Ex.6 【後編】アニメとVTuberの6つの接点 ~主題歌・声優・原作、そして作品のなかのVTuber~【Pop Up Virtual Music】

前編では、変身願望や転生願望、キャラクターへの愛情がVTuberの源流にあること、そしてVTuberが「架空」ではなく「実質上」のバーチャルを選んだことを見てきた。

後編では視点を現在に移し、2026年のアニメとVTuberがどのような接点で関係を築いているのかを整理していく。主題歌、声優、原作、そして作品のなかに登場するVTuberまで、その関わり方は想像以上に多彩である。

さて、後編はアニメとVTuberについて、より具体的な視点から触れてみようと思う。

2026年現在、アニメとVTuberがどのような接点・角度で関係を築いているか、その部分についてだ。

アニメとVTuber、その関わり方は複雑だ。

① VTuberがアニメ主題歌を歌う
② VTuberがアニメ作品のPRアンバサダーとして任を全うする
③ アニメ作品が作品中で「VTuber」を取り扱う
④ アニメ作品の声優にVTuberが出演する
⑤ VTuberが描いた作品がアニメ作品化・放映される
⑥ VTuber本人が世界観を伴ってアニメーション作品化する

より技術的・人的な話をすれば、アニメ作品で腕利きと言われるアニメーターをMVに起用したり、大きなヒットを生み出したアニメ作品のキャラクターデザインを手掛けた人物や、原作を手掛けたイラストレーターや漫画家がVTuberのビジュアルを手掛けたりするケースも、この中に入ってくるだろう。

ご存じの方が多いと思うが、この6つは実際に行われている。

①に関しては枚挙にいとまがない。星街すいせい、Mori Calliope、Nornis、樋口楓、緋月ユイといった面々がアニメ作品の主題歌を歌っている。

⑥に関しても、KAMITSUBAKI STUDIOが花譜、理芽、ヰ世界情緒、春猿火、幸祜の5人をメインに据え、以前より同社がゲーム作品などを通じて描いてきた世界観をベースに、TVアニメ『神椿市建設中。』を放映した。この主題歌はもちろんこの5人がV.W.Pとして歌唱した。


機動戦士Gundam GQuuuuuuX エンディングテーマ
異世界スーサイド スクワッド ED
TVアニメ「神椿市建設中。」12話エンディングテーマ  V.W.P「魔女(真) sinka ver 」

④のVTuberのアニメ作品出演も、近年では見られつつある形である。
『THE RIBBON HERO』に月ノ美兎、でびでび・でびる、ルンルンが出演したり、『邪神ちゃんドロップキックX』に朝ノ瑠璃が主演キャラを演じたりと、まだまだ数は少ないながらも選ばれる面々が増えている。VTuber黎明期には「自分自身(本人)」役として出演する形がみられたが、いまは演技者として認められる形での出演となっている。

②のVTuberがアニメ作品のPRを務めるというのは、①と④との関係が大きい。出演・歌唱を担当したことを受けて、その作品をビシッと自分のファンやリスナーに周知させるのだ。

アニメと関係の深い音楽レーベルに所属しているのであれば、関係するアニメ作品を配信で同時視聴するというパターンもある。2026年において、VTuberの声優起用・主題歌起用はまだまだ珍しい出来事であるからこそ、その貴重性・レア感を活かそうという意味合いが強い。

TVアニメ『勇者パーティを追い出された器用貧乏』オープニングテーマを担当した常闇が同作品を同時視聴した

⑤のVTuberが描いた作品がアニメ作品化・放映されるというのは、いまのところたった1人しかいない極めてレアなケースではあるが、VTuberとアニメの関係として新境地を作ったケースとして取り上げておきたい。

にじさんじに所属する来栖夏芽が原作を務めるライトノベル『人外教室の人間嫌い教師』が、2026年1月にアニメ作品化・放映されたのだ。

原作者である来栖はもちろんアニメ本編の同時視聴を行なったが、同作品に出演した声優たちと交友関係を築き、にじさんじの面々をあつめたコラボ配信もおこなっている。

さて、あえて6つのケースからはずしたケースがある。アニメ作品内にVTuberが直接登場する、というケースである。

このケースは多くの場合、作品の核たる部分とは無関係の、いわゆるハシ役やちょい役、エキストラとして登場することが多い。本人役として声優となり演じるケースもあれば、しかも本人や事務所側にも知らされず、ビジュアルだけ描かれて数秒のみ登場するというケースもある。

VTuber当人のビジュアルが作中で描かれたからといっても、その関わり方は様々。ではなぜ上記のケースからはずしたかといえば、VTuberの当人性が描かれているわけではない、というところがあるからだ。VTuberの魅力といえば、アニメルックなビジュアルと同じくらい、当人性(本人性)にあると筆者は思う。その部分を、アニメのストーリーのなかに押し込めてしまうと、どことなくぎこちなく感じられてしまうのだ。

アニメ「神椿市建設中。」では、所属する花譜や理芽が出演しているが、この場合は声優:花譜/キャラクター:森先化歩として出演している。あくまで配役・キャラクターを演じているという図式に則っているわけだ。

これを別のケースで例えれば、木村拓哉。役所広司、堺雅人、北川景子、綾瀬はるかといった俳優が、役名もなにもなくただそれとして作品内でエキストラとして出演する、といえばいいだろうか。しかも、近年のアニメ作品では、原作の映像化としてストーリーラインが強固に描かれているパターンが多い。そのなかで急に出演してくるとなると、もしかするとそれだけで戸惑う方が生まれてしまうかもしれない。

ここまで執筆してみたが、「小説、マンガ、ゲームなどあるのに、なぜアニメなのか」という部分に引っかかっている方もいるだろう。アニメ作品にフォーカスして話すのは、いま現在アニメ作品が日本のポップカルチャーシーンにおいて大きな影響力を及ぼしているからに他ならない。

小説、マンガ、ゲームとして最初に発表されながら、アニメ作品化して放映されると一気にファンがつく、といった現象は珍しくなく、原作元である小説、マンガ、ゲームなどの売上が”ぶり返す”現象も起こる。それほどに現在のアニメ作品の影響は強い。

ポップカルチャーのイチコンテンツとしてフラットに見ておくこともできるが、より広く・多くの人の目に触れやすいという点を重くみて、アニメ作品に焦点を置いて話している。

作品内でVTuberやバーチャルな存在はどう表現されているのか

さて今回の後編のなかで強く押し出したいのは、③のアニメ作品が作品中で「VTuber」を取り扱うという点である。

他の項目がさまざまな人の狙い・思惑・力量などによってコントロールされる側面を持つなか、原作者がストーリーのなかでVTuberを取り上げて活躍の場を設けるというのは、「作品世界においてVTuberが必要である」ということを意味している。

なにより、この場合は誰かの意図や力量とは関係なく、ストーリーテラー(原作者)のアイディアが大きく・強く・絶対的な意見(軸)となっていることが、他の項目との違いをより浮きぼらせる。

主要キャラがVTuberらしい活動者を取り扱ったアニメとして、『NEEDY GIRL OVERDOSE』を思い出す方は多いだろう。原作はWSSが発売したインディーゲームだ。

ヒロインであるあめちゃんは、配信者として活動する際に『超絶最かわてんしちゃん』こと超てんちゃんとなり、さまざまな配信を行っていくという内容だ。その合間合間にある生活・彼女の動向を、同棲相手でありプロデューサー役にもなるプレイヤー(「ピ」と呼ばれる)がチェック&コントロールし、よりよいエンディングへ向かってゲームプレイしていく。

この作品はすでに多くの方がプレイし、さまざまな論評を執筆しているので内容については言及はしないでおくが、「超てんちゃんという存在がVTuberらしい配信活動をしている」という点がフックとなり、多くのVTuberが配信でプレイした。

VTuberだけでなくSNSなどのネットカルチャーなどさまざまなカルチャーからの影響が見て取れる作品で、いわゆる恋愛シミュレーション作品であり、ダイレクトなエロの要素もある。「メンヘラ」要素とその様子、死の匂いが漂う切迫した心理描写もあり、海外でヒット。特に東アジアや東南アジアで大きなフェアが開催されるほどとなった。シーンに大きなインパクトをのこした。

また2026年に入ってNetflixで公開されたアニメ作品『超かぐや姫』では、ヒロインを演じる3人がバーチャル空間で活動する/配信活動に勤しむ姿が描かれており、こちらもまたVTuber(あるいはYouTuberやバーチャルシンガー)らしさある姿と認識されている。

この作品はVTuberだけでなく、ボーカロイド、ゲーム、アイドル、学園モノで女性中心のやり取りを軸にしているなど、さまざまなカルチャーや創作からの影響がハッキリと見て取れる。そのポップ&キャッチーな内容で、2026年上半期の話題を総なめしたのだった。

ここまで2作品を取り上げたが、筆者がどうしても取り上げておきたい作品が2つある。

1つ目は、週刊少年マガジンで連載され、2026年1月からアニメ放映された『真夜中ハートチューン』である。

真夜中ハートチューン(1)』(五十嵐 正邦)|講談社

『川柳少女』のヒットで知られる五十嵐正邦が著者となった漫画作品で、千葉県千葉市美浜区周辺が舞台の学園モノ作品だ。

楓林(ふうりん)高等学校に通う財閥の御曹司である山吹有栖は、かつて聞いていたインターネットラジオ「真夜中ハートチューン」と、その配信主であるアポロを探すため、学校の高嶺の花である井ノ華六花、日芽川寧々、霧乃イコ、雨月しのぶの4人が揃って在籍する放送部に入部する。

夢中になっていた配信主のアポロを探しつつ、彼女ら4人の夢をサポートしていくというラブコメ作品となっている。

この作品に登場する霧乃イコは、VTuber・皇イコンとして日々配信活動を行ない、ファンを楽しませ、トップVTuberになろうとする女性として描かれている。

面白いのは、他の3人がアナウンサー、声優、シンガーのプロを目指しているなか、彼女が”VTuber志望””トップVTuber”を目指していることにある。エンタメの世界でしっかりとプロとして認知されている職業のなかにVTuberが加わっている構図は、著者・五十嵐の好みが出ているとも言えるし、ファンからの反響をみるに違和感なく受け取られている。時代や認知の変化が感じられる。

2つ目は、赤坂アカと横槍メンゴによる『推しの子』である。この作品にも、VTuberとして活動する吉住未実が登場する。

VTuberだけでなくコスプレイヤーも兼ねて活動する女性で、中学生のころから引きこもってコスプレ配信をしていたが、兄の吉住シュンの勧めもあってVTuberとなった。

コスプレイヤーでありながらVTuber。近しそうな領域でありつつ、まったく別個の活動内容ではある二者だが、両者が同じアニメやインターネットのなかで好まれているというのは、受容側である我々からするとナチュラルに受け取れるだ。

コスプレイヤーと同じ領域でありながら、アナウンサー、声優、シンガーと並べて語られる。マンガやアニメの世界観だから両立しているのだろうという読みも通るが、強い違和感を作中で起こさず描かれているあたりに、VTuberが現実世界のなかで「なりたい存在・職業」として、ある程度の道筋・やり方・内容が広まっているようにみえる。

こういったリアリティラインに沿って、克明に、ときに毒もあり、多少大げさな一面も含めながらコミカルに描けているのは、五十嵐・赤坂・横槍ともにVTuberに対してある程度の理解や知識を持っているからに他ならない。

赤坂アカは、VTuberやストリーマーが活動している大型サーバー企画や、漫画家が集まる企画に参加した経験もあり、VTuberはもとより、インターネット周辺のカルチャーに関する温度感などもバッチリ掴んでいるのだろう。

ここまであげたいくつかの作品には共通点がある。

それは、VTuberとはアニメルックなキャラクタービジュアルを使っており、中の人となる活動者がいる、という描かれかたがなされているところにある。その描かれ方・表現について各作品ごとに異なるが、いわゆる中の人(かつての言葉で言えば魂ともいう)の存在は、VTuberを知る人・興味ある人なら見知らぬふりをして楽しむのが難しい、むしろ「そういう構図になっている」と理解するうえで通過する部分といっていい。

アニメルックなビジュアルを公式にしたシンガーやストリーマーという活動者と、前回のEP.5で書かせてもらったが、そういった理解に通じてくるのだ。

もちろん、こういった動きとは一線を画す活動も見られる。アニメ作品に関わらず、VTuberらしい活動で作品をPRすることが増えている。

たとえば「ウマ娘」におけるゴールドシップなどのウマ娘たち、「夜のクラゲは泳げない」のJELEEがそれに当たる。作品の方向性としてメディアミックスを押しだし、さまざまな露出を狙っている作品ほどそういったパターンがみられる。

「ウマ娘」におけるゴールドシップは、アニメ1期放映からゲームローンチまでの約数年間、くわえてコロナ禍のなかでライブイベントが開催するのも難しかった時期に、ぱかチューブっ!【ウマ娘公式】からさまざまな企画動画を投稿していたことを覚えているウマ娘およびVTuberファンはいるだろう。

その後、「ウマ娘たちがゲームを共にプレイする」形へと収まっていくことになったのだが、ゴールドシップのソロ動画から大人数のゲームプレイ配信へ、その変遷はVTuberの活動変化に即しているかのようだ。

もう少し突っ込んだケースを取り上げると、『推しの子』に登場するMEMちょを取り上げても良い。

YouTuberであることも含め、作中ではB小町の参謀役というポジションを築いている。「推しの子」YouTubeチャンネルでは、アニメのキャラクターデザインをLive2Dアバターへ落とし込み、MEMちょが『推しの子』関連の重要情報やおもしろ動画を投稿している。

また2026年4月には、東名阪の3都市でバーチャルライブも開催した。こちらも「推しの子」YouTubeチャンネルから様子をうかがい知れるが、アニメルックなキャラクターが歌って踊るキャラクターライブであり、なによりVTuberのライブと何一つ変わりがない。

アニメとVTuberについて別の角度から触れてきたが、ここで音楽ライブの話題に至った。アニメルックなキャラクターがライブを披露するというのは、ボーカロイドであれ、ゲームやマンガ原作であれ、売れ行きや人気がトップに位置するコンテンツIPが手掛けるさまざまなイベントのなかでも、特別な催しものとなっている。

そう、「キャラクターが歌って踊る音楽ライブを開く」ということも、アニメとVTuberにおける重要なキーリンクとなっている。次回はVTuberとアニソン/キャラクターソングの関係について、触れていこうと思う。

(TEXT by 草野虹)

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