
2026年9月27日(日)、千葉・幕張メッセにて開催された「X VORDER RUNWAY」。リアルとバーチャル、アーティストとアイドル、そしてカルチャーの垣根を飛び越えてみせる、いままでにないファッションショー&音楽ライブだった。ちなみにこのイベント名の読み方としては「クロスボーダーランウェイ」。BORDERのBをVに入れ替えたネーミングだ。
出演者としては、赤見かるび、詩羽(水曜日のカンパネラ)、KAWAII CLUB、花譜、久慈川りせ、橘ひなの、春麗、ナナヲアカリ、HIMEHINA、星川サラ、星街すいせい──といった豪華な面々が集結。さらに765プロダクションより天海春香、如月千早、星井美希の3名がスペシャルゲストとして名を連ね、スペシャルステージゲストにはB小町、オープニングアクトにはKiepiが参戦を果たした。
このイベント、非常に情報量が多く、短く説明するのが難しい。
生身とバーチャル、それもそれぞれ出自の文脈も異なる歌姫たちが、人気イラストレーター・Mika Pikazo氏のデザインによる一人一人異なる新衣装をまとい、それらの衣装はリアルの布地としても、精緻な3Dモデルとしても顕現され、ランウェイを優雅に歩く。さらにイベントを彩るテーマソングを手がけたのは、数々の大ヒットアニメ・ゲーム音楽を送り出してきた巨星・田中公平氏。あまりにも語るべき要素が詰め込まれた祝祭の模様を、余すところなく記録していきたい。
開幕からHIMEHINAの「V」!
開演に先駆けてオープニングアクトを務めたのはKiepi。SM ENTERTAINMENT JAPAN所属、今年4月1日にデビューしたばかりの期待の新星二人組だ。数々のK-POPシーンを牽引してきた名門事務所のDNAを色濃く感じさせた。
続いてKAWAII CLUB、橘ひなの、赤見かるびによる影ナレが響き渡ると、コール&レスポンスのレクチャーを交えた賑やかな掛け合いに客席からは大きな歓声が返る。開演を待ち切れない観客の熱気が、フロア中に充満していくのが手にとるように分かる瞬間だ。
定刻を迎えると、ステージは開会の挨拶を挟む間もなく、HIMEHINAの放つキラーチューン「V」で電撃的に幕を開けた。オフィシャルMVにおいて事務所の垣根を越えた多数のVTuberが共演を果たしたこの楽曲は、まさに「クロスボーダー」を標榜する本イベントの開幕を飾るにふさわしい。
2人のダイナミックな歌声が響き渡るなか、ランウェイに姿を現したのは星街すいせい。移動式ステージセットに乗ってリアル空間を優雅に進み出るその姿は、バーチャルの存在でありながら、客席へ近づき手を振りポーズを決め、物理的に近くに来たことを感じさせてくれた。普段のクールなブルーとはコントラストを描く、右半身に大胆な紅色を配したアシンメトリーなドレスは、彼女自身も事前配信で絶賛していたものだ。華麗に歩みを進める姿に、会場中が息を呑む。

続いて、天性のアイドルオーラを放つ星川サラが愛らしいキメポーズとともにランウェイをウォーキング。スタイリッシュな身のこなしが驚くほどサマになっている橘ひなの、モデルウォークを決めながらもフリフリと動く愛らしい尻尾でバーチャルならではの存在感を放つ赤見かるびと、個性豊かな面々が次々とランウェイを闊歩していく。最後にHIMEHINAの2人が息の合った足取りでランウェイ歩き、6人がステージに並んだ。開幕早々、最高潮へと叩き込む圧巻のオープニングとなった。





熱気冷めやらぬステージへ、独特の浮遊感を纏って現れたのは花譜。披露されたのは「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」だ。唯一無二の歌声を会場の隅々まで届けながら、丁寧に衣装をアピールしてランウェイを進む。そこにKAWAII CLUBが合流。デビューから1年余り、Live2Dで活動を重ねてきたKAWAII CLUBは、実はこれが記念すべき初の3Dモデルお披露目の瞬間でもあった。




続いて、花譜と星街すいせいの「一世風靡」が始まった。MVのワンシーンをそのまま再現するように、互いのお面を顔にかざし、そして外してみせる演出もあり、歓声が巻き起こる。

MCパートでは、花譜がファッションショーならではということで、「半袖の人ー!」「長袖の人ー!」「袖ない人!」と、ユーモラスなコール&レスポンスで会場を和ませる。「長袖の人」で元気よく手を挙げてみせる星街すいせいも微笑ましい。MCにはHIMEHINAの2人も加わり、VTuberシーンを黎明期から牽引してきた歌姫たちが顔を揃える、感慨深い光景となった。

アイドルと格闘家が織りなす、クロスオーバーの真髄
配信が切り替わり、暗転したステージに鳴り響いたのは、ゲーム『ペルソナ4』のアイコニックなバトル曲の最新アレンジバージョンである「Reach Out To The Truth(First Battle)-Revival-」だ。全編英語詞かつハイスピードなラップが要求される難曲を、英語もできることで知られる星川サラが軽やかに歌い上げていく。
そのグルーヴィなボーカルを背に受け、ランウェイへと歩み出たのは久慈川りせ。洗練されたモデルウォークと観客のハートを射抜くようなウィンクは、まさに百戦錬磨のアイドルそのもの。背景のスクリーンには『ペルソナ4』を象徴するイエローとブラウン管テレビを模したスタイリッシュなモーショングラフィックスが踊りステージとリアル空間をリンクさせていく。


勢いそのままに、2人は「True Story -Revival-」へ。歌唱後のMCでは、真横で体感する“りせちー”の眩しさに、星川自身がすっかりメロメロになってしまう一幕も。オタク心を隠しきれないその素直なリアクションに、会場からも温かい笑いが漏れていた。

スペシャルゲストとして765プロダクションの天海春香、如月千早、星井美希が登場すると、客席のペンライトが一斉に激しく波打つ。響き渡る名曲「GO MY WAY!!」のイントロ。Mika Pikazo氏がデザインした特別な衣装に身を包んだ3人がランウェイを華やかに歩き出すと、途中からは花譜、赤見かるび、橘ひなの、KAWAII CLUBも合流。7人が一列に並びダンスを披露する一幕もあり、界隈の異なるファン達が一体になる多幸感に包まれた。

765プロの面々が送り出された直後、会場のスピーカーから「NEW CHALLENGER!」という野太いアナウンスが響き渡る。客席がどよめくなか、橘ひなのとKAWAII CLUBが歌い始めたのは「恋しさと せつなさと 心強さと 2023」。そこへ悠然とランウェイに姿を現したのは、なんと春麗だ。


格闘家として鍛え上げられた圧倒的な体躯で堂々とランウェイを進み、ステージ中央でキレ味鋭い演武を披露。ランウェイからステージに戻った後も、スピニングバードキックや百裂脚などの必殺技を繰り出したかと思えば、キュートなピースサインでファンサービス。あまりにも、あまりにも存在感が強かった。元々は1994年の映画版『ストリートファイターII MOVIE』の主題歌として誕生し、2022年に『ストリートファイター6』のイメージソングとしてリアレンジされた縁深き名曲にのせて舞う春麗が放つ圧倒的な存在感は、会場中に十分すぎるインパクトを残した。


衝撃の余韻が残るなか、赤見かるびと星街すいせいが巨大な“ポテトカー”に乗ってステージに登場。披露されたのは赤見かるびのオリジナル曲「フライドマリアージュ」だ。ハンバーガーの食レポも頻繁に投稿する赤見かるびと、かつてマクドナルドのポテト揚がり音「ティロリ♪」とのコラボで話題を呼んだ星街すいせい。ポテトに縁のある2人が並んで歌い踊る姿はコミカルで愛らしく、会場の空気を一瞬でハッピーな色へと塗り替えていく。


その後のMCでは、赤見かるび、橘ひなの、KAWAII CLUBの3組が登壇。橘ひなのは春麗との共演オファーを受けた際を振り返り、「最初はわけがわからなかった」と本音をこぼして笑いを誘う。同じくステージを共にしたKAWAII CLUBも「すごいことになった!」と興奮気味に語り合い、余韻を噛み締めていた。
続いて現れたのは、先ほど3Dの姿でお披露目されたKAWAII CLUBと同じデザインのリアル衣装を身にまとった詩羽(水曜日のカンパネラ)。赤見かるびと一緒に歌うのは、水曜日のカンパネラの「シャトーブリアン」だ。赤見かるびが「歌ってみた」を投稿しているお気に入りの楽曲でもある。焼肉の部位が矢継ぎ早に連呼される中毒性の高いリリックに合わせて、フロアからは統制の取れたコールが巻き起こる。もちろん詩羽も生身の肉体で軽やかにランウェイを楽しんでいた。

こだわった演出で見せた「交錯」という精神
息をつく暇もなく、スペシャルステージゲストとしてB小町の有馬かな、ルビー、MEMちょの3人が登場。事前のビジュアルでは明かされていなかった、本イベント限定の新衣装を身にまとったサプライズに、幕張メッセは割れんばかりの歓声に包まれる。披露されたのは彼女たちの代表曲「サインはB -New Arrange Ver.-」。完璧なアイドルステップと眩しい笑顔で、瞬く間に会場を自分たちの色へと染め上げていく。


続く「POP IN 2」では、花道を軽やかに歩く3人の前に突如として真紅のカーテンが降りてくる。幕が上がると、そこにはHIMEHINAと橘ひなのの姿が。マジックのようにシームレスに入れ替わり、再びB小町へとバトンが戻るトリッキーなステージングは、まさにクロスオーバーなランウェイならではの演出だった。


再び訪れた暗転ののち、ステージにやってきたのは、生身のシンガー・ナナヲアカリ。その両脇を星街すいせいと星川サラが固め、披露されたのは彼女の大ヒット曲「ダダダダ天使」だ。ナナヲアカリが纏う衣装も、もちろんMika Pikazo氏が手がけたもの。生身のボーカリストと2人のバーチャルスターがシンクロするステージングは、まさにクロスボーダーの真骨頂といえる。

MCでナナヲアカリが「今日の出演者の中では、ナナヲだけがVの姿を持っていないので」と語り、会場を笑わせる一幕も。

続いて投下されたのは「明日の私に幸あれ」。赤見かるび、久慈川りせ、橘ひなの、花譜が元気いっぱいにジャンプで合流する。TVアニメ『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』のEDテーマとして親しまれ、「眠くなったら寝る お昼過ぎに起きる」というコミカルなフレーズとキュートなダンスでバズを起こしたナンバーだ。数多くのVTuberたちが「歌ってみた」を出した楽曲だけに、ステージ上の面々も弾けるような笑顔で飛び跳ね、会場中が幸せなクラップで包まれていく。

そのまま橘ひなのと久慈川りせの2人がステージに残り、橘ひなののオリジナル曲「大♡大♡大♡大好き」を披露。バックスクリーン一面にドット絵のハートがリズミカルに踊るなか、2人の可憐な歌声がフロアを甘く満たしていく。

続く星川サラと赤見かるびのターンでは、星川サラのオリジナル曲「恋の押し売り」を披露。スクリーンに風船のようなハートが降り積もる演出のなか、間奏では星川が「私たちのハート受け取ってくれたー?」と客席へ愛嬌たっぷりに呼びかける。その言葉に応えるかのように、楽曲のクライマックスでは幕張メッセの天井から本物の風船がフロアへと降り注いだ。映像のハートが物理的な風船となって客席の手へと届く。リアルとバーチャルが物理的に接触を果たした、粋でドラマチックな演出だった。

残すところあと3曲。MCに登場した花譜とHIMEHINAから告げられたカウントダウンに、客席からはお決まりの「ええー!?」が漏れる。しかし、その寂しさを吹き飛ばすように始まったのは「愛包ダンスホール」だ。花譜とHIMEHINAの3人が激しいダンスを繰り広げ、高まる熱量で客席を煽り立てていく。

フロアが過熱するなか、星街すいせいがステージへ。星街とHIMEHINA、さらに詩羽とナナヲアカリも途中から加わって、披露されたのは世界的ヒットナンバー「ビビデバ」だ。「クロスボーダーランウェイ、よくないですかー!」という星街すいせいの呼びかけに対し、観客たちも大きな歓声で応えていた。

フィナーレを飾ったのは、Kiepi・B小町を除く全出演者がランウェイへと集結して、田中公平氏書き下ろしの本イベント公式テーマソング「交錯 OMNIVERSE」。堂々たるブラスサウンドと重層的なメロディにのせて、それぞれのバックボーンが異なる歌姫たちの声が一つに重なり合っていく。歌唱こそしないものの、ステージで悠然とした佇まいを崩さない春麗の圧倒的な存在感もまた、このカオスで美しい祝祭に唯一無二の説得力を与えていた。

ラストサビとともに、幕張メッセの天井から銀テープが放たれる。曲が終わると、出演者たちは一人ひとり手を振ってステージからはけていった。
「次元とかジャンルとか界隈とかも飛び越えてこのステージに立って」
終盤、星街すいせいが実感を込めて語ったその言葉に、この日のすべてが集約されていた。単にリアルとバーチャルのアーティストを同じ空間に並べただけではない。同一のデザイナーが紡ぎ出した衣装をまとい、ランウェイという立体的な移動空間を共有し、境界線を融解させる演出ギミックを追求したからこそ、このイベントならではの興奮が生まれていた。VTuberのライブを見慣れたファンにとっても、生身の音楽フェスを愛するリスナーにとっても、新鮮な体験になったはずだ。
なお、本公演のアーカイブ配信は2026年12月26日(土)23:59まで視聴可能となっている。配信チケットの販売は同日20:00まで。次元の壁が鮮やかに打ち砕かれたこの熱狂を、ぜひその目で確かめてほしい。
●セットリスト
– Opening Act:「Rocket Science」+ トーク/Kiepi
1.V/HIMEHINA (ファッションショー:星街すいせい→星川サラ→橘ひなの→赤見かるび→HIMEHINA)
2.トウキョウ・シャンディ・ランデヴ/花譜・KAWAII CLUB (ファッションショー:花譜→KAWAII CLUB)
3.一世風靡/花譜・星街すいせい
4.Reach Out To The Truth (First Battle) -Revival-/久慈川りせ・星川サラ(ファッションショー:久慈川りせ)
5.True Story -Revival-/久慈川りせ・星川サラ
6.GO MY WAY!!/天海春香・如月千早・星井美希・KAWAII CLUB・赤見かるび・橘ひなの・花譜(ファッションショー:天海春香・如月千早・星井美希)
7.恋しさと せつなさと 心強さと 2023/橘ひなの・KAWAII CLUB (ファッションショー:春麗)
8.フライドマリアージュ/赤見かるび・星街すいせい
9.シャトーブリアン/詩羽・赤見かるび
10.サインはB -New Arrange Ver.-/有馬かな・ルビー・MEMちょ
11.POP IN 2/有馬かな・ルビー・MEMちょ・橘ひなの・HIMEHINA (ファッションショー:有馬かな・ルビー・MEMちょ)
12.ダダダダ天使/ナナヲアカリ・星川サラ・星街すいせい
13. 「明日の私に幸あれ/ナナヲアカリ・赤見かるび・花譜・久慈川りせ・橘ひなの
14.大♡大♡大♡大好き/橘ひなの・久慈川りせ
15.恋の押し売り」 星川サラ・赤見かるび
16. 「愛包ダンスホール」 HIMEHINA・花譜
17. 「ビビデバ」 星街すいせい・詩羽・ナナヲアカリ・HIMEHINA
18. 「交錯 OMNIVERSE」 赤見かるび・天海春香・詩羽・花譜・如月千早・久慈川りせ・橘ひなの・春麗(歌唱なし)・ナナヲアカリ・HIMEHINA・星井美希・星川サラ・星街すいせい
©赤見かるび ©KAF/KTB ©KAWAII CLUB ©ATLUS. ©SEGA. ©ぶいすぽ ©CAPCOM ©ナナヲアカリ ⒸLaRa Inc. ©窪岡俊之 THE IDOLM@STER & ©Bandai Namco Entertainment Inc. ©A x Y/S, OP ©ANYCOLOR, Inc. © Studio STELLAR © COVER ©SM ENTERTAINMENT JAPAN
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