8月24日、ゲーム開発者向け会議CEDEC2021にてPico Technology Japanの西川美優氏が登壇し、スタンドアロン(一体型)VRデバイス「Pico Neo 3 Pro」のVRコンテンツ開発とリリースについて紹介した。
Pico Neo 3 Proは今年6月に中国で発表され、7月に日本での取り扱いも発表された。日本では「煩わしいエンタープライズ契約やSNSアカウントとの連携も不要」との触れ込みで発表され、法人向けに販売している。外部センサーなしの4カ所のトラッキングカメラで6DoFを実現し、両眼4K(3664×1920)の解像度、クアルコム製「SnapDragon XR2」を搭載するなど、性能面も充実。ロケーションVRや法人向けソリューションにおいて、新しい選択肢として浮上しているデバイスだ。
SDKはUnity、Unreal Engine、OpenXR、Unity XR Platform、Android Nativeに対応
Pico Neo 3シリーズでのコンテンツ開発は、ほかのVRデバイスと同じく、主要なゲームエンジンに対応している。開発者向けのドキュメント(英語)やSDKには、開発元のWebサイトからアクセスできる。開発者コミュニティーは基本的に英語での運用だが、日本チームへ日本語への問い合わせも可能とのこと。
Unity向けには「Pico VR SDK」と「Unity XR Platform SDK」の2通りの方法があるが、講演にビデオ出演した「STYLY」の開発元であるPsychic VR LabではUnity XR Platformを採用したという。
よく質問されることとして、「ハンドトラッキングの実装はいつか」「Vulkan対応はいつか」ということがあるという。予定されているロードマップによると、いずれも年内に対応予定だ。
また、同じく良く聞かれることとしてビデオシースルーモードがあるが、こちらはUnity XR Platform上での動作が確認されているという。
中国本土のコンシューマー市場向け「Pico Store」にもコンテンツ配信が可能
Pico SDKによって開発されたVRコンテンツは、中国ではコンシューマー向けに展開されているPico Neo 3(※Proが付かない)のアプリストアに配信できる。
既存タイトルの移植へのサポートも手厚い。ほかのVRデバイス向けに開発されたコンテンツをPicoに移植するためのサポートチーム「Pico Studio」という組織が米国にあり、日本チームを通じて日本からもサポートを受られるとのこと。
日本からは「カウンターファイト」のTRICOL、「STYLY」のPsychic VR Lab、「Last Labyrinth」のあまたなどがPico Storeでコンテンツを配信しているという。VRコンテンツを持つ企業が中国市場へ進出する有力な手段の一つとなりそうだ。
法人登録は不要 ビルドしたAPKをインストールするだけ
特に登録や連絡もなく展示会やロケーションVRなどビジネス利用が可能なPico neo 3 Proには、展示で使う時に便利な、画面の外部出力機能もある。ミラキャストやクロームキャストを使う方法と、Windows PCへキャストする方法の2つが利用可能だ。
また、複数のPico neo 3 Proでの360度動画再生を一括してコントロールするエンタープライズアシスタントも存在する。
Picoエンタープライズアシスタントだけでなく、サードパーティー製の遠隔デバイスマネジメントシステムも利用できる。いずれも教育用途などで活用できそうだ。
PCに接続してSteam VRコンテンツも楽しめる
スタンドアロンデバイスとしてリリースされているPico neo 3 Proだが、実はPCとつないでSteam VRのヘッドセットしても利用できるという。有線・無線双方での接続に対応している。PCと接続するための専用のDisplayPortケーブルは日本では年内発売予定とのこと。
無線接続の場合、同一ネットワーク内には3セットまで共存できる。
法人ニーズを汲み取ったVRデバイスの新しい選択肢として、日本の開発者の間でも存在感を出していく可能性はありそうだ。
(Text: Yuichi Matsushita)
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