VRoidとBOOTHの責任者が3Dクリエイター経済圏を語る 東京ゲームショウ「VRChatブース」レポ【TGS2026】

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9月17日(木)から20日(日)に千葉の幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2026」(以下、TGS2026)。ソーシャルVRプラットフォームVRChatブース(08-N08)では、連日、ステージプログラムを開催。ビジネスデイの初日には、ピクシブ株式会社の社員3人によるトークセッション「熱狂の3Dカルチャーはどう生まれた?BOOTH&ピクシブ3D事業責任者が語る『3Dクリエイター経済圏』の歴史と未来」が実施された。その一部をダイジェストでレポートする。


3Dモデルクリエイターも増やしたVRoid

2026年9月9日(水)、「VRChat」を運営するVRChat株式会社とピクシブ株式会社は、資本業務提携の実施を発表。両社協業の第一弾として、ピクシブが「東京ゲームショウ2026」の「VRChat」ブースをサポートすることに。その一環として、ブース内のステージで3つのトークセッションが開催されたのだ。

初日の「熱狂の3Dカルチャーはどう生まれた? BOOTH&ピクシブ3D事業責任者が語る『3Dクリエイター経済圏』の歴史と未来」に出演したのは、ピクシブが運営する創作物の総合マーケット「BOOTH」の責任者である杉本紳一郎さんと、VRoidや3D創作にまつわる事業を担当する古賀和樹さん。司会は、ピクシブのVRoidプロデューサーの伊藤彰宏さんが担当した。

伊藤さん自身がVRChatのユーザーということで、まずは、会場にいるVRChatのユーザーの数を確認。多くの手が上がったことで、伊藤さんは「じゃあ、ちょっとハイコンテクストな話をしても良いってことですね」と笑ったが、その後も非常に分かりやすく楽しいトークが繰り広げられていった。

トークは全3部に分かれており、第1部は古賀さんが登壇。「『うちの子』爆誕から8年 誰もが3Dキャラを作れる世界を叶えたピクシブの挑戦」というテーマで、伊藤さんによるインタビューが進んでいった。

まずは、古賀さんと伊藤さんからVRoidについて説明。3Dモデル制作アプリ「VRoid Studio」。3Dモデルを投稿、管理できるWebサービス「VRoid Hub」。自作した3Dモデルをさまざまなアプリで利用できるようにする「VRoid SDK」。VRoidは、これらのアプリやサービスから成り立つ「3Dアバター制作・コミュニケーションプラットフォーム」で、2018年にリリース。特に、プリセットを使いながら絵を描くように3Dキャラクターを作れる「VRoid Studio」の登場は、専門的な知識が必要だった3Dキャラクター制作のハードルを大きく引き下げた。

8年間の歴史を年表でも紹介した後は、「今まで外に出してなかった」という様々なデータを紹介。「VRoidアプリ累計ダウンロード数=1550万ダウンロード」「VRoid Hubに投稿されているモデル数=353万体」「VRoidStudioからエクスポートされた数 = 1800万体」などのデータの他、年ごとの変化が分かるグラフもモニターに映されて、3Dモデルを自分で作ったり改変したりして楽しんでいるユーザーが着実に増加していることが確認できた。

VRoidの登場は、自作3DモデルでVRChatなどを楽しむユーザーを増やしただけでなく、VRoidを入口に初心者が専門的な知識を身につけ、他の3Dツールを利用したり、3Dモデラーになっていき、後述するBOOTHの利用者が増えた流れができていったとのこと。3Dモデルのユーザーとクリエイターの両方の増加を促進させたということで、VRoidの「3Dクリエイター経済圏」への影響は、かなり大きかったと分析していた。


BOOTHは、新たな創作物も受け止める汎用性が必要

第2部では、BOOTH責任者の杉本さんが登場。引き続き司会を務める伊藤さんが、「
創作活動に寄り添い続けて13年 3Dアバター市場を支える『BOOTH』のウラ側とその想い」
というテーマでインタビューしていった。ちなみに、杉本さんは、元々はエンジニアとしてピクシブに入社。当時は、ActionScriptでFlashのプログラムを書いていたらしく、pixivのメンテナンス中に遊べたFlashゲームも杉本さんが開発したそうだ。

クリエイターが創作物をファンに届けるための「クリエイターによる創作の総合マーケット」であるBOOTHは、2013年12月にサービスを開始。一般的なECサイトであれば利用者は値段などでショップを選ぶが、BOOTHの場合、ユーザーはそのクリエイターが好きだから、そのショップへ買いに行く。だからこそ、商品価格へ金額を上乗せし、「作ってくれてありがとう」という気持ちをクリエイターへ返せる「BOOST機能」もサービス開始1年目の2014年10月に実装。クリエイターとファンの関係性によって誕生、発展してきたサービスだということが、よく分かる。

BOOTHは、3D専門のサービスではなく、「3Dモデル」カテゴリが追加されたのは、2021年9月。これも、運営側が3Dモデルの取引を促進するために追加したのではなく、ユーザーが付けるタグなどを観察する中で、「何か界隈が存在している」と認識。十分な規模のコミュニティが存在すると判断して、ユーザーの検索利便性向上のためにもカテゴリを追加したそうだ。

セッションの中では、2026年2月に公開された「3Dモデルカテゴリ白書」に収録されている「BOOTH 3Dモデルカテゴリの取扱高推移」も紹介。2019年には3.1億円だった取扱高が、2025年には104億円と大きく成長。特に、2024年から2025年にかけては、58億円から104億円と2倍近い成長を見せており、今まさに急成長中の市場であることがはっきり分かった。

しかし、BOOTH開発・運営としては、特定のジャンルにフォーカスし過ぎないことも大事にしているとのこと。これは、3D事業に限らず、特定ジャンルへ寄せすぎると、次に新しい創作のジャンルが発生した時、その受け皿になれなくなるから。BOOTHは幅広い創作のためのマーケットで、今後生まれてくる新たな創作物も受け止められる汎用性が必要という理念によるものらしい。

また、3D領域では、最初はファンやユーザーだった人が、改変をきっかけにBlenderやUnityなどの使い方を学び、自分でもアクセサリーなどをBOOTHに出すケースも多いという。杉本さんは、こうした「ファンからクリエイターへ」という流れについては、他のジャンルよりも多い印象があると語った。


ピクシブではクリエイターのことを考えるのが当前

第3部は、古賀さんが再びステージに戻ってきての「BOOTH責任者 & ピクシブ3D領域事業責任者 パネルディスカッション」。司会の伊藤さんが二人にさまざまな質問していく。まずは、自身らもVRChatユーザーであるという3人が使用しているアバターを紹介。杉本さんのアバターは、自身のアイコンを3D化したもので、モデリングからVRChatへのアップロードまで、すべて自分で行ったという。さすが元エンジニアだ。

「技術やトレンドが日進月歩で変化していく中、これだけはぶれずに守り続けたいスタンスや美学は?」という質問に、古賀さんは、「『クリエイターファースト』っていうことと、創作活動を楽しくすることが、僕としては一番のミッション」と回答。杉本さんは、古賀さんの発言を受けつつ「ただ、ピクシブではクリエイターさんのことを考えるのが当たり前だから、社内では『クリエイターファースト』という言葉をあまり使わなくても、だいたい話が通じる」と回答。古賀さんも笑顔で頷く。続いて、伊藤さんからの質問に対しては、「BOOTHは、あらゆる創作物を受けとめられるようにしたい」と答えた。

伊藤さんがさらに「クリエイターが楽しく安全に創作活動を続けるため、作品を預かるプラットフォーマーとして何を意識していますか?」と質問を重ねると、杉本さんは、「シンプルに言うと、イビル(evil=悪)にならないこと」と回答。「あとは経営的な観点では『3Dモデルが来てるんだったら、どんどんそこにフォーカスして、そういうサービスにしたら、もっと儲かる』みたいなことを考えてしまうと思うのですが、それをやっちゃうと、BOOTHの『創作物はなんでも扱う』という方針とのトレードオフになる。そこのバランスは意識しています」と続け、ユーザーとして数年前からBOOTHでショップを出しているという伊藤さんは、「そういう人がいてくれるから、僕はこうやって楽しく遊べていたんだと思いました」と嬉しそうに語った。

また、「3Dという表現手段はさらに普及し一般化していくと予想されますが、人々の生活の中で3D創作はどんな存在になっていくと思いますか?」という質問に、古賀さんは「十数年前、僕が学生だった頃、3Dは特別な技術だったり、それ自体が作品だったりしたんですよ。でも、今はみんなが普通に使うコミュニケーションのツールにもなっている。そういう変化は、今後も続いていくと思っています」と回答した。

杉本さんは、「BOOTHとしては、どんな技術が来ても基本的には受け止めていきたいかなと。あとは、バーチャルな世界での生活がすごく大事なものになっている人たちが多いので。そういうところで事業をやりたいと思っている会社さんは、まず、そこで過ごしている人たちの文化をちゃんと学んでもらって。それから、そこにフィットするようなものを出してほしいと、マーケットを見ている側としては思っています。やっぱりそこで生活していらっしゃる皆さんが、『この会社、俺たちのことを分かってるじゃないか』と思ってもらえた方が嬉しいんじゃないかな」と回答。非常に説得力のある言葉だった。

そして、その他にも数々の質問へ回答した二人が、最後に語ったのは、3D領域の世界で何かを作ってみたい人に向けたメッセージ。

古賀「我々も創作のハードルを下げていきたいと思っていて。VRChatさんは、それを使っていく遊び場のようなもの。これからも、よりたくさんの人が、より使いやすいものにしていきたいと思って頑張っていきますので、よろしくお願いします」

杉本「何かを作ることは楽しいので、まず、楽しいなと思って作っちゃう。それから、これをどこに置こうかなって時に、BOOTHのことを思い出してもらえればと。最初に、売れるかどうかを考えるのではなくて、作る楽しみから入ってほしいなと思っています。だから、これから何かをやってみようと思っている人は、とりあえずやってみましょう。」

伊藤さんからも「この会場に来てくださっている方で、今、アイテムやアバターを作っている途中なんだよって方は、ぜひ最後まで完成させて。公開したり、皆さんに遊んでもらったりして。一緒に3D創作の世界を盛り上げていただければと思っております」というメッセージ。こうして、ピクシブ社の社風まで伝わってくるような社員3人のトークセッションは終了した。


(取材・文:丸本大輔)

●関連リンク
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