メタバース文化エバンジェリスト・バーチャル美少女ねむと、スイスの人類学者・ミラ(リュドミラ・ブレディキナ)は5月31日、レポート「ソーシャルVR国勢調査:韓国(2022)」を無料公開した(公開ページ)。
昨年10月に公開した世界規模でアンケートを行った「ソーシャルVR国勢調査2021」に続く韓国版のレポート。前回は日本・北米・ヨーロッパ以外のデータが少なく、行動比較が難しかったため、今回アジア圏でソーシャルVRユーザーが増えているという韓国を追加調査した。対象は、VRChat、Rec Room、Neos VRなどのソーシャルVRをVRゴーグルを利用して直近1年以内に5回以上使った韓国語話者。回答数は231。
結果としては、人間型アバターが優勢で、女性アバターの比率がやや低いという特徴が出た。ボイスチェンジャーや、男性・女性の両方の声が出せる「両声類」といった音声加工技術の比率が低く、メタバース上で話さない「無言勢」が多いとのこと。サマリーは以下の通り。
●レポート1:ユーザープロファイル
・他地域同様にVRChatが最も利用されるソーシャルVRサービスだった
・年齢は20代の77.1%に次いで10代が14.7%もおり他地域と比べて非常に若い
・物理男性が93.9%と日本(89%)以上に極端に物理男性に偏っている
・総プレイ時間は500時間以上の利用者が半数を割っており他地域と比べやや少なめ
・実名でなく仮名 (キャラクター名) を使うユーザーが97%で日本同様仮名文化が強い
●レポート2:アバター表現
・女性アバターの利用率が62.3%と、日本やヨーロッパほど極端に多くなかった
・逆の性別のアバターを使う理由は「外見が好み」が81%と極端に多く、自己表現やコミュニケーションを理由にしている人は他地域より少なめだった
・アバターの種別は「人間型」が過半数を超えており、日本やヨーロッパでトップの「亜人間」は26%とかなり少なかった
・フルトラの利用率も利用意向も他地域と比べかなり少ない
●レポート3:音声表現
・音声表現については、「ボイチェン」「両声類」など加工音声を使っている人が他地域と比べ少なく、そのかわり「無言勢」が15.6%と比較的多い。
・加工音声を使う理由も地域では圧倒的一位だった「男声を女声に変換するため」がたったの27.3%と少なく、単に「いつもと違った声を出すため」とカジュアルな理由が多い
●レポート4:VR恋愛
・恋愛経験率24.7%、恋人ができた人は21.1%と、他地域と比べて圧倒的に少ない
・恋をする時「相手の物理的な性別は重要でない」75.4%と、日本や北米とほぼ同等
・恋人がいる人のうち「複数の恋人がいる」人が46%と他地域より多かった
●バーチャル美少女ねむ
日本のメタバース文化エバンジェリストにして、世界最古(自称)の個人系VTuber。HTC公式VIVEアンバサダー。VRChat・Neos VR・バーチャルキャスト・cluster等、各種ソーシャルVRのヘビーユーザーでもある。自身の体験とVR国勢調査を元に解説書『メタバース進化論(技術評論社)』を出版。
・Twitter : https://twitter.com/nemchan_nel
●ミラ (リュドミラ・ブレディキナ、Liudmila Bredikhina)
スイス・ジュネーブ大学の人類学者 (修士課程終了)。日本のVTuberやバ美肉などの現象が人間のアイデンティティやコミュニケーションに与える可能性について着目し、様々な研究レポートを発表。「バ美肉」に関する論文でジュネーブ大学のジェンダー分野の学術賞「プリ・ジャンル」を受賞(関連記事)。
・Twitter : https://twitter.com/BredikhinaL
●特別協力:mamadora (엄마뇽)
韓国のソーシャルVRユーザー。VR国勢調査に興味を持ち韓国版の追加実施を提案。韓国ユーザーへのアンケート回答の呼びかけ・データ集計・グラフ作成に協力した。韓国ユーザー向けに韓国語版のレポートも公開した。
・Twitter : https://twitter.com/cy_cla_men
*「韓国語版」レポート:https://arca.live/b/vrshits/48111218