Metaの最新VRヘッドセット「Quest Pro」が日本にやってきました。XRアプリ開発やビジネス利用を想定したデバイスで、エンターテインメントアプリで遊んだり、コンテンツ消費のためのモデルではないとのことですが、日常的にソーシャルVRやVRゲームを楽しんでいる筆者から見たQuest Proとはどういったデバイスなのか、レビューしましょう。
●Quest Pro基本スペック
・プロセッサー:SoC Snapdragon XR2+ Gen1(本体)、Snapdragon 662(コントローラ)
・メモリ:12GB
・ストレージ:256GB
・ディスプレイ解像度:1832×1920ドット(片目あたり)
・ハンドトラッキング:あり
・アイトラッキング・あり
・フェイストラッキング:あり
・IPD調節範囲:55~75mm(無段階)
・重量:722g
・日本での販売価格 22万6800円(1500ドル)
メガネをかけていても脱着が楽なヘッドバンド
Quest Proは、従来のVRヘッドセットにあったディスプレイ部のチルト機構がなく、 ディスプレイ部、ヘッドバンド、バッテリー内蔵リアヘッドパッドにいたるまで基本的に固定式となっています。
でも脱着とてもは楽です。ヘッドバンドは伸縮式のために、頭部へのフィッティングがとても簡単。ディスプレイ部を持って前に引っ張れば簡単に外せます。また写真のようにずらして装着することも可能です。
これは眼前のPCディスプレイでUnityなどの画面を表示させ、エディットしながらときおりQuest ProでVR側の見え方をチェックするといった使い方に適した構造。脱着のストレスを低減するための作り込みだと感じました。
フィッティングは前後にあるヘッドパッドダイヤルで行います。
後ろだけではなく、前のヘッドパッドの位置も調整できるのがポイント。
目とパンケーキレンズの距離を調整できるため、メガネをつけている人でもそうじゃない人でも、ベストなフィッティングが可能です。
ご覧のように目を覆うパーツはありません。脱着のしやすさを実現しているとともに、周囲がわずかに見えるという要因ともなっています。個人的にはさほど気にならなかったものの、没入感を高めたいという方は磁石で装着できる「Meta Quest Proフル遮光ブロッカー」(6,820円)の購入をお勧めします。
視力が上がったかのように感じる(人もいる)IPD設定機構
Quest ProのIPD調節範囲は55~75mm。レンズそのものは自分の手で動かして調整します。
「設定」→「システム」→「表示」→「フィット調整を開始する」を選択すると、頭部へのフィッティングと同時にIPDの調整ガイドも表示されます。どうやらアイトラッキングセンサーを用いているようで、自分のベストなIPDもわかります。
ところで筆者は、Quest 2の3段階式IPDではベストなフォーカスを得ることができませんでした。もともと強い乱視・近視のためメガネも常時つけています。
Quest ProのIPD設定、そして前ヘッドパッドの位置調整機能により視野がもっともクリアになる位置に追い込んでいくと、あらびっくり。いままでどんなVRヘッドセットでも得られなかった明瞭な空間が広がるじゃないですか。視力が上がって乱視も抑えられているかの印象を受けます。
Quest Proのディスプレイ解像度は1832×1920ドットでQuest 2と同じですが、周辺視野もクリアでシャープに見えるパンケーキレンズと、スイートスポットとなるように調整できる機構によって、Quest 2よりも綺麗に見える、と感じるユーザーもいることとなりますね。
音圧が高まった内蔵スピーカー
外側のヘッドバンドには、スピーカーが組み込まれています。開口部は大きく、弾力性のあるカバーも使われています。どうやらドライバーユニットもかなり大型化されている様子。実際に聞こえてくる音もQuest 2と比較して明瞭感があり、同時に低域の量感も増しています。内蔵スピーカーとしてはよい音質だと感じるものです。
また左右のヘッドバンドに1つずつのイヤホン端子も備わっています。 Oculus Quest(初代)と同じように、セパレートタイプのイヤホン・ヘッドホンが使える仕様です。
外部マイクは使えない様子
Quest Proの内蔵マイクは鼻が入る凹みの部分に3つ入っています。詳細な仕様は不明ですが、ビームフォーミングの技術が使われているのでしょうか。捉えた声は音圧が高くダイナミックレンジも広いと感じます。
なお、USB Type-C接続のマイク、DAC経由のマイク、Bluetoothでつなげたヘッドセットのマイクはすべて使えなかったことを記します。
カラーパススルーは低解像だが距離感は極めて正確
Quest Proは自分の周囲をカラー映像で見ることができるカラーパススルー機能が備わっています。この機能があることでMRコンテンツも楽しめます。
同様にカラーパススルーが可能なPICO 4とくらべて見ると、低解像で近接部の歪みが多く、ダイナミックレンジも狭くて眼の前のPCディスプレイや手にしたスマートフォンの文字を読むことができないものでした。
ですが、距離の表現においては極めて正確。MR表示されたグラフィックも含め、触りたいものへの距離を見誤ることは一度もありません。
個人的には、空間を正確に掴み取ることができるQuest Proのカラーパススルーは価値があるものだと判断します。本体をずらして頭の上に置いておき、周囲を自分の目で確認しやすい構造ですし、現状のところ使えるMR対応アプリやコンテンツは限られていますから。
構造も機能もよくできている良質なVRヘッドセット。日本では高いと思うけど
剛性感のある作りや、フロントパネル全周にある冷却用エアダクト、トップバンドがなくてもしっかりとホールドできるヘッドバンドに、重量物であるバッテリーを後部に収めた構造。Quest Proを見ると、コストをかけて作られたVRヘッドセットだということが強く伝わってきます。
日本での販売価格22万6800円はさすがに高いと感じるものの、アメリカ価格の1500ドルで考えると納得がいくもの。ただし、コンテンツやアプリ、サービスを作って、稼ぐ人のための開発機器であるという実感もありますね。 ハンド/アイ/フェイストラッキングやカラーパススルーが可能な、このQuest Proを使った未来を想像できるエンジニアや企画者向けの機材だという実感が。なんだかガンダムみたいな存在だとも思えるんです。販売価格度外視で作り込まれたところも含め。
そして来年に登場するとウワサされるQuest 3=最新型のジムの時代となったとき、Quest Proで開発されたアプリやサービスが整っている時代となるのではないでしょうか。
*ソーシャルVRを試した記事に続く
(TEXT by 武者良太)
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