを持った2人なので、”くどくない可愛らしさ”という感触でスッと楽しめた人はいたようにみえる。
逆に、「ゆきのん・ふぉー・ゆー♡」「アリか? ナシか? アリアリです?」を歌った月紫アリアと猫乃ユキノの2人は、両者ともキュート感マシマシの声色の持ち主。
2人の可愛らしさマックスな”大甘な歌唱”となっており、こうも聴き心地がガラッと変わり、会場の空気も変わるのかと感じさせられた。しかも両者ともに振り付けをしっかり踊りながら歌唱しており、まさにアイドルらしさあるパフォーマンスが続いたのだった。

初期の楽曲を今のメンバーが歌う意味
九楽ライ、そして「奇跡のプレリュード」
丸餅つきみ、皇ロゼ、音伽ねむの3人がそれぞれ今後の抱負をMCすると、次のパートではこの日集まったファンを驚かせる組み合わせと選曲が待ち受けていた。
ピアノの弾き始めと歌い出しに客席から声がいくつかあがり、ムービーを見てその驚きが波紋とともに一瞬で広がった。なんと九楽ライが2023年にリリースした「白と枷」を、彩雲ののとkototo!が披露したのだ。
九楽ライは2021年11月にRe:AcTからデビューし、月紫アリアと天川はのとアイドルユニット「Melty R.I.P.」を結成。メンバーの一員として、配信・音楽を両輪にさまざまな活動をしていた。そんな九楽は、2026年5月30日に「デザインを仕事にしたい」という理由で、Re:AcTを卒業したばかりだった。
これは多くのケースで見られることだが、その事務所やプロダクションから卒業などで離脱した場合、滅多なことがない限りそのVTuberに関連した楽曲を歌唱することはかなり限定的。はっきりいえば、ほとんど見られない状況だろう(多人数で歌唱した場合は別だ)。
その人との結びつきが非常に濃いソロ楽曲を、他者が急に歌うという構図は、どういった理由かが明確に伝わりづらいであろうことが想定されるし、そもそも「卒業した」という悲しみを思い出してしまうため、ファン心情などを加味して避けられるのだ。
だが九楽は、卒業したのが2ヵ月ほど前だったことにくわえ、8年以上が経過したRe:AcTの歴史でも無視できない存在感を放ってきたタレントである。彼女の活動へのリスペクトや敬意をこめて、この日この瞬間に披露されたのだろうと理解できた。あのファンタジー感ある楽曲がふたたびライブハウスに響くという状況に、公演を見るファンの多くが驚かされたはずだ。

13曲目には白音と音伽がMelty R.I.P.の「ぶちのめし♡MECHA STRESS」を歌ったが、こちらはMelty R.I.P.のファーストシングルである。3人が振りまくファンシーさと可愛らしさを、2人はしっかり表現していた。
稀羽と魔光によるユニットREVERBERATIONが登場し、獅子神レオナと花鋏キョウによる「Dent de lion」をカバー。極めつけは、2期生である夢川と獅子神が登場して「ケセラセラ」「急上昇ガールズ」をDJ風メドレーで歌っていった。

Re:AcTを初期から支えている獅子神と花鋏によるデュオ曲を稀羽と魔光の2人が歌唱するということ。2019年春に行われたプロジェクト「Re:A projecT」から2曲をチョイスしたこと、そして九楽が関わった曲を2曲披露したこと。
先程までのブロックでダンスポップ、アイドルソングと続いてきたなかで、このブロックではRe:AcTの中でもメモリアルな部分が詰まったブロックとなった。
実は、他メンバーとおなじく獅子神レオナは2度登場しており、自身の持ち曲からアッパーな楽曲を披露していた。これら楽曲はシンセ&ギターサウンドがメインになったアニソン色のある2曲であり、彼女のパワフルな歌唱が響き、そしてRe:AcTに刻まれたアニソン色が鮮明に描かれた瞬間でもあった。

本編最後には、Re:AcTとしての新たな全体曲「奇跡のプレリュード」を初披露。夏の季節にピッタリな清涼感や希望を感じさせるポップスに、観客から大きな歓声と拍手が送られた。アンコールには「シグナル」が歌われ、会場には色とりどりのペンライトが波のように揺らぎ、昼公演は美しいクロージングを迎えたのだった。

こうして振り返ると、「CURRENT」という公演は単なる一公演ではなく、Re:AcTという事務所が8年かけて積み重ねてきたものそのものだったように思う。
8年の間にリリースされたさまざまな毛色の楽曲たち、卒業した九楽ライへの敬意がにじんだ選曲、つまりそれは「初期の曲を今の自分たちが歌い継ぐ」という構成となっていた。そこには、在籍・卒業を問わず積み重ねられてきた歴史をなかったことにしない、というRe:AcTなりの誠実さがあったようにみえた。
「奇跡のプレリュード」「シグナル」が響いた最終盤。会場に揺れたペンライトの光は波のようで、8年という時間の先に、Re:AcTが向かう先へと進めていくような、そんな光景にみえたのだった。

●セットリスト
1. Translucent(全員)
2. サマ☆ハピ(夢川かなう・月紫アリア・白音ゆき)
3. 思い出とペトリコール(水瓶ミア・丸餅つきみ)
4. First Blue(杏夜くもり、レイラ・サマ)
5. Brightenin’ Hope(皇ロゼ・水瓶ミア)
6. Starry(猫乃ユキノ・魔光リサ)
7. トロイメライ(The Herb Shop Remix)→レイニーデイリーファンキー(KARUT Remix)(獅子神レオナ・稀羽すう)
8. Bye Bye バッドエンド(Etoile)
9. ♡Sweet Biting Cat♡(丸餅つきみ・音伽ねむ)
10. ゆきのん・ふぉー・ゆー♡→アリか?ナシか?アリアリです♡(猫乃ユキノ・月紫アリア)
11. 白と枷(彩雲のの・kototo!)
12. Dent de lion(魔光リサ・稀羽すう)
13. ぶちのめし♡MECHA STRESS(白音ゆき・音伽ねむ)
14. ケセラセラ→急上昇ガールズ(獅子神レオナ・夢川かなう)
15. 奇跡のプレリュード(全員)
16. シグナル(全員)
(TEXT by 草野虹)




