米国VRChat社は日本時間7月27日、「Security Update」と称した最新アップデート2022.2.2を実施しました。今回のアップデートでは、Epic Games社の提供するアンチチートサービス「Easy Anti-Cheat」(以下、EAC)の導入および、新機能「セキュアインスタンス」の実装を大きな変更点としています。なお、今回のアップデートは世界線の変更を伴います。
目次 [非表示]
「Easy Anti-Cheat」とは?
「EAC」は、Epic Games社のサービスのひとつで、マルチプレイヤーオンラインゲームにおけるハッキングやチートを検知、防止するためのソフトウェアです。これまで、人気FPSゲーム「Apex Legends」をはじめ、多くのオンラインゲームにて導入実績を持ちます。
今回、VRChat社はこれまでも規約上禁止をしていたいわゆるModと呼ばれる改造クライアント(ゲームクライアントに変更を加える類のプログラム)の使用を防ぐために同ソフトを導入したと伝えています。VRChatでは、以前よりこうした改造クライアントを利用した違法行為や迷惑行為が問題とされており、EACの導入によりこれらの悪意ある改造クライアントによる攻撃を防止し、ユーザーとクリエイターの体験を向上させる狙いがあるとのことです。
一方で、特に海外ユーザーの間では、emmVRCなどをはじめ、軽量化やキャリブレーション用のミラー表示、ろうあ者向けの手話拡張など、さまざまな場面でmodを活用してきた経緯があることから、VRChat公式のフィードバック投稿でEAC導入に反対する投票が2万件以上集まるなど、大きな反発を生みました。
VRChat社は公式声明において、これまで正当なユーザーが、本来であればVRChatに正式に導入をしてほしい機能をmodの利用で補っていたことを認識しているとした一方で、悪意のない改造クライアントであっても、デバッグの際に大量のバグレポートが届く原因になるなど、開発者やクリエイターの負担になると説明。
今回の騒動を通して、受け取ったフィードバックに焦点を当て、VRChatコミュニティとコミュニティリーダーへのヒアリングも反映し、内部開発ロードマップの優先順位を再編成すると伝えています。すでに、modからフィードバックを得て、横になっている際にも使いやすいメインメニューや、ポータブルミラーなどは開発が進んでおり、今後のリリースを計画しているとのことです。
新機能「セキュアインスタンス」とは?
VRChatには、これまでユーザーの参加を制限できる5種類のインスタンス権限が設定されていました。しかし、こうした権限とは別に、「Friend+」「Friends」のインスタンスについては、ポータルを設置した場合、およびウェブブラウザからインスタンスのURLを取得した場合には、権限に当てはまらなくても誰でも入ってこれるという問題がありました。インスタンスの簡単なおさらい
- Public:誰でも参加可能
- Friends + :参加するには、インスタンス内の誰かの友達である必要がある。
- Friends:参加するには、インスタンス作成者と友達である必要がある。
- Invite + :インスタンス内の誰かに参加への招待をリクエストする必要があります。そうしないと、インスタンスの作成者が直接招待する場合がある。
- Invite:インスタンスの作成者に直接招待される必要がある。
これに対し、今回実装した「セキュアインスタンス」では、インスタンスを入力する際に、サーバー側でインスタンスルールを適用する方式を採用。これにより、インスタンスの設定されたルールを満たさない場合、リンクまたはインスタンスIDを使用した参加は機能しなくなります。
セキュアインスタンスを利用すると、「Friends」または「Friends+」のポータルは、フレンドにのみ表示されます。これにより、混雑したパブリックインスタンスに「Friends+」ポータルをドロップし、フレンドのみと移動することも可能になります。
また、この「セキュアインスタンス」は選択式であり、メニュー上でインスタンスを開く際にロックを外すことで、これまでと同じ運用でのインスタンスの作成もできます。
VRChatは、今後数週間でさらにいくつかの機能を発表、展開することになるとしています。VRChatには、公式のフィードバックボードも存在しており、そこでのユーザーからの意見を開発作業にも反映しています。
より詳しいアップデートの情報は、こちらのリリースノートを参照ください。
●参考リンク
・リリースノート
投稿者プロフィール
アシュトン
「メタカル最前線」編集長2021年3月より「VRChat」はじめソーシャルVR/メタバースの魅力を発信するメタバースライターとして活動。週100時間以上仮想空間で生活する「メタバース住人」として、AbemaTV「ABEMA PRIME」、関西テレビ「報道ランナー」、TBS「サンデー・ジャポン」ほか多くのメディア取材を受ける。4月よりメタバース文化の最前線を伝えるマルチメディアプロジェクト「メタカル最前線!」を運営。