「lain」の世界をVRChatで体験できる 「WEIRD展」ワールドがオープン 上田P&安倍イラストレーターによる豪華ツアーをレポ

LINEで送る
Pocket

WEIRD展

雑誌・アニメ・ゲームなどで展開していたメディアミックス作品「serial experiments lain」(通称「lain」)。2024年に25周年を迎えたことを記念して、6月20日より「WEIRD展」をVRChatにて開催している(ワールドのURL)。

同作は、現実の「リアルワールド」と、今でいうインターネット空間といったところの「ワイヤード」を横断して遍在する「lain」という存在を中心に、90年代末当時のインターネットへの期待感や好奇心だったり、クラブやドラッグ、今でいう「パパ活」のようなダークなイメージ、または集合的無意識といった哲学ワードを織り交ぜたストーリーとなっている。その独特の世界観から世界中にファンが多く、今、アニメを見直すとインターネットカルチャーの現在地や、生成AIへの問題定義、全体に漂うY2Kのムードなど、多くの点で色あせない、90年代を代表する作品だ。

特に、VRChatユーザーにとっては「どこにいたって、人はつながっているのよ」「リアルワールドなんて、ちっともリアルじゃない」という名台詞で仮想空間の自分と現実の自分の垣根が曖昧になる物語は思わずグッときてしまうだろう。ワールド内でアニメ上映も行われるので、ファンはもちろん、初めての方も大スクリーンでの視聴を楽しめる。

今回はオープンセレモニーに参加したプロデューサーの上田耕行氏、キャラクターデザインの安倍吉俊も同行した特別なツアーをレポートする。


lainの世界にも自分が「遍在」できる幸福感

プロデューサーの上田耕行氏
キャラクターデザインの安倍吉俊氏

上田氏と安倍氏はオープニングセレモニーに参加。実際の展示に沿って直接解説してくれるという貴重な機会だった。

お二人は当日が初めてゴーグルを装着してのVRChatとのことで、lainという魅力的なキャラクターをデザインした安倍先生が初めてVR空間に入った日に立ち会えたことを嬉しく感じた。

通路を移動
キーヴィジュアル

展示会場に続く通路を抜けると、真正面に展示会のキーヴィジュアルが掲げられている。こちらは本展示会のために描きおろされたもので、lainがゴーグルを手に持っているという、VRChat上で行われる展示の魅力が存分に伝わってくるイラストだ。

キービジュアルと安倍先生(うしろの黒い文字がサイン)

キーヴィジュアルに対してコメントを求められた安倍先生は「lainは自分の中でも思入れがある」と語る。

25年前は気負いがなかったが今は狙って描かないといけないことや、依頼を受けるたびに特別なものを込めたくなるが力が入りすぎたり抜けすぎたりする難しさを感じていた中で、今回はリテイクなしの1発で描けたという。

こちらのイラストには安倍先生のサインもあるので、ぜひ現地で観て欲しい。

不気味な通路
不気味な通路

「不気味な通路 / Weird Corridor」では、「lain」の場面を「不気味」「奇妙」という切り口でキュレーションされている。lainという作品が持つ、思わず目が離せなくなる違和感や不協和音といった、ちょっと不気味に感じる人間の危うさを名場面を見ながら追体験できる。

怖いのが苦手な人は押さない方がいいかもしれない

このボタンは要注意。「おさないでください」と書かれているボタンはどうしても押したくなるものだが、結構ホラーな演出が始まるので、怖いものが苦手な人は本当に押さない方がいいだろう。
怖いのも大丈夫! という方はぜひ押してみて、VRならではの演出を体験して欲しいところ。

ディスプレイタワー
ディスプレイタワー

「ディスプレイタワー / Display Tower」は、積み上げられたディスプレイにlainの姿がランダムで表示されるインスタレーションになっている。こちらに映っているのは本編のうち「lainの姿だけが映っているカット」を集めたもので、合計で20分以上あるためかなり長く眺めていてもなかなか同じシーンは現れないという。

一歩踏み入れたらわかる「あの音」が鳴っています!

「通学路 / School Route」は、実際のアニメの風景を模したVRならではの展示になっていて、ファンなら一歩足を踏み入れた瞬間に聞こえる「音」に嬉しくなるはずだ。私も思わず「あ! lainの音がする!」と叫んでしまった。

隠し要素で上に行けます

このエリアにはアイテム探しの要素があり、看板の近くに落ちているスリッパを含めて合計5つのアイテムが隠されている。すべて見つけると隠し要素を楽しめるので、ぜひ不気味な音を聞きながら楽しんで欲しい。

現時点では中に入れない岩倉家

正面に見えるlainが住む岩倉家は現時点では「工事中」と書いてあり入ることはできないが、毎週月曜日20時に更新予定で、3つの部屋が増えるとのこと。

イラストが展示されている部屋
過去のイラストも見られる

岩倉家の前にある移動ポータルで移動した先が最後の部屋。イラスト展示の部屋として、キーヴィジュアルのほか、lain関連のアートワークを観ることができる。

デジタルアイテムの展示も

デジタルアイテムの展示も行われており、公式のboothで販売しているアイテムを手に取ることができる。スマホケースはモジュラーアバターに対応しており、簡単にアバターに装着できるようになっているという、VRChatユーザーにとって嬉しい仕様になっている。

lainがリアルとインターネット、どちらにも存在する意識について語られる作品なだけに、自分がVRChat上に作られたlainのワールドにも遍在できるということが嬉しい空間だと感じた。


lainのキャラクターデザインをした安倍先生はワールドをどう感じた?

セレモニー記念写真

キャラクターデザインを担当した安倍先生にVRChat上の展示「WIRED展」に訪れた感想を伺うことができた。

「当時まだ大学生で、初めてかかわった作品でした。右も左も分からないまま、とにかく絵を描いていて、それが25年経ってこのような形になっているのが感慨深いというか、不思議な感じです。

lain自体はずっとネットの中の座敷童みたいに遍在する存在として残っていて欲しいと思っていたので、それが25年経って継続しているというのは感慨深いです」

その後で「僕らも座敷童になりたいね」としみじみ語る参加者たちの声もあった。

lainに登場するワイヤードのような現実とは別の世界は、各SNSやVRChatなどのインターネットを介したあらゆるソーシャルな場にいることが今となっては当たり前となった。lainがその元祖として25年間インターネットのどこかしらに遍在していたことと、私が「ササニシキ」という名前でインターネットに存在することが概念的には繋がっていると考えると「僕らも座敷童になりたいね」という願いが25年経った今ぽつりと生まれることは、なんて感慨深いことなんだろう。


serial experiments lain「WEIRD展」概要

オープンセレモニーの様子をお届けした、serial experiments lain「WEIRD展」。展示といってもリアルの展示イベントのように明確な会期が設定されているわけではなく、継続的に楽しめるものとなっている。

これから4週連続で紙のチケットが当たる写真投稿キャンペーンや展示室の拡張が行われるほか、月曜日20時に三週間連続で展示室が拡張されるなど、何度も訪れたくなる展示と言えるだろう。

●serial experiments lain「WEIRD展」記念チケット詳細
・展示会場で写真を撮って、#WeirdCampaign をつけてXに投稿
応募フォームに登録する
・24日19:59まで(第一弾)
・第四弾まで毎週抽選形式

また、全13話からなるアニメ「serial experiments lain」を4回に分けてエントランスのスクリーンで上映するという。現時点でdアニメストアやU-NEXT等での配信で観られるが、最低でもサービスへの月額登録が必要であるため、登録せずに観られるのは貴重な機会だと思う。

もちろん観た事がある方にとっても、おおきなスクリーンで観る機会というのはなかなかないので楽しめるだろう。

シアタースペースには「視聴し続けて手持無沙汰になってしまわないように」と、ミニゲームや雑談が捗るカフェスペースもある。このミニゲームの中で面白いと思ったのが、プロデューサーの上田氏が集めたという電線の写真を用いた難易度の高い神経衰弱。人や世界との意識的なつながりを描く演出として登場していた電線が印象的な作品だけに、電線へのこだわりを感じて良かった。

また、毎週金曜日21時には先着で特別ツアーが行われ、アニメ試聴会が行われるという。ツアーはVRChatグループインスタンスで行われるため、グループにあらかじめ参加しておくとよいだろう。

●serial experiments lainアニメ上映会
・1-3話:6/20-6/23
・4-6話:6/24-6/30
・7-9話:7/1-7/7
・10-13話:7/8-7/14

●serial experiments lain「WEIRD展」特別ツアー
・日時:毎週金曜日21時
・参加:グループインスタンスへのJOIN先着順
・VRC Group:https://vrchat.com/home/group/grp_34c6bd99-b741-4f69-ad6c-6c120605be29

serial experiments lain「WEIRD展」オープンセレモニーの様子と、展示についてお伝えした。展示を通じて、25年経っても未だにファンから愛されるlainという作品を体験すると、やはり本編のlainを観たくなるというもの。しっかりとその導線も用意されていることが嬉しくもあり、改めてこの世界観が好きだと感じた。


(TEXT by ササニシキ


●関連リンク
公式サイト
公式X
ワールドURL