「VIVECON 2021」にて発表の「VIVE Pro 2」を先行体験 まるで現実、5K・120°FoVが実現する没入感

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台湾HTCは12日、同社の実施したコンベンション「VIVECON 2021」の中で、新製品「VIVE Pro 2」および「VIVE Focus 3」の発売を発表。HTC NIPPONは、同日より「VIVE Pro 2」の予約販売を開始した(関連記事)。現在は、VRゴーグル単体での予約を受け付けており、価格は2ヵ月間のVIVEPORTインフィニティメンバーシップが付属し、10万3400円だ(税込)。

翌朝には、HTC NIPPON上にて初回予約分が完売。現在、第2次予約分を実施するなど早々にして注目を集めている。VRを体験するうえで、もっとも重要な視覚体験を決定するVRゴーグルだ。

先行体験を通して、まず感じたのはその解像度の高さと視界の広さだ。両眼5Kにもなると「画面を見ている」という感覚がかなり薄れ、そのまま世界を見ている感覚になる。「これまでの自分の中のVR体験が刷新された」それが一番最初に抱いた感想だ。

ハイエンド向けVRシステムを牽引してきたHTC VIVE

HTCは2008年に世界初のAndroidスマートフォン「HTC Dream」をリリースするなど、スマートフォン事業を主力に勢力を伸ばした企業だ。その後、2016年4月にSteamを提供するValve Corporationとの共同開発で「HTC Vive」をリリース。

以降、VRシステムブランド「VIVE」として、「VIVE Pro」シリーズ、「VIVE Focus」シリーズ、「VIVE Cosmos」シリーズでのVRゴーグルや、トラッカーやフェイシャルトラッカーをはじめとする「VIVEアクセサリー」を展開している。

「VIVE Pro」シリーズは、ヘビーVRユーザーのニーズを満たすために2018年4月にリリースし、以降ハイエンド向けVRゴーグルとして、ソーシャルVRやVTuberといった分野で活用されているプロ仕様のモデルだ。

「VIVE Focus」は、企業向け販売を中心に展開する「VIVE」の一体型VRゴーグルモデルで、「VIVE Cosmos」はベースステーションが不要のインサイドアウト方式のトラッキング方式を採用したモデルとなっており、モジュール・オプションにより拡張ができることが特徴だ。

これまでも、「VIVE Pro」シリーズは特に一般利用者の人気が高く、アイトラッキングが可能な「VIVE Pro Eye」などもリリースしている。「VIVE Pro 2」は、その2世代目となるモデルだ。

外見変わらず、グラフィック性能が大幅向上

では、さっそく新製品「VIVE Pro 2」を見ていこう。まず、外観だがこれは初代モデルとほぼ変わらない。前面のディスプレイ部分は、色違いとなっており、青色から黒色へ変わっているが、側面は色も同じだ。人間工学を考慮してデザインされたプロ仕様のしっかりとしたストラップが特徴の見慣れたデザインとなっている。

初代モデルとの違いは、ヘッドホン部分がドーナツ型ではなく「Pro Eye」同様の密閉性の高いものへ変わっている部分だろうか。このヘッドホン部分は、初代モデルよりVR機器の内蔵ヘッドホンとしては唯一、日本オーディオ協会よりハイレゾ認証を受けているもので、音へのこだわりも強く感じられる。

「VIVE Pro」シリーズは、つまみを絞る形式で、かなりがっちりと頭部へ固定できる。普段筆者が使用しているOculus Quest 2と比べると「VIVE Pro 2」の方が重厚感はあるものの、より安定したフィット感を得られた。

外見は変わらずとも、被ってみるとグラフィックの性能は大きく向上していることが分かる。今回の新製品最大の特徴は、その高解像度と高リフレッシュレート、そして視野角だ。

解像度は、初代の片目あたり1440 × 1600ピクセル(両眼2880 × 1600ピクセル)から大きく向上し、片目あたり2448 × 2448ピクセル(両眼4896 × 2448 ピクセル)と、5Kスクリーンを実現。リフレッシュレートも、90Hzから最大120Hzへと向上し、視野角も120°とこれまでより10°広くなった。公開されている仕様は以下の通りだ。

●「VIVE Pro 2」VRゴーグル仕様
・スクリーン:デュアル RGB 低残光性 LCD
・解像度:片眼 2448 × 2448 ピクセル(両眼 4896 × 2448 ピクセル)
・リフレッシュレート:90/120 Hz
・視野角:最高 120°
・オーディオ:Hi-Res 認証済みヘッドセット(USB-C アナログシグナル)
       Hi-Res 認証済みヘッドセット(取り外し可能)
       高インピーダンスヘッドフォン(USB-C アナログシグナル)
・入力:デュアル内蔵マイク
・接続:Bluetooth, 周辺装置のためのUSB-Cポート
・センサー:G-sensor、ジャイロスコープ、近接センサー、IPDセンサー
      SteamVR Tracking V2.0(SteamVR 1.0 and 2.0 ベースステーションと互換)
・エルゴノミクス:レンズ距離調整付きアイレリーフ、調整可能なIPD
         調整可能なヘッドフォン
         調整可能なヘッドストラップ

「画面を見ている意識」がなくなる没入感

ようやく人間の視覚能力に追いついてきたというべきか。今回は、海の中をルームスケールで歩いて見ることができるソフト「TheBlu」を体験してみた。これまでどうしてもあったピクセルのドットや粗さなど「画面を見ている意識」がほぼ感じられず、これまで以上の没入感が得られた。

視野角に関しても、当然120°では100%視界が開けているわけではないが、意識をしなければ気にならない程度にしか視界の狭さは感じない。眼鏡をかけているときくらいの感覚といえば伝わるだろうか。

深海の暗がりの中、ライトを照らし周りを見渡す場面では、暗いのにうっすら見えるといったような機微も表現できていたし、サンゴ礁の中にあるイソギンチャクを触れる場面などでは、細かい模様もまったく霞むことなく、水に揺れるイソギンチャクの様子を楽しむことができた。

ここまで没入感が高いと、差し込む光に少し暖かみを感じたり、深海と光の届く海の中で少し肌に感じる温度に差を感じたりと、いわゆる「VR感覚」のようなものをにわかに体感した気がする。人間の情報入力のうちかなりの部分を占めると言われている視覚体験を、より現実に近づけることで、こうした「VR感覚」の開発も進むのだろうか。

今回、体験したデモはそこまで素早い動きを伴うものではなかったため、リフレッシュレートを体感することは難しかったのだが、いずれにしても初めてVRゴーグルを被ったときの感動を思い返させるほどの没入感だった。

むしろここまで解像度が高いと、映し出される映像側のテクスチャ―の粗さなどにも気づいてしまい、これまで以上にコンテンツ側のクオリティも要求されるのだなと感じたほどだ。

もちろん、最大解像度・最大リフレッシュレートでVR体験をするためには、それに応じたスペックのPCが必要だ。今回、体験に使用したPCはグラフィックカードにしてGeForce RTX 2080を使用したものだったが、プレイするゲームなどによってはそれ以上のスペックが要求されるだろう。その点は留意いただきたい。

そのうえで、VR体験により高い解像度をより深い没入感を望むハイエンドユーザーにはぜひおすすめしたい。

「VIVECON JAPAN」6月11、12日に開催

HTC NIPPONは、6月11、12日に日本版「VIVECON JAPAN」を開催する。11日は、「VIVEビジネス・デー」として法人向けの内容を、12日は「VIVEデベロッパー・デー」として最新のVIVE開発ツール情報や、コミュニティー情報、VTuber/VSingerによるライブなどを実施する(関連記事)。

それぞれ11日は、VIVE公式VTuberの青森りんこさんが、12日はVIVE公式アンバサダーのバーチャル美少女ねむさんがMCを務める。こちらでは、国内の企業・行政・開発者向けにVIVE新製品の最新情報と魅力、今とこれからのVR活用方法、パートナー企業の皆様をはじめVRを活用したビジネス事例を紹介するとのことだ。

(TEXT by アシュトン

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●関連リンク
HTC VIVE公式サイト
「VIVE Pro 2」製品ページ
「VIVE Pro 2」予約販売ページ