HIMEHINA最高の20曲はいったいどの曲? 7周年記念ライブ「ザ・ベストニジュー」ライブレポート

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2025年3月1、2日の2日間に渡って、HIMEHINAのデビュー7周年記念ライブ「田中音楽堂 RealLive ~姫雛合唱宴~」と「ザ・ベストニジュー」の2公演がTOKYO DOME CITY HALLにて開催された。

2018年3月から5月にかけて田中ヒメ・鈴木ヒナがそれぞれデビュー、HIMEHINAとしての活動をスタートして以降、酸いも甘いも噛み分けながら7年の活動を続けてきた。

初日公演となった「田中音楽堂 RealLive ~姫雛合唱宴~」では、以前から継続していた企画「田中音楽堂」をライブの中で表現しながら、HIMEHINAの表現とは何か?を提示するものであった(レポート記事)。

この日2日目「ザ・ベストニジュー」は、ファンからのアンケートを基に集計した、いわゆる「HIMEHINAベスト20ソング」を歌っていく内容。初日のように表現やメッセージを絞ったうえで提示するのではなく、ただ純粋にみんなが好きな曲を次々と歌っていくというシンプルな構成だ。

「俺達の好きな人気曲しかない!」といえるシチュエーション、文字通りパワフルなライブとなったのがこの2日目であった。どのようなライブとなったのか記していこう。

初日と同じくライブ前にヒメ・ヒナ両名が揃って影ナレを務め、ライブ上の注意などを明るく伝えていく。この日の公演が「ザ・ベストニジュー」ということで、事前にアンケートを実施していたことを話しつつ、「みんなはちゃんと投票した!?」と聞くと当然のように返事が戻ってくる。

「上位3つを当てられた人は、なんとぉーー?」

「なんとぉ?」

「……スゴイッ!!!!」

とキレイにオチをつけて笑わせ、本編へと移っていった。


初日には雪模様の神社に和装で着飾る2人というのがオープニングムービーの内容だったが、2日目は童話やファンタジー世界を思わせるような森の中だ。幼気な少女と悪そうな魔女っぽく演じる2人は、ミュージカルのように演技と歌唱を繰り返し、森を抜けて舞台へと向かっていく。

この日のライブには事前に楽曲ランキングを発表するプレゼンターが出演するとアナウンスされていたが、このメンツもかなり豪華。にじさんじ、ホロライブ、ぶいすぽっ!と3つの事務所だけでなく、長年HIMEHINAとともに成長してきたVTuberらが勢揃いしていた。彼女らのレガシーや繋がりを感じられる一面だ。

そんなプレゼンターのなかでも1番手として現れたホロライブのラプラス・ダークネスは、いつも通りに元気よく会場を盛り上げ、1曲目「フリコドウル」をアナウンスした。ちなみに、1曲目が20位、2曲目が19位と、後半になるに従ってランキング上位となっている形だ。

白を基調にしつつ黒のグラデーションがかかった色合い、ショートスカートに片側マントで着飾ったドレッシーな衣装で登場したHIMEHINAの2人は、さっそく力強く歌声を発していく。原曲のエレクトロポップなサウンドを4人編成の生バンドで演奏しているのだが、ドラムのキック(バスドラム)が会場を強く揺らす。

その曲から続けざまに……と思いきや、ここでプレゼンターとして、にじさんじの「でびでび・でびる」と「ルンルン」が登場。HIMEHINAの生放送でコラボしたばかりの2人ということもあり、かなり熱い声援が飛んでいた。

生放送に出た際の思い出を振り返り、2人が紹介したのは「アダムとマダム」「ララ」の2曲。先程衣装で着ていた白い片側マントや上半身の衣装が赤色へ変わり、より勇ましさある出で立ちとなって登場。白いスモークがステージからブワッと噴き上がり、ロックらしいバンドアンサンブルとともに2人は溢れんばかりのエネルギーで歌っていく。

「ララ」では昨日合唱したこともあってか、早くも会場一体となって大合唱、そしてハイ!ハイ!とコールが起こる。その様子を見ている2人もどこかご満悦のように感じられた。

MCを挟んで登場したプレゼンターの犬山たまきは、「ヒバリ」を自身の推し曲に上げつつ、「Hello, Hologram」を17位に紹介する。シンセサイザー&鍵盤の音色がリードしながら、ダンスビートやツービートなどさまざまなドラミングで攻め立てていくアップテンポなパフォーマンス。ヒメ・ヒナの2人のボーカルもハイトーンなボーカルを会場にぶつけ、早口な歌いまわしをバッチリと決めれば会場も沸き上がる。

次のプレゼンターはにじさんじに所属する町田ちまと戌亥とこのボーカルユニット・Nornisだ。一緒に歌ってみた動画を投稿したことに触れつつ、「水たまりロンド」「閃光花火」「Mr.VIRTUALIZER」と3曲一気に紹介する。

スプラッシュ柄・パンツスタイルというポップな衣装で登場した2人は、「Hello,Hologram」のアップテンポなムードから引き続き、明るくテンポよくパフォーマンスしていく。MCのなかで町田は「太陽みたいな声に元気をもらっている」と話していたが、まさにその言葉を体現するよう。

1曲のなかにさまざまなビート感・グルーヴが組みあわさってサウンドが広がる中、弛みなく歌い踊り続ける2人は観客を魅了しっぱなしだ。

3曲を歌い終え、新たなプレゼンターとしてホロライブの角巻わためが登場。2人との思い出などをしゃべり、「GOLDEN」「ヒバリ」の2曲を紹介する。

キャップを被ってサイドにラインの入ったカーゴパンツ&フレアパンツをそれぞれに着たHIMEHINAの2人、装いはすっかりシティガールだ。鍵盤・ベース・ドラムスによるグルーヴィなサウンド、シティポップ色の強い「GOLDEN」でヒップホップダンスでオシャレにキメてみせ、会場の空気は一気に様変わりする。

ヒメとヒナがそれぞれにメインボーカルをとり、そこから一気にハモって楽曲へと入っていった「ヒバリ」では、鍵盤の音色と2人のボーカルがキーとなってシリアスなメッセージを訴えていく。


心ってモノを量って切って

売れば幸せですか?

造られた憧憬

もう抜け出したい 欺瞞 世界 虚空の果て

続くプレゼンター・にじさんじの周央サンゴが登場する。「ンゴの推し曲は、『ナンダロウナ・フンドランド』ですっ!」と愛らしく話し、彼女は「こだましがみ」を11位と紹介した。

コロナ禍の最中にリリースされたこの曲は、「みんなの声が聞きたいと願って生まれた曲です」という周央サンゴのアナウンスの通り、HIMEHINAにとっても切実なメッセージが込められた1曲だ。

そんな楽曲がリスナーからも支持され、ベスト20のなかにもしっかりとランクインされているということは、2人の想いがしっかり伝わっているだけでなく、ファンの心まで代弁するような1曲となった結果だといっていい。

鍵盤の伴奏にあわせて、ストレートな歌詞をうまくタメを活かし情感たっぷりに歌っていくヒメとヒナ。キレイにハーモニーをつむぐ2人のボーカルにすこしずつバンド隊が演奏に加わっていく。

会場のモニターには木々を捉えたムービーが流れ、照明も緑色、会場の観客たちもペンライトを緑色に。清らかでクリーンなイメージが会場全員の脳裏に浮かんだのはいうまでもない。まさに音楽を通して会場が一体となり、寄り添った瞬間であった。

そんなミラクルな瞬間を目の当たりにしたヒメは、思わず後ろを振り返って涙を拭う。「自分の推し曲、入ってた人いる?」と聞くと、会場から返事がいくつかあがる。会場の観客らに投げキッスをし、「幸せだなぁ」「嬉しいねぇ」と語るヒメとヒナ。

「ネクスト、行っちゃいますかぁー!?」というMCから10位の紹介へ。HIMEHINAと同じBrave groupに所属している「ぶいすぽっ!」から空澄セナと猫汰つなの2人がプレゼンターとして現れて、「神喰姫」「相思相愛リフレクション」と、もう1曲を「お楽しみに~」と伏せたままで突入していく。

ヨーロピアンな衣装へと着替えたヒメとヒナは、アグレッシブなバンド演奏で奏でられる「神喰姫」「相思相愛リフレクション」を、この日一番の力強さで会場に突き刺していくようにボーカルしていく。

そこから「琥珀の身体」の鍵盤の印象的なリフが奏でられると、会場から驚きの声が上がる。


古の木々の樹脂が、地中に埋もれて化石化してできたもの。

“太陽の輝き”と呼ばれる燃えるような黄金のその石は、

長いものでは数億年の時を越え、旧時代の生命やDNAを保管することから

“神のタイムカプセル”と呼ばれた。

公式ページより)


リズムカルな鍵盤にあわせたヒメとヒナのささやくような朗読に始まり、サビに入ると声を張ったボーカルへと繋がっていく流れは、物語の語り手のよう。会場の観客はペンライトを琥珀色にあわせてオレンジ色に灯し、シアトリカルな表現がより没入感を増す。

3曲披露し終え、プレゼンターとして登場したのは、おめがシスターズの2人だ。シーンの黎明期から同じ女性2人組ユニットかつ赤青コンビとして活動してきた両者で、HIMEHINAにとって初のワンマンライブとなった「心を叫べ」でコメントを寄せていたこともある2人からは「3分ガール」が紹介された。

しかも紹介した瞬間にハイハットのカウントから楽曲がスタートし、せわしないドラミング、歪んだシンセサウンドとギターサウンド、疾走感をもって演奏されるアンサンブルへと突入。HIMEHINAとおめシスに共通するハイテンションな空気感にピッタリだ。

一気に突き抜けていった「3分ガール」を終えると、MCの時間へ。

「みんなのコール、ビシビシきたよ!」

「さすが昨日も歌っただけあって、コールが完璧!」

観客のリアクションを褒める2人。もう7位まで歌って、あと6曲で終わってしまうことを切り出すと、会場から「全曲歌ってー!」という声が上がり、「◯す気か?」とヒメが答えて会場から笑いが起こる。

会場が笑顔となったまま、プレゼンターとして樋口楓が登場し、「藍の華」ともう1曲を秘密にしたまま2人のパフォーマンスへと移る。「藍の華」のロック色の強いバンドサウンドに、エネルギッシュなボーカルをしていく2人。伏せられていた楽曲は「氷少女と陥落街」、こちらもアップテンポな楽曲で会場も盛り上がり、青・水色に灯したペンライトが会場の中で揺れていく。

プレゼンターとして富士葵が登場し、4位が「うたかたよいかないで」と発表した。前日のライブでアンコールラストを務めた楽曲がここで登場し、会場に大きな拍手が鳴り響く。

「生まれる命があれば、去りゆく命もある。そんな出会いと別れの歌です。すべてのVTuberに捧げます」という富士のアナウンスから、シームレスにヒメ・ヒナのボーカルへと繋がり、切なさを交ぜあわせながら歌っていく。同じキーを不自由なく合わせて歌うことができる2人のダブルボーカルは、より威力を持ってメッセージが届いていく。

歌い終えると緊急ニュースがいきなり挟み込み、現地リポーター役・チャーミー鈴木が「肉まんの食べ過ぎで太ったか?」という内容でビューティー田中にインタビューを求め、「HIMEHINAのオススメ曲はなんですか?」という質問に答えることに。

ビューティー田中が「夜にピッタリで、心音が似合う」、チャーミー鈴木が「アッパーな曲なんだけどエモなところがあって、Wow Wow Wowでみんなが横に振ってくれる」という風に答え、観客も大いに沸く。そのまま2人オススメの曲「ボクラハ&ナイデ」「My Dear」を披露した。

白いドレス衣装となった2人、特に「My Dear」はまさに心音のような音と鍵盤の単音フレーズ、そこにバンドが加わる力強いバラードとなったのだ。

「いやぁ、つい入れちゃいました。すいませんでした」とにこやかに笑って謝る2人。衣装を見たい観客から「回って!」という声に、コマネチしながら回ってみせる。

2人 ランキングみてどう思ったー?

観客 全部1位!!

2人 そうだよねぇ!(笑)


そんなやりとりで会場の笑いを誘い、同意の拍手が起こる。そこからプレゼンターとしてにじさんじ・緑仙が登場し、ランキング3位「ヒトガタ」を発表した。歪みの強いシンセサイザーから始まるエレクトロポップな1曲に、会場が一気に盛り上がっていく。ヒメ・ヒナのパワフルなボーカルを負けじとぶつけ、会場はハイ!ハイ!と大きな声を上げていく。

そのまま2位の曲の発表へ続くと、プレゼンターとしてホロライブの白上フブキが登場し「WWW」を紹介した。「ヒトガタ」につづくクラブサウンド直系の4つ打ちダンスチューン、それでいて人気投票2位ということが分かったこともあって会場の歓声もひと一倍大きい。

いよいよ本編ラスト、ベスト20の1位に輝いた楽曲の発表へ。事前にとあるゲストが現地に赴き、ヒメとヒナとともに祝ってくれると知らされている。そんな切り出しから2人の紹介とともに登場したのは、冒頭にも登場したラプラス・ダークネスだ。生で駆けつけたラプラスは、気持ちを昂らせながら「1位は~!『愛包ダンスホール』です!」とアナウンスした。

待ってました!とばかりに歓声が上がるTOKYO DOME CITY HALL。電波ソングらしさもあるキュートなダンスポップ、ミュージックビデオと同じメイド服にダンスもバッチリきめ、ここ一番に愛らしいボーカルに合わせて観客全員で合唱する。最高の盛り上がりのまま本編を終えたのだった。

会場中からアンコールを求める声があがるなか、「涙の薫りがする」のオルゴールが流れはじめる。大型モニターには同曲の歌詞が表示されて、観客たちは合唱して2人が戻るのを待ち続ける。戻ってきた2人は、新作アルバム・新曲リリースを会場にお知らせし、新アルバムに収録される新曲「キスキツネ」と「LADY CRAZY」を披露した。特に狐耳と尻尾をつけた「キスキツネ」には、多くの観客が釘付けとなっていた。

そのまま最終曲の「涙の薫りがする」へ。ストリングスと鍵盤、2人のハーモニーが混ざり合い、きらびやかな音色となって会場へと広がる。アウトロではヒメ・ヒナの2人とともに観客全員で歌うシーンが生まれ、「8年目に向かって! ジャンプしましょう!」という掛け声とともに全員でジャンプ。無事に大団円を迎えたのだった。

そのまま新曲「キスキツネ」のYouTubeプレミアム公開をヒメ・ヒナの2人とともに会場で鑑賞し、この日集まった観客はプレミアムな瞬間をともにすることができた。最後の最後にヒメ・ヒナどちらも涙を流しながら、「みんな大好きー!」と愛情を目いっぱいに送り、ステージをあとにしたのだった。


会場を抜け出し、水道橋駅前の信号で青信号をまっていると、2人の女子が隣にいることに気づいた。今回の知らせをまとめた特報を片手にして、スマホSNSで逐一情報を追い集め、熱心に何かをかきこんでいる。そんな2人が口にしていた言葉は、今日の彼女たちと熱量を端的に示す感嘆の声。それを最後に記して終わろうと思う。

「HIMEHINA、マジヤバイ!」

●セットリスト
M1.Opening:ザ・ベストニジュー
M2.フリコドウル
M3.アダムとマダム
M4.ララ
M5.Hello, Hologram
M6.水たまりロンド
M7.閃光花火
M8.Mr.VIRTUALIZER
M9.GOLDEN
M10.ヒバリ
M11.こだましがみ
M12.神喰姫
M13.相思相愛リフレクション
M14.琥珀の身体
M15.3分ガール
M16.藍の華
M17.氷少女と陥落街
M18.うたかたよいかないで
M19.ボクラハ&ナイデ
M20.My Dear
M21.ヒトガタ
M22.WWW
M23.愛包ダンスホール

*アンコール
M24.キスキツネ
M25.LADY CRAZY
M26.涙の薫りがする


(TEXT by 草野虹


●過去のライブレポート
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●関連リンク
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