【詳報】「Rift Core 2.0」やアバターなど基本システムが大幅進化 OC4基調講演まとめ(Oculusソフト編)
米国時間の11、12日にサンノゼにてFacebook傘下のOculusが開催している開発者向けイベント「Oculus Connect 4」。「Oculus Go」などを紹介したハード編に続いて、Oculus自身が用意する基本システムや開発者向けツールについてまとめていこう。
VR空間での快適さが上がった「Rift Core 2.0」
まず、基本システムの進化に注目だ。現在、PC向けの「Rift」やスマートフォン向けの「Gear VR」は、起動するとまず「Oculus Home」と呼ばれる空間が表示される。ここでアプリを立ち上げたり、設定を変えたりといった基本操作が可能だ。
このRift向けの基本システムについて、より手の操作に適したインターフェース「Dash」が加わり、さらにHomeのカスタマイズに対応したというのが新要素になる。Oculusはこの進化した基本システムを「Rift Core 2.0」と呼んでおり、今年の12月のリリースを予定している(Oculusのブログ記事)。なお、従来Oculus HomeはUnity製だったが、新しいHomeではUnreal Engineを採用した。
The beautiful new Oculus Home is built with #ue4!
Unreal supports Oculus Go, and of course, multi-view rendering. #oc4 pic.twitter.com/ZgHWGlSY6F
— Unreal Engine (@UnrealEngine) October 11, 2017
●Dash
Dashは新しいシステムインターフェース。一番目立つのは手元に表示されるメニューバーで、アイコンを手で叩いてアプリを起動し……。
目の前に画面を出して中身を確認したり、作業することが可能になった。
メニューバーは、アプリの起動中でもいつでも呼び出せる。こんな感じで手で左右に送ると……。
ルーレットを回すようにスムーズにアイコンが切り替わって、目当てのソフトを探せる。
気軽にアプリを切り替えたり。
フレンドからの呼び出しを表示したり。
さらにデスクトップのソフトをVR内で表示、すなわちバーチャルデスクトップにも対応した。
マルチタスクに対応しており、VRゲームの中でも、動画や音楽を開いたりメッセンジャーのウィンドウを表示させておくことが可能になる。
現実世界でもマルチディスプレーにするとウィンドウをいくつも広げておけるので作業がはかどるが、さらにVRなら画面の制約を気にせず自由な位置におけるのが新しい。
Visual StudioやUnity、Unreal Engineを使うVRゲーム開発者にとっては、自分のゲームをデバッグしてる最中にコードの画面を開いて修正できるようになるのが便利!
手で扱えるメニューに変えてきた背景として、Oculus Riftは当初、Xboxコントローラーのみでリリースしており、手で操作するOculus Touchは、Riftから半年ほど遅れて発売したことが影響しているだろう。当初はゲームコントローラーでも扱えるメニューが求められていたわけだが、いよいよTouchのバンドル版が標準となって価格も399ドル(5万円)と安価に固定されたため、UIもがらっと変えられる状況になったわけだ。
Oculusによれば、Dashは同社が推進するユーザーインターフェースのフレームワーク「React VR」でつくられているとのこと。基調講演でも「ゲームチェンジャー」と呼んでいたが、バーチャルデスクトップも含めてVRの使い方を大きく変えて行きそうだ。
●Home
Home画面のカスタマイズというと、すでにライバルであるHTC VIVEの「Steam VR Home」でも実現している機能になる。
テーブルやソファーなどの家具を置いて見た目をカスタマイズしたり。
ゲームの実績解除(アチーブメント)を飾っておいたり。
手持ちのVRアプリをレトロゲームのカセットを差し込むように扱ったりすることも可能なようだ。写真でゲーム機に挿しているのはVR FPS「Robo Recall」になる。
射的のようなミニゲームで遊んだり。
カスタマイズした自分のHomeをシェアして、フレンドのHomeを体験することも可能になる。
PCやスマートフォンでは壁紙を、現実では自分の部屋をカスタマイズしているという人は多いはず。VRのHomeならそれ以上に自分好みの空間が実現できるわけで、先ほどのDashと相まってお気に入りの空間で、音楽や動画の画面を表示させてリラックスするといった使い方もできるだろう。大きな可能性を秘めたRift Core 2.0なので、ぜひ12月のリリース後に試してみよう。
パフォーマンスやソーシャルでの開発者支援
開発者が自分のアプリでよりよいVR体験を実現するための仕組みもいくつか発表している。
アプリのパフォーマンス改善についての支援。
例えば、モバイル向けの機能であるマルチビューは、ドローコールを最大40%も減らせるのでより複雑なシーンを表示できるようになる。AMD、KHRONOS GROUP、NVIDIA、Unity、Epic Games、QALCOMMなどの協力で実現したとのこと。
Lost Frame Captureは処理落ちが発生した瞬間のフレームを自動でスクリーンショットとして保存してくれる機能で、あとでどのシーンで負荷が高いかが手軽に振り返れる。
自分のアバターを作成するOculus Avatarsも進化し、2018年早期にリリース予定だ。
こちらが旧来のAvatars(昨年のレポート記事)。
単色だったものがカラフルに進化して、肌の色や髪の毛などより個性的にカスタマイズできるようになった。
Avatar SDKを利用すれば、アプリごとにカスタムアバターを設定して、衣装などをアンロックしていくこも可能。例えば、Rez Infiniteならこんな感じ(カッコイイ!)。
このOculus Avatarsは2018年にクロスプラットフォームを予定しており、SteamVRやDaydreamでもこのアバターを使ったソーシャルアプリを作れるようになる。
さらに独自技術の「Oculus Lip Sync」を元にした、声と唇の動き合わせるリップシンクや……。
より自然な視線といったAvatarに関する開発中の機能も披露していた。こちらは2018年遅くにリリース予定とのこと。
ソーシャル機能についても安全性を強化した。すでに先ほどのアバターだけでなく、音声通信やマルチプレイヤー、ルーム、フレンドグラフといった機能で、ソーシャルアプリを作りやすくしてるが……。
そこに安全性を加える。
具体的には、ブロックやレポートといった機能が活用できるようになる。別アプリになってもブロック機能は追従してくれるようだ。
アプリを販売するOculus Storeも改善。11日、「Explore API」をGear VR向けに公開した。
動画や画像、カスタムストーリーなどをつけてより自分のアプリをアピールしやすくなるとか。Rift向けは2018年にリリース予定だ。
ほかにもVRゲームの画面を記録してFacebookに投稿したり、リアルタイムで配信するAPIを用意していて
VRゴーグルを持っていない人に対してのアピールが可能。
ライブ配信時は、視聴者の反応がGear VR内で見られるようになった。
Mixed Reality(MR、拡張現実感)は、VRの映像と実際の人を合成して、中で人が何をやっているのかわかりやすく伝えるのに向いた手段だ。発表していたMixed Reality Captureでは、ダイナミックな照明や深度カメラに新たに対応した。
(TEXT by Minoru Hirota)
●関連リンク
・Oculus Connect 4