
VRchatといえば、メタバースの一つ。アバターの姿でオンライン上に集まり、友達と話したり、イベントに参加したり、ゲームを遊んだりと、デジタルの世界でも暮らせるのが魅力だ。2024年のストリーマー・スタンミさん、今年の「超かぐや姫!」などをきっかけに、名前だけ知っているという人もいるはず。
PANORAでは、そのVRChatの文化をリアルに持ち出して、多くの人に知ってもらうために2022年9月から交流イベント「メタのみ」を実施している。
そして4周年となる今月、スピンアウト企画の「スナックメタのみ」をスタート。毎週金曜日の夜にVRChatで引っ張りだこのキャストを「ママ」としてお招きして、接客してもらいながら飲めるというリアルイベントだ(チケットはこちら)。
9月は人気イベントの「サキュバス酒場LILITH」さんとコラボ! せっかくなので、どんな経緯でイベントを始めたのか、代表である「LUMI*るみ*」さんをインタビューした。
毎週が「Join戦争」な大人気イベント
昨今のインターネットでは、誹謗中傷やデマ、情報漏洩など負の側面が取り沙汰されることも多いが、ネットのおかげで人生が充実するようになったという「いい話」ももちろんある。
PANORAの専門分野のひとつであるメタバースでも、そうした話題は多く聞く。VRChat上のバーイベント・サキュバス酒場LILITHを主催しているLUMI*るみ*さんもその一人。
同イベントは、ものすごくざっくりいうとオンラインコンカフェで、ちょっとセクシーなアバターを身に纏ったメンバーがVRchat上のお店に立ち、楽しく接客してくれるという内容だ。
驚くのは、無料で入場可能ということ。しかも5年近く週1回実施してきているのだ。もちろんVRchatなのでリアルの飲食物は提供されないものの、そもそも接客自体が結構大変なことで、それをお金を取らずにずっと続けてきているというのは、なかなか真似できることではない。
今や130人を超えるキャストが所属していて、毎週火曜日になるとVRChat上にインスタンス*1を6つ以上立てて、1インスタンスあたり最大10人ほどのキャストでお客さんをお迎えする(過去最高は15インスタンスだそうだ)。
開店時間は平日23時。そんな遅い時間で、大勢のキャストを揃えているにも関わらず、人気があまりに高すぎて毎回「Join競争」*2が巻き起こり、中に入れない人も大勢いる。そうしたこぼれた人たちは、24時の終了後に実施される恒例のアフターミート&グリートに足を運び、列に並んで少しだけお話しするそうだ。
無料なのに、みんな何がモチベーションで続られるのか。その問いにLUMIさんは、「ごっこ遊びが楽しいから」と返してくれた。
VRChatで人生が充実……というとなんだか広告っぽく感じられるが、嘘でも誇張もしていない話だ。実際に「スナックメタのみ」で接客を受けると、何気ない会話のやりとりが楽しい懐の深さを感じた。
バーテンダーに憧れて、メタバースで叶えた夢
──最初にVRChatを知ったのはいつですか?
LUMI もうだいぶ前になってしまいますが、2019年の夏頃ですね。「Beat Saber」というVRリズムゲームがやりたくて、初代の「HTC VIVE」を買ったんです。もともとゲーミングPCが家にあったので、VRゲームできるじゃんってなって初代のHTC VIVEを買ったんです。
──あの箱がやたらとでかいやつ!
LUMI そうですね、大きいです(笑)。秋葉原の電気屋で買ってきて、それをパソコンにつないでVRの世界に飛び込んだわけです。それで、Steamで色々とVRゲームを遊んでいくうちに、一覧の中に「VRChat」というのがあるのに気づいて興味を持ち、ウェブで検索してアバターを着て、自由に色々なワールドに遊びに行ったり、ユーザー同士で交流できるSNSみたいなゲームだということを知って、始めた感じでした。
──そこからサキュバス酒場LILITHを始めるまではどんなことがありましたか?
LUMI 最初は、元々仲が良かったドール界隈の仲間と交流していたんです。VRChatを使えば、家にいながら夜とかでもずっと話していられるし、なんか修学旅行の夜みたいだねーって。
──リアルの人間関係をそのままVRChatに持ってきたという。
LUMI そうなんです。「こんなことできるよ」って紹介したら始めてくれたり、 「実は私もやってるよ」みたいな。そうしたら毎晩5人ぐらいが集まるようになって、そこから1年ぐらいは特に何か活動するわけでなく、夜にふらっと遊びにきてお話しして、時間になったら「じゃあおやすみー」みたいに帰っていく感じでした。
──自らイベントをやろうと思ったきっかけはあったんですか?
LUMI 元々私、学生の頃に生徒会に所属していたんです。そのやっていた理由が、一生徒として学校生活を送るんじゃなくて、例えば、体育館でみんなが座ってるとしたら、その生徒たちのために廊下を駆け回ってる。なんか運営のスタッフみたいなポジションに憧れていたんです。非日常というか、他の子たちと違うポジションみたいな。 そういうのが元々好きで、ドールの趣味でも会場を借りて撮影会を企画したりとかもやってました。
──元々、そうした運営さん気質だったんですね。
LUMI はい。主催だったり運営するっていうのが好きなんですよね。だから自然な流れで、VRChatの世界にもイベントっていうものがあって、 じゃあ自分でもやってみようっていう風に思い立って一歩踏み込んだというところですね。
──最初に立ち上げたのがサキュバス酒場LILITHだったのですか?
LUMI 実は最初のイベントではなくて、今はなくなってしまった「ロリホイップバー」というイベントにメンバーとして所属して、そこから自分のイベントをふたつ経験した上で、サキュバス酒場LILITHを立ち上げて、今ここまで来ました。5、6年前の話ですね。
──コロナ禍に突入していた時期に始めた感じですかね?
LUMI そうですね。その時期だと思います。 私としてもあの時期は家にいることが多くて、それこそ仕事も在宅になって通勤時間がなくなったので、VRで遊べる時間も増えて精力的に活動してた時期でした。
──サキュバス酒場LILITHというコンセプトはどこから来たのですか?
LUMI 元々は最初はバーをやりたかったんです。「バーテンダーってカッコいいな」という憧れがざっくりあって、それでバーのイベントに所属して、ちょっとお酒をつくってお客様に提供するごっこ遊びみたいなのをやっていたんです。
そこから自分でもバーのお店がやりたいなと思い、でも単純なバーだと差別化ができないと感じて迷ってるときに、たまたま「サキュバス」っていう単語が思い浮かんだのです。VRChatには、性癖が詰まったイベントが色々あるわけですが、サキュバスってコンセプトにしたイベントは多分なかったなと。みんなえっちはお姉さんが好きそうなのに。だから「これは伸びる!」と思って始めました(笑)
──よく見つけましたね!
LUMI たまたま見つけてたんです。その日のうちにお店のアイコンや、当時のTwitterのアカウントをつくって、「サキュバス酒場LILITHというイベントをやります」と、メンバーの募集を始めたんです。
──最初にオープンした日のことを覚えていますか?
LUMI 覚えてますよー。 今とはまた別のワールドで、それも色々なアセットを組み合わせて自分でつくったんです。一発目から、あの、Join競争でしたね。
──最初から!? そんなことあるんですね。
LUMI 当時は、お客様もイベントに飢えていたということもあったのか、立ち上げるイベントがどれもそうでしたね。私自身もすでにイベントをやっていて、イベンターのLUMIさんというイメージが付いていて、「LUMIさんがまた何か始めたぞ」ということで、お客様がすんなりと来てくれました。
──「ごっこ遊び」とはいえ、最初にスタッフにコンセプトを伝えたり、接客を教えたりというのはあったのでしょうか?
LUMI もちろんやりましたよ。 サキュバスたちが、冒険者さんを癒すための魔界と人間界の狭間にある酒場だよ。ただ、サキュバスというコンセプトなんですけど、あまりえっちすぎるのはいけないじゃないですか。
──なるほど!
LUMI なのでやっていい接客、やっちゃダメな接客というので、ここら辺で線引きしてますよというルールは伝えました。あとはバーテンダーさんもやってほしかったので、ワールドのギミックをこんな感じで使ってねとか、お酒作るときのシェーカーはこうやって振るんだよとか、1ヶ月くらいの間、何度かミーティングをやってオープンを迎えたんです。
──そんなに手間も時間もかかってるんですね! しかしお金になるわけでもないのに、モチベーションはどこにあったのでしょうか……?
LUMI うーん、ごっこ遊びが楽しいなって感じですかね。私たちこのVRChatの趣味とは別に普通にお仕事してるじゃないですか。 だからまずお金にならないってところについてはまったく心配がないんです。その中で、家に帰ってきて、ゲームをしているのと同じ感覚で、ごっこ遊びをしながら余暇を過ごしているんです。
──すごい。
LUMI 現実でバーテンダーやりたいなって思っても、次の日にポンってできるものじゃないじゃないですか。 さらにバーテンダーならまだしも、男性が「キャバ嬢になりたい」って思っても、性別の壁に当たってしまう。
──確かに。
LUMI そういう現実じゃ困難なことも、バーチャルの世界ならできてしまうわけです。
──過去に嬉しかったことや、印象的なお客さんはいましたか?
LUMI 特にこれってなるとなかなか難しいかもですが、それなりにこだわってるつもりなので、「わかってるね、その動きー」とやっぱりバーテンダーやっているときに細かいところを褒めてもらると嬉しいですね。
印象的なお客様でいうと、一番大きいのはスタンミさんです。盛り上がり方が桁違いでしたから、どうしても印象に残ります。いい意味でも、逆にJoin競争が加速してしまって今までの常連さんすら入れなくなって困ったという意味でも、サキュバス酒場LILITHの知名度が上がりました。
あとはワールドをリニューアルするためにクラウドファンディングして、250万ほどご支援いただいたことも印象に残っています。やっぱりVRchatのコミュニティーってお金を得るべきではないという考えが一定数あって……。
──すごく難しいところですよね。
LUMI はい。そんな中でも、私のわがままでみなさんに頼らせてもらって、結果として279人の方々に250万円を超える応援をいただけたことは、本当にひとつの励みになりました。
──バーテンの話が出てましたが、そもそもLUMIさんはお酒は好きだったりされますか?
LUMI 大好きです。日本酒も、焼酎も、洋酒も、甘いお酒も好きなので、多分、苦手なお酒はないんじゃないかな?
──まさにバーテンダー向きだ!
LUMI お酒に関するエピソードでいうと、お誕生日に結構お酒をいただく機会が多くて、今、ウィスキーだけで私の自宅に36本あるんですが、そのうち20本は一昨年にいただいたものがまだ残っています。
──一昨年! それは増え続けてますね……。
LUMI 1年で2本ぐらい減るのですが、6本ぐらい増え続けているんです。ウィスキーだけでその数で、他にもリキュールとか、濁り酒とか、清酒とかも、本当にいっぱい置いてあります。
──すごい(笑)。最後になりますが、スナックメタのみにサキュバス酒場LILITHでご出演いただくにあたっての意気込みをおうかがいできますか?
LUMI スナックメタのみは、これまでとはちょっと違う新しい試みで、今週金曜日からはメンバーの子達も参加するわけですが、サキュバス酒場LILITHでは1対1とか、多くても1対3とかで、一度にたくさんのお客様とお話しする機会って意外と少ないんですよね。
だから、メンバーの子たちの初々しい一面が見られるかもしれないですし、リアルなので、より一緒にお酒を飲んでいる感覚が出ると思います。だからバーチャルとリアルをつないで、一緒に乾杯しましょう!

一連のお話を聞いていて、筆者が感じたのは、新世代のUGC(ユーザー生成コンテンツ)だということ。
テキストサイト、フラッシュ、ニコニコ動画、初音ミク──。これやったら面白いよねというピュアなところからスタートして、見てくれる側が喜んでくれるからじゃあもっとつくろうと繰り返されてきたことが、今までテキストや画像、動画というコンテンツだったところ、VRとメタバースで体験にまで広がってきているのだ。
やりたいことがお金にもつながる「好きなことで、生きていく」がうたわれる一方で、
それでも無償で人生を豊かにするためにやりたいことをやる。生き方の選択肢を広げるために、メタバースでサキュバスをロールプレイできる余地があるというのは、とても豊かな社会だと思うのだ。
ぜひVRChat上のサキュバス酒場LILITHはもちろん、スナックメタのみにも遊びに来て、その才能を確かめてみて欲しい。
(TEXT by Minoru Hirota)
●関連リンク
・サキュバス酒場LILITH(公式サイト)
・サキュバス酒場LILITH(X)
・スナックメタのみ(チケット販売ページ)
