北米最大のVTuberイベント「OffKai Expo」レポート 日本発ポップカルチャーへの愛があふれた3日間

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7月24〜26日、米国サンノゼのマッケンナリコンベンションセンターにて北米最大をうたうVTuberイベント「OffKai Expo Gen5」(オフカイエキスポ)が開催された。

企業によるブース出展、即売会、音楽ライブ、パネルトークといったさざまな企画を展開するコンベンション(大会、集会)で、今年で5回目(Gen5)となる。昨年2025年の来場者数は、前年比130%増の6900人。同じ成長曲線なら、今年は9000人近くが集まったと推測される。

マッケンナリコンベンションセンター。IT系を取材してきた筆者にとっては、アップルのWWDCやFacebookのOculus Connect(現Facebook Connect)の開催地として馴染み深い存在だ

筆者は初めて現地を取材したが、3日間を通じて感じたのは、VTuberを主軸にしたまさに「オフ会」だったということ。

ネットで知った自分の「推し」や同好の士とリアルで会って語り合いたい。「推し」や日本のポップカルチャーが好きで、それを何かで表現したい。そんな素朴な気持ちが会場に満ちていたのが素敵だと感じた。日本のイベントで何に近いかといえば「ニコニコ超会議」なのだが、一企業が運営しているわけではなく、ボランティアを交えたファンたちが情熱でイベントを回しているのが興味深い。

そんなOffKai Expo自体の紹介と、日本のVTuber(主にHIMEHINA花譜)がどう活躍したかのか、2回にわけてまとめていこう。100枚ほどの画像とXの引用動画を埋め込んでいるため、めちゃくちゃ長いですが、ぜひ海外のVTuberファンの雰囲気を知りたいという方に読んでほしいです。


VTuberを主軸に日本のポップカルチャー好きが集結

まずOffKai Expoで衝撃だったのは、VTuberのイベントなのに、VTuberだけに限らない日本発のポップカルチャーが集結していたこと。

VTuberをひとつの太い縦軸としたら、そこにコスプレ、オタ芸(Wotagei)、アニクラ(アニソンクラブイベント)、ボカロ、カラオケ、痛車といった要素が横軸として絡み、さらにメイドカフェやアーケード/コンシューマー/アナログのゲームといったVTuberとは直接関係ない別の縦軸も併存しているような状況だ。

その「あっ、VTuberだけじゃないんだ」と悟ったのがオープニングセレモニーだった。スライドで企画を説明している流れで、ペンライトを持ってのオタ芸パフォーマンスが始まり、さらに会場内のメイド喫茶を紹介する中でメイドによる「踊ってみた」も披露していた。VTuberもオフィシャルのマスコットをのぞいて一人も出てこなかったこともあり、「これはファンによるファンのためのイベントなんだな」と直感した。

オープニングセレモニーや会場に入るために行列を作る人々。といっても、日本のように殺伐としていなく、和気藹々と並んでいる印象だ
オープニングセレモニーが行われたメインステージは1500〜2000人の収容規模といった感じ
公式マスコットのSam-Joeさんが、HIMEHINAのワールドツアーについて紹介。ちなみに公式ページによれば彼女の正式名称は「The Right Honourable The Former Deputy Head of Grand Council Lady Samantha-Joel “OffKai Mc OffKaiFace” Berlington XIV (patent pending)」と呼ぶらしい……
オープニングに限っていえば、VTuberより生身の人の方が出演者が多かった
目玉企画の一つである、花譜(かふ)を含めた7人のVTuberが出演する「OffKai Live!」
下調べしていたのがVTuberのみだったので「あっ、メイドカフェとかもあるのね……! しかもチケットソールドアウトとは」と驚いた一幕

筆者の限られた米国のコンベンション取材経験でいえば、ロサンゼルスで実施している「Anime Expo」(AX)に似たジャンルの雑多さを感じた。ただ、AXは最後に筆者が現地を訪れた2022年でもそこかしこで行列ができていて、最新の2026年では4日間で42万2000人(!!)が訪れる巨大なイベントに成長してしまった。

一方で、OffKai Expoはまだ1万人前後の規模なので、自分の見たいものに割とすぐアクセスできるゆったりとした雰囲気だ。聞けば、OffKai Expoは同じサンノゼで実施しているアニメコンベンション「FanimeCon」と共通するスタッフも運営しているとのこと。FanimeConは「By Fans, For Fans」(ファンによるファンのための)を掲げており、その精神がOffKai Expoにも受け継がれているのではないだろうか。

ちなみに会場マップはこんな感じ。マッケンナリコンベンションセンターの2階(UPPER LEVEL)にはメインステージ、展示ホール(Exhibitor Hall)、即売会(Artist Alley)があり、1F(LOWER LEVEL)にはパネルトークを実施するホールを用意。サブステージである「Spotlight Stage」は、隣接するマリオットホテルの宴会場で実施していた。

メインステージではVTuberの音楽やトークのライブだけでなく、コスプレコンテストなども実施していた
吹き抜けの2階から1階の正面入口とホールを見たところ
パネルトークが行われたホールは1階より若干下がったところにある。このパネルトークのテーマも、18禁も含めて非常に多様でまさに米国のコンベンションらしいものだった。写真を見れば行列があることがわかるが、みんな自分の好きを語りたいしそれを聞きたいのだ

マッケンナリコンベンションセンターの南東側に別棟としてサウスホールがあり、バッジを発行する受付や、痛車、アーケードゲーム、コンソール/カードゲーム大会などのコーナーを展開。

逆に北西側には、サンノゼ市公会堂(San Jose Civic)があり、HIMEHINAのワールドツアーやOffKai Live!を実施していた。


自分の「好き」を自由に表現

特徴的だと感じたのは、自分の「好き」を自由に表現しているところ。

例えばコスプレはもちろん、「推し」をアピールしたいせいかハッピを着ている人の率が高いと感じた。日本でハッピというと音楽ライブでは見かけることもあるが、通常のイベントでは全面にキャラクターが描かれたフルグラフィックTシャツや、缶バッジをずらりと並べた「痛バッグ」などが目立つ印象がある。一方、OffKai Expoではハッピ勢が多数で、フルグラTや痛バッグはあまり見かけなかった。

ハッピを扱うKaigai Importsブース

さらに等身大パネルを手で運んでいたり、「推し」の旗をポールに掛けて持っていた人もいた。なんとなくなのだが「面積が大きければ大きいほど、愛の強さを表現できる……ってコト!?」と考えてしまった(といっても、コスプレやグッズでアピールしている人々は体感で全体の1、2割ほどで、あとは普通の格好だった)。

コスプレも完成度を目指すより、自分の「好き」を表現することを尊重しているように思えた。VTuberに限らず、初音ミクのような日本のポップカルチャーのキャラクターを選んでいる人もいたし、女性キャラに扮した男性も普通に見かけた。Anime Expoでもそうだが、これはサンノゼのあるカリフォルニア州がLGBTQ+に対して寛容という影響もあるのかもしれない。


来場者の雰囲気も、自分たちの「好き」を分かち合おうという、まさに「オフ会」なのがよかった。

日本でイベントというと、限定グッズをとにかく手に入れたい、ステージを一番いい場所で見たいといった欲望のぶつかり合いで、「アイツがルールを守っていない!! 運営はなんとかしろ」と殺伐としてしまう現場も割と多い。

3日間、表面的にしか見ていないので断言はできないが、OffKai Expoではそうした空気があまり感じられなかった。会場前の屋外では「推し」が同じファンが集まって、集合写真を撮ったり、映像を見たり、演奏したり、オタ芸を合わせたりと、そこかしこで「好き」を自由に消費していた。

ホロライブENのFUWAMOCOファンが、会場付近の大型LEDに応援広告を出して集まっていた

さらに会場前の公園で大勢が集まって、深夜までパーティーしていたことにも驚いた。FanimeConのときもやっている「ParkCon」と呼ぶらしく、Xを検索すると飲みながら話したり、DJで音楽に乗ったりと本当に楽しんでいる様子が伝わってくる。日本だと即クレームで警備員が飛んできそうな状況だが、建物同士の間が広く、周囲にホテルやイベント施設しかない場所なので見逃されているのだろうか?(……と「まず他人に迷惑をかけないように」と考えてしまうのが日本人的なのかもしれない)

マッケンナリコンベンションセンターの北側にある公園。昼間からすでに人が集ってわいわいしていた

深夜といえば、マッケンナリコンベンションセンターに隣接するマリオットホテルの宴会場では、「Anikura Dance Party」と題して2時までバキバキの低音を鳴らしてDJイベントで盛り上がっていたことも印象的だった。

日本からはトラックメイカー/音楽家/歌手のYUC’eさんが招かれて出演していた

音楽ライブにおいては、目玉のひとつである「OffKai Live!」でも、オタ芸を打てるスペースを用意していたのが目新しかった。オタ芸は、日本のVTuberライブではほぼ見たことがなく、ともすると禁止行為に分類されている。あるとしても公式が事前にコールの練習動画などを公開して、それを見てみんなで声を合わせるぐらいの統制が取れた大人しいものだ。それが米国では、自由にその場のパッションで体全体を使って盛り上がっていて、他の人も「やってんねぇ!」と温かい目で見ているように感じられた。

OffKai Live!も、ド頭の演目がVTuberが出てくるのではなく、ファンが結成した合唱団「OffChoir」(オフクアイア)がずらずらとステージに上がってスタートしたのに衝撃を受けた。人気の曲をメドレー形式でつないだ、日本のネットでいえばニコニコ動画の「組曲」のようなスタイルで歌っていて、「推し」だったり引退したVTuberの曲のイントロが流れるたびに客席が大きく反応していたのがVTuber文化に対する愛を感じた。

そもそも運営ですら、オペレート卓のスタッフがコスプレしてペンライトを振っている自由さだ。会場のスタッフは、「Volunteer」のゼッケンをつけたボランティアが多くいた。イベントがまだ1万人ぐらいの規模ということもあるのか、来場者と運営の距離感が近く、VTuberが好きだからみんなここに集まっているという、いい雰囲気を保てているのがかけがえのないものだと思った。

オペレーター卓に座っていた方のポスト

この参加者の自由さと周りへの迷惑のバランスはとても難しいと感じる。日本人の感性では、Parkconで酔ったファンが暴れたり急性アルコール中毒で運ばれたりしないか、ライブを見るのに邪魔になるほどまぶしく光らせる厄介客(「光害」と呼ばれる)が出てこないかとエスカレートしてしまうのが心配になってしまうが、今のちょうどいい参加人数と運営との距離感だからバランスが取れているのかもしれない。


英語圏では「ミーグリ」を求めるファンが多い!?

さて、肝心のVTuberだが、当たり前の話で、出演していたのはほとんどが英語圏向けのタレントだった。例えば、ksonさんやHenyaさん、Ironmouseさん、Zentreyaさんといった、2025年に金銭トラブルを抱えたまま倒産した「VShojo」の元所属タレントたちは、その人気を示すように一番大きなメインホールでそれぞれトークライブを実施していた。

ブース内でのトークライブも混雑していた

個人的に勢いを感じたのは、3人組の女性VTuberグループ「Densetsu.EXE」だった。初日となる24日に会場近くのカリフォルニアシアターで実施した1st 3Dライブでは、1100席のチケットを2分で売り切るという勢いを見せ、当日も大いに盛り上がったようだ。会場でも、メンバーのハッピをきた来場者をよく見かけたし、3Dや生身(!)で展開していたミート&グリート(ミーグリ、1on1)でも長蛇の列ができていた。

チケットが即完売したことを広告する公式のポスト
メンバーの1人であるPhebe Chan(フィービー・チャン)さんは、元々ストリーマーや声優としても活動していたこともあってか生身でミーグリやサイン会を実施。サウスホールにて非常に多くのファンに取り囲まれていた
Mintさんは立体ボックスのような装置を使ってのミーグリを実施
なお、Mintさんの絵師であるあやみさんが、東京ビックサイトとのコラボドリンクに起用され、今年のコミケで限定販売するとのこと。そのイラストにMintさんもあしらわれているので、コミケに行く方は「この子、英語圏で人気のVTuberなんだよ」と覚えておくといいだろう

日本からは、HIMEHINAがワールドツアーの一環としてサンノゼ公演を実施。さらに、KAMITSUBAKI STUDIOの花譜がffKai Live!のトリとして出演していた。この辺は別レポートで詳細をお伝えしたい。

会場でいえば、ライブコミュニケーションアプリ「IRIAM」や、数々のVTuberの3Dモデルを手がけるデジタルギア、ClaN EntertainmentのグローバルVTuberプロジェクト「IZIGENIA」などがブースを構えていた。ステージでは、Brave group USの「V4Mirai」、そのBrave groupから独立したFTW Entertainmentの「ChromaSHIFT」、日本でも活動している「Stellaverse Production」、REALITY Studiosの「FIRST STAGE PRODUCTION EN」などがライブを展開していた。

V4Miraiの「V4 Beachside Singalong」
Stellaverse Productionの「Starlight Anthem:Second Impact」
FIRST STAGE PRODUCTION ENの「Avallum in OffKai」
ソニーがプロデュースしていたが2024年に解散した「PRISM Project」の元メンバーたちが集まったPRIMA Projectも「Nostalgic Anime Concert」と題してライブを実施していた


企画としては、とにかくミーグリの数が多かったことが印象に残っている。ミーグリ専門の場所を5つ設けた上で、展示会場のブースでも65インチや70インチクラスのディスプレイを縦にして等身大で話せるようにしているだけでなく、車輪がついていて遠隔操作できるディスプレーが会場を移動していたり、iPadなどのタブレットを持って突発的に(?)展開していたりと、会場のあらゆる場所でミーグリが行われていた。

VTuber向けの3D配信ソフト「Warudo」が協力する3Dミーグリもあったとのこと
VTuberが自分で移動できるタイプのマシン。数台あって会場内のそこかしこで見かけた

米国では、日本よりも「推し」とコミュニケーションをとりたい、自分を認知してほしいという欲求が強いのだと感じた。英語圏向けにVTuberを売り込むなら単に英語で配信するだけでなく、ミーグリでより一人一人のファンに接して気持ちを伝えあうのが有効な方法なのではないだろうか。

なお、会場に飾られていた等身大パネルを最終日にオークションでファンに販売するというのもOffKai Expoの文化のようだ。米国の各地から集まったファンが、飛行機で地元に帰っていくときにいかに苦労して持っていっているかをXに投稿していて、「ああ、日本でも電車で持ち帰るの大変だよね……」と似た思いに共感してしまった。

2016年12月にキズナアイが初配信してから、今年で10年を迎えるVTuber業界。米国でもVTuberは日本のポップカルチャーのいちジャンルとして確実に認められていて、それに執着する人々がいるという現状をOffKai Expoで再確認した。ただ、日本語のVTuberが、すでに定着しているアニメやゲーム、マンガのように受け入れられるのかといえば、ちょっと別の話なのかもとも感じてしまった。そのことについては別記事でお伝えしていきたい。


(TEXT by Minoru Hirota

 
●関連リンク
OffKai Expo(英語)