
大丸東京店で7月16日、フリーローム型XRホラーアトラクション「迷界デパート ~終わらない記憶が彷徨う、無限の百貨店迷宮~」が始まった。
内容は「実際の百貨店で、百貨店の閉店後を再現したバーチャル空間を歩いて体験する」という、大丸松坂屋ならではのもの。かねてよりメタバース上での活動を積極的に行なってきた大丸松坂屋百貨店が送るロケーションベースのフリーローム型XRコンテンツとして、百貨店だからこその内容になっているところに期待が集まるところだ。
共同で企画・開発に携わったのは技術面で日本XRセンター、演出面でホラー専門会社の闇という制作体制も期待感があるのではないだろうか。
今回、15日に体験会に参加したが、まず感じたのは、体験時間は準備も含めて15分程度で、場所は東京駅直結の百貨店の11階というロケーションという「お手軽さ」。夏休みのお出かけ先や、新幹線に乗る前後、もしくは日常的なランチの合間にサクッと体験できる。これから暑さも本格化する中で、涼しいデパートでホラー体験できるというのは、百貨店の取り組みとして、今後も楽しそうなことが起きることを期待できるジャンルかもしれないと感じた。
「閉店後の百貨店」に迷い込むフリーローミング型XRホラー


物語は、「深夜の従業員エレベーターに乗ると異世界に取り込まれてしまう」という都市伝説を調査するために、懐中電灯を片手に、エレベーターに乗り込むところから始まる。


しかし、乗り込んですぐに空間が歪み、存在しないはずのフロアに到着。この後、エレベーターの向こう側には不気味な売り場が広がり、暗闇からマネキンが迫るなど、約10分間のホラー体験を楽しめるというもの。ここから先は、自分の目で確かめて見てほしい。


懐中電灯を持って暗い百貨店を歩いて進むため、コントローラーを持って歩くものの、ボタン操作自体はない。基本的にはナレーションに沿って決められた範囲を歩いて回るだけなのは、フリーローム型XRコンテンツの特徴だ。
なお、現実側の壁をVR上に表すためのガーディアンの表示や、同時にその場にいるプレイヤーの姿が見えることで衝突を避けるようになっているが、体験当日は人数が多かったからか、ガーディアンが表示されるタイミングが遅く、ぶつかってしまうこともあった。
エリアは比較的狭いものの、最大4人1組が一つのエリア内でプレイするようにできている。このため、基本的には友人や家族で体験する場合が多いと思われるので、声を掛け合ったりして気をつけよう。
「閉店後の百貨店は怖い」社員の発想から始まった企画

企画の出発点は、社員から出た「閉店後の誰もいない百貨店は怖い」という発想だったと語るのは、大丸松坂屋百貨店・林氏。約1年前、上野松坂屋の閉店後の売り場を使い、関係者向けの試作体験を実施したという。
参加者からは良い反応が得られた一方、閉店後の実際の店舗で多数の来場者を受け入れることには運営上の制約があった。このため今回は、営業時間中の催事場に、XRで閉店後の百貨店を再現することにしたという。

技術面では、各地にオリジナルのフリーローム型コンテンツを展開している日本XRセンターが参加。
日本XRセンター・小林氏によれば、今回のシステムはルーター1台、PC1台、4台のヘッドセットという構成で実施しているという。
単体で動くVRヘッドセットの普及により、歩くだけではなく、お互いの位置がアバターとして見え、自分の足で歩き回るフリーローム型のVRコンテンツを提供できるようになったことと、コロナ禍が明けてから、ロケーションエンターテインメントの需要が高まったことが、今回の企画につながっていると語った。

シナリオと演出を担当したのは、ホラーに特化した制作会社の「闇」。同社はイベント、映像、ゲームなどでホラー作品を手がけている。今回の企画では演出部分とシナリオ部分を担当したという。
内山氏は、普通は入ることのできない「深夜の百貨店」という設定自体に非日常性があるといい、自分の足で歩き回れるXRを組み合わせ、映像を見るだけではない恐怖体験として構成したと語った。
百貨店はLBEの新たなロケーションになるか

「なぜ大丸松坂屋がLBEコンテンツを実施するのか?」という話題になると、林氏は「百貨店は明治時代から呉服屋として始まった長く続く歴史ある場所で、非日常の体験、特にエンターテインメントを体験する場所として、昔から役割を果たしてきました」と言う。その中で社員による「閉店後の百貨店は怖い」という言葉から始まり、「百貨店のフロアの中でVRゴーグルを装着し、非日常の体験を楽しんでいただくという趣旨が、百貨店の歴史の中で紡がれてきた感動体験を皆さまに提供するという点で、今回の企画につながったと考えています」と語った。
今回、技術面で参画している日本XRセンターの小林氏は、世界でのトレンドを踏まえ「天気の良い日は外へ行きたいけれど、暑すぎて子どもを長く遊ばせ続けられない。モールなどの、空調が効いた屋内にアトラクションがあるという形がこれから増えていくと思います」と語る。
これは例年の酷暑に悩まされる日本でも同様のことが言えるはず。取材当日も最高気温34.7度を記録し、7月上旬ごろまでは過ごしやすい気候が続いていた中で、久々に夏本番の暑さが感じられた日でもあった。今後もこの気候が続くとなると、屋外にはあまりいたくないというのは多くの人が感じることだろう。
実際にPANORAでもロケーションベースのXRコンテンツの取材が増えており、夏場の屋内施設型アトラクションとしてXR技術への注目が高まってことは肌身に染みている。
それだけに、アクセス面が抜群で買い物やお出かけの行き先である「百貨店」は、そのロケーションとしてはかなりいいと感じた。
●迷界デパート ~終わらない記憶が彷徨う、無限の百貨店迷宮~
・開催期間:7月16日(木)〜8月11日(火・祝)
・営業時間:10~20時(最終入館19時45分)
・チケット料金:2000円(税込)
・所要時間:約15分(体験:約10分+準備:約5分)
・定員:1グループ最大4名まで
・会場:大丸東京店 11階 催事場
・チケット販売:https://l-tike.com/event/mevent/?mid=787958
(TEXT by ササニシキ)
