明透 2ndワンマンライブ「BIRTH」レポート 温かな「愛」を伝えてくれた歌声と賛歌

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KAMITSUBAKI STUDIOのSINSEKAI RECORDに所属するバーチャルシンガー・明透(あす)が、活動4周年記念イベントとしてあすナー’s meeting「さまーすくーる ASCHOOL!」と、2ndワンマンライブ「BIRTH」の2公演を、2025年8月30日に豊洲PITで開催した。

「さまーすくーる ASCHOOL!」は太陽がまだ高い12時半から、「BIRTH」は18時からそれぞれスタートする形となっており、ともに大きな賑わいを見せていた。今回は「BIRTH」にフォーカスをあて、彼女の音楽ライブをレポートしていこう(アーカイブ、10月6日23時59分まで)。

バーチャルシンガー・琶舞(べま)もゲストとして出演した


1曲目から圧倒された歌声の力

8月の終わり。35度を超える気温と、まるで熱風のように吹き付ける海風。海にほど近い豊洲PITで開催された2つのイベントは、そんな夏の終わりの熱暑から隠れ、確かな温かさをもって開催された。

コアなファンを集めたファンミーティングから、ワンマンライブ「BIRTH」へ。陽の落ちた午後6時にスタートした。

ステージの大画面にノイズが走ると、チカチカと明滅してはブロックやグリッチのノイズに変わり、波形や細やかに走る文字の数々が出現。そこからピアノの音色と鼓動がまじり始め、オレンジ色の輪郭を帯びていく。

視点がゆっくりと引いていくと、ノイズや鼓動を鳴らしていた部分は、ある人物の心臓部分であることがわかる。もちろんその人物は、この日の主役の明透。心臓に流れる穏やかさと激しさをサイバー感に寄せた描写で描いてみせた。

そのまま1曲目の「リンカーネイション」に移る。鍵盤の音色が煌めくように響き、バスドラムのキックとハイハットの刻みが静かに鳴る中、明透はスゥっと歌い始めた。静かな導入に合わせて、力感なく伸び上がるように歌い出していく。会場ではトラブルもあったが、それが演出と見えてしまうぐらいに1曲目からフルスロットルで響き渡る彼女の伸びやかなボーカルに圧倒されてしまった。

オレンジ色に染まった会場の照明、衣装の胸元にクロス型に光るオレンジ色の灯火、そういった光源に対する衣装の反射。明透は大きくゆったりと動き、背中を反って顔を上げ、かとおもえば腰を落とし、たどたどしく歩きながら、腕を大きく伸ばす。細く、薄く、力を込めながら丁寧にメロディをなぞっていく明透の歌声と動きに、集まった観客の視線は集中する。

ただ側に居させてください 命 焦げ付くまで

そして幾千命を紡いで 私に届けて

それを今は奇跡と呼ぼう 正しくなくとも

パフォーマンス、技術、演出、そのすべてが繋がり、明透という人物が観客を魅了してしまったのだ。それも1曲目の「リンカーネイション」、たった数分の間でだ。

いきなりのスローナンバーが終わり、バンド隊によるファンキーなセッションから2曲目「HEAVEN IS GONE」へと移る。先程の緊張感ある流れもあり、バンド隊の休符を活かしたアンサンブルやアレンジ、明透の語尾をあげたり、語尾を切るような歌い方もより映えて聞こえる。

筆者がここで気づいたのは、普段の衣装が長袖のところ、この日の衣装は夏に合わせてノースリーブで、ライブのキービジュアルと一緒の衣装となっていた。 前腕の中ほどまで覆われるオレンジ色の指なし手袋をつけており、暗くなっても両手のオレンジ色の輝きが目に付く。ジャジーなアンサンブルに合わせて艶っぽく歌い、ステージ左へ右へとふらりふらりと歩くように踊っていく。

早々にディープな世界観へと観客を誘ったところで、3曲目は「Shiny」へ。グッとアップテンポなグルーヴへと持ち込み、シティポップな1曲で観客を楽しませていく。イントロと歌い出しのタイミングで観客から歓声が上がる中、「豊洲PIT~! 今日は来てくれてありがとぅ! 最後まで楽しもうね」と観客に声をかけると、より大きな熱気と歓声が沸き起こる。スムースなアンサンブルにあわせ、クールにダンス&ボーカルを決めてみせる。

シティポップ──。ライブによく行かれる方は当然ご存知だろうが、開演前には観客の気分を盛り上げるために会場にさまざまなアーティストの楽曲が流れている。単なるBGMが流れていることもあれば、聞き馴染みのある邦楽、誰だ? この人は?と思わせる古いオールディーズまで、その日そのタイミングで流れるBGMは様々だ。

この会場BGMは、アーティストのスタッフやアーティスト本人がセレクトしているパターンが多い。アーティストの嗜好性を反映したうえで会場全体を本人の色に染めるという意味合いもあるし、アーティストが奏でる音楽性に合わせたセレクトで観客を導入しやすくするという狙いもある。

荒谷翔太、AKASAKI、iriに藤井風。よく音楽を聞いている明透ファンならピンとくるはずだが、この日の会場BGMは後者、音楽に身を委ねさせようという狙いが透けて見えた。

明透の音楽を端的に一言でまとめてみようといわれれば、「都会にマッチしたシティポップ感」と筆者はまとめるだろう。この日のライブでは生バンド隊を従えての公演ということもあり、その色合いがグッと強まっていたように感じた。

4曲目「モノローグ」は、どことなく内省的な感情を歌っていく1曲であり、ゆえに心の内にある弱さをにじませながら、サビに入ると張り詰めた感情を高ぶらせるよう声を張り上げていく。その些細なボーカルコントロール、加えてドラミングの細やかさにも引っ張られ、自然と高揚感が増していく。

続く「スロウリー」に入ると、原曲から少し違ったバンドアレンジから楽曲へと入っていく。観客から自然とハンドクラップが生まれ、明透が大きく腕を横に振れば、観客もそれに合わせて横に振って音楽を楽しむ。そんな光景を見れたおかげだろうか、明透の歌声から心晴れやかに歌っているのがうっすらと伝わってきた。

この日最初のMCパートに入ると、ウキウキとした心境を隠しきれずテンション高そうに観客へ語りかけてくる。

「バーチャルシンガーの明透ですっ! 今日は!みんな来てくれてーー!ありがとぉーーー!!!!」

「最初から5曲連続で歌ったけど、みなさんまだまだ元気、ありますかーッッ!!!!」

興奮したムードでこんな風に観客へ話しかける辺り、飾らずにステージに立っていることが伝わってくる。昼に開催されたファンミーティングに来てくれた人、猛暑のなかで来てくれた人に声をかけて労い、笑顔で観客を迎え入れようとしていた。

6曲目として歌い始めたのは「インパーフェクト」だ。くるりくるりとステージ左へと回っていき、ビル群をメインにしたMVが流れて楽曲へと入っていくと、優しげな声色でボーカルを取る。七色のサーチライトが会場を染めるなか、観客からは「ハイ! ハイ!」と合唱が起こる。

柔らかな鍵盤の音色と共に、体をくねらせながらポージングしていく様は、まるでバレリーナのよう。思えば腰・おしり側に透明なプリーツが見えるが、もしもこれが背中についていたらまさに妖精のように見えるだろう。

そんなことを思っていると、「ピアス」「オレンジ」と次々に歌っていく。ベースサウンドとドラミングのリズムパターンもあってグッとファンキーさを増し、ダンサブルなグルーヴが会場のなかで渦巻く。腕を下に伸ばして腰といっしょに横に振ってみたり、サイドステップを踏みつつステージ横へ駆け出したり、ステージを縦横無尽に動いてパフォーマンスする彼女は、まさに可憐さを振りまいていく。

明るくクリアな楽曲が比較的多く披露されてきたここまでの流れから一転、EDMライクで攻撃的なイントロが鳴り響き、観客はワッと盛り上がってすぐにハンドクラップ&コールで楽曲を待ち構える。

バンドメンバーを簡単に紹介したあと、「illumina」へと突入した。原曲はエレクトロ系のダンスチューンだが、ライブでは上下に動くベースラインが軸となったバンドアンサンブルへと変幻し、よりアグレッシブな1曲へとシフトする。

以前のライブで理芽と春猿火がMC中にイジっていた”首ぐるりん”の振り付けを筆頭に、頭を下げた状態で右腕をグルグルと回したりサイドステップをするダンスなど、この曲のダンス・振り付けはどの部分も印象的。披露された回数は少ないが、いわゆる「ライブ化け」して観客を圧倒する1曲なのだ。

そしてこのライブハウスという密閉された空間において、この曲のサビはある種の救いの言葉となって響く。


全知全能になってしまってんだよ今夜

光を浴びてる3分間だけ

イルミナになれば 酔えば

本能で上がる体温に

支配されていたい

銀のリンゴに口をつけるように

魂をほんの少し売ってるだけ

リズムに打たれた憑かれた脳内で

さあわたしの存在を証明してちょうだい


「今この瞬間だけ全知全能の神のように思わせてくれ、自らがいるべき場所があると赦す」という救いの調べ。イントロの時点で観客が大いに喜び、最後まで大いに湧いていたのが何よりもの証拠だ。


初お披露目の琶舞 二人のハーモニーに魅了される

ライブフロアがグッとボルテージが上がったところで、次の曲のイントロが流れ始める。察した観客たちから次々に歓声が起こる中で、「さてお次は、お呼びしているゲストと一緒に歌いたいと思います。この曲、みんな分かる?」と明透がMCすると、今年4月にデビューしたばかりのバーチャルシンガー・琶舞(べま)が登場し、「Symbiotic Dominion」をデュオで歌唱したのだ。

この日、この歌唱が琶舞の初ステージ、何より明透との合唱となる注目のシーン。曲展開が激しく入れ替わる中、コロコロと声色も変えながら絡み合う2人のボーカルがとても心地よい。

MCに入ると、スタージ左側でキャッキャと嬉しそうに話しかける明透に対して、右側で穏やかそうに振る舞い、丁寧な言葉づかいで応答する琶舞。黒ドレスにピンク色のウェーブかかったロングヘアーをなびかせる姿もあり、わずかな時間で”麗人”なイメージを植え付けてくれた。

初めて観客の前で会話する2人だが、すでに仲睦まじいやり取りを見せており、どのような会話をしているかは現在配信中のライブアーカイブをぜひ見てほしい。実際に並んだ2人を見て「意外なほど身長差がなく、ほぼほぼ同じくらいの身長なんだな」と驚いたファンは多いだろう。

続く楽曲「ライトイヤーズ」でもデュオで歌唱した明透と琶舞の2人。明透にくらべるとすこし太めかつ低めの声・トーンが持ち味であろう琶舞の歌声、そこに明透の声がマッチするとハーモニーがとても心地よい。歌い終わって琶舞が退場する際には、明透は無数の投げキッスを飛ばして見送ったのだった。

ダンサブルかつアグレッシブなパフォーマンスで徐々にもりあげ、琶舞を呼び込んで初歌唱をともにする。会場をグッと盛り上げた前半から中盤を終え、ここでステージは暗転、空気がスッと収まったところで、明透はアカペラで「Dazzling」を歌い出したのだ。

大きく間を置き、呼吸を吸い込みながら情感を込めて歌い出したあと、鍵盤のバッキングにアコースティックギターが混ざり合う。原曲とはまったく異なるアコースティックなアンサンブルで、スローバラードなアレンジとなった「Dazzling」が会場へと広がる。

革製のバーチェアのような高級感ある椅子に座り、センチメンタルさを訴えるボーカルをみせる。吐息混じりに優しげなタッチから、芯のある声色へ、曲の流れとともに変わっていく。白黒を基調にしたリリックムービーに、淡い色に染まった照明、そして終盤のサビに入った瞬間に明透の顔を真正面から捉えるカメラワーク……先ほどまでの熱気は、感傷の波へと変わっていったのだ。


続く曲は「アンメルト・アンブレラ」。静かなドラミングにウッドベースが混ざり合い、よりアコースティックバンドらしくなる。

こういったアコースティック編成で何よりも特徴となるのが、音の軽やかさ・ヌケの良さ・音の薄さ、それらに伴う音密度の薄さと表現したいサウンドスケープである。全体的にあっさりかつ淡々としたサウンドになりやすく、当然そういった狙いで編成を組まれている。楽曲が内包している寂しさや孤独感を浮きぼりにするだけではなく、明透本人のボーカルでより印象深く刻みたいからだ。

原曲とは異なるアレンジメントによってあらわになった感傷的なメロディやメッセージを、明透のボーカルがグイグイと照らし出していく。ラップ&フロウのようなバースは原曲通りだが、原曲にはないメロディを挟むファイクやハミング、ファルセットから地声にスッと変わっていくところも違和感ない。

音数や音密度が薄くなってボーカルが自然と映えるフォーメションの中、素晴らしいボーカルで孤独感を歌ってみせた。見ている人の多くが引き込まれたのはいうまでもない。

さらにトドメの一撃と言わんばかりに「ソラゴト」へ。彼女のディスコグラフィでもトップレベルに人気を集める楽曲をアコースティック編成で披露するわけだが、当然これも原曲とは違うアレンジに。

鍵盤による入りと明透のボーカルのみで進み、穏やかにウッドベースやドラムが音を重ねていく。

いわゆるバラードバージョンと言っても差し支えないほどのしっとりとした演奏に、ロングトーンを含めつつ様々な声色を駆使しながら、明透はウェットな質感で歌い上げていく。椅子に座っているにも関わらず、静止するどころか、腕をくねらせたり頭を振ったりと上半身をくねらせながら、気持ちよさそうにボーカルを響かせる。

このライブ中盤でのアコースティック編成による3連打は、かなりインパクトあるセクションとなった。溢れんばかりにセンチメンタリズムを込めたパフォーマンスで、「ボーカリスト・明透、ここにアリ」と存在感をハッキリと示したハイライトだったといえる。


スローナンバー3連打でしんみりとしたムードが会場に広がる中、MCパートに入ると、「ありがとうございました。アコースティックアレンジどうだったでしょうか?」と明透は満面の笑顔で会場に話しかけた。若干緊張感がとけたからだろうか、照れくささを隠しきれず、ピョンピョンと体を動かしたりステージの左右へ歩きながらMCをつづける。

「空気壊すようで悪いんだけどさ?ちょっと飲みたいものがあるの?いい?」というと、後ろを振り向いてカシュッとなにかを開け、「それでは!わたしの未来に!かんぱーい!」と観客全員と乾杯をともにしたのだった(はたして彼女は何を開けたのか気になるところだ)。

「本当に空気もったいないよね?やっと真面目に話せる空気になったのにさ?ヤバイね、本当に」

少し反省しながらも気を取り直し、座りながら歌っていることや風のように動いて歌う自分のことについて触れ、今度はバンドメンバー4人に声をかけて会話することに。ギターの松本コーキに声をかけて、返事が返ってくると「キャー!」とウキウキな反応をみせる。

そんな調子で、ドラムの直井弦太、ベースの村濱遼太、キーボード&ピアノの大松沢ショージ、次々と話しかけ、ライブ練習やオフモードでの彼らの姿について話しながら、仲の良さをアピールする時間となった。


次第に楽しげなムードへと繋げていった中で、「次の曲はスキップしたくなるような、あの曲です」と一声かけ、「ブルーナイトダーリン」を披露したのだった。

はじけるようなドラムパッドのリズムと丸みを帯びた鍵盤のバッキング、そこに滑り込むようにスムースなボーカルが入り込む。青と薄緑の照明が会場内をグイグイと照らし出していく。

すこしハネあがるような歌い方、ハキハキと歯切れのよい発音で歌っていくボーカルは、チルなムードのなかに浮き立った気分がどことなく漂っていることを体現するようだ。両足を交互にクロスするようにあげるダンスもあり、愛らしさ増し増しで届けられる。

ワウギターの印象的なギターリフがリードする「0g」では、先程のナイトムードから一転し、夕暮れ模様を描写するムービーにあわせて、オレンジ色にステージが染まる。

腕を大きく広げつつ左右にステップを踏み、ナイーブな感情や考えが頭のなかでグルグルと巡っていく感覚を歌にする。力強さや弱々しさといった一面性では捉えられない雑然としたフィーリングが、観客の心へと浸透していくようだった。

「Spiral」にはいると、ダンスビートとギターリフのハネたサウンドに明透のボーカルもパチっとハマっていく。

「愛しくなれば そうやって毒されるの」という歌詞が印象的だが、思えば「毒」というと、徐々に体を蝕むように広がっていくのが想像される。

人の感情の機微や音の響きもまた、衝動的に動くものもあれば、ゆっくりと滲むように広がっていくものもあったりと、感じ方・捉え方の一つとして「毒」というフィーリングは繋がっているようにみえる。この曲にはもう一つ「光」という単語も出てくるが、こちらも一瞬のうちに感じとることができるうえで、その後はまるで滲むように広がっていくという点で、イメージがつながってくる。

毒、光、音の波、楽器同士がみあい生まれるグルーヴ、明透の歌声にある揺らぎ。一つ一つのイメージはもしかすれば小さく、別々のものにみえるかもしれないが、同じような意味とイメージをもつモノとして繋がり合い、無言のうちに大いなるイメージとなって聴くものに訴えてくる。

そんなことを考えているうちに、最終曲へ。まさにイメージの共有・シェアがあるからこそ繋がりがうまれ、「Link」する。この曲はディスク&ソウルな色合いが強く、ファンキーなギターカッティングとともに爽やかなイメージを届けてくれる。ここは湾岸線にある豊洲PIT、潮風とともにドライヴしたくなりそうになる

観客から自然とハンドクラップが起こる中、バンドメンバーと明透はもっと!と言わんばかりにハンドクラップを促す。


結んでひらく ふたりを繋ぐ 不可侵な愛をずっと

ずっと日常はただ ごきげんなまま

予感で満ちてよ きっと きっと


アンコール後のMCでは、「繋がりという言葉が好きです。大切にしたいと想うことで、どんどん強く、太くなっていく。どんどん太くなっていくみんなとの繋がりを想いながら、今日は最後まで一瞬一瞬噛み締めながら歌っていました。『Link』はまさに繋がりをテーマに生まれた曲です。」と話したように、音楽を通してイメージや感覚を繋げていく試み、そういった営みそのものが持ち合わせている慈しみを共にする、そこがライブテーマだったといえよう。

筆者は本編ラストとなった「Link」を聞いているうちに、まるで明透のラブソングのようだと感じられた。それでも相手を想い、繋がり、毒や光のように滲むように広がっていく温かな光がそこにはあった。


バンドメンバーからのサプライズに「リハでやってないですよね?」

アンコールの声に導かれて披露したのは、壮大なるパワーバラード「Aster」。ピンクや紫のライトに照らされるなか、圧のあるバンドアンサンブルと強弱のついた明透のボーカルが、本編終了後にちょっと休まっていた観客をふたたび心をぎゅっと掴む。

歌い終えて拍手と歓声が起こるなか、ここで話し出そうか?というタイミングを見計らってバンドメンバー4人が一斉にバースデイソングを歌いはじめ、観客もそれに乗じて歌いだしたことで、会場全員で明透の誕生日を祝う空間へと早変わりした。

突然起こった出来事に言葉を失ってしまい、おもわず舞台監督に「リハでやってないですよね?」と問いかけてしまうほど。狙い通りのサプライズで「Birth」というライブタイトルを回収することに成功したのだった。


ラストに披露したのは、この日初告知&初披露となった新曲「HOME」だ。ここまでの楽曲でほぼ使われていなかったサックスやトランペットといったホーンサウンドが基調となり、ワウギターやコーラスが重なり、明透のボーカルがそのなかでスッと突っ切っていくような楽曲となっている。

その華やかなサウンド感はこれまでの明透にはあまり見られなかったもので、柔らかいポジティブムードが包み隠すことなく、まさにあけすけなくらいに迫ってくる。

スクリーンに映ったムービーも、町中を捉えた日常風景が主になっており、花、空、道路、最後には花火と、人間などの登場人物を捉えることなく外の風景を捉え続けるムービーとなっていた。

自分の中で蠢く感情だけでなく、自分の外側でせわしなく動く事象に気づき、繋がり、そして讃えようと訴えるメッセージがこの曲にあると筆者は感じ取った。それは、この日の2nd ONE-MAN LIVE「BIRTH」のテーマそのものであり、ひいてみれば明透流の賛歌ともいえる1曲ではないだろうか。


2ndワンマンライブ「BIRTH」は、文字通り大成功に終わったと言える。まるでバレリーナのような優雅さとストリート系ダンスを行き来する独特な動きはさらに際立っており、体をくねらせつつ情感を伝えようとするボーカルは多くの観客にとって驚きの発見になったかもしれない。

活動4年目を迎え、リアルライブ・リアルイベントの開催も増えてきた明透。今後はその活躍の場を継続しつつ、外部イベントへと出演していいのではないか?と感じられてしまう。この日の彼女のパフォーマンスや普遍的なメッセージを備えた楽曲・ライブ内容を見てみると、外界へと飛び出して日の目を見る姿を想像してしまう。

直接的な言葉をほぼ使うことなく、イメージや共通する意味を上手く繋ぎ合わせて、「愛」という温かな意味をこうも巧みに伝えてみせる。これが2度目のソロライブというのが末恐ろしいほどに、充実したパフォーマンスだった。


●セットリスト
1.リンカーネイション
2.HEAVEN IS GONE
3.Shiny
4.モノローグ
5.スロウリー
6.インパーフェクト
7.ピアス
8.オレンジ
9.illumina
10.Symbiotic Dominion
11.ライトイヤーズ
12.Dazzling
13.アンメルト・アンブレラ
14.ソラゴト
15.ブルーナイトダーリン
16.0g
17.Spiral
18.Link

*アンコール
19.Aster
20.HOME


(TEXT by 草野虹、Photo by 小林弘輔)

 
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