ゲームの面白さとは何かを学んでほしい──ソニック・安原氏が取り組む、Unity「あそびのデザイン講座」【Unite】

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8、9日に東京国際フォーラムで開催した「Unite 2017 Tokyo」。基調講演後の囲み取材で、ユニティちゃん新展開などを聞いた話に続いて、ゲーム開発者を育てる「あそびのデザイン講座」という取り組みについても質問してみたのでまとめていこう。

なお上の写真は左より、Unity Technologies 、テクニカルディレクターのルーカス・メイヤー氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの日本担当ディレクター、大前広樹氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのゲームデザイナー、安原広和氏だ。

 

安原氏は「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のディレクター・プランナーを勤めた人物。ノーティードッグにて「ジャック×ダクスター」シリーズや「アンチャーテッド・エルドラドの秘宝」を手がけ、その後、バンダイナムコゲームス、任天堂関連会社を経て2016年にUnityにて教育事業に関わるようになる。

 

技術ではなくゲームをつくる面白さを伝えたい

──「あそびのデザイン講座※1」はどういった経緯で始まったのでしょうか?

 
大前 紆余曲折ありまして……。元々はUnityに関する知識教育に力を入れるために色々なプログラム立ち上げるということで、アメリカのチームが作りました。その開発に僕らも参加して、すごくいい内容に仕上がってはいたものの、ゲームをまったく知らない人たちを開発者にするという部分に対応できいませんでした。

もちろん、世の中にはUnityに関する素晴らしい解説書がたくさんあるので、多種多様な学び方ができます。しかし、「いきなりツールを使ってみましょう」というのではなく、その前段階でやらなければいけないことって結構あるよねという思いがやはり心のどこかにありました。

なので、もしかしたらアメリカのUnityで作っている教育コンテンツとはまったく違う道を歩むことになるかもしれないけれども、つくらねばという話を簗瀬※2としたときに、ちょうど安原が「日本の子供達にゲームづくりのおもしろさを教えたい」ということを言っていたんです。

 
※1 楽しいゲーム、おもしろいゲームをどのようにつくるかを体系的に構築するカリキュラム。小学生以上であれば誰でも学べる。(ニュースリリースはこちら

※2 ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのプロダクト・エヴァンジェリストである簗瀬洋平氏。旧ソニー・コンピュータエンタテインメントやアトラス、スクウェア・エニックスにてゲーム開発に携わっていた経験がある。

 
──タイミングがたまたま合ったと。

 
大前 はい。それならじゃあやろうと意気投合して(笑)。それで、手探りながらも試作を重ねて、東京工科大学で何回か実験的に授業をさせていただいたりもしました。僕はビジネス・ブレークスルー大学というところで教授としてゲーム製作を教えているのですが、そこでも同様に知見を得ていきました。

「あそびのデザイン講座」の最終的なターゲットは普通の小学校で、普通の先生が、普通にゲーム製作を教えられるっていうところにもっていくのがポイントです。

それに向けて、指導要領をまとめたカリキュラムフレームワークを2014年に提供し始めました。ただ、カリキュラムそのものではないので、教員の人たちはフレームワークを参考に自分で授業をつくらないといけないんですよ。やはりそこのハードルが高いと感じていて、「授業そのものを作らないとアカンのではないか」という思いから、「あそびのデザイン講座」に行き着きました。

 
──本講座をつくるうえで重要視したことは?

 
安原 Unityを使えば、それこそ粘土を触るように子供が遊びをつくっていけます。玉を落とすだけ、転がるのを見るだけでも面白がってくれます。そして今度は「玉を穴に入れてみよう」という遊びが発生して、それが転じて自然とゲーム製作に移行していく状況もあるんです。そのタイミングで、何故それが面白くなったんだろうというヒントを与えてあげると、子供っていうのはすぐに理解して、次の工夫や創作という遊びへとつながっていきます。

今まではピンボールやシューティングゲームのつくり方だけを与えていました。しかしそれでは、完成したけどこの後どうすればいいのかわからないという人も多い。なぜなら「何が遊びなのか」という感覚、「何が面白いのか」という体験が抜け落ちているので、次は何をしてみようという考えに至らないんですよね。

もし自ら創意工夫して、例えばピタゴラスイッチのような装置を作り上げれば、「僕がつくったんだ」って言えるわけです。その装置を見た人から「面白かったよ」というアクションがあれば、「すごい工夫したんだ! これを消してからこう進むとこうなるんだよ」と会話が続いて、何かをつくる楽しさを経験できます。

このような経験をしていけるUnityは、情操教育の教材としてとても適しているのは直感的にわかりました。なので、「あそびのデザイン講座」はそういう状況をなんとかつくれるように考えています。

 
大前 僕も大学で同じような経験をしています。未経験の学生にゲームを作ってもらう授業で、効果的に学んでもらおうといろいろな作戦を立てたんですよ。前もって学生にに計画を練らせるとか、手を動かしてるうちに何かできるようになるんじゃないかとか。しかし、結論としては安原が言ったとおり、取りあえず遊べるものができるんですけど、本人達はそれが何で面白いのか、どこにゲーム性があるのかわからないんですよ。

できあがったのは確かにゲームとして遊べるアプリで、学生たちは今つくったものはつくれるようになるものの、ほかのパターンのゲームに発展しない。つまり、ゲームがつくれるようになっていないんですよ。「一生懸命手を動かしてつくりました」で終わっている。そこの大きなギャップのようなものを解消して、つくって終わりじゃない教え方、学び方を構築したいという思いで取り組みました。

 
安原 同じような構造がゲーム業界にもあります。会社に入ったら、「あれをつくれ」「これをつくれ」と言われて……。

 
──サラリーマン的になっちゃいますよね。

 
安原 そうなんですよ! 「あれ……? 俺ゲームつくりたかったんじゃないの?」と疑問が浮かんできちゃいますよね。プレイヤーを楽しませる何かしらの仕組みやつくり方に「コレだ!」というものを感じて、だからこそゲーム業界を目指したと思うのですが、そこをもう一度思い出してもらって、持ち続けてほしい。

じゃないとこの業界は長続きしないんですよ。疲弊して、ゲームづくりが面白くなくなって辞めていくのを見るのはとても悲しい。だから、大きな土台をつくって、「面白いというのはこういうことだよ」と子供たちに学んでもらいたい。その経験を積み上げていくと将来もっと伸びるますし、そういうのを持ってる方が強いですから。そんな子を育てないなと。

 
──ゲームづくりを作業的にこなせるスキルを習得させるのではなく、ゲ—ムをつくる面白さに気づいて欲しいということでしょうか?

 
安原 まさにそれです。ゲーム業界が辛くて辞めるにしても、「ゲームって面白いな」という記憶を持っていれば他の仕事でも頑張れますし、やはり違うと思うんです。

 
──「あそびのデザイン講座」はいつ頃から提供を始めますか?

 
大前 7月くらいから徐々に提供を始めます。我々もまだ手探りな状態で作ってるところもあるのですが、少しずつ最適化して、提供後もアップデートしていきます。今後はワールドワイドでやりたいとも思ってますが、プロトタイプの実験も行っているのでまずは日本からと考えています。

 
 

学校と協力して学ぶための環境作りを進めている

──ところでUnity自身が学校というか、教育機関をやる予定はありますか?

 
大前 今日発表した「Authorized Training Center」というプログラムのほかに、「Centers of Excellence Program」というのもやっています。技術協力をしながら、最高の人材を排出する教育機関を作りましょうというパートナープログラムで、すでにいくつかの大学と取り組んでいます。例えばアメリカだとユタ大学です。アジアの学校は意欲的で、数校がこのプログラムに登録しています。

このように、僕らは学ぶための環境をつくるのは大切なことだと考えているので、教育用のコンテンツをつくったり、試験自体を整備しているわけです。Unityには試験をつくるのに必要となる、特別な技能を持ってる人が実はたくさん居るんですよ。巨大なチームも組んでいて、かなり気合いの入った活動をしています。

デベロッパー認定プログラムについても、3月に開催されたゲーム開発者向けイベント「GDC 2017」で、既にエキスパート用の試験も発表になりました。こういったものも含めて提供しながら、学ぶための道筋、目標への進路を作り、学校側が使えるリソースを増やす事でボトムアップができればという風に考えています。

冒頭で申し上げたとおり、マニュアルだけ渡して「授業内容は学校側で決めてください」だと負担がかかってしまいます。中にはカリキュラムを一生懸命つくるすばらしい学校もあるのですが、それではどの学校が質のいい授業を提供しているのかよくわからない状態です。それに学校側も教えるノウハウが外部の人頼みでは、今後も授業を引き受けてくれるか不明なうえ、代わりが見つからないかもしれず、授業の質も安定しません。

そこを僕らが作っていくことで、一定の質に引き上げることができると思います。それにUnityのバージョンアップに対応するためのコストを学校側に負担させるのではなく、我々がきちんと対応していくことで効率化にもつながります。Unityはバージョンアップが早いですからね。学校と協力することにより、落ち着いた環境できちんと教えていける状態をつくれるというのが重要です。

われわれは直接学校はやらないですけれども……いや、この会話の勢いだと学校やるとか言い出しそうですが(笑)、こういった形で教育に貢献していきます。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
*Unite 2017 Tokyoまとめページはこちら

 
 
●関連リンク
Unite 2017 Tokyo
Unity

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