VR向けのホームシアターアプリケーション「Bigscreen」を2016年から配信しているBigscreen社のCEO、Darshan Shankarが「なぜハードウェアメーカーはもっと小さくて軽く、長時間着用しても負担が少ない高画質のVR HMD(Head Mounted Display)を出さないのか?誰もやらないなら…うちがやる!」と開発を開始した「Bigscreen Beyond」。
既に英語圏向けに出荷が開始されているこの超小型&軽量VRヘッドセット(和製英語:VRゴーグル)を先行入手できたので、手元にあるHTC社のVIVE Pro Eye(2019年発売)と比較しつつレビューしていきたい。
Bigscreen Beyond スペックおさらい
「Bigscreen Beyond」という名前を初めて聞いた読者のために、スペックを簡単におさらいしたい。
- トラッキングシステム:SteamVR(赤外線インサイドアウト)
- 必要機材:Windows搭載ゲーミングPC、SteamVR対応ベースステーション(BS1.0かBS2.0)、SteamVR対応コントローラー
- 本体重量:127g (≒Tundra Tracker 3個弱)
- 本体サイズ:幅14.31cm、高さ5.24cm、厚さ2.4cm(最薄部)
- パネル:マイクロOLED
- レンズ:パンケーキレンズ
- 解像度:5,120 x 2,560 ピクセル
- 視野角あたりのドット数:32PPD
- リフレッシュレート:75Hz / 90Hz
- 視野角:102度
- フェイスクッション:顔の3Dスキャンによるオーダーメイド
- IPD:本体固定の18パターン(55mm~72mm) ※顔の3Dスキャンの計測結果で判定
- 内蔵マイク:あり
- 公式アクセサリー:取り付け型処方レンズ、オーディオストラップなど
注文から到着まで
日本からの注文は公式のオンラインストアのみで受け付けており、2023年12月現在、本体は16万4800円で注文できる。
注文後しばらくすると、「[Action Required] Your 3D face scan – Bigscreen Beyond」というメールが届く。これは快適な装着感を追求するBigscreen Beyondのフェイスクッションが、注文したユーザーの顔にピッタリフィットするよう、オーダーメイドで削りだされる為だ。メール文中に記載したリンクをXR以降のiPhoneかiPad ProのSafariで開くと、顔の3Dスキャンを提出できる。Androidユーザーは友達かApple Storeの店頭などで、対応端末を使わせてもらおう。
開封の儀
顔の3Dデータを提出後、気長に待つと、Beyondが到着する。
リンクボックスとBeyond本体は専用のBeyondケーブル(5m)を使用するが、
本体側(青)、リンクボックス側(オレンジ)、とケーブルの向きに指定があるので注意
なお、セットアップマニュアルはオンラインで公開されているので、出荷待ちの読者はリンク先を確認して予習しておこう。
Bigscreen Beyond セットアップマニュアル(英語)
VIVE Pro EyeとBigscreen Beyondのサイズを比較
Bigscreen Beyondがどれだけ小さいかを伝えるため、筆者の手元にあるVIVE Pro EYE(2019年発売)と比較してみた。
いざ、起動
DP1.4ケーブル1本をグラフィックスカードへ、USB3.0ケーブル2本をPC本体に接続したら、SteamVRを起動。Steamが自動的にBigscreen Beyondのドライバーをインストールしない場合は、セットアップガイドに従って手動でインストールする。
実際にBigscreen Beyondを装着すると、フェイスクッションが顔にピッタリフィットし密着するため、「着け心地が柔らかい水泳ゴーグル」に近い装着感だ。何よりも既存のVRヘッドセットのどれよりも軽く、頭、首、顔面に負担がかからない。またケーブルも細く柔らかいため、取り回しが楽なのも嬉しい。
また、オーダーメイドのフェイスクッションのお陰で全く光が入ってこないため、VR空間に全集中できる。また、ソフトストラップの後頭部には調節用の留め具しかない為、寝転んでのVR体験も捗りそうだ。
Bigscreen Beyondを装着してVRChat、バーチャルキャスト、Resoniteを廻ってみたが、プレイ時の違和感の少なさはもちろんのこと、「プレイ後の疲労感の少なさ」に感動した。筆者はVIVE Pro Eyeを2時間以上装着すると顔の跡と倦怠感が残っていたが、軽量で装着時の違和感が少ないBigscreen Beyondを使うと、スッと現実世界に戻ってこられる。
筆者のPC環境はAMD Ryzen 9 3900XとRTX2080だが、75HzモードではどのVR SNSもカクつくことなく、快適にプレイできた。Indexコントローラーとのペアリングや、トラッキングの安定性にも問題はない。気になる点があるとすれば、FOVだろうか。筆者はVIVE Pro Eyeの110度に慣れていたので、Bigscreen Beyondの102度で生じる「双眼鏡を覗いているような、視界の隅の暗さ」は若干気になった。
なお、今回は長時間プレイ時の本体発熱については未検証となる。ご了承頂きたい。
その他、注意点
Bigscreen Beyondの購入を検討する際に、いくつか注意点がある。
①眼鏡は入らない
フェイスクッションに通常サイズの眼鏡は入らないので、Beyond注文時に「取り付け型処方レンズ」を一緒にオーダーするか、コンタクトレンズの利用が必須となる。
②内蔵スピーカーがない
Beyond本体にマイクは内蔵されているが、スピーカーは内蔵されていない。本体右側のUSB-Cコネクタから、自分のヘッドフォン(ヘッドセット)や、純正のオーディオストラップを接続する必要がある。
SteamVR対応のヘッドセットを買い替えるなら、有力候補
Bigscreen Beyondはヘッドセットのみのパッケージのため、ベースステーション2.0やSteamVR対応コントローラーは自力で調達する必要がある。これからPC VR(SteamVR)デビューする場合は全てのアイテムを揃えるのに若干ハードルが高いが、既にValve IndexやVIVE ProシリーズでSteamVR環境が手元にある場合、ヘッドセット部分の買い替えとしては非常にお勧めできるアイテムだ。今から公式サイトで注文した場合、2024年春以降の出荷となる。
なお、今回到着した製品版では本体や外箱に技適マークを確認できなかった(※Bigscreen Beyondはコントローラーペアリング用の無線ドングルが本体に内蔵されている)。日本から注文済みの読者は、到着を気長に待とう。
(TEXT by にしかわ)
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