のじゃおじ、初のリアル登壇で「Just Do It!」と叫ぶ #MANABIYA 「CrossSession XR」レポート
2018年3月24、25日の2日間に渡ってITカンファレンス「MANABIYA」が開催された。この手のカンファレンスでは珍しくジャンルとして「XR」を用意し、興味深いセッションをいくつか実施したが、その中から弊誌でも馴染み深い「バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん」(のじゃおじ)こと「ねこます」氏が登壇した「CrossSession XR」のレポートをお届けする。
・なぜオッサンはかわいいに憧れるのか 「バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん」独占インタビュー(前編)
・かわいいは心のATフィールドを取り払う 「バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん」独占インタビュー(後編)
・【速報】バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん、コンビニバイト退職を発表 「みなさまのおかげで夢に近づけた」
・世知辛いのじゃーー!「のじゃロリおじさん」初の公式グッズ・LINEスタンプを今すぐ入手しよう
・ありがとなのじゃ〜! ねこますさんによる「第1回 VTuberハッカソン」愛の全作品レビュー
バーチャルとリアルの登壇者が同じ舞台に
モデレーターはコロプラの比留間和也氏が担当。パネラーとしては「桜花一門」こと高橋建滋(@oukaichimon)氏、コロプラの中原圭佑氏、そしてねこます氏の3名が参加という合計4名でのパネルディスカッションとなった。
左からねこます氏、桜花氏、中原氏、比留間氏。以下、会話文では敬称略。
多くの人が気になるのはバーチャルキャラをどうやって現実の会場に出演させるかだろうが、写真の通り、リアルアバター(?)とディスプレーを並べてバーチャルアバターが並ぶ形での実施となった。システム上、ねこます氏が住む「けもみみおーこく」との通信に若干の遅延はあったものの、音声・映像ともに双方向問題なく連携できており、ねこます氏が「会場にHoloLensをかぶっている人が……」とこちら側の状況についてコメントする一幕もあった。
なお、セッション内容について、ハイテンションでテンポ良く掛け合いが続くセッションとなったため、雰囲気を伝えるために会話形式で記載する。ハイコンテクストでVRマニア向けの内容となったため、できる範囲での補足を記載したが、分かりづらい点、ご容赦いただきたい。
比留間 寒いのでかみかみになっちゃうかも。
ねこます こっちの部屋はあったかいです。
(会場笑)
比留間 こちらは屋上なのと、時間も時間なのでだいぶ寒い感じに(屋上の特設テントで17時30分開始のセッション)。テーマを用意してきました。せっかくねこますさんが来るというので、(サイトに掲載されているものとは)少し変えてみました。あと、1テーマは会場からも募集したい。
そんなセッション内容については以下の4つが挙げられた。
1.今後VRでやってみたいこと
2.なぜVRをやってみようと思ったのか
3.XRの開発は他とどこが違うのか?
4.XRのブームが一過性で終わらないために取り組んでいることは?
大いに盛り上がってしまったため時間の都合上、4つ目のテーマはカットされてしまったが、最後に1テーマ、会場から受け付けた質問を加えた3+1テーマでのセッションとなった。
1.今後VRでやってみたいこと
桜花 「Daydream Mirage Solo」いいっすよ。今年はこれをガンガン広めていきたい。
Lenovoの一体型VRゴーグル「Mirage Solo」。
比留間 どういったあたりが?
桜花 手軽。「週に1回以上やってるVR(コンテンツ)ある」って聞いてもたいがいの人が答えられない。それをどうにかするのに一体型(スタンドアローン)の手軽さは重要。
比留間 ねこますさんはどれくらいVRやってます?(HMDをかぶってます?)
ねこます 人によっては、VRChatで寝てるぐらい(ご本人かは不明だが、夜な夜なVRChatに目撃例があるのでほぼ毎日と思われる)。
比留間 中原さんはやってみたいこととかありますか?
中原 みんなで触れ合うのをやってみたい。
比留間 ソーシャル的な何か?
中原 いえ、(マルチプレイのあるDig 4 Destructionなど)開発したゲームは集まっても10人だったので、VRChatみたいにもっと大人数のものをやってみたい。
ソーシャルVRサービスの「VRChat」。独自のアバターを使って身体性を伴うコミュニケーションが可能。
比留間 ちょっと会場に聞いてみましょう、VRで開発やってる人?
(数人が手を挙げる)
比留間 今後やってみるのにオススメありますか?
中原 VRChat推し、キャラものが好きという個人的な嗜好もある。VRChatに行ったときに、言葉は通じなくともボディランゲージで盛り上がれる。♂アバター同士で股間をもみ合うようなことをしたが、楽しかった。
比留間 ねこますさんどうですか。この流れは話題の振り方を間違えたかもしれませんが。
(会場笑)
ねこます (開発を体験する)導入としてもVRChatがすごくいい。
ねこます アセットをダウンロードして、オリジナルアバターを登録するのも簡単にできる*1。
ねこます (VRChatのようなコミュニケーションシステムを構築できるネットワークライブラリの)Photonをガリガリいじって……。みたいなのはどうしても辛いので。
比留間 このまえ3Dスキャンした自分のアバターをVRChatに持ち込んでみましたが楽しかったですね。
ねこます 自分のコスプレをしたコスプレイヤーさん(の3Dスキャン)と自分が(VRChat上で)並んでみたい。
*1VRChatではUnity向けSDKが公開されており、UnityではAsset StoreにてVRChat含めUnity向けであれば自由に使うことができる3Dモデルが公開されており、登録してVRChatで使えるアバターとして使うこともできる
3DスキャンしたアバターをVRChatに持ち込むことも可能だ(関連記事)。
2.なぜVRをやってみようと思ったのか
桜花 1991年のこと、同じ高校の岩城先輩(MIRO氏、@mobilehackerz)が「バーチャリティ2000*2やりに行こうぜー」って言って部活のみんなで行ったのが初めてのVR体験。さらに2013年に、同じく岩城先輩がKickstarterでOculus Riftってすごいのが出るぞ、と言ってきたのが人生の転落の始まりでして。
(会場笑)
比留間 いやいや。ここはもっと他の人がVRやってみようと思いたくなるようなコメントしてくださいよ。
比留間 桜花さんは(日本のVR)コミュニティもつくっちゃいましたよね。
桜花 既存のMaker等のコミュニティに縁がなかったので、Ocufes*3をつくっちゃいました。
桜花 岡田斗司夫氏が「コミュニティは自分で作れば待機行列に並ばないでも済むし、イベントに呼んだ声優さんとも自由に好きなだけ喋ることもできる」のように言ってたので、先駆者の話を信じて……。ただし、岡田さんって「アオイホノオ」で自宅に核シェルターがあるネタなどが有名ですが、実家がすごいお金持ちなんですよね。騙されたわー。
(会場笑)
ねこます DAIKON FILMの自主制作もそのへんですよね。
*2バーチャリティ2000は90年代に存在していた英バーチャリティ社のVR筐体。日本では新宿で稼働していた。
*3イベント・コミユニティー名称としてのOcufesは旧称で、現JapanVR Fest.。不定期にXRコンテンツの展示会などを開催している。桜花一門氏はNPO法人オキュフェスの代表理事をつとめている。
比留間 ねこますさんが、VTuberやVRをやろうと思ったきっかけは何ですか?
ねこます VTuberは、単純に就活用のポートフォリオを作ろうと思ったんですよ。VR IK*4を使って(VRコスプレが)できるのはわかっていたので。Unityエンジニアの成果物として、ガバガバ実装でも(小声)「キズナアイちゃんと同じことができますよ!」というノリではじめた。動画出力を最終ターゲットにすると、ポートフォリオとして(エンジニアでない人向けにも)分かりやすくなるのでは、と。VRに手を出したのは「ソードアート・オンライン」が好きだったので、そういうのに関わりたいと考えた。
比留間 実際にその通り実行して、現状こうなっているのですから、先見の明があったということですよね。
ねこます (先見の明という表現について)それについてはそうでもないのでは、と思っていますが。できるのに始めなくて悔しい思いをするのはイヤなので。
比留間 やってみるのが大事ですよね。
ねこます Do It! Just Do It!
(会場笑)
桜花 実際やるとコンビニをやめることになったり、(XR以外を業務にしている)大半の人が会社をやめるハメに。
比留間 実際、それで仕事の依頼が来ているのであればいいんじゃないかと。
*4VR IK:著名なIKライブラリであるFinal IKのVR向けの機能名。Final IKは使いやすく性能がいいこのジャンルでは決定版とも言えるライブラリだが、90ドルという価格が気軽に買うには若干高め(機能相応、プロフェッショナル用途ではとてもお買い得ではある)のため、たびたびセール情報で盛り上がる。なお完全に余談だが筆者は半額セールで買って1年放置した。YAGNI的には賢くないが今は大活躍している。
比留間 中原さんに振ってみましょうか。
中原 実はですね、秋葉原G-Tuneで開かれたイベントで初めてOculus Riftを体験したので、桜花さんのおかげなんですよ。
桜花 これはいい前振りをいただきました、それについて面白い話があるんですよ*5。Oculus Rift(DK1)を持ち歩いてデモするのに、グラフィックに強くて、持ち運べる、いわゆるゲーミングノートPCを探していて、マウスコンピュータのがリーズナブルだな、と。
それで当時住んでいたところから徒歩1分のところにたまたま同社があったので、「これは!」と当時勤めていた会社の出社前に、Oculus Riftを持ち込んだわけですよ。いきなりマウスの社長さんにOculusをかぶせて、「これはスゲーってな」って。さらに2週間後にマウスの役員会議で会長にかぶせて「スゲー」ってなって。なぜか働いてる会社とは別の会社の役員会議に出ていたわけです。
(会場笑)
中原 そんなわけでそのイベントでOculus Riftを体験し、「これを使えば女の子のキャラクターと触れ合えるじゃん」って思い、当時学生だったんですがすぐにOculus Riftを注文して、今に至るわけです。
*5マウスコンピュータ社のPCブランドであるG-TuneとVRの関係、経緯については「PCメーカーとして世にOculusを広めたかった」 G-Tuneが語るVRへの情熱」を参照のこと。本エピソードについても記載されている。
2013年に発売となったOculus Riftの初代開発キット(DK1)。
3.XRの開発は他とどこが違うのか
中原 ユーザーが好き放題やらかせるので、世界に登場するいろんなものがインタラクトできないといけない。通常のゲームでは気にしなくてよい、後方まで気にする必要があり、楽しいと同時に大変。
比留間 非VRではあまり見ない、ロール回転(前後の軸に対する回転方向)が首を傾げるだけで起きてしまう。
ねこます VRの醍醐味は美少女になれること。スマホやPC向けのそれと比較して、自分自身がその世界の存在になれる、というのはVRじゃないと難しいと思っている。
比留間 つくっているものの中に入れる、スクリーン越しでしか触れ合えなかったものがそうではなくなる、のような。
ねこます (VRと非VRを比較して)他の要素はまったく一緒なものを実装したとして、非VRは第三者的目線になってしまうが、VRはそうではない。
比留間 (VRゴーグルを)かぶってみないと分からない。とにかくかぶれって言いたいですね。
(中略)
ねこます 自宅からVRでVRコンテンツを体験したい。VRChat内でVRゴーグルの再現をkohack(メディアアーティストの坪倉輝明)さんがやっていたので、アレで。
比留間 WebVRならURLジャンプが可能なので(アプリケーションを切り替えることなく、ほかのVRコンテンツに移ることができる)。
ねこます アプリケーションを切り替えるよりは、すべてのアプリケーションを包括したVRアプリケーションが存在して、VRアプリケーション間を移動できるようになってほしい。例えば地球というVRアプリケーションの中に世界があるとして、VR会議室に移動することができる、のような。マリオメーカーがチューリング完全みたいな……ああこの例えはイマイチだったかも(おそらく、あるアプリケーション上で必要なルールが満たされていればその中でどんなアプリケーションでも存在しうる、という意味。会場はとくに混乱した様子はなかった)。
桜花 いわゆる「VR OS」、フルVRのOSの登場が待たれる(関連記事)。
ねこます 社会のトレースをVRで作って、その中に個別のアプリケーションがあれば、アプリAからアプリBに、じゃなくてアプリの上で他のアプリを動かす的な。MANABIYAの会場をVR OSとすれば、椅子とか会場内を移動という、動作をするだけで(座るとかセッションを聞くなど)他の体験ができるのが望ましい。
桜花 現実と同等のオブジェクト志向で。
ねこます VRの空間でスマホが見たいし、Blenderを起動したいし。
桜花 Blenderではなくて、ノミやツチがある方かも。
比留間 このまま飲み屋で続きをしたい、いくらでも喋ってられるテーマなんですが。
ねこます ではVR飲み屋で(←比留間さんが止めようととしたのに止まっていない)
会場からの質問
比留間 ここで最初に言っていたとおり、会場からテーマとして質問を受け付けたいと思います。
質問者 経験から、正直に言うとVRでは没入できていないのだが、現実にできないことを置き換えるVRというもので、ユーザー側が積極的に没入しにいくようにがんばらなきゃいけないのか、それとも開発者ががんばるべきなのか、そのあたりの考えを聞きたい。
桜花 両方必要だと思っている。伊集院光曰く「お迎えに行く」、あしやまひろこ曰く「魔術・儀式」(といった表現があるが)、自分から積極的に騙されに行くのも必要だし、開発者側から違和感がないようにもっと(実装などを)がんばる必要もある、
中原 できるだけ楽しもうと思ってやってほしいと思っている。開発者サイドではつまらないことでユーザーが醒めることがないようにしたい。(前述した)ユーザーの後方のオブジェクトまでインタラクトできるよう整えるなど。
比留間 これが絶対正しい! みたいなことはなく、生きてきた個々人の体験によるところもある。デバイスがまだまだ(人間が知覚できないレベルで再現するには)追いついていない点があるが、今後(そういった性能は)向上していくので、没入感は上がっていくはず。
ねこます 人によってVRにのめりこめる、のめりこめないという差はある。気になるところを減らす(対応が必要)。のめりこめる人であっても、気づいちゃうケースはある。例えばスカートの両面を描画しないと、裏面から見たら透明になってしまうとか*6。
ただ、慣れの問題がある。VRが現実を超越している要素はいくらかあるが、それになれる、使い続けるのが大事。「中の人におっさんがいる」みたいなことは気にしないようになる。物理的性別を意識することは時間が経つにつれてなくなって、かわいいものかわいい!になる」
比留間 おっしゃってることガチで同意なので話せる機会欲しいです。
ねこます VRChatに来ればいつでも。
*6CGではユーザーから見える表面しか描画しないケースがあるが、VRのように様々な角度から覗き込めてしまうと、モデルのシェーダーや法線の設定によって、透明に透けてしまうようなことが稀によく発生する。
時間となったため、聴講者の方々がねこます氏(の映っているディスプレー)を記念撮影したりして解散となった。
そもそもどんな形態になるのか、きちんとパネルディスカッションの体をなすのか心配された本セッションだったが、MANABIYAスタッフの尽力もあってシステム上はとくに問題なく、大変有意義な内容であったと感じた。今後、同様の方式でバーチャルアバターとリアルアバターが共演したり、あるいはVR内に全員が集合の上コミュニケーションを実施する機会はどんどん増えていくことが期待できる。
(TEXT by ようてん)
●関連リンク
・MANABIYA