
HTCは4月21日、都内で発表会を開き、AIスマートグラス「VIVE Eagle」の国内展開を発表した。販売はHTCのほか、KDDIが取り扱い、4月24日に発売する。予約受け付けは発表会当日の4月21日からauオンラインショップで開始している。
VRゴーグルやトラッカーで知られるHTCが今回発表したのは、没入型デバイスの延長ではなく、ディスプレイ機能すらない、日常生活の中で常時使うことを前提にしたAIグラスだ。値段は8万2500円から。カメラやスピーカーとAI機能がある眼鏡だとして、それが高いか安いかは人によるだろう。
ディスプレイなし、カメラ機能ありのAIグラスというとやはり思い浮かぶのは「Ray-Ban Meta」ではないだろうか。Ray-Ban Metaといえば全世界で販売台数200万台を突破したものの、現時点では日本では未発売。販売開始するというアナウンス自体はあったものの、具体的な日時はわかっていない。
そんな中、KDDIでの店舗での販売が決定していたり、ヤマダ電機でも取り扱い、眼鏡店でレンズ交換も行うなど、多くの人が手に取れるというのは熱い展開。AIグラスが多く発表され、ガジェットファンは直接海外から輸入したりして入手している中、JUN GINZAで取り扱っているディスプレイ付のAIグラス「Even G2」が話題になるなど、やはり実際に試せるというのは大きい。
ハンズオンで見えた「日常使いのAIグラス」

会場のハンズオンで感じたのは、VIVE Eagleが新しさそのものより、AIやカメラを生活の流れの中で扱えることを重視している点だ。先述の通り、Ray-Ban Metaと機能・性能面が近しい中、AIグラス製品が次から次へと発売されている今、機能だけで真新しさを感じさせることはなかなか難しい。


現地で体験できたのは、「議事録」「画像認識」「撮影」「音楽再生」など。ハンズフリーで撮影できたり、目で見ているものを翻訳したりする機能自体は、AIグラスの文脈では新しいとはいえないが、文字起こしや画像認識の性能面は良かった。
画像認識機能については耳元のスピーカーからの音声と、同様の内容を専用アプリ「VIVE Connect」上でテキストとして確認できた。グラス自体にディスプレイの機能はないが、これはこれで使いにくいということはないと思う。
特に、議事録機能に関して言えば、日頃録音した音声の文字起こしの最適な方法について考えているライターとしては、基本機能で話者分離されているのはかなり便利に感じた。
録音自体も、現地では目の前にいる方と数秒会話したが、問題なく録音できた。遠すぎると音が録れないそうだが、テーブルを囲んでいるくらいの距離感であれば問題ないという。また、多言語間の翻訳には現時点で対応していないものの、12か国語間の翻訳も可能。日英、日中など、海外とのやりとりを振り返るのには役に立ちそうだ。
この機能は「VIVE Connect」内の「VIVE AI Notes」として活用できるものになっており、VIVE Eagleの購入金額に最大15時間分、3ヵ月間の使用が含まれている。
●ビームフォーミングマイクアレイ
・指向性マイク×1
・全指向性マイク×3

本体の耳のそばにスピーカーがあるいわゆるオープン型だが、低音もしっかり聞こえた。会場はかなり雑音が多い状況だったのでなんとも言えないものの、音漏れはそんなにしていないようだった。つるの部分を指でスライドして音量調整したり、物理ボタンを押して一時停止や再生ができるのは楽だった。
●スピーカー
・低音強化型オープンイヤー・ステレオスピーカー×2

中でも印象的だったのは、撮影や記録の扱いだ。VIVE Eagleはフレームの脇にカメラを備え、ハンズフリーでも静止画や動画を撮れる一方、撮影中を示すLEDを搭載し、これを覆うと撮影が停止するようになっている。

会場が騒がしくハンズオンで確認できなかったが、本来は第三者による「やめて」などの言葉でもウェイクワードなしに動画録画を止められる仕様だという。撮影・録画機能付きのグラスデバイスについて、そもそもLEDの点灯が撮影のサインだと知らない方の方が多い状況ではあるが、配慮が考えられている印象を受けた。
●カメラ
・12MP超広角カメラ
・写真:3024 x 4032 px
・動画: 1512 x 2016 @30 fps
また、ディスプレー機能がないこともあってか、本体はかなり軽く普通のメガネと同様のレベルに感じた。鼻が小さく低いアジア人でもすべりにくいところはいい点だと思う。
●重量
・Mサイズ:48.8g(レンズ含む)42.8g(レンズなし)
・Lサイズ:51.5g(レンズ含む)45.5g(レンズなし))
このほかのスペックとしては、防塵・防水性能はIP54。連続音楽再生は最大4.5時間、連続音声通話3時間以上、急速充電は10分で50%まで可能とのこと。
「プライバシーファースト」HTCが打ち出した思想と仕様

HTCグローバル・シニアバイスプレジデントHuang氏は、OpenAIのデータによると2025年のAIとのやりとり全体のうち73%を占める19億件を越えるAIクエリが仕事とは無関係だったこと、ハーバード大学の研究によるとユーザーが実際にAIを活用している用途の上位3つが「Therapy & Companionship / セラピーや話し相手としての利用」、「Organize My Life / 生活の整理」、「Find Purpose / 人生の目的を発見すること」だったことを取り上げた。

AIが仕事で使われることよりも、パーソナルな目的で使われている事に着目し、VIVE Eagleについて「あなたのプライバシーを侵害することなく、あなたを力づけるために作られたコンパニオンです」と語った。

こうした考え方は、VIVE Eagleの仕様に反映されている。

製品説明では、プロダクトマーケティングマネージャー政田氏がVIVE Eagleの特徴として、「ファッション性を追求したスタイル」、「一日中使いたくなる音楽体験」、「大切な瞬間を逃さないカメラ」、「日常を支えるAIアシスタント」の4点を挙げた。
HTCは、自社AIだけに閉じた体験ではなく、ChatGPT、GeminiとAIモデルを使い分けつつ、OS側のアシスタントやサービスともつなぐ柔軟性を打ち出した。VIVE EagleをAIグラスというより、日常を便利にするため、複数のAIや既存サービスを横断して使うための新しいインターフェースとして位置づけようとしていることがうかがえる。

プライバシー面では、ユーザーデータを無断で収集せず、学習や広告利用にも使わない方針を明言。初めにHuang氏が「プライバシーファースト」というメッセージを出した通り、撮影するカメラの画像も、AIとのやりとりはすべてVIVE Connectにローカル保存され、アプリを通じて検索することができてもアップロードされることはないという。
筆者のまわりでも、AIには個人的な悩み相談をしているという方は非常に多い。AIグラスを日常生活を送る上でのインターフェースとして活用するとなると、撮影するものも、相談する内容もどんどんプライベートな内容になっていくだろう。見たこと、話したことが学習データに使われたくないという気持ちもわかるので、そうしたニーズを拾うHTCの明確な姿勢を感じた。
日本ではauショップを軸にヤマダ電機でも販売、眼鏡店でレンズ交換も対応
VIVE Eagleの販売は従来通りHTCオンラインのほか、KDDIと協業を行うことが発表された。

KDDIはau Online Shop、au PAY マーケットでのECサイトでの販売や、KDDI・沖縄セルラー直営店、au Styleの一部店舗で発売日時点で全国約70店舗に実機を設置し、体験できる環境を整えるという。また、ヤマダ電機のauコーナーでも発売日の4月24日より発売し、その後も販売店は増えていくとのこと。

レンズ交換については、パートナー店舗での対応も案内した。「サンクスオプティカルグループ」「眼鏡市場」の一部店舗でレンズ交換に対応する。

VIVE Eagleは、AIグラスとして機能面で突出した新規性を競うというより、音声、カメラ、AIを組み合わせた「日常のための新しいインターフェース」として市場に投入される製品といえそうだ。その、日常づかいのために力を入れたのが「プライバシーファースト」。
VRで存在感を示してきたHTCが、その次に見据えるのは没入体験ではなく、生活の中に溶け込むAIの形なのかもしれない。
●VIVE Eagle
・サングラスレンズ:8万2500円(税込)
・クリアレンズ:8万2500円 (税込)
・調光レンズ:9万8000円 (税込)
・公式サイト:https://www.vive.com/jp/product/vive-eagle/overview/
(TEXT by ササニシキ)
