「きっと『VOL.2』も『VOL.3』も続いていく」新たなVTuber対バン音楽ライブ「パノライブ!VOL.1」レポート

LINEで送る
Pocket

PANORA(株式会社パノラプロ)が主催する新たなVTuber対バン音楽ライブイベント「パノライブ!」の「VOL.1」が、9月27日(土)に秋原原の某所で開催。4月に開催された「VTuberのあそびば × おしゃべりフェス in 超会議2025」の「VTuberストリートライブ」で、ニコニコ生放送ギフトランク1位を獲得した「エアリープロダクション」の赤魔アザトさんを始めとする10組のVTuberやバーチャルアーティストが約20分ずつのステージを披露した。トータル4時間30分以上の大ボリュームとなった熱いライブをレポートする。


明堂しろねさんの「初恋サイダー」で開幕!

開演時間の少し前、会場に入るとまず目に飛び込んできたのは、出演者応援企画として事前に販売された「推しのぼり」。出演者のビジュアルが印刷された約180cmの華やかなのぼりが、客席を囲うように壁際にズラリと並んでいるのは壮観な光景。こののぼりはライブの終了後、持ち帰ることも可能で、貴重な推しグッズにもなりそうだ。

開演時間になり、短いイントロの後、可愛く優しい歌声が聴こえてきた。初めての「パノライブ」でトップバッターの大役を務めたのは、「ハコネクト」所属の明堂しろね(めいどう・しろね)さん。1曲目は、Buono!の「初恋サイダー」だ。間奏で、しろねさんが「盛り上がっていくぞー!」と叫ぶと、客席から歓声が上がり、コールも始まる。対バンライブのはずなのに、観客が振っているペンライトの色は赤で統一。まるで全員がしろねさんファンのようだ。

「『パノライブ VOL.1』のトップバッターということで、緊張しておりますが、会場のみんなで最高に盛り上がっていきたいです!」

MCでの宣言後は、「超時空シンデレラ」ランカ・リーの「星間飛行」、坂本真綾の「プラチナ」、「サクラ大戦」の主題歌「檄!帝国華撃団」を披露。「(配信でも)意図せず、老人会歌枠になることが多いので、古のオタクの皆さま、ぜひお気軽に遊びに来て下さーい!」と、YouTubeチャンネルで定期的に行われている歌枠をアピールした。最後は、9月14日(日)に発表されたばかりの1stオリジナル曲「Strawberry Story」を披露。疾走感あるメロディに乗せた優しくも力強い歌声で、会場をさらに盛り上げた。

休憩時間を挟んだ二人目は、個人勢VTuberの巻乃もなか(まきの・もなか)さん。アニメ「推しの子」の劇中歌「サインはB」を熱唱すると観客と一緒に「うりゃおい! うりゃおい!」とコールも入れて、1曲目から会場を盛り上げていく。曲の隙間に差し込んできた「サイリウムも見えてるよー」という言葉も非常に嬉しそうだ。

自己紹介を含んだ短いMCの後は、femme fataleの「だいしきゅーだいしゅき」、ボカロ曲の「メランコリック」と異なるジャンルの曲を続けて、表現力の幅広さを見せつける。最後の4曲目は、会場を知った時から「絶対にこの曲を歌おうと決めていた」というボカロ曲「神のまにまに」。サビで観客も一緒に声を揃えて「ラララ」と歌う姿は本当に嬉しそう。去り際の「ほなの~」といういつもの挨拶も非常に可愛かった。

3組目は、2人組のVR音楽ユニットYSS。ステージに登場したコンポーザー&DJのyopi(ヨピ)さんと、ボーカルのSorte(ソルテ)さんは、自己紹介と共に両手を前でクロスさせる「YSS」のポーズ。1曲目は、人気曲「Beyond our dreams」を披露した。画面に、曲中のフレーズ「おんゆ~」の文字が浮かぶ演出も面白い。

yopiさんが産み出す楽曲のクオリティと、Sorteさんの圧倒的なボーカルで、さまざまなフェスイベントへ出演する度に話題になっている2人は、全6曲のオリジナル曲を立て続けに披露。その中には、「VTuberストリートライブ」ニコニコ生放送ギフト2位の特典としてPANORAで公開されたインタビューで、「YSS初心者にお薦めの曲」として挙げていた「Beyond our dreams」「Wednesday」「WE ARE YSS」がすべて入っており、記事を担当したライターとして嬉しい。今回、わずか20分のステージで、どれだけの新規ファンを獲得したのだろうか。

4組目、アニメ「おジャ魔女どれみ」の主題歌「お邪魔カーニバル」を歌いながら登場したのは、「ソニー・ミュージック」が運営する「VEE」所属の魔王トゥルシーさん。魔王を名乗りながらも非常に可愛らしいルックスのトゥルシーさんにはピッタリの曲だ。楽しそうに歌う姿には、妙にホッコリしてしまう。トゥルシーさんの右側には、大きなQRコードが表示され、その下には「これ絶対に読み込むなよ(盛大なふり)」と書いてある。試しに読み込んでみると、想像どおり、魔王トゥルシーさんのYouTubeチャンネルが開かれた。

2曲目を歌う前には、客席に向かって「女の子、手を上げて」とリクエスト。数人の手が上がると、「きゃー!」と特大の声を上げて歓喜していた。LiSAの「crossing field」の後は、「ソニー・ミュージックの偉大な先輩、米津(玄師)先輩の曲」という紹介から「マトリョシカ」をカバー。最後に、7月4日(金)公開したオリジナル曲「地獄の果てまでShall we dance?♡(+ゆかいな仲間たち)」をライブでは初披露。「帰りたくない!」と叫びながら消えるまで、面白さと歌唱力の両方で会場を盛り上げ続けた。


二藍しぃあ&数寄屋橋れんげは、MCでも盛り上げる

5組目、「Vebop Project」所属の明鏡止水ふわり(きよらか・ふわり)さんが最初に歌ったのは、アニメ「化物語」の主題歌「恋愛サーキュレーション」。耳がとろけそうなほど甘く可愛い声は、曲のイメージにもぴったり。会場の後ろから取材していたため、観客の表情は確認できなかったが、きっと、誰もがほっこりとした笑顔になっているに違いない。MCでは、今回が初めてのライブイベントで、緊張しているけれど、とても楽しみにしていたことを話し、「最後まで一緒に盛り上がってくれると嬉しいです」と伝えると、観客席からは「了解!」とばかりに大きな声が響いた。

2曲目、さユりの「航海の唄」では、1曲目とはガラッと変わって、凜とした力強さもある伸びやかな歌声を披露。最後の3曲目、オーイシマサヨシの「UNION」でも会場中をさらに盛り上げて、「みんなと、また会えますように」というメッセージで初めてのライブを締めくくった。

6組目もふわりさんと同じ「Vebop Project」所属のVTuber。二藍しぃあ(ふたあい・しいあ)さんと、数寄屋橋れんげ(すきやばし・れんげ)さん。3人組ユニット「もりもりにゃんこめし」のメンバーだが、今回は2人での登場だ。いきなりのMCで息の合ったやりとりを見せ、「上手い人の歌はたくさん聴かれたと思うので、私たちの漫才……じゃない(笑)。(歌は)箸休めとして聴いていただければ」と少し自虐的なアピールをしたが、アニメ「戦姫絶唱シンフォギア」の劇中歌でデュエット曲の「逆光のフリューゲル」を熱唱。MCを聴いている時から2人の声は相性抜群だったが、歌声のハーモニーも心地良い。客席には、ペンライト二刀流の人も多く、赤と紫の2色に分かれた光も奇麗だった。

その後は、「威⾵堂々」「嗚呼、素晴らしきニャン⽣」「いーあるふぁんくらぶ」とさまざまな曲調のボカロ曲を披露。すべてアドリブということが信じられない軽快なMCと、力強さも可愛さも持ち合わせた歌声で、観客を魅了した。

7組目は、今回、唯一の男性ボーカリスト音御光歌(おとお・こうが)さん。登場と同時に元気良く自己紹介すると、まずは1stオリジナルソング「デカダンス・ラブストーリー」を披露。ロックなメロディと歌声で、いきなり観客たちの心を掴むことに成功したのか、光歌さんが「おい! おい!」と一度、叫ぶと、その後は観客席からも大きな声でのコールが続いた。MCで「今回、(出演者に)男性は少ないのですが、皆さん、男性でも盛り上がってくれますよね?」と客席に呼びかけると、おそらく男性が9割以上を占めていた客席からは、野太く大きな「イエーイ!」という声が上がる。

続いて、米津玄師の「Plazma」、ヨルシカの「斜陽」という大ヒット曲を弾き語りで披露すると、観客席からの声と会場の熱気は高まり続けた。来年の1月11日(日)のワンマンライブについて告知した後、ラストは、8月24日(日)に公開した3rdオリジナルソングの「VIVIT」を披露。オリジナルとカバーの両方でVSingerとしての高い実力を証明し、会場のホールをライブハウスのような空気に変えた。


大トリを務めたのは「LIVEのエース」赤魔アザト!

8組目として登場したのは、VEEの月白累(げっぱく・るい)さん。「デジタルツールを通さなければ他者から認識されない」という奇妙な病いを患う少女で、3Dモデルの身体でスクリーンに登場すると、真っ白背景の世界で自分を映すカメラを覗き込むようにしている。そして、まるで、MVのような状況のまま、なとりの「プロポーズ」を歌い始める。ダウナーな歌声は、オリジナルとは少し異なるが曲調には非常にマッチしていた。

曲が終わると、真っ黒なスクリーンの中央に月白累さんのロゴが映る中、サーっというホワイトノイズと共に、「ただいま。遅くなって、ごめんね。良い子にしてた?」という女の子の声が聴こえてくる。これは、累さんの声なのだろうか? さらに、ドアが閉じてカギもかかった音の後には、鎖を引きずる音も……。何が起きているか分からない不穏な空気の中、女の子の発言は、「ねえ、どうして逃げようとするの?」「ここからは、出ちゃだめ」「2人だけの世界に行こう」と徐々にヤンデレ化。最後に「教えて、あなたは誰なの?」というセリフの後、画面が切り替わると、累さんの身体はLive2Dに変化。背景に何もない空間で、ボカロ曲「化けの花」を歌い始めた。

筆者と同じく状況が掴めていない観客も少なくはなさそうだったが、月白累さんの情念的なボーカルに引き込まれているようだった。累さんは、MCを一度も挟まないまま、全6曲を歌唱。合間に少女のセリフを挟みながら作られていく独特の世界観は、対パンライブである「パノライブ」の中でも特に異彩を放ち、非常に魅力的なアクセントにもなっていた。

9組目は、「MEWLIVE UNIVERSE」所属の多次元アーティストSZNO(すずの)さん。Live2Dの身体でステージに登場すると、3rdシングル「21g」を披露。疾走感あふれるメロディに乗せた明るく華のあるボーカルで、会場の空気をガラリと変えていく。「『パノライブ』、楽しんでる?」と呼びかけた後の最初のMCでは、「普段、みんなの夜が楽しくなるように、歌ったり、踊ったりしています」と自己紹介。

「今日は、カバー曲も歌うから、最後まで一緒に楽しもうね」と、優しく語るとボカロ曲「モザイクロール」、緑黄色社会の「Mela!」と大ヒット曲を続けてカバーした。「モザイクロール」では、サビの力強いロングトーンが特に印象的。「Mela!」では、「みんなも一緒に!」と客席に呼びかけて、一緒に「ラララ」の声を響かせた。ラストの4曲目は、1stシングル「xx」(バイバイ)。MCも歌声もキャッチーかつ真っ直ぐで、ヒロイン感の非常に強いアーティストだった。


大トリを飾るのは、「エアリープロダクション」の「LIVEのエース」赤魔アザトさん。いつもの自己紹介の後、ボカロ曲「右肩の蝶」を歌い始めると、さっきまでの可愛く優しい声から一変、力強く音圧もあるボーカリストの歌声へと変わる。1曲目から大きな歓声が起きているが、初めてアザトさんの歌声を聴いた人は、きっと驚いているはず。歌い始めると同時に、スクリーンのアザトさんの髪型は、爽やかなショートカットへと変わっていた。

2曲目でHIMEHINAの「V」をカバーした後の3曲目は、4月12日に発表した初オリジナル曲「Creation」。アザトさんの安定したボーカルはもちろん、ラップパートでの観客のコールも完璧で、会場はさらに熱くなっていく。「VTuberのあそびば × おしゃべりフェス in 超会議2025」の「VTuberストリートライブ」でニコニコ生放送ギフトランク1位を獲得し、「ごほうび」として、「パノライブ VOL.1』の大トリを任されたアザトさんは、その経緯を伝えた後、客席と「KP」しながら水分補給。

4曲目にAimerの「カタオモイ」を情念たっぷりに歌い上げた後のMCでは、「この『パノライブ』は『VOL.1』でございますから、きっと『VOL.2』も『VOL.3』も続いていくと思います。なので、今後の『パノライブ』もぜひ遊びに来て欲しいし。今日、出演された皆さんのYouTubeにもぜひ、遊びに来て下さい」と挨拶。客席からは大きな拍手が起きる。

そして、最後の曲は、アザトさんも参加していた「Team.ホシグマ」のオリジナル曲「夢ミ星」。未来への希望に満ちた楽曲で、初めての『パノライブ』を締めくくった。さらに、本日の出演者をアーティスト写真と共に、1組ずつ紹介。観客と一緒に名前を呼んでいく。「邪神」とは思えないほど、本当に優しくて心配りのできるアーティストだ。

最後まで、出演者と観客が一緒にライブを楽しもうという空気に満ちていた「パノライブ」。対バンライブならではのジャンルを問わないごった煮感も楽しく、きっと多くのアーティストとファンの新たな出会いの場にもなったことだろう。11月15日(土)には、「VOL.2」が開催されることも発表。出演アーティストの発表が今から楽しみだ。

(TEXT&PHOTO by Daisuke Marumoto

●関連リンク
おしゃべりフェス(公式X)