10月25日にXでティザーPVを公開し、同時に10月27日にデビュー配信を行うことを告知すると、瞬く間にVTuberファンの大きな注目を集めた謎の新人VTuber結城さくなさん。デビュー配信前には、YouTubeのチャンネル登録者数は51万人を突破し、20時過ぎにオープニング映像が流れ出したときには、同時接続者数が30万人を越えていた。本人も戸惑うほどの注目を集めた大型新人VTuberのデビュー配信「【初配信】はじめまして!結城さくなです! #結城さくな初配信」の模様をレポートする。
30万人以上が見守る中、初配信スタート!
Xで公開されたPVでは、猫耳とメイド服の似合う可愛いビジュアルと共に、「ここは、わたしがみんなのアイドルでいるための場所」「みんなの居場所になれますように」というメッセージを掲載。そして、「ゲームと歌が大好きな女の子」「一流の猫メイドになるため奮闘中」「身長148㎝」「誕生日12月2日」といったプロフィールなどが記されているだけでありながら、なぜか、超大手VTuber事務所の新人クラス、いや、それ以上とも言える大きな注目を集めていた結城さくなさん。
30万人以上が見守る中、オープニング映像とPVが流れた後、パステルカラーのファンシーな部屋に画面が切り替わる。しかし、机の向こうに見えているのは、猫耳とヘッドドレスだけ。どうやら、恥ずかしがり屋のメイドさんらしい。まるで、警戒心全開の猫のように、ひょっこり目から上をだけを覗かせると、何度も激しく瞬きをしながら、ゆっくりと顔を見せていく。
短く笑ったような声と息を飲む音が聞こえた後、軽く「スンスン」という音も。「何、笑ってるの?」「泣いてる?」といったコメントが入り混じる中、結城さんは、初配信の定番コーナースクショタイムのようにいろいろな表情を披露していた。
大きな笑顔を見せ、呼吸も整えた後の最初の一言は、小さく「こんにちは~」。そして、自分でも声が小さかったと思ったのか、元気に2回目の「こんにちは~」を言った後、「はじめまして。こんにちは、こんばんは。この度は、初配信にお集まりいただき、ありがとうございます」と、妙に丁寧な挨拶を始める。本来、新人メイドVTuberが初配信の冒頭に丁寧な言葉遣いで挨拶をするのは、イメージ通りのはずだが、なぜか結城さんに限っては、らしくないなと感じてしまう。
結城さんが話し始めた頃から同接の数はさらに上昇し37万人を突破。小さな声で「ちょっと待って、心臓がバクバクいってる」と絞り出したように話す声からは、緊張感が伝わってきたのだが、一呼吸置いた後、「なんでさ? こんなにさ? 戸惑っているのは、私だけですか? みんな何事ですか?」とリスナーにツッコむように話した後は、少し肩の力が抜けた雰囲気で語りはじめる。
しかし、37万人以上が視聴していることのプレッシャーはやはり大きいのか、「VTuberさんの初配信って、自己紹介したり、タグ決めたり、歌を歌ったり、胃カメラを出したり、いろんなことをやると思うんですけど。私の初配信は、ふつーーうの初配信をさせていただきます。先に言っておくけど、テンプレートというか、順当な初配信をやらせていただきますから、特に期待しないでくださいね。何も出ないですから(笑)」と、リスナーに釘を刺す。初配信の冒頭で、リスナーの高まる期待感を逆に冷まそうとする新人VTuberも珍しく、大物感を感じる。
「結城さくな」という名前は、大人気ヒロインに由来
挨拶の後は、画面を「よくある感じのやーつ」に切り替えて、自己紹介コーナーをスタートするが、まだ緊張感は続いていたようで、「すっごい緊張してる。やばい、手が震えて、配信終了ボタンを押しちゃいそうだ。エイムがおかしくなって」と、まさかの事故終了を予告。しかし、どれだけ緊張していても、なぜか結城さんのエイムが狂うことはない気がするので安心だ。この謎の信頼感も大物オーラによるものなのだろうか。
公開されたプロフィールで驚いたのは、「年齢:10000歳」。10000年も生きている理由などは明かされなかったが、「何か分からないこと、自然の摂理、世界の理などありましたら聞いて下さい。10000年生きているんで、だいたいのことは分かると思います」とのこと。いつか縄文時代の思い出でも語って欲しい。
続いて、SNSで使用されるタグなどを発表。タグやファンマークは、事前に決めていたものを発表する形だったが、ファンネームに関しては、リスナーと一緒に決めたいからと、コメントで案を募ることに。「結城家」「さくな組」「さくなだふぁみりあ」の三つでアンケートを実施し、「さくなだふぁみりあ」に決定。結城さんイチオシの「結城家」は、最下位だった。
これもVTuberの初配信の定番、好きなものの紹介コーナーでは、「本当に大好き。私の中の青春」と「SAO」(ソードアート・オンライン)への愛を熱弁。「結城さくな」という名前は「天から授かった」が、「SAO」のヒロイン結城明日奈(アスナ)に由来する名前でもあることを告白。「(名前を)好きなアニメから取るって、ありがちだよね。オタクあるあるだと思う(笑)」と自虐的に語った。「アスナが好きなの?」という質問をわざわざ拾い、「いや、『キリアス』、キリト(桐ヶ谷和人)とアスナが好き」と真剣な口調で訂正するところからも「SAO」ガチ勢なのは確かだろう。また、ゲーム全般が大好きで、歌うのも好きとのこと。今後の配信では、ゲーム実況や歌枠などが楽しめそうな予感だ。ちなみに、昔はオムライスが大好きだったが、実は、卵が好きだったことに最近気づいたらしい。
「好きなもの」の後は、「苦手なもの」の紹介。「対人コミュニケーション」「運動」「日差しとか日光とか人混み」「長時間家に帰れないこと」が苦手ということから想像するに、とにかく家の中にいることが大好きなタイプのメイドさんのようだ。
初配信直後に初の歌ってみた動画も公開
初配信に向けて届いていた質問に答える「Q&A」では、さまざまな質問に回答。「なんて呼んだらいいですか?」という質問には、「愛のこもった呼び方ならなんでもOK」と答えたため、本人推奨の呼び名などはない模様。今後の活動で、どんな呼び名が定着していくのかも楽しみだ。また、質問に答える形で、活動形態は「完全に個人です」と名言。大きな期待を寄せる30万人近いリスナーに対して、「めっちゃでっかいことはできないかもしれないけど、やりたいことをできるように。ゆったり、まったり、マイペースにやっていきたい」と活動方針を語った。
続いて、「神たち」として紹介されたのは、「可愛く生んでくれた」イラストレーターのがおうさんと、「ぬるぬる動く魔法をかけてくれた」Live2Dデザイナーのrariemonnさん。がおうさんは、VTuberの「ママ」としては、湊あくあさん(2024年8月にホロライブを卒業)、餅月ひまりさん(2023年11月に活動終了を発表)、鳳玲天々さんを担当。2025年1月からはテレビアニメも放送される『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』などのライトノベルのイラストでも人気を集めている。rariemonnさんにいたっては、企業勢から個人勢まで本当に多くのVTuberを担当しており、名前を聞いたことがないVTuberファンはいないだろう。結城さんにとってだけではなく、VTuberファンにとっても、まさに「神たち」だ。嬉しそうに二人の名前を紹介するときの結城さんの拍手が可愛い。
いろいろな表情を見せてくれたスクショタイムを終えて、初配信の最後は、初めての歌ってみた動画「Henceforth」(原曲は、Orangestarさん)を紹介。前を向いて歩みを進めようというボジティブな楽曲で、結城さんは「これから、まったりゆったり自分のペースでありますけれども頑張っていきますので、よろしくお願いします」という思いを込めて選曲したそうだ。
「Henceforth / 結城さくな(Cover)」がプレミア公開される21時に合わせて、きっちり1時間で初配信を終わらせた結城さん。配信開始直後は、初配信らしい緊張感も伝わってきたが、いつの間にか、そんな雰囲気は完全に消え去り、リスナーとのやり取りもすっかり板に付いている。本人は、注目度の大きさに驚き、戸惑ってもいたが、配信終了の時点でも同接24万人以上をキープ。VTuberの初配信としては、教科書通りの内容で、たしかに驚くような出来事はなかったが、気がつけばあっと言う間に楽しい1時間が過ぎていた。企画内容に頼らずとも伝わる魅力に配信者としての資質を感じる。今後の活動も「まったり、ゆったり」と見守りたいと思う新人VTuberだった。
ちなみに配信を終える直前、突然、「一個、言わなきゃいけないことあったのに忘れちゃった! やばいやばい! なんだっけ!」と焦りだした後、「まいっか。思いついたら、言います」と、あっさり思い出すことを放棄。さらに、エンディング映像に切り替えた後、「やべ、あいさつ、決めてなかったわ!」という結城さんの声が聞こえてきて、配信は終了した。新人離れしたしっかり者に見えたが、やはり、ドジっ子メイドさんらしい。
(TEXT by Daisuke Marumoto)
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