Re:AcTフェス「POLAR OPPOSITE」 2つのVTuber事務所が共演した昼公演「HAVOC」をライブレポート

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VTuber事務所・Re:AcTによる音楽フェスティバル「POLAR OPPOSITE」が、2025年5月4日に池袋harevutaiにて開催された。

Re:AcTに所属しているシンガー・獅子神レオナ花鋏キョウMeltyR.I.P.月紫アリア九楽ライ)、REVERBERATION稀羽すう魔光リサ)の6人に加え、RK Musicに所属している焔魔るりKMNZVESPERBELLの3組、それぞれにVTuber活動を続けている桃園りえるファム・ファタル乙夏れいよしか⁂の4人が加わり、総勢16人が集まるライブとなった。

昼公演・夜公演の2公演となった本イベント、今回筆者は昼公演のライブを観覧させてもらい、ライブレポートを執筆することとなった。Re:AcT、RK Music、そして個人活動するシンガーたちが揃い踏みとなったこの日のライブを見てみよう(アーカイブページ)。

Re:AcTによる音楽フェスティバル「POLAR OPPOSITE」は、ゴールデンウィークの真っ只中、賑わう池袋のライブハウス・harevutaiにて開催された。午後の青空広がる快晴のもと、都心のライブハウスに多くの観客が集まった。

会場は観客で満員状態。筆者は関係者エリアで見るために陣取っていたが、観客エリアが狭すぎたせいか、柵で区切られたエリアがググッとずらされていたほどで、想像を超える観客が詰めかけていたのがわかる。

会場にライブ前の注意アナウンスがなされ、場内は暗転、会場の大型モニターでは公演に出演するメンバーをズラッと紹介したところで、昼公演「HAVOC」がスタートした。

トップバッターを務めたのは、Re:AcTの大黒柱的存在である獅子神レオナだ。「オーバードライブ・センセーション」のシンセサウンド&パンキッシュなドラミング、獅子神が明朗な歌声を響かせ、会場を一発目からアゲていこうとしていく。オレンジ色のペンライトが灯り、観客が早くも一体となって盛り上がっていく。

続いて登場したのは花鋏キョウ。青・水色へとペンライトの色が変わり、「intention」の柔らかいワブルベースサウンドときらびやかなシンセサウンドが波のように会場を埋めていく。サウンドが徐々に盛り上がっていくにつれ、花鋏のダンスも徐々に大きくなっていく。まるで音と自分がシンクロしているかのようだ。

Re:AcTの支柱とも言える2人によるパフォーマンスのあとには、その流れでMCがスタートする。2018年9月にデビューした同期であり戦友のコンビがこの日のライブの期待感を話していく。MCでも話していたが、「POLAR OPPOSITE」とは、「完全に正反対のもの」「まったく逆の性質や意見を持つもの」といった語義になる。

実は主に政治的な場で使われることが多く、この言葉をSNSで調べると各国の政治事情にまつわる投稿が引っかかるわけだが、つまるところそれくらいに厳かで強い意味をもった言葉というのが分かるだろう。Re:AcT、RK Music、個人として活動するソロシンガーたちが揃い踏みとなった昼公演では、その言葉がところどころで感じ取れる昼公演だった。

3番手に登場したのはRK Music所属の焔魔るり。自身のソロ楽曲からファーストシングル「ヒノコ」と最新アルバムから「棘宵」を歌い、パワフルなロックサウンドの「ヒノコ」とスローバラードな「棘宵」という2曲のなかで、自身のハイトーンなボーカルを巧みに操りながら、会場をしっかりと掌握しているのはさすがだった。

続いて、エイベックスのクリエイターエージェンシー・muchoo(ムチュー)に所属・活動しているファム・ファタルが登場。イラストレーターとしても活動している彼女だが、この日はヴォーカリストとしての才覚を存分にみせてくれた。

「Niagara」「TOP QUEEN」2曲のトラップ~EDMが混ざったトラック、ステージを右に左に動いてダンスしていく。ラップを組み合わせた力強いボーカルに加え、高身長に赤いロングヘアーというビジュアルがあいまって、遠目から見ていてもある種の”いかつさ”が漂っていた。

敬愛するK-POPやヒップホップの類するようなイメージをしっかり受け継いだその姿は、現状のバーチャルシンガーのなかにはいないタイプのシンガーで、実際にパフォーマンスを終えた直後、彼女を初めてみたであろう観客を中心に会場が少し色めき立っていたのは印象的だった。

トラップ系サウンドとヒップホップ~R&B系フィメールシンガーの激しいサウンドの次は、また別の激しくもラウドなパフォーマンスへ。登場したRK Music所属のVESPERBELLは、LiSAの「Rising Hope」をカバー歌唱で一気に盛り上げ、自身のオリジナル曲「RAMPAGE」も加えて持ち前のアッパーなパフォーマンスで答えてみせた。

じつは数日前の投稿・配信でメンバーのヨミが「歌がスランプ気味」と明かしていて心配していたのだが、この日のパフォーマンスではそんな部分を一切感じさせない歌声で、相方・カスカとともに会場を大いに盛り上げたのだった。

RK Musicの2人組ユニットが登場したなら、Re:AcTからも2人組ユニットを。そんな流れでステージにREVERBERATIONが登場した。稀羽すう・魔光リサの2人はそれぞれ悪魔とあひる(白鳥)をバックグラウンドにしていることもあり、2人とも背中から羽が生えている。そのためどこか”聖なる者”たるムードが漂ってくる。

そんな2人はVaundy「不可幸力」とちゃんみな「ハレンチ」の2曲をカバー。こういったカバー音源には原曲に似すぎないようチープな音色がよく使われているが、「不可幸力」のカバーは2人のボーカルと合わさってよりダウナーな響きとなって観客の心をつかみ、「ハレンチ」は原曲とは違ったジャジーな音源アレンジへと変わっており、彼女ら2人のボーカルやムードをグッと引き立てていた。

とはいえこの2人はオリジナル曲を持っておらず、「このままもう1曲カバーして終わりか……」と思っていたところ、なんと初めてのオリジナル楽曲「higher」を披露してくれた。会場から歓喜の声があがり、早速始まったこの曲、2step~ブレイクビーツに寄ったトラックに2人は交互にボーカルを掛け合う1曲で、ライブハウスでは音の激しさが前に立っていたが、音源レベルではよりオシャレかつクールな1曲に仕上がっているであろうと感じられた。

2人組ボーカルユニットが2組出たところで、RK Music所属のKMNZがここで登場した。彼女らは3人組新体制となってから初となるワンマンライブ「KMNCULTURE」を今年1月に開催し、その後さまざまなライブイベントに出演してきた。その間おそらくさまざまなトライアルを3人のなかで試していったわけだが、この日は「普段のイベントでは見せないKMNZのクールな一面を見せよう」と狙っていたようだ。

この日3人は「LUNATIC BEAST」「META FICTION」を選曲し、バッチリと決めてみせた。特にワンマンライブ以降の他イベントでは歌唱していなかった「LUNATIC BEAST」を久々にここで歌い、3人のボーカル&ラップによるリレーやハーモニーに磨きがかかったことがハッキリと伝わってきた。

「META FICTION」でもそれは同様で、明瞭な発声と歌声があってよりキレイに3人の歌声がハマっていく。よりクールかつ丁寧にあわせて歌っていこうという意識を垣間見た。

次いで花鋏キョウが再度登場し、自身の楽曲「Moment」をさらっと歌うと、「続いては同じRe:AcT所属、夢川かなうちゃんの楽曲をカバーします!」と語り、歌い始めたのは夢川のファーストシングル「アイリス」。まさかの選曲とカバーにRe:AcTファンから絶叫が生まれた。自由にステップを踏みながら歌う花鋏、「みんな!手を上げて!」と声を掛けると、会場の観客はペンライトを頭上高く掲げた。

本日出演していない同じ事務所のメンバーの楽曲をあえてカバーする、そんな粋なやり口に胸が躍ったのだろう、どことなく水色のペンライトがより強く振られているようにみえる。もちろん会場の熱気・一体感もグンッとあがった。

そんな彼女から獅子神へとバトンが渡ると、「Shout and Smash!」へ。ラウドなギターにここぞ!と言わんばかりのパワフルな歌声で終盤を迎えたライブを、また一段と盛り上げていった。

いちどステージから退場すると、獅子神レオナ・花鋏キョウ・魔光リサ・稀羽すうの4人がステージに登場し、本編最後へ向かう直前のMCで笑い合いながら言葉をかわしていた。そこから歌われた本編最後の楽曲は、なんと米津玄師「BOW AND ARROW」。

曲名を告げられたときの会場の反応は「うぇっ!?」という声、これは隠さずに綴るべきだろう。つい先日まで放映されており、ネットメディアなどを通じてかなり高評価を受けていたテレビアニメ「メダリスト」。そのオープニングテーマであり、こちらもまたミュージックビデオや各種さまざまな話題を振りまいたのが「BOW AND ARROW」なのだが、こういったVTuberのライブの場で「歌われる楽曲」として選ばれるとは……観客もそこに驚いていたのだろう。

とはいえ、さすがRe:AcTの誇る歌姫4人だ。ドラムンベース〜ブレイクビーツの細やかなビートがキモになっている原曲にノッて、軽やかに歌っていく。しかも4人がメインボーカルを持ち回りでリレーしていくのだが、いっさい乱れがなくメインボーカルを歌ってみせる。これには大きな拍手が生まれ、4人はステージをあとにしたのだった。

アンコールの声が続くと、モニタースクリーン上のステージが動き、VESPERBELLの2人が再登場した。和やかに言葉を交わし、次回開催されるソロライブをアピールし、「RISE」を披露。ヨミ&カスカのダブルボーカルが前へ前へと張っていくアグレッシヴさでアンコール後の会場を沸き立たせる。KMNZもふたたび登場し「BE NOISY!」へ。グルーヴィな1曲とアップテンポな3人のパフォーマンスに魅了され、サビでは「OH YEAH!BE NOISY!」の合唱も起こり、笑顔で会場に手を降ってステージから去っていった。

RK Music2組のライブが終わると、花鋏と獅子神の2人が三度揃って登場し、10月上旬に2デイズライブが開催することを告知した。会場から喜びの声が大いに上がる中、2人のコラボ楽曲「Cosmic Dancers」を披露し、昼公演を無事にクロージングしてみせたのだった。


「POLAR OPPOSITE」と題されたこの日のライブ、昼公演「HAVOC」では異なるスタンス・志向性をもったシンガーやユニットがズラリと並び、それぞれにライブパフォーマンスを見せてくれた。ソロ/デュオ/トリオ、ロック/エレクトロ、ボーカル/ダンス、さまざまな狙いや武器を持ち寄ってこの日のライブで見せつけていったわけだ。

その内容だけでも「POLAR OPPOSITE(≒まったく逆の性質)」という意味合いが取れるだろうが、実はこの昼公演では、Re:AcTとRK Musicそれぞれのメンバーが同じステージに顔を合わせてMCをしたり、コラボ歌唱をするというモーメントもなかったのだ。

バーチャルシンガーに注力して活動する事務所同士、ここで所属メンバーが仲良く言葉を交わしたら……などと淡い想像を膨らませていたが、現実にはそういったシーンは生まれず。まさに「POLAR OPPOSITE」を感じられた部分だった(もちろんだが、当人同士らは仲良し・わだかまりなど無いはずだ)。

とはいえ、コロナ禍が終わった後のここ数年でVTuber~バーチャルシンガーがより注目を集め、ライブ興行が音楽シーンの中でも活況を迎えているなかで、ここで両事務所が手を取り合って1つのイベントを共演したことはとても重みがある。それはある種、両陣営がここまでの道筋を称え合うような意味合いもあったようにみえる。

Re:AcTとRK Musicそれぞれのファンにとっても、「名前は見たことあるが、実際のライブパフォーマンスを見たことがない」という方もいるはずで、お互いを知る・楽しむという点で有意義なライブだったのは間違いない。

いずれにせよ、こういった対バン形式のようなライブが開催されるというのは面白い。今後なにかの機会があればぜひ見てみたいところだ。

●セットリスト
M01. オーバードライブ・センセーション(獅子神レオナ)
M02. intention(花鋏キョウ)
M03. ヒノコ(焔魔るり)
M04:棘宵(焔魔るり)
M05. Niagara(ファム・ファタル)
M06. TOP QUEEN(ファム・ファタル)
M07. Rising Hope(VESPERBELL)
M08. RAMPAGE(VESPERBELL)
M09. 不可幸力(cover)(REVERBERATION)
M10. ハレンチ(cover)(REVERBERATION)
M11. higher(REVERBERATION )
M12. LUNATIC BEAST(KMNZ)
M13. META FICTION(KMNZ)
M14. Moment(花鋏キョウ)
M15. アイリス(cover)(花鋏キョウ)
M16. Shout and Smash!(獅子神レオナ)
M17. BOW AND ARROW(cover)(魔光リサ、稀羽すう、獅子神レオナ、花鋏キョウ)

*アンコール
M18. RISE(VESPERBELL)
M19. BE NOISY!(KMNZ)
M20. Cosmic Dancers(花鋏キョウ、獅子神レオナ)

(TEXT by 草野虹

 
 
●関連リンク
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