島根県江津市の伝統芸能「石見神楽」をメタバースで楽しめるワールドが5月28日10時より、VRChatにて公開された。また、「島根県江津市石見神楽メタバース化プロジェクト」としてワールド公開のほか、石見神楽をモチーフとしたアバター用衣装をBoothにて無料配布するという大盤振る舞い。二種類の衣装「疫神」(えきしん)、「鐘馗」(しょうき)はワールドに展示されている。
地方自治体のシティプロモーションにおけるメタバース活用として、伝統芸能をVRChat上で楽しめることをフックに、「まずは島根県江津市と、石見神楽を知ってもらいたい」という願いを込めて実施している本プロジェクトの見どころを紹介しよう。
Valve Indexを持ち込んで現地収録した、こだわりの「石見神楽」
この石見神楽メタバース化プロジェクトの見どころは何といっても、実際に目の前で石見神楽の演目を見られること。


ステージ前の「開演」ボタンを押すことで演目が始まり、自由に楽しめるようになっている。舞台と客席に分かれてはいるものの、実演中に舞台の上に上がったりすることも可能。


何度でも楽しめるので、最初は客席側から見て、二度目は自由に動き回って観るといった楽しみ方もできるのは、メタバースならでは。


「石見神楽」は30種以上の演目があり、本ワールドでは中でも人気の高い演目だという「大蛇(おろち)」を楽しむことができる。その名の通り、日本神話のスサノオノミコトによるヤマタノオロチ退治の一幕が神楽になっており、それをメタバースで再現している。

実際に見ると、動きがかなりなめらかであることがわかるが、それもそのはず。これは、制作スタッフがフルトラッキングできるVR機器を持ち込んで現地に行き、実際に石見神楽を受け継ぐ「石見神楽波子(はし)社中」の方々の動きをVRChat上で収録したデータをもとにメタバース版石見神楽を制作したという。使用機材はValve Indexなので指先の動きも良く取れているとのことだが、映像作品やゲーム等の制作で用いられるような専門スタジオや大がかりな機材を使わなくても、ここまで再現できるのかというのは驚きだ。
● ワールド
・島根県江津市 石見神楽『大蛇』ワールド:https://vrchat.com/home/launch?worldId=wrld_d12a850f-ed22-4e44-a759-99f0c0df8c76
百貨店が手掛けたアバター用衣装にも注目


大丸・松坂屋が手掛けたアバター用衣装「疫神」、「鐘馗」は、なんと無料。 これまでも百貨店らしいハイクオリティ、高級路線のアバターを販売してきたチームなだけに、細かいこだわりが見られる。
「疫神」と「鐘馗」はそれぞれ男性アバター用、女性アバター用の衣装。基本的には大丸・松坂屋のアバターの対応衣装となっているが、狛乃やしなの等、人気のアバターにも対応している。
慣れている方ならアバターが対応していなくても着る事は可能。目を引く事は間違いないので、ぜひ
●アバター用衣装
・「疫神」(えきしん):https://dm-avatar.booth.pm/items/6925287
・「鐘馗」(しょうき):https://dm-avatar.booth.pm/items/6924867
6月1日まで、大阪万博会場でもお披露目中
この、VRChatのワールドとアバター衣装からなるプロジェクトは、6月1日まで大阪万博で開催されている「大阪・関西万博 地方創生SDGsフェス」に出展。会場では実際に使用されている石見神楽の本物の衣装も展示され、メタバース上のものと実際のものを比べることもできるという。
担当者に伺ったところ、万博会場での地方創生イベント出展も踏まえて、このプロジェクトをきっかけにまず江津市と石見神楽を知ってもらう事が大事とのこと。つまり、本来であれば現地に行かないと体験できない伝統芸能そのものをメタバース上で再現することで、その体験を観光プロモーションとしているという事だ。
遊びに行ってもショーのように楽しいものをVRChat上に作るという、メタバースと地方創生・観光プロモーションにつながる事例としておもしろい一手かもしれない。
(TEXT by ササニシキ)