
8月22日、東京の豊洲PITでVTuber事務所「ななしいんく」の全体ライブ「NANASHI FES 2025 “JACKPOT”」が開催された。2020年の「どぅーいっと!」、2022年の「JUMP」に続く今回のななしふぇす、“ショー”と“カジノ”をモチーフに、事前から華やかなビジュアルが展開、ななしミッションなど事前の企画も盛り上がった中、ついに当日を迎えた。

・VTuber事務所「ななしいんく」の全体ライブ「NANASHI FES 2025 “JACKPOT”」の開催が決定
・「NANASHI FES 2025 “JACKPOT”」の開催を記念した、ななしいんく×Cake.jpの限定スイーツが登場
・ななしいんくと茨城県鉾田市、VTuberを活用したシティプロモーション事業を実施
・ポーカーチェイスが「ななしいんく」所属タレントとコラボ 8/25 〜 9/17 期間限定コラボイベント開催


平日ということもあり昼前はまばらだったファンも、開場が近づくにつれ増えていった。243枚の記憶を吹き飛ばすように、開演前には豊洲PITのフロアはほぼ満員。観客たちは、何度も見たメンバー紹介映像に応援の声を挙げながら開演を待ち、因幡はねるたちによる音声放送を聞いて気持ちを高め、「盛り上がっていくぞー」のメンバーの円陣の声を聞き(放送機器の関係で実は会場でもあまり聞こえなかったが)、華やかなオープニング映像が流れ、ついに 「NANASHI FES 2025 “JACKPOT”」 が開幕した。
JACKPOT開幕!

「やっとみんな会えたね」。
2年半ぶり、初出演のタレントも少なくない全体ライブ、タレントと観客のお互いの気持ちを代弁するような歌詞から幕が開く。「GIRLS’ LEGEND U」、長い競馬の歴史を題材にアイドル的な要素を加えたゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」のメインテーマである。出演者総勢22名が一挙に登場し、衝撃的なスタートとなった。
デビュー順に歌い継いでいくソロパート。いろんな想いや事情から、現役タレント全員が一つのステージに揃ったライブは実はななしいんくでも初である。前回からの間、あるいはそれ以前に離れたタレントもたくさんいた。2023年からの新ビジュアル化の動きで新しい姿に変わったメンバーも多い。いるメンバーもいないメンバーも、あの頃の衣装でステージに立つ者も新たな装いをまとう者も、全員が並んで歌って踊るこの姿そのものが、これまでななしいんくに刻まれた歴史を象徴する光景であり、新たに刻まれた歴史でもある。
飛良ひかりの新3Dもここでサプライズお披露目された。新3Dが出せないなら全体ライブ不参加も考えていたという飛良ひかり。以前の3Dはデビュー直後の全体ライブ「どぅーいっと!」で初披露したもので活動の結果ではないと、自分のがんばりで出せた今回の新3Dには特別な思い入れがあるという。これもまたななしいんくの歴史に残る一歩である。後のMCで新3Dの簡単な紹介もされた。
“Don’t stop! No, don’t stop music ‘til finish!”、音楽を止めるなの歌詞から10分弱の中断。配信側で音響トラブルがあったらしい。50分近く中断した大運動会ほどではないが、これもななしいんくらしさか。和やかなBGMに合わせて淡々と手拍子を続ける観客へ、突発で声を届ける宗谷いちかたちにも当時を思い出す。お互いの信頼の中でまもなくライブが再開する。
再開の曲はアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」より「佐賀事変」。扇子をゆらす振付が美しい。「愛に行けぬ運命なら 時を超えて待ち詫びる」と来ぬ人を百年余りの歴史を越えて待つ花魁ゆうぎりの歌。百年ではないが、2年やそれ以上待った我々に10分は瞬きの間だった。
ゆうぎりが朗々と歌ったソロを、ななしいんくを代表するシンガーたちが己の実力を見せつけるように歌う。複数人でのステージが多いこのライブでは各曲の歌詞割りもメンバーがそれぞれ担当して考えており、「佐賀事変」は茜音カンナが龍ヶ崎リンと深夜に相談しながら決めたという。
アニメ「ゾンビランドサガ」最終回にはステージが崩壊してライブが続けられない中、手拍子から主人公たちが立ち上がってライブを再開する印象的なシーンもあった。偶然の一致だが、どんな逆境でもゾンビのように立ち上がるななしいんくとも重なる。見事なパフォーマンスに見えたが、やはり動揺したようで直後のMCで振りを間違えたことを告白もする一幕もあった。
続いては「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク」からsyudouの「ジャックポットサッドガール」、次にDECO*27の「ラビットホール」。いずれもカジノ・ショーや初音ミクと関わりの深い楽曲。

操り人形をモチーフとしたMVで「自分のまんまで勝ち上がるんだ」と歌う「ジャックポットサッドガール」は、たとえ間違えても自分の意思を貫くことを示した楽曲。参加の花奏かのんはこれまで裏方に徹してきたが結婚・出産を機に今回全体ライブ初出演となった。同じくブイアパの杏戸ゆげも「JUMP」は限定的な参加。個人の意思を尊重するのがななしいんくで、だからこそ彼女らが自ら参加して並んで歌う姿は感動を呼んだ。二人は今年VOCALOID6ライブラリを発売した縁も。
堰代ミコのパフォーマンスも見どころ。操り人形を意識したような振付を見事に表現している。彼女は過去に「PatMico in WonderLand」で同様のダンスを経験しており、その引き出しが生きたか。彼女ら元ハニーストラップのメンバーはユニットで4回の「Hoeny Feast」を開催、ほか含めてステージ経験が多く、今回も共演したメンバーから安心できたとの声が多かった。
「死ぬまでピュアピュアやってるのん?」とエロティックな歌詞で飾らない奔放な愛を歌う「ラビットホール」はダンスも歌も豊満でスタイル良くセクシーな衣装のメンバーによく合うが、配信のイメージではむしろ縁遠いメンバーが多くギャップも印象的。見ごたえのあるダンスは既存のを参考に蛇宵ティアが振り付けたもの。彼女はダンス経験が豊富で、今回いくつかの曲で振付を担当している。体調不良が心配されたが、ステージでは見事なパフォーマンスを魅せた。
2年前のデビューで今回初出演となった天羽衣は、身長や豊満さはやや4人から浮くものの、こんなに踊れたのかと驚くダンスをここで見せてアクセントとなっている。ウインクがかわいい。
このあとのMCでは運営無許可で彼女のオーバーウォッチ配信での口癖「人は殴ったら……ぬー!」のコールアンドレスポンスをして驚かせた。
縛られず飾らず、自分らしく行動することが歌われた2曲。天羽衣の無許可コーレスといい、ななしいんくらしさとも重なる。
今回ライブの選曲は運営からの案を元に参加メンバーで検討したものといい、この2曲は運営案のままらしく、ライブのコンセプトを補強するものかもしれない。
MCはさんでアイドルグループ「iLiFE!」の 「アイドルライフスターターパック」 。アイドルの現場をテーマにコールがふんだんに曲中に盛り込まれた曲で、事前にセトリ公開されていた。「松たか子ー 松たか子ー」と予習していたコールが楽しく現場は大盛り上がりだったが、さすがに配信では会場の音声は乗らず、それも含めて現地の醍醐味か。
直前のMCも因幡はねるのまわしによる柚原いづみのいじりなどが面白かった。画像は柚原いづみのコーレスで「ぷりちーって返してもらっていいですか?」に吹き出す因幡はねる。ななしいんくのライブは昔からMCが長めだが、今回のMCは尺の都合もあってか全体にコンパクトに抑えられていた印象。
続いては昨年「ななし実りの麻雀杯」でリーダーを務めた麻雀担当の4人でDECO*27の「ハオ」、杏戸ゆげが酒飲みメンバーを集めた「なな酒いんく」でゲーム「学園アイドルマスター」の 「仮装狂騒曲」 と、関係性の分かりやすい組み合わせが続く。
「ハオ」は杏戸ゆげが歌ってみた動画も出して慣れていた分で歌方面をリードし、コーラスの音声なども率先してとった様子。因幡はねるのダンス指導からの長い付き合いで今回複数曲を担当したあかり先生振付の「逆におっけー」のダンスが大変かわいい。「安らかに死ねばいいのに」と因幡はねるの物騒な歌詞担当の一つ目。
なな酒いんく起用については昨年末の公式ch歌ってみた動画企画のアンケートで3人枠の投票が多かった(歌ってみた動画はライブ直前に投稿)のが大きかったとのちの配信で話している。おそらく他でも参考にされており、リスナーも企画から大きく関わっていたライブだったことが分かる。「仮装狂騒曲」は杏戸ゆげのオリジナル曲「UGE CHAN MARCH」と同じく「FAKE TYPE.」の作詞曲で、カバーにあたって今回直接アドバイスを聞いたという裏話も明かされている。篠澤広を意識したとの杏戸ゆげのダウナーな歌とやわらかい動きのダンスは見どころ。杏戸ゆげはライブ後の誕生日にソロでの歌ってみたも投稿している。
ななしいんくオリソンメドレー
瀬島るいの「キラキラのカケラ」の前奏から宗谷いちかが飛び出して驚かせるが、ここからはななしいんくオリソンメドレーのターン。
過去に「太陽と月とエトワール -Secret Night-」で好評だった演目で、別のななしいんくメンバーのオリジナル曲を各メンバーがワンコーラスずつ歌ってメドレーしていく。オリジナル曲がまだないメンバーも平等に参加でき、お互いに自分の分身のような大事な曲を歌い合う、音楽を介した関係性の感じられる趣向で、独立しながらも関係が密なななしいんくだからこそ成立する形式でもある。今回も1曲1曲は短いながら記憶に残るステージが繰り広げられた。
デビュー前から見てきた瀬島るい初のソロオリジナル曲を祝うように応援するように歌った宗谷いちか。
彼女に、「ありがとう!」と伝えた瀬島るいが歌うのは、季咲あんこの「きらめきわーるど」。過去に季咲あんこのもう一つのオリ曲を歌った経験もふまえた選曲で、彼女なりのアイドルで歌いこなした。
日向ましゅはなな酒の先輩、杏戸ゆげの「ヒューマノイドでも恋がしたい!」をかわいく歌い、同期の天羽衣はボカロ曲でもある花奏かのんの「シャングリラ」をかわいいダンスでパフォーマンス。
お気に入りの天羽衣からパワーをもらった西園寺メアリは、初期組の絆か、黒衣装で因幡はねるの「黄色いラビリンス」をセクシーに歌い上げた。
ここでミサイルのような勢いで1曲目ぶりに月野木ちろるが登場。彼女は健康上の懸念から途中で参加が決定し、今回は全体曲とこのソロのみのパフォーマンスとなる。
月野木ちろるは個人VTuberから2021年2月に有閑喫茶あにまーれに加入、同年のオンラインライブ「超獣歌合戦」に初3D出演したが他メンバーとは別ステージで参加、3Dお披露目のないまま2022年から療養のため長期休止し、2024年4月に復帰。このためななしいんく5年目のベテランながら、全体ライブへの参加、メンバーと同じステージに立つこと、現地会場のあるイベントへの出演、いずれも今回が初となる念願の出演となった。当時からのリスナーにとっては配信での再会がすでに奇跡であり、今回の出演はまさしく夢のようだった。

にもかかわらず歌う曲は「ブッ捨ててくれ!」から始まる因幡はねるの「あくまで私のお友達の話です。」。これでいいのかとも思うが、ななしいんくの清楚なキモオタを自称する彼女としてはおそらく本望なのだろう。命を燃やすような全身全霊のパフォーマンスに、別の意味でも記憶に刻まれるステージとなった。
「この中にに今カノおるやろ?」の突き刺すような指先が素晴らしい。
月野木ちろるによる「オタクの心を独占してくれ、ポポおおおおおおおお!!!!」のエールを受けて、家入ポポが「独占予報」で因幡はねるメドレーを締めくくった。
つづいて飛良ひかり・瀬島るいの同期ふたりの絆を表現したデュエット曲「シスターピース」を季咲あんこがひとりで歌う。瀬島るいとはお互いの曲を選び合ったかたちになった。
のちの配信であんこは「青春ソングな感じが大好き」と言っている。
「もっと今を愛していたら」は花奏かのんの大事な人との別れを歌った曲。重すぎるとも思えたが瑚白ユリらしい選曲とも納得、気持ちのこもった良い歌だった。花奏かのんとは彼女のfeat.アルバム「宵」で「ダルメシアン」を歌ったつながりも。ちなみに背後で流れるこの曲のMVの風景は豊洲PITの近くで撮影されたもの(花奏かのんが以前この地域に住んでいたため)。
続く杏戸ゆげはブイアパの後輩、季咲あんこの「ほっぴんぐすたー」を歌唱。これも花奏かのんの作曲で、実質ブイアパの3人によるコラボレーション。ブイアパもまた前回の全体ライブの後の統合で無くなったが、3人の絆は変わらず、大事な仲間たちの大事な曲を大切に歌った。
トリは飛良ひかりの「アオイロテイル」。 彼女がひどく落ち込んだ時に宗谷いちかの歌う「大事なのはきっと 進み続けること 不格好でいい!」という歌詞が救ってくれたとお気に入りの一曲。 飛良ひかりはこれまでライブでのソロ経験が無く、ソロでステージに立つことも新3Dと並ぶ夢だったという。素晴らしい笑顔でメドレーを締めくくった。

ななしオリソンメドレーの選曲は各メンバーの希望制で、それぞれが候補を出し合ってから運営で調整して決めたというが、のちの配信を聞くとほとんどのメンバーが第一希望をそのまま歌ったようだ。いずれもそれぞれにとって思い入れの深い楽曲なのだろう。豊洲PITの大きなステージでお互いの大事な曲を歌い、歌ってもらうことは、それぞれ大きな経験となっただろう。
続くMCではメドレーを歌ったメンバーも並んだが、泣きだす月野木ちろる、「ゆげちゃんはでっかいぞー」と言わせようとして「ちっさいぞー」コールに裏切られる杏戸ゆげ、「結婚してくれるかな?」「いいともー」と強制的に結婚を同意させる湖南みあといつも通りの姿を見せてフロアをわかせた。
ななしミッション チームA~D
前半ラストのパートは、「ななしミッション」を競い合ったAからDの4チームごとのステージとなった。ななしいんくでは今回の開催に先立って、新人3名を含む25名を4チームに分け、各メンバーの配信内容やSNS投稿に応じてポイント「ナナシー」を獲得、月末のギャンブルミッションでナナシーを賭けて増やし、最後の月はナナシーが多いほど確率が高くなる運試しで勝利チームを決めた。
「ななしミッション」はライブ前にドラマを作ることを目的としてタレントから提案した企画だったようだが、事前に配信内容が決まっていてノウハウを共有しやすいこと、コラボ企画が多く各タレントの負担を最小限に抑えやすいことなど、配信外での準備の負担を抑えられるよく考えられた仕組みで、ライブの練習などが忙しい時期も配信時間を維持してリスナーとの時間を作れる良い効果もあった。特に同じチームのタレント同士はこれまで以上に密な関係を作っており、この後も息の合ったパフォーマンスが感じられた。
アメージングのAこと最初のAチームは宗谷いちか ・ 花奏かのん ・ 飛良ひかり・ 湖南みあ・涼海ネモに新人の羽流鷲りりりが参加。のちのMCでは口々に「R.E.P.O.」配信を思い出として語っている。

Aチームが選んだ曲はNornisの「ジョハリ」。Nornisは同じVTuberのユニットだが、リスペクトする一アーティストとしてフラットな関係ということなのだろう。5月の「NANASHI Sing-up vol.2」でも「Abyssal Zone」をカバーしている。Aチームは歌の上手なメンバーが多く、ななしいんくのシンガーたちがにじさんじが誇るシンガーたちの曲を見事にカバーした。
「ジョハリ」は難解な歌詞で意図を説明できるものではないが、「私」「価値」「意味」「自我」とアイデンティティにまつわるフレーズが多い。コンポーザーとして創作のアイデンティティに葛藤してきた花奏かのんを筆頭に、音楽活動に積極的なメンバーが多いAチームとの組み合わせが興味深い選曲だった。花奏かのんは直前のMCで「かのんママー」と満員の豊洲PITに言わせていたのも面白かった。
続いてブレインのBことBチームは因幡はねる・島村シャルロット・龍ヶ崎リン・家入ポポ・日向ましゅに新人の天絆ささはが参加。龍ヶ崎リンがリーダーだが、リーダーイメージの強い因幡はねるもいる複数リーダー的なチーム。因幡はねる企画のBチームの「Vのから騒ぎ」では、日向ましゅがLABをLOVEの略語だと最近までずっと間違えていたことなど衝撃の事実が発覚、「BIG LAB」の言葉が流行した。

Bチームの楽曲は悪魔のキッスの「カスタムラブドール」。アイドルグループ「ZOC」の初期メンバーだった戦慄かなのと香椎かてぃがいずれも卒業後にエイプリルフールをきっかけに結成したユニットの曲。 アイドル好きの因幡はねる筆頭にかわいい声のメンバーに似合うアイドル曲でありつつ、尖った要素もあるところを「きゅるヶ崎」こと貴重なアイドル曲を歌う龍ヶ崎リンが支えた。
「だからいっぱい傷ついて私の生き様を顔に刻んでるの」と、理想の可愛い自分になるために自分を象徴的にも物理的にも傷つけて更新していく生々しい楽曲は、たくさんの挑戦と失敗を重ねながらも自分の歴史を紡いでいくVTuberを思わせる。
「約束だよ 次は小指はないかも我慢して」と因幡はねるの物騒な歌詞担当の二つ目も聞ける。
堰代ミコ・季咲あんこ ・ 柚原いづみ ・ 茜音カンナ ・ 天羽衣 ・ 月野木ちろる、幽音しののクラッシャーのCことCチーム、リーダーは比較的後輩ながら超獣歌合戦以来リーダーも多い柚原いづみ。高評価チャレンジの「こじらせてそうな女たち」の企画ではライブ後の打ち上げの内容も早速決め、期間を通じて仲の良い様子が目立った。ここのパフォーマンスには、新人の幽音しのと途中参加の月野木ちろるは不参加。

アニメ好きのリーダーの縁か、選曲は「〈物語〉シリーズ」アニメ最新作のEDでYOASOBIの「UNDEAD」。「不幸に甘んじて 満足するなよ 幸せになろうとしないなんて卑怯だ」と原作から引用して「過去も未来も現在にあるんだ 生きていることを愚直に果たせよ」と「生きる」ことについてダイレクトに歌う歌詞は、シリーズ全体のイメージとテーマをずっとファンだったAyaseが表現したものという。
「化物ばかりの物語」と、悪魔の女王、カピバラ、月の住人と人ならぬ存在が、アイドル・異世界出戻り剣士らの人と一緒に歌うのも原作らしい。「UNDEAD」だけに不参加の”おばけじゃないもん”幽音しのの要素もあると話題になった。「ピースピース」や堰代ミコの「カ カ カットイン」ほか、アニメキャラを意識して組み込まれている特徴的なフレーズを歌うメンバーも大変かわいい。
ダークネスのDこと最後のDチームはリーダーの西園寺メアリほか、 杏戸ゆげ・風見くく・瀬島るい・瑚白ユリ・蛇宵ティアとASMRや演技、声の良さに定評のあるメンバーが揃ったことから、オフコラボのASMR配信は大変話題になった。ここは特に今回のライブを通じて仲が良くなったメンバーが多かったように思える。

Dチームの曲はアニメ「賭けグルイ」の「Deal with the devil」。カジノのモチーフと重なる選曲で、アニメの内容とともに、生きることは賭けることだというメッセージをストレートに感じさせる。
「ダイヤのジャックで手が揃うわ」とポーカーの対戦を描いた曲で今回のゲーム「ポーカーチェイス」とのコラボも縁で、コラボメンバーでは最多の3人がDチームである。「賭ケグルイ」も過去にコラボしており、ゲーム内でメアリと蛇喰夢子が対戦することも。
原作オマージュな椅子に座ってのダンスのパフォーマンスは蛇宵ティアの振付・演出で、Dチーム各メンバーのボス感を表現したかったとのこと。ハニストの「小悪魔Cheek」のダンスも思い出す。座り方ひとつに各人個性が出ていて素晴らしいが、瑚白ユリの丁寧な指の動きが見どころのひとつ。
生きることについて、問いかける「ジョハリ」、生々しい「カスタムラブドール」、ダイレクトな「UNDEAD」、ライブのモチーフと紐づける「Deal with the devil」と、この4曲は一貫するテーマでつながっており、いくつかはメンバー選曲だったようだが不思議と今回のライブのコンセプトを感じさせる選曲だった。
休憩時間も新人が活躍

ここで前半が終了。長時間のライブのため約15分の休憩が入ったが、その間に「うるぱんおばけ」こと4月にデビューしたばかりの天絆ささは・幽音しの・羽流鷲りりりのななしいんく新人3人の事前収録映像が流れた。
・ななしいんくより、新人の天絆ささは・幽音しの・羽流鷲りりり 3名がデビュー 初配信は4/27 20時〜
3人はライブの全体練習を見学したことも事前に話しており、先輩たちの練習を見た上での収録と思われる。過去には直接の先輩と一度もオフで会えなかったのを心残りに話した卒業メンバーもいたが、今回25名全員が顔合わせを果たしたことになり、これもまた当たり前のようで幸福な出来事だった。

収録映像ではあるものの多数の観客が彼女たちに答えてコールアンドレスポンスし、休憩時間だが大いに盛り上がった。3人は当日ライブの同時視聴配信も行っており、自分たちが出ている場面は恥ずかしがりながらも、会場で観客が反応する様子に「やってくれてる! 嬉しいなあ!!」と感動している。今回MCの時間が短めな分、販売中のライブグッズの紹介なども彼女たちが担当した。
この3人は前述のななしミッションの各チームにもデビュー直後から参加し、ライブ練習がない分、拙いながらも積極的にミッションに参加していた。ななしミッションは3人がななしいんくのタレント・リスナーと馴染んでいくのにも良い施策となった。また休憩時間とはいえ豊洲PITという大きいステージの一枠を任せてもらえたことは、彼女たちにとって良い思い出になり、将来に自分たちが先輩たちと同じステージに立つモチベーションにもなっただろう。
ライブ後半戦は夏曲スタート

ここから後半戦。まずは夏らしい2曲、松浦亜弥の「Yeah!めっちゃホリディ」とDa-iCEの「スターマイン」からスタート。どちらも華やかながら、かわいいとかっこいいの両端をパフォーマンスするななしいんくメンバーの姿が見られた。
往年の名曲「Yeah!めっちゃホリディ」では「ドットドットスラッシュ」「ズバっと」と、体調不良を感じさせない見事な伸びをする蛇宵ティアと、面白くなってしまう家入ポポらの対比が楽しかった。
事前セトリも出た「スターマイン」は男性ボーカル曲だが低音に強いメンバーが見事に歌いこなした。特に風見くくのパフォーマンスは今回全体を通して素晴らしく、ときどき人間を越えたとも。
「ウキウキな夏希望」「本当の意味での祭りはこれからさ」と後半の期待感が盛り上がる中、続くのは「YABAI組」。”#ななしのライブヤバい”こと「NANASHI Sing up vol.1-Sparkle-」に出演した4人で、ななしいんくでも歌の活動に積極的な4人。「公式ch歌ってみた動画企画」でも4人枠代表として直前に歌ってみた動画を投稿している。
歌うのはPEOPLE 1の「DOGLAND」。 こちらもシリアスな男性ボーカル曲だが、「スターマイン」に続き龍ヶ崎リン・茜音カンナが低音を支えて見事に歌った。「うるさいファンファーレで街を襲え」と歌う宗谷いちかには「お隣にも迷惑なふぁんふぁーれ!」(有閑喫茶あにまーれ「ふぁんふぁーれ!」)も思い出させる。
原曲MVでもトランプが印象的に使われてカジノのモチーフと合い「死にたくて生きるのか 生きたくて死ぬか」とこれも生きることに向き合った歌。またアニメ「チェンソーマン」終盤のEDで、作中の重要なエピソードを重ねた歌詞でもある。曲中で宗谷いちかが「みんな手を上げて! この一生を最後にしよう!」と呼びかけたが、これも作中で死んでも何度も蘇る人物がいるのをふまえたものか。
涼海ネモと龍ヶ崎リンも「まだまだ君たち盛り上がれるよね?」「最後まで上がってこうぜ、豊洲PIT!」と盛り上げ、続くオリソンメドレーにつないだ。
ななしいんくオリソンメドレー後半

ここで前半同様にオリソンメドレーの後半がスタート、残る11名が歌う。
最初は堰代ミコが同期の島村シャルロットが作詞もしている「青色の明日へ」を歌った。「この曲を歌うなら僕だろう」と選んだ堰代ミコに、 島村シャルロットはライブ後の配信でこの曲の2番はリスナーと堰代ミコをイメージしたという初出し情報を明らかにして驚かせた。「にこぷい」の強い関係が感じられる選曲。
湖南みあの「VEIL」は妹のちゃこちゃんプロデュースとのこと。いつも婚活の失敗などで話題になる湖南みあだが歌の上手さには定評があり、茜音カンナに負けないパワフルな歌声で会場を沸かせた。振り返り配信ではこの次の涼海ネモに「ずっとかわいいと思ってた」と言ってもらったことを嬉しげに話した。
涼海ネモは「空白」を雰囲気たっぷりで歌唱。宗谷いちかも涼海ネモに歌ってもらいたかったと絶賛した。彼女が今後予定している「ななしいんくオリ曲縛り歌枠」でリスナーから歌って欲しいという声が一番多かったのも「空白」だったとのことで、「僕が歌いたい曲と君たちが僕に歌って欲しい曲が一緒なんだ」と楽しみになったという。
前半と対照的に後半組は静かなバトンタッチでシリアスな空気を盛り上げていく。風見くくは雨の降る中、軽快なステップで龍ヶ崎リンの「追熟」を歌った。
茜音カンナは宗谷いちかの「DULLY」を熱唱。彼女は宗谷いちかのデビュー前からの大ファンで、はじめて話したときは泣きだしたほど。今回歌うことを報告したときも宗谷いちかに「楽しみにしてる」と言われて喜び、難しかったが宗谷いちかに励まされながら練習したという。
蛇宵ティアの「Moonshine」は昨年の誕生日の3Dライブ配信で龍ヶ崎リン本人の歌で披露した自らの振付で、今回はダンスに加えて自ら歌唱した。シュガーリリックの追加メンバーとしてデビューした彼女だが直後の統合でシュガーリリックとしてステージに立つ機会は得られなかった。他メンバーが卒業する中、ただ二人残ったシュガリリの先輩後輩の絆を思わせる選曲。
柚原いづみが歌う「UMenity」は涼海ネモの自己紹介のような歌でカバーには向かないようにも思えたが、 柚原いづみの歌声の柔らかさや包容力が際立ち、新たな魅力が引き出されて大変好評。あまり歌のイメージのない彼女ながら、以前に「ななしいんく歌謡祭」で歌ったときに比べて努力を重ねた成長が感じられた。
島村シャルロットの選曲は宗谷いちかの最初のオリジナル曲「君と未来」。今回元ハニーストラップの3人はいずれも同じ初期組の曲を選び、3Dお披露目当時から着ている最初の黒衣装でソロを歌った。後から入ったメンバーにわからない、同じ時期に同じ苦労をしてきた同士の絆だろうか。2019年の同時期にお互いソロイベントを開催しており、この曲もそのときの発表。
花奏かのんは龍ヶ崎リンの「Twilight Stream」を彼女らしくチルく歌唱。「ななしMUSICWAVE」でも対談しているが、音楽を作る人同士の交流が感じられるカバー。今年発表した花奏かのん制作のfeat.アルバム「宵」では龍ヶ崎リンにも「Darling」を歌ってもらっている。花奏かのんは今回のメドレー音源のつなぎも担当。自作の曲も多数選んでもらい、このメドレー自体への思い入れも強いだろう。
因幡はねるの選曲も初期組つながりな「ミドリなリンゴ」。因幡はねるとしては音域の関係で歌える曲が他にほとんどなく、堰代ミコが推しでもあるので一択だったというが、今回唯一の周防パトラ作曲でもある。結果として在籍時代にたくさんの曲をななしいんくに残した作曲家・周防パトラの名前が今回のななしふぇすのエンドロールにも刻まれ、喜んだファンは少なくないと思う。
後半のトリを飾るはななしいんくの音楽活動を牽引する龍ヶ崎リン。宗谷いちかの「ニュー・シネマ」は大好きで、「絶対歌いたかった」という。彼女らしい歌い方で、ただのカバーでなく龍ヶ崎リンの曲とも言えるクオリティに仕上がっている。
こうした素晴らしい楽曲がたくさんあるななしいんく。「これからもななしいんくの楽曲、たくさん愛してください!」とメドレーを締めくくった。

ライブ終盤

後半のメドレーも終わり、ライブも終盤に向かっていく。
まず「ななしミッション」勝利チームの特典である追加ステージとして、Aチームがななしいんく全体曲のひとつ「Infinite Harmony」を歌った
「巡り逢えた奇跡は どれもみんな綺麗で 磨き上げた想いが 未来を飾るよ」とななしいんくの尊さを抽出したような全体曲。宗谷いちか・涼海ネモはこの曲を初披露した「NANASHI Sing-up vol.1」のメンバー、他メンバーも歌が上手く、素晴らしいハーモニーとなった。
Aチームは飛良ひかりが序盤に長時間がんばって大量ポイントを稼ぎ大幅リード、終盤追いつかれたがリーダーの宗谷いちかが最終決戦で運をつかみ優勝、特典のこのステージを獲得した。飛良ひかりはこのメンバーの歌を好きなのががんばった理由といい、後日このステージを見返して「俺はずっとこの景色が見たかったんだ。これを夢見てななしミッションを3か月がんばってきたんだ……」と涙を流したという。
続いてはFRUITS ZIPPERの「NEW KAWAII」をななしアイドル部がパフォーマンス。ななしアイドル部は因幡はねるがななしいんくメンバー有志をアイドルグループとしてプロデュースしたいと2023年に始めた企画。結成の配信は延期を繰り返して実現せず、そのままメンバーも次々卒業、因幡はねるの誕生日3Dライブの一幕などで活動する中、今回はじめて現地ライブでのパフォーマンスが実現した。今回のフェスでもアイドル曲は複数歌われているが、ななしアイドル部3人による本気のパフォーマンスは一際かわいい。
次にアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」より結束バンドの「ギターと孤独と蒼い惑星」では、実在すら怪しかったななしバンドが登場。瀬島るいらがななしいんくでバンドをやりたいと常々言っていたがメンバーも決まっていなかったところ、このステージに沸いた。さすがにエアバンドだと思うが、ベーシストの花奏かのんに、飛良ひかりもギター弾き語りができ、茜音カンナもドラム経験者であるらしく本格的なパフォーマンス。本来編成にいないキーボード役に瑚白ユリが入り、5人でバンドサウンドを歌い上げた。
バンドサウンド続きのBUMP OF CHIKENの「ray」は、元々個別には仲が良かった組み合わせが昨年末4人組を結成した「がおしゅぴ」が歌唱。いずれも活動歴が長くリスナーと長い時間を過ごしてきた4人だけに「大丈夫だ この光の始まりには 君がいる」とメンバーとリスナーが一緒に左右に振る光は感動的だった。がおしゅぴは結成間もないが12時間リレー配信も開催、古くて新しいななしいんくの動きである。
続くMCで柚原いづみと彼女が「まだMCをしていない後輩たちを連れてきました」と語った4人は、そのままアニメ「ラブライブ! School idol project」OP、そして2010年代を代表するアニソンの一つとも言えるμ’sの「僕らは今のなかで」をパフォーマンスした。実はラブライバーだったのか同時視聴の天絆ささはは大歓喜してコール、同じ思いの観客も多かったのではないだろうか。
矢澤にこを推しという家入ポポを筆頭に、このうち4人は「太陽と月とエトワール」Shiny Dayで「夏色えがおで1, 2, Jump!」をやったメンバーでもあり、全力の笑顔を届けた。華やかなアイドル曲であると同時に、廃校の危機を前に「楽しいだけじゃない 試されるだろう」「無謀な賭け? 勝ちにいこう!」とリスクを抱えたがむしゃらな挑戦を描くタイトルは、今回のJACKPOTのコンセプトにも重なる。
続いて、アイドル曲ではありつつ大きく異なる印象のBiSHの「プロミスザスター」もまた、2010年代のアイドルシーンの一角を象徴する楽曲。「散々眺めた夢の続きが そうさ 傷跡に塩を塗り込んでく」「絶対約束されたものなんかないんだ」と夢を追うことの生々しい現実を歌いながら、だからこそ「きっと巡り合った僕らは奇跡なんだ」と星空を見上げる姿勢は、どこかななしいんくも思い出す。
センターは季咲あんこ。ここまで明るい笑顔を絶やさずにかわいらしい王道アイドルを歌ってきた彼女が「ふと気づけばすぐそばに僕と最高が誓いを果たすまで」とまっすぐにこの曲を歌う姿は、デビュー以来ゲーマーアイドルを貫いてきた笑顔の向こう側の強さを感じさせた。ほかのメンバーもそれぞれの壁を乗り越えてきた時間が、歌に説得力を与えている。
2010年代のアニメシーン、アイドルシーンの2曲に続くのはこれも 2010年代のネットカルチャー、ニコニコ動画を象徴する楽曲「Connecting」。歌う7人がリスナーへのメッセージをはさみつつ歌いつないでいく。「名前も顔も分からない」誰かの言葉が活動につながっていくのはVTuberも同じ。そうした「繋がる奇跡」を象徴する楽曲である。ななしふぇすは「君に逢いたい」が叶う場所でもある。
VTuberもまたこれらのシーンの影響を受けていまここに立っている。その意味で、それぞれがかつて「画面越しただ眺め羨んでばかりいた」ひとりであり、特に最も新人の天羽衣・日向ましゅはそうだろう。彼女たちがいまステージに立ち、同時視聴する3人、いまオーディションに臨むまだ見ぬ仲間、その先へとつながっていく。「次は僕が誰かを繋げる番だ」と。
アニメやゲーム、アイドル、ネットカルチャー、そうしたこれまでの文化が、それらに熱狂した人々の思いと夢が、2010年代末に華開いたななしいんくら今のVTuberにもつながっている。
そうした思いを感じる3曲だった。
そして「2018年6月と7月、まだななしいんくという名前がない頃から、わたしたち5人は活動を始めました。」という因幡はねるの挨拶とともにステージに立ったのは、因幡はねる・宗谷いちか ・ 堰代ミコ ・ 島村シャルロット ・ 西園寺メアリの5人。この「初期組」が今回最後のユニットとしてステージを締めくくる。5人と5人でデビューした5人がこの5人でステージに並ぶのは恐らく初めてだが、不思議としっくりと来る印象は、前日に投稿された「公式ch歌ってみた動画企画」の「舞台に立って」からも思ったことだった。
歌う曲はななしいんくの全体曲のひとつ「星空のエチュード」。「太陽と月とエトワール」で披露された楽曲で、「スクリプトを投げ捨てて 飽きるまで踊りましょう」「染まりたくない群れの色に」「理想だけじゃ生きられないから」「どの道悔いるのならやるだけやるのさ」と、ある面もっとも生々しくななしいんくを描いた全体曲を、それを体現してきた5人が歌う。
途中で島村シャルロットが移動のタイミングを逃すハプニングもあったが、わちゃわちゃしながらおさまっていくのもベテランたちの貫禄か。最後は見慣れた3人と2人に分かれつつ集合。その後のMCも台本なし・ノープランながらさすがベテラン、見事にななしいんくらしく進み、最後の曲へ。
Starring Together!

最後の曲は今回のために制作された新しい全体曲「Starring Together!」。1曲目以来の全員集合。8月6日にCDが発売、MVも公開され、期待を高めてきたこの曲が、ついにここで初パフォーマンスされた。
・ななしいんく 新たな楽曲「Starring Together!」をリリース ライブ『NANASHI FES 2025 “JACKPOT”』にあわせたニューリリース&MVも公開へ
ここで輝く夢を見てるよ! この瞬間を心に刻もうよ 涙も笑顔も全部まとめて みんなで紡ぐステージなんだ!
「Starring Together!」のタイトルのとおり、「みんな」には彼女たちだけでなく、われわれ観客も含まれる。豊洲PITを埋める観客たちとペンライトがあって初めて、このステージは紡がれる。
これまでの7年間余り、涙も笑顔もすべてがこの光景ににつながっている。

声を合わせて 最高の瞬間を 永遠に続く ストーリーつなごう
歌が終わり、「ありがとう」の声をお互いに響かせながら、幕が閉じる。
ここで輝く夢を見た。最高の瞬間を心に刻む。きっとそれがこれからの未来に、永遠へとつながる。
アンコール
アンコールに応えて再び幕が開く。会場の時間の都合もあり非常に手短かながら、各メンバーがひとりずつ最後の想いを伝えていった。これだけは伝えたいと用意した言葉をちゃんと話す者もいれば、惜しむように最後のコーレスをする者、泣きだして上手く話せない者もいたが、それぞれにきっと何かが伝わっただろう。
一番新人の日向ましゅからデビュー順を遡ってひとりずつリレーのようにタッチしながらつないでいく。泣いたメンバーをなぐさめたり、お互いに抱き合う様子も見られ、観客の目にも涙が浮かんだ。
日向ましゅ はーい、ましゅだぞー! はじめての全体ライブでめっちゃ緊張したんですけど、とってもとっても楽しかったです。本当に会いに来てくれてありがとうございます。これからもBIG LAB!

天羽衣 初めての全体ライブ、来てくれてありがとうございました。泣いてない、泣いてないです!(*泣いている) 改めてななしいんくの一員になれた気がしました。これからもおそばに置いてくれたら嬉しいです!
蛇宵ティア 今日ここ、豊洲PITが日本で一番暑くて幸せな場所でした! ありがとう! また君とライブで会えますように。大好き!
瑚白ユリ 今日はみんなと一緒にこんな素敵な時間を過ごせてとてもハッピーなメンヘラでした。ありがとうございます。また会えるのを楽しみにしてます! またねー!
家入ポポ ありポポございました! 豊洲PIT最高! 最後にコーレス行きたいと思います! みんなポポのオリ曲聞いてるね! ポポー!ポポー!ポー!最高!
涼海ネモ おすずみー! みんなでこのステージに立てて本当に楽しかったです。次は同時視聴してる3人も一緒に同じステージに立ちましょう!
茜音カンナ みんなの声援が最初からすごくて、ずっと幸せでした。勇気を出してななしいんくの門を叩いて、入れて、改めて良かったなって今日思えたし、今こちらを見てくれてるすべての皆様に会えて本当に幸せです。今日はありがとうございました!
月野木ちろる こんなに素敵なオタクの皆様にちろ先はななしいんくのキモオタ代表だからなんて言ってもらえるような、そんなもう立場じゃないんですけど。ななしいんくが大好きなみんなが大好きです! ななしいんくはいいぞ!!!!
湖南みあ わたしは去年の今ぐらいの時期にななしいんくを卒業していました。それを撤回して今ではこんな大きなステージに立てています! それはまぎれもなく、一緒にいるメンバー、そして応援してくれるリスナーのみんなのおかげです! もう一度わたしに夢を見させてくれてありがとう!
飛良ひかり 今日サプライズで新ビジュの3Dをお披露目しちゃいました! どうだったかなー、かわいかったかなー! こんなにも素敵なステージでみんなにお披露目できてうれしかったです! ありがとうございました! これからも応援よろしくお願いします! 大好きー!
瀬島るい 現地民のみんな、全力の声援をありがとう! オンラインで応援してくれたみんなも、盛り上げてくれてありがとう! 最高の仲間と今日を迎えられて本当に幸せです。旧ビジュの瀬島も新ビジュの瀬島も好きでいてくれて本当にありがとうございます! また絶対会おうね! 大好きだー!LOVE!
龍ヶ崎リン 楽しかった?(会場「楽しかったー!」) その声がみんな聞きたくて、ななしいんくのメンバーも運営さんもその声を聞くために今日までライブを作り上げてきました。みんなの声を聞けただけで本当にぼく、めっちゃ幸せです。ずっと好きでいてくれて本当にありがとうございます! またステージで会いましょう!
柚原いづみ (泣きながら)みんなライブ楽しかったですかあああ。いづみは最高に幸せでした! 一生に一度しかない8月22日をみんなと過ごせて楽しかったです、ありがとうございました!これからもよろしくお願いします! くくー!
風見くく いづみ泣くなーーー! がんばった!」「手短にいきます! 今のななしいんくの風見くくが今ここにいるのは、今見てくださってるみなさんと、ななしいんくのみなさんのおかげなんです、本当に。本当にみなさんありがとうございます!
季咲あんこ 現地来てくれたみんな、配信を見てくれたみんな、楽しかったですか? わたしはめっちゃ楽しかった! 最高のステージをプレゼントありがとうございました! またいつかお会いしましょう!
花奏かのん 今回ははじめてのふぇす出演だったんですけど、本当に楽しかったです。いつもは舞台袖からこれまではステージを見てたんですけど、ステージの上からの景色ってこんな感じだったんだなって。今日は出演者みんなも主役だったんですけど、来てくれたみんな、配信を見てくれてるみんなも主役だったよー!
杏戸ゆげ 今日は本当にありがとうございました。今日一緒に過ごした時間がみんなの明日を少しでも明るくできますように。最高に幸せでした。また遊ぼうね~
堰代ミコ 人間たち、楽しかったー? 最後に、人間たちの声さ、次いつ聞けるか分からないからさ、大好きって言ってくれる? じゃ聞くよ? 僕たちのこと? (会場「大好きーーーー!!」) ありがとー!!!!

西園寺メアリ いつもわたしたちのためにこうやって集まってくれて、力をくれて、本当にありがとうね。これからもわたしたちのことよろしくね、頼んだよ? いいかな? それじゃ、帰ったらよっぱっぱだー!
島村シャルロット 今日は暑い中、来てくれてありがとうございました。みんなのおかげ、ななしいんくメンバーのおかげで、素敵な夏の思い出ができました。最後まで気を付けて帰ってください。バイバーイ!
宗谷いちか 今日は長時間ありがとう! いろいろありましたけれども、正直、全部大成功で終わらせたかったんだ、俺は! 初めてのメンバーもいたから! それがちょっと悔しい! けど、やっぱりライブってこういうのが醍醐味だと思うし、今日いるみんなと、今日のメンバーとスタッフさんでできたライブだなって思うんですよ! だから心からのBIGな感謝をみんなにあげます!ありがとー! 大好きー!LOVE!

因幡はねる 今日は暑い中、しかもど平日という中、たくさんの方にこの豊洲に集まっていただき、みなさんありがとうございます。本当にみなさんのおかげでこのライブが開催されております。わたしたちだけではライブは開催できないので、スタッフさんもたくさん、この日のためにご尽力いただき本当にありがとうございます。
この半年ぐらい、私あんまり上手くいかないなってことが多かったんですけど、このライブのために準備してるときに、応援してくれる方からたくさん声をもらって、今日もみなさんの顔とか見て、これからも頑張っていきたいなと改めて思いました。
超個人的な話になると、以前一緒にライブができなかった月野木ちろるが今回このライブに参加できたのが本当に嬉しくて。みんながちろるを信じて待っていてくれたおかげでこのライブが迎えられたと思いますので、本当にありがとうございました。
わたしたちはこうやって続けるってことが仕事だし、続けるってことが一番難しいなってこの仕事で思うんですけど、応援してくれてるみなさんも、応援し続けるってのが本当に大変なことだと思いますので。みなさんあんまり見捨てずに、あんまり他に浮気せずに、ななしいんくを続けて応援してください。
本当に最後の曲です。最後まで、忘れられない瞬間にしましょう。

最後の曲は全員で「瞬間イマジネーション」。前回の全体ライブで初披露された、ななしいんく最初の全体曲。

「一人一人の光が そのまま 混じり合って虹を作る」の歌詞の通り、色とりどりの光が豊洲PITを虹のように埋め尽くし、メンバー揃っての「ありがとうございました」でステージを締めくくった。

セットリスト・参加出演者
- 「GIRLS’ LEGEND U」出演者全員
- 「佐賀事変」宗谷いちか, 風見くく, 龍ヶ崎リン, 湖南みあ, 茜音カンナ, 涼海ネモ
MC. 宗谷いちか, 堰代ミコ, 飛良ひかり, 茜音カンナ, 涼海ネモ
- 「ジャックポットサッドガール」堰代ミコ, 杏戸ゆげ, 花奏かのん, 飛良ひかり
- 「ラビットホール」島村シャルロット, 西園寺メアリ, 瑚白ユリ, 蛇宵ティア, 天羽衣
MC. 因幡はねる, 季咲あんこ, 柚原いづみ, 天羽衣, 日向ましゅ
- 「アイドルライフスターターパック」因幡はねる, 季咲あんこ, 柚原いづみ, 瀬島るい, 家入ポポ, 日向ましゅ
- 「ハオ」因幡はねる, 杏戸ゆげ, 柚原いづみ, 風見くく
- 「仮装狂騒曲」杏戸ゆげ, 湖南みあ, 日向ましゅ
ななしいんくオリソンメドレー前半
- 「ケラケラのカケラ」宗谷いちか
- 「きらめきわーるど」瀬島るい
- 「ヒューマノイドでも恋がしたい!」日向ましゅ
- 「シャングリラ」天羽衣
- 「黄色いラビリンス」西園寺メアリ
- 「あくまで私のお友達の話です。」月野木ちろる
- 「独占予報」家入ポポ
- 「シスターピース」季咲あんこ
- 「もっと今を愛していたら」瑚白ユリ
- 「ほっぴんぐすたー」杏戸ゆげ
- 「アオイロテイル」飛良ひかり
MC. 西園寺メアリ, 杏戸ゆげ, 花奏かのん, 風見くく, 龍ヶ崎リン, 湖南みあ, 月野木ちろる
- 「ジョハリ」宗谷いちか, 花奏かのん, 飛良ひかり, 湖南みあ, 涼海ネモ
- 「カスタムラブドール」因幡はねる, 島村シャルロット, 龍ヶ崎リン, 家入ポポ, 日向ましゅ
- 「UNDEAD」堰代ミコ, 季咲あんこ, 柚原いづみ, 茜音カンナ, 天羽衣
- 「Deal with the devil」西園寺メアリ, 杏戸ゆげ, 風見くく, 瀬島るい, 瑚白ユリ, 蛇宵ティア
休憩 天絆ささは, 幽音しの, 羽流鷲りりり(映像出演)
- 「Yeah!めっちゃホリディ」西園寺メアリ, 家入ポポ, 蛇宵ティア, 天羽衣
- 「スターマイン」風見くく, 龍ヶ崎リン, 湖南みあ, 茜音カンナ
- 「DOGLAND」宗谷いちか, 龍ヶ崎リン, 茜音カンナ, 涼海ネモ
ななしいんくオリソンメドレー後半
- 「青色の明日へ」堰代ミコ
- 「VEIL」湖南みあ
- 「空白」涼海ネモ
- 「追熟」風見くく
- 「DULLY」茜音カンナ
- 「Moonshine」蛇宵ティア
- 「UMenity」柚原いづみ
- 「君と未来」島村シャルロット
- 「Twilight Stream」花奏かのん
- 「ミドリなリンゴ」因幡はねる
- 「ニュー・シネマ」龍ヶ崎リン
MC. 宗谷いちか, 花奏かのん, 飛良ひかり, 湖南みあ, 涼海ネモ
- 「Infinite Harmony」宗谷いちか, 花奏かのん, 飛良ひかり, 湖南みあ, 涼海ネモ
- 「NEW KAWAII 」因幡はねる, 堰代ミコ, 季咲あんこ
- 「ギターと孤独と蒼い惑星」花奏かのん, 飛良ひかり, 瀬島るい, 瑚白ユリ, 茜音カンナ
- 「ray」宗谷いちか, 堰代ミコ, 島村シャルロット, 季咲あんこ
MC. 柚原いづみ, 瀬島るい, 瑚白ユリ, 家入ポポ, 蛇宵ティア
- 「僕らは今のなかで」柚原いづみ, 瀬島るい, 瑚白ユリ, 家入ポポ, 蛇宵ティア
- 「プロミスザスター」杏戸ゆげ, 季咲あんこ, 風見くく, 龍ヶ崎リン, 涼海ネモ
- 「Connecting」島村シャルロット, 西園寺メアリ, 花奏かのん, 飛良ひかり, 涼海ネモ, 天羽衣, 日向ましゅ
- 「星空のエチュード」因幡はねる, 宗谷いちか, 堰代ミコ, 島村シャルロット, 西園寺メアリ
MC. 因幡はねる, 宗谷いちか, 堰代ミコ, 島村シャルロット, 西園寺メアリ - 「Starring Together!」出演者全員
アンコール
MC. 出演者全員
- 「瞬間イマジネーション」出演者全員
ライブが終わって

ななしいんくは生きることの物語である。
VTuberとしての生を生きる彼女たちの姿そのものが作品でありコンテンツである。
片や一度決意した卒業を撤回し、片や2年以上の療養の中でも復帰を信じて生還し、豊洲PITでハートを描いたふたりがいる。自分はアイドルではないとずっと裏方に徹して輝くステージを拒否したベーシストが、結婚し子を産み育て、ステージに立つことを選んだ今がある。
さまざまな理由から離れていった仲間もいる。その中で2年と、7年と、歩みを続けること自体が奇跡だ。彼女たちは強く、そして儚い。
そんな、「ここにしかない奇跡がある」。VTuberとしてでなければもしかしたら我々に届かなかった、生々しい生のドラマがある。それは時として、台本のある手の込んだ演出よりも、我々の胸を打つ。
「涙も笑顔も全部まとめて」、ななしいんくというステージを紡いでいく。
生きることは、常に挑戦であり、限られた人生、リスクを背負った賭け事で、その勝利が、敗北が、日々刻まれて彼女たちの物語になる。
「君も僕も主役だから」。観客もまたその物語の主役であり、彼女たちを応援することで自分の人生を生き、また彼女たちとの物語を紡いでいく。みんなでこの場所を作りあげていく。
「輝く夢」を見て、「JACKPOT」、大当たりなんて出ないままでも、彼女たちも我々も日々を賭していく。
それが生きるということだろう。
生のドラマを誰かが作ることはできない。それは真摯に生きることでしか描かれない。
それはライブで好きな楽曲を歌うように、過去の音楽や、さまざまな文化を受け継ぐものだろう。
いつか彼女たちが歩みを止める日も来るだろう。我々の命が尽きる日も来るだろう。
それでも、確かに生きた日々は、我々がその瞬間瞬間に情熱を注いだなら、同じように、次の時代の何かへ、「永遠に続くストーリー」へとつながっていく。
次は自分たちがこのステージにと「出ようね」「歴史つなげてこう」と同時視聴で誓った新人たちのように。
「NANASHI FES 2025 “JACKPOT”」はまさしく「ななしいんく」だった。
人が生きる姿そのものだった。
トラブルもあった。万全な体調で臨めなかったメンバーもいた。その不完全さ、その悔しさもまた、生きることの熱さ、愛しさである。
素晴らしいライブだった。とはいえ大当たり、客観的に見ての大成功だったのかは分からない。それはこれからの時間が答えることになる。
ひとつ言えることは、ななしいんくを推していて良かった、ななしいんくに「賭けて」良かった、そんな瞬間をまた改めて心に刻んでくれたということだ。
ななしいんくはいいぞ。
*本公演「NANASHI FES 2025 “JACKPOT”」の公演内容を収録したLIVE Blu-rayは10月5日まで販売中
(TEXT by myrmecoleon)
●関連リンク
・ななしいんく公式サイト
・「NANASHI FES 2025 “JACKPOT”」特設サイト
・「NANASHI FES 2025 “JACKPOT”」配信アーカイブ
・「NANASHI FES 2025 “JACKPOT”」冒頭無料映像






































































































