
東京・ベルサール秋葉原にて、今回で7回目の開催となる「VketReal 2026 Summer」が7月25日・26日の2日間にわたり行われた。メタバースのイベント「バーチャルマーケット」(Vket)から派生したリアルイベントで、初開催となる2023年夏の秋葉原で4万人の来場を記録して以来、総動員数28万人を記録するなど、多くの来場者が訪れている。
飲食店とのコラボレーションやVRChat関連イベントを実施する「街ごとJOIN大作戦」に代表されるように、「オフ会」というテーマをフックとし、VketRealというイベントをきっかけに秋葉原に訪れ、VRChat上のフレンドと会えることを押し出していた。
VRChat上で知り合い、仲良くなった先に現実でも仲良くなりたいというのは一見すると違和感を感じるかもしれないが、コロナ禍も終わってさまざまなイベントがリアルの場へ回帰している中、大型イベントに合わせてオフ会をしたいというのは当たり前の感情だろう。そのきっかけ作りとしてのVketRealというのは大きな目的になっている。

その一方で、今回と同会場で実施した昨年夏のVketRealでは、炎天下での待機列や混雑状況などがSNS上で批判が集まった。昨年、運営サイドに話を伺った際には「複数会場を借りてのイベント運営は運用コスト面もありますが、イベントとしての一体感がなくなることに繋がるので、Vketとしては別のやり方で進めたい。時間制チケットについては、もちろん案は出ていました」という話が出ていた。(関連記事)
VRChatユーザーたちのオフ会として、バーチャルとリアルを繋ぐ場として、VRChatユーザーへの露出を目指す企業のPRの場として。さまざまな意味を持たせつつ展開してきたことで、批判も受けてきたVketRealだが、今回は大成功!と言える開催だったのではないだろうか。
1階は企業出展とオフ会、リアルとバーチャルが接続される場


恒例のメッセージボードや、アバター画像をチェキにするアバターチェキを貼るボードは常に書き込む人がいて盛況。毎回、来場者数が発表されるたびにその数に驚くが、壁いっぱいにメッセージが書き込まれているのを見ると、本当に多くの方が遊びに来ているんだと思わされる。

今回、訪れた方が快適に過ごせた「整理券システム導入(これに関しては後述する)」とともに、恒例のアバターチェキのシステムも一新していた。
前回までは、チェキを登録するのにかなりの待ち時間が発生していたため、受付自体を制限。なかなかチェキを登録できない状況が続いていたが、今回はシステム自体をVket側で作成したため、アバター画像の登録までは事前に行うことができるようになり、決済と受け取りは後から行う方式となったのは大きな進化だ。

また、今回は PONDA氏による、VRChatと現地をリアルタイムで繋ぐメッセージシステム「ペンタラクティブ」を活用したパラリアルメッセージボードも登場。
これはVRChat上のワールドのボードが現地のホワイトボードと連動したもので、離れた場所にいながらメッセージのやり取りを通じてコミュニケーションが取れるという取り組み。


今回、VRChatユーザー向けのPC販売というニッチなパソコンメーカーNuNuPCが初の出店となり、アバター画像が印字されたケースの展示をしていた。AMD×MouseComputerによる出展では、実際にハイスペックPCと一般的なゲーミングPCを比べて体験できるブースを用意。VRChatのコミュニティ「VRC貴族部」のエレガントなドレスやマントが美しく描画されるかどうかを異なるスペックのPCで体験するという、VRChatならではの体験ができた。
VRChat自体は現在、スマートフォンでも遊ぶことができるものの、ハイスペックPCで好きなことをしたいという需要は、依然として存在する。現在、さまざまな要因からPCの価格が上がる中で、VRChatでの利用を前提としたPC選びをプロに相談できるのはなかなか楽しく、つい根掘り葉掘り聞いてしまった。


リアルとバーチャルを繋いだ取り組みは今回多かったように見える。毎回面白い取り組みを行なっている「V決闘」では、現地とVRChat内を繋いでゲームを行っており、今回は、なんと巨大しゃもじのコントローラーを使ってご飯を乗せていき、VRChat側でケチャップで書いたり萌え萌えビームを注いで、ご主人様に届けるという内容。
VRChat公式ブースでは、公式スタッフを中心としたメンバーとのコミュニケーションを図れた。英語でのコミュニケーションと思うとドキドキしてしまいがちだが、しっかり日本語が喋れるスタッフが現地にいるので安心感がある。

今回初の試みとなるクッキーコネクトは、現実側でボタンを押すとVRChat上にクッキーを贈れるというVketらしいちょっと面白いシステムだ。クッキーの数に応じて、次回開催地がわかるかも!というキャンペーンを行なっていた。


Vket、VketRealどちらも常連のユニバーサルエンターテインメントグループはVision Proを活用した近未来スロット体験を実施。Vketではフィリピンで営業しているオカダマニラをモチーフにしたラグジュアリー空間を展開するなど、それぞれ違う方法で参加している。
こちらも常連のムルルやAkyoなどの人気アバターのぬいぐるみなどを販売するdiVRse。取材時は1日目のお昼前という時間帯だったが、すでに売切の札が出るなど、人気の高さを感じさせる。


今回初出店となったのは、日本最大級のライブ配信アプリのイチナナ。リアルのライバーがメインとなるプラットフォームということもあり、VRChatやVTuberの文脈から言えば少し離れているようにも思える。
しかし、イチナナが開発した「推しと遊べる!体験型自販機」の初お披露目の場としてVketRealに出展したというのが大きな理由であり、ライバーと視聴者が配信外でも接点を持てる仕組みの模索なども含めてのことだという。
VRChatから生まれた即売会イベントがリアルの場に出たことで、VRChatとは直接関係ない企業にとっても参加価値がある場になっているというのは大きな意味がある。
街ごとJOIN大作戦! 飲食店や整体、イベントとのコラボも


回を増すごとに秋葉原のいろんな店舗でのコラボレーションが実施。「街ごとJOIN大作戦」として、オフ会のお店で有名なHUB秋葉原店(通称・秋HUB)を中心に、様々な店舗でコラボレーションを行なっていた。
カラオケの鉄人、メイド喫茶の橙幻郷、整体のカラダファクトリーなど、「JOIN」できる場所はかなり手広い。コンセプトカフェやシーシャバーなど、じっくり楽しめるお店もあり、いろんなニーズに応えている。
ちなみに当日、誰か知ってる人がいるかと思い、一人で秋HUBにお酒を飲みに行ったが、誰とも会えずに終了(笑)。店内は大賑わいで、フレンドと語らえて羨ましいなあと思っていた。賑わっているお店に一人でいると寂しい!


また、26日にUDX秋葉原にて、からぱり、カデシュ・プロジェクト、VRCムービーアワードの3団体合同によって秋葉原VRChat映画祭が実施された。
筆者はVRCムービーアワードの回に参加。過去に、YouTubeで見たことがある作品を実際のシアターで見ることができたが、VRChatで撮影・制作された作品をシアターで放映することで、しっかり映画として楽しめたのはいい経験だった。
VketRealの地下がロボットの闘技場に!!「REK TOKYO」を併催

前回パラリアルクリエイターエリアの会場となった地下フロアは、25日限定で、併催のヒューマノイドロボットのバトルイベント「REK TOKYO」の会場となった。本戦開始前の14時までは、フリー入場可能なロボット展示スペースとなっており、パラリアルクリエイターエリアへの入場を待つ方が待機できる場としても、多くの方が訪れていた。
これまでVketRealといえばVRホビーロボット集会のロボット「ファイバリオン」が展示されたり、操縦イベントが実施されるなど、VketRealの常連でもある。それだけに、ロボットとVketの距離は遠からずといったところで、客層も近しいだけに、同じ建物での開催はかなり熱い!


本戦では、学生対決、ロボット系スタートアップ企業社長対決、二つの対戦が行われ、それぞれの勝者が優勝を争う対戦をする形で行われた。最近はフィジカルAIの需要もあり、SNSや動画でロボットが動いているところを見たことはあっても、ロボット同士が競い合うバトルというのは流石になかった。ロボット同士がぶつかる激しい音の迫力が凄まじく、その金網の内側にレフェリーがいるのは「本当に大丈夫?」と思った。


バトルの最中、金網のドアが開いて外に飛び出してしまったり、バトルを続行できなくなった赤い機体の代わりに、幕間でダンスパフォーマンスをしていた紫の機体が交替するなど、ロボット同士が戦う激しさが伝わってきた。

優勝は大曽根宏幸氏。優勝者はサンフランシスコで開催されるREK2への参加が決まった。

なお、本来であればVketを運営するHIKKY代表の舟越氏と、近年ではナル先生としても活躍するGOROman氏によるエキシビジョンマッチがセッティングされていた。しかし、本戦の熱すぎる戦いの末に、ロボットが先に稼働限界を迎えてしまい、エキシビジョンマッチは行われなかった。
地下闘技場で行われる舟越氏のロボットバトル、見たかった!
整理券システム、救護体制も万全! パラクリエリアが快適だった

アバターやギミック、または集会など、VRChat上で人気のクリエイターがリアル出展することが、多くの方にとってVketRealへ行く大きな動機になる人気エリア。それだけに毎回、大行列ができることで少なからず波風も立ってきたが、今回、オンライン整理券システムを導入。かなりスムーズなイベントになったのではないだろうか。

前述の通り、今回は当該エリアへの待機列がかなり改善されただけに、参加者たちはスムーズに楽しめたはず。また、入場後のエリア内も、少しでも快適に過ごせるように、列の乱れや滞留が見込まれる場所を見つけるとスタッフがやってきてテープで仕切りを即時設ける場面を度々見かけた。

人気のサークルにはかなりの列形成も生まれていた。企業出展やサイドイベントなど多くの見所があるが、やはりVketRealを訪れる来場者のお目当ては、サークルの頒布物。VRChatにまつわる限定のアイテムや、VRChatで活動しているVTuberやアーティストなどが頒布するグッズは欲しいというもの。
いつもはVRChat上で会うフレンドが出展しているケースもあるとあれば、当然、会いたいだろう。そのクリエイターたちが出展しているエリアに入場するためのルートが改善されたことは、誰にとっても嬉しいことだと思う。

今回、SNSを見ていても、現地でも、「いつになく快適」という声が聞こえてきた。それは、取材をしながら肌に感じるところだった。そこで、担当者の方に行った対策などのお話を伺った。会場の列形成や混雑について批判されてきたVketRealだが、今回、うまくいっている「整理券システム」や、暑さ対策などについて伺った。
そもそも、整理券システムについては、前回のVketReal(2025Winter)から整理券システムを導入したものの、紙で整理券を取るタイプのシステムだったため、「整理券を取るための列」が発生したことが課題だったという。
「列を解消するために整理券をオンラインで出すしかない、ということで、アクセスしやすいオープン時間や、転売対策などの議論をし、できるだけ皆さんに公平性があるタイミングとして、当日の朝7時受付という形を取らせていただきました」と語る。
整理券の発券方法については、「グループで一緒に入りたいという人もいるので、チケットはみんなばらばらに買っていたとしても対応できるように、整理券を1人で複数枚取れるようにしました。システムは、『クラウドパス』というところのものを使わせてもらっており、2ヵ月ほど議論しながら、整理券の取り方を含め、仕様を詰めていきました」と、ニーズに合わせた方法を模索したという。
また、整理券を呼び出す時の通知も課題の一つだった。来場者が国際色豊かなところもVketRealの特徴なだけに、いくつかの想定が必要だったという。
「海外から来る方もいらっしゃるので、SMSだと届かないことも考えられ、SMSとメールの両方から自分で選べるようにしました。ただ、メールを選んだ方が「届いていない」という問題がちらほら出ています。私が問い合わせを担当していたので、最初は「メールを確認してください」と個別に連絡する運用で進めようと思っていましたが、想定していたよりも多く問い合わせが来ていることが分かったので、複数の場所で情報を出していく形にしました」
運用しながら浮かび上がった、通知にまつわる問題に関しては、会場内で随時案内することと、専用のページを新しく準備すること、Discordサーバーにも呼び出し専用のチャンネルを設けること。さまざまな方法を用いることになったという。

いくら対策しても解決できないのが気象条件だ。
「酷暑のような、避けられない問題はあります。そこは運営の工夫でできる限り対応する、ということは考えています。地下にも連携して開催しているイベント(REK TOKYO)があり、少し涼しい場所で過ごしていられるので、可能な限り案内しています。それから、待機列ができそうな時にも、パラリアルクリエイターエリアの受付前に数十人が列を形成できる場所を用意しています」
2階は広いため、頒布スペースの他に広めの受付スペースを設けているのも行列対策の一つだという。確かに、並ぶにしても屋内であれば、暑くて耐えられないということはない。暑さといえば、熱中症に代表される救護対策も懸念されたはず。そちらについても伺った。
「体調を崩した方は何人かいらっしゃいました。救護室は前回よりもベッドを1台増やしており、今回は上級救命講習を受けたスタッフを配置して、何かあった時にも対応できるようにしています。近辺に数名のスタッフを配置して、何かあった時に対応できるようにしたり、外部の看護師にも来ていただき、救護体制は強化しています」と語ってくれた。
筆者自身、何度か行っていない回はあるが、2025年のVketReal Summerからは定点観測している中、今回の開催はかなり理想の形になっていると感じた。夏休み期間に大型イベントを開催することの意義を考えるとベストと言えるのではないだろうか。
VketRealを支えた有志スタッフの努力はもちろん、参加者が案内やルールを守ることで、大きな混乱がなかったことと思う。それは当たり前のことだと思われるかもしれないが、何せVRChat上の即売会として始まったイベントが現実で大型イベントを開くということはほとんど事例がない中でのこと。開催を重ねるたびにVRChatの認知度も増え、参加人数が増えていく。依然として黎明期と言える現状を鑑みれば、紆余曲折を経て、ついに快適なイベント開催になったのだと思うと、少しだけ自分ごとのように嬉しくなった。
7月31日、次回のVketRealの開催地が新宿に決定したことが発表された。12月19、20日。地方から遊びに行くという方は、早めに移動手段や宿泊を抑えておこう。
(TEXT by ササニシキ)
●関連リンク
・Vket
・VketReal2026Summer
