人気過ぎて鯖落ちも? 「Zenith: The Last City」ついにリリース! 話題の本格VRMMOを即刻レビュー

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日本時間の1月28日、米国Ramen VR社はVRゲーム「Zenith: The Last City」(以下、Zenith)をリリースした。対応ヘッドセットはMeta Quest、同2、PSVR、Valve Index、HTC Viveなどとなっている。

2022年11月6日、フルダイブ型VRマシン「ナーヴギア」の販売開始とともに世界初のVRMMORPG「Sword Art Online」がリリースされた──というのは、大人気ライトノベル作品「ソードアート・オンライン」の始まりにあるシーンだ。ついに現実世界においても、本格的なVRMMORPG作品が、奇しくも作中と同じ2022年に登場した。それがZenithだ。

Zenithは、VR形式の多人数同時参加型オンライン(VRMMO)ゲームだ。大災害から何世代も経った時代を舞台に、その再来を防ぐために人や神々との戦いを繰り広げていく。舞台はオープンワールドで、飛行やクライミング、水泳などのアクションが楽しめるほか、1つのサーバー内にいる百名程度のプレイヤーたちとともに、パブリックイベントやダンジョンに参加したり、フレンドとボス戦に参加したりできる。クラウドファンディングで約28万ドル(約3000万円)を調達したこともあり、リリース前から大きな期待が寄せられていた。

リリース直後から多くのサーバーが定員オーバーとなり、執筆時点においてもアクセス過多などが原因と見られるサーバートラブルが発生するなど、ログインが困難な状況になるほど注目を集めている。

筆者も「SAO」に憧れVRに興味を持った身として、本作は特別に注目をしていた。日本時間1月28日午前3時のリリースと同時に購入し、最速で実況配信を行った。本記事では、この話題の本格派VRMMORPG「Zenith」を早速レビューしていきたい。

製品概要
・タイトル: 「Zenith: The Last City」
・開発元:Ramen VR
・対応プラットフォーム:SteamVR(販売リンク)、Oculus Store (販売リンク) 、PlayStationVR(※VRのみ対応)
・価格:2781円~(※プラットフォームにより異なる)

「すごくにぎわってる!」他プレイヤーと自然に「会える」衝撃

筆者のアバター。入場後まず覚えたのは配信者用カメラの使い方だった

VRの魅力は他ユーザーとの自然なコミュニケーションにある。VRコンテンツにはもちろん画面越しに体験するのとは比較にならない没入感があるし、身体性を伴った直観的な操作も魅力だ。しかし、何よりも魅力的に映るのは、身体性を伴ったインタラクション、つまり他者との自然なコミュニケーションだ。

その点において、これまでのVRゲームは個人的にどうしても物足りなさを感じていた。基本的にソロプレイ、マルチプレイがあったとしても4人程度まで。確かに、体験としてのクオリティーは単体のゲームの方が圧倒的に高いが、それなら「みんなで遊べる」ソーシャルVR内ゲームワールドの方が性に合ってると感じていた。「早くSAOみたいなVRMMOゲームが生まれないかな。そしたら普段ゲームをやらない私でも楽しめるかもしれない」そんな妄想をしていた矢先に知ったのがZenithだ。

ゲームをインストールすると、まずは簡単なユーザー設定。ユーザー名とパスワード、キャラクター名と剣士(Blade Master)もしくは魔導士(Essence Mage)の2択から選ぶクラス選択および付随するロール設定、キャラメイクなどを済ませると、入り口の地下街に転移する。

クラス選択の画面。「Blade Master」「Essence Mage」から選択する
キャラメイクの画面。種類は少ないが、 多人数同時参加型かつオープンワールドという負荷上の制約を考えると許容できる範囲だ

サービス開始後10分程度にアクセスしたこともあり、さすがのにぎわいだ。筆者は「nexus_asia」というアジア圏サーバーを選択したのだが、転移して早々にあらゆるところから日本語や中国語、英語などが聞こえてきた。知り合いと一緒に始めた人、おそらく裏で通話もしくは私のように配信をしている人、知らない人にも果敢に話しかけに行く人など百人百様だが、誰もがこの新しい「VRMMORPG」という世界に期待をもって楽しもうと来ている。

さながら、「SAO」アニメ第1話のデスゲーム以前のシーンような雰囲気で、「時代はここまで来たのか」と自然とテンションが上がる。この和気あいあいとしたにぎやかさこそ、私がVRゲームに求めていたものだ。

入場とともにまず見えた光景。大量のプレイヤーがさまざまな言語で談笑していた

操作は直感的 まずはNPCに話しかけ「QUEST」を受けよう

NPCの「MIKA」。まずは彼女に話しかけ「QUEST」を受ける

操作は多少慣れない部分もあったが、かなり直感的に操作できる設計だと感じた。移動方法などに関しては、最初に設定があるのだが、もし違和感があればメニューの「Locomotion」をいじってみると解決できるはずだ。基本、メニューもすべて英語表記となるため、多少は読解力が必要になるが周りのプレイヤーと話しながら徐々に慣れていった。

また、道中にはNPCの「MIKA」というキャラクターがおり、こうしたNPCキャラクターの左側に出る「QUEST」をクリックすることで、新たにクエストを受けるもしくは、そのコンプリート報告をすることができる。操作のチュートリアルやゲームの遊び方などもこの「QUEST」をこなしていく中で学べるため、まずは積極的に「QUEST」を受けていこう。

説明の内容はすべて英語だが、目的地は左手甲に出てくるミニマップで確認できるほか視覚的にも黄色いサークルとなっているため、まずはそこを目指せばなんとかなるケースが多いと感じた。

このように左手甲にミニマップが、目的地には黄色いサークルが現れる

以下に、覚えておくとスムーズに進められる操作をいくつか紹介しよう。なお、筆者の環境はSteam版PCVRでのOculus Quest2(Oculus Link)となる。他プラットフォーム、デバイスとは違う部分もあるかもしれない点には留意いただきたい。

滑空

実際に手を振ってジャンプしている様子

「X」ボタンでジャンプ後に両腕を広げて上下に振ると、長めのジャンプ「滑空」ができる。なお、ジャンプおよび滑空は、スタミナを消費するため注意が必要だ。スタミナは、レベル・経験値表示の下にあるバー表示で確認ができ、規定値を下回ると視界が黄色くなり、スピードが落ちる。

ダッシュ

画面ではわかりにくいがダッシュをしている。オープンワールドのため移動にダッシュは必須だ

移動キーとなるアナログスティックを押し込むとダッシュする。移動入力の際に一度押し込めばよく、移動中押し込み続ける必要はない。

●アイテムの取得

このようにアイテムをグラブしてお腹のベルトに近づけ離す。なお、アイテムはローカル仕様のようだ

敵を倒すとドロップアイテムが出現する場合がある。四角いキューブのようなものをグラブし、お腹のあたりに近づけることでインベントリー(持ち物)に取得できる。

死亡時の復活

手を合わせ祈っている様子。このゲージが一周するとリスポーンする

敵モンスターと戦っているなかで、残念ながら体力が0になってしまった。でも安心してほしい。「SAO」ならば現実のプレイヤーも死んでしまう場面だが、さすがにそれはない。両手コントローラーを近づけて「祈る」ポーズをすることで、目の前にゲージが溜まる。ゲージがマックスになることで、既定の位置にリスポーンする。

やっぱり楽しい派手なアクション!魔導士で敵と戦う

モンスターと戦う様子。VRならではの臨場感が体験できる

コミュニケーションが魅力だといったものの、やはりゲームのアクションは楽しい。それがVRになればなおさらだ。筆者は魔導士の「DPS」ロールを選んだため、攻撃が得意な魔法使い。実は、非VRを含めてMMORPGをプレイしたのは今回が初めてだったのだが、配信中でも下手なりに騒ぎながら楽しくプレイできた。

筆者のロールの場合、攻撃方法は主に2つ。腰のあたりに装備されているクロスボウのようなものを手にし、魔法弾のようなものを発射する。トリガーを長押しすることで、エネルギーがチャージされ、威力の高い魔法を撃てる。ちなみに、同じ魔導士でもロール選択の際に「Support」を選択していると、この標準の魔法の球がヒール(回復魔法)になるなど発動できる魔法に傾向が現れるようだ。

チャージした魔法の球を打つ様子

もう一つは、ハンドジェスチャーによる魔法の発動。今朝のプレイ時間内で獲得できた魔法は、火の球を投げるファイアーボールのようなものと、指定範囲に雷を落とすサンダーボルトのようなもの。それぞれ、使用できる魔法のアイコンが表示されておりハンドジェスチャーの指示のようなものが書かれている。例えば、ファイアーボールはフィスト(握る)ジェスチャーで発現し、サンダーボルトは、握った状態でコントローラーを下に振ると発現するといった具合だ。

火の球を発現させた様子
雷魔法を打った様子

他プレイヤーを観察する限り、レベルなどに応じて使用可能な魔法の種類が増えるほか、個々の魔法が与えるダメージ量も増加するようだ。まずは、モンスターを倒したり、「QUEST」をこなしたりして、経験値を獲得しレベルを上げていくことが、ひとつゲームの目的になりそうだ。

VRMMORPGはどこまで行くか?「目的のあるメタバース」の魅力

本作Zenithも、「3DCG空間でアバターを用いたコミュニケーションが行える場」という意味では一種の「メタバース」といえるだろう。MMORPG自体にそうした性質はあるし、VRとなればなおさらコミュニケーションに比重が置かれやすい。しかし、筆者が普段生活しているメタバース、つまりソーシャルVR・VRSNSの世界とは決定的に異なる点がある。それが、「目的がある」ことだ。

オープンワールドで自由度の高いRPGとはいえ、そこには「QUEST」が用意されているし、敵モンスターがいる。当たり前だがみんな、「QUEST」を達成するため、敵を倒すため、レベルを上げるため、さらに言えばクリアをするためにゲームに挑んでいる。ソーシャルVRのような仮想空間サービスを「目的のないメタバース」とするならば、本作は間違いなく「目的のあるメタバース」だ。

普段、ゲームをやらない筆者からすると、そもそも多くのユーザーがインタラクション性を持っていて、かつゲームとしての目的を持っているという空間に身を置いたのが初めてだった。モンスターとの戦闘で苦戦しているときに、ヒーラーの魔導士が回復弾を撃ってくれる、逆に苦戦している剣士がいれば援護で魔法の球を撃ってダメージを削って助ける。こうした助け合いから、自然と言語の壁を超えて「ありがとう」「Thank you」などの声が飛び交う。

まだ試せていないが、このように調理を楽しむこともできるようだ

そうして一緒に苦難に立ち向かっているうちに、フレンドになってパーティーを組んだりとコミュニティーを育んでいくのだろう。そうした用意されたキッカケから生じるコミュニケーションというのもたまには悪くないなと感じた。もしかしたらこうした環境の方が、むしろ知らない人と偶然知り合う機会は多いのかもしれない。

Zenithは現在、あまりの人気にサーバー体制が追いついておらず、初日からなかなかログインしにくい状態が続いているという。実際に2時間30分程度過ごしてみて、これは期待を裏切らないし話題になって当然だと確信した。ここまで本格的なVRMMO作品は本作が初だろう。これまではSF小説・ライトノベルの中の出来事とされてきたVRMMORPGの歴史をZenithが切り開いた。今後、このジャンルがどのように発展していくのか強く注目していきたい。

(TEXT by アシュトン

●関連リンク
「Zenith: The Last City」公式サイト
Steam販売ページ
Oculus Store販売ページ