人気VRロシアンルーレットゲーム「Devil’s Roulette」、その成功と失敗をディレクターが解説【CEDEC2026】

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コンピュータエンターテインメント開発者を対象に、ゲームに関する技術や知識を共有する年に一度の国内最大級のカンファレンス「CEDEC(Computer Entertainment Developers Conferenceの略。読みはセデック)」。今年は7月22日(水)~24日(金)の3日間、パシフィコ横浜ノース「CEDEC2026」が開催された。

この記事では、MyDearest株式会社の人気VRゲーム「Devil’s Roulette」を題材とした、同社所属のゲームデザイナー渋谷宣亮さんによるセッション「運営型VRゲームのユーザーが累計100万人に至るまでの記録 短期間開発における成功と失敗」をレポートする。


身体性のアドリブと柔軟さこそがVRの面白さ

2025年5月8日にリリースされた基本無料のマルチプレイVR対戦ロシアンルーレットゲーム「Devil’s Roulette」(Meta Store)。「なんか新しいVRゲームのネタない?」「最近はロシアンルーレットが流行ってますね」というMyDearest株式会社の社長と渋谷さんの何気ない会話を発端に、「4、5人のチームで2ヵ月でゲームを完成させる」プロジェクトの一つとして生まれたゲームだが、2026年7月時点での累計ユニークユーザー数は168万人を達成。その成功に至るまでの過程が、失敗だった施策も含めて、ディレクターとして制作を指揮した講演者により詳しく紹介されていった。

2025年1月頃、「Buckshot Roulette」「Liar’s Bar」などによるインディーゲーム界におけるロシアンルーレットの爆発的流行のフォロワーとして企画はスタート。「亜流を作るとき、元ネタのどこがウケたのかを忘れて差分で迷走しがち」ということで、あまりひねったことを狙いすぎない方針になったが、先行のヒット作は非VRゲームだったため、VRゲーム化にあたって、大きく3つの問題が発生。

まず紹介された「VRはターン制と相性が悪い」という問題は、銃の使用はロシアンルーレットの基本通りターン制だが、相手を妨害できるアイテムの使用をリアルタイムにすることで解決。

2つ目の問題「VRは入力の自由度が高すぎる」ため、プレイヤーがしゃがんで机の下に隠れてしまうなど、現実の身体を動かすことで行える不正のバリエーションが豊富なことは、「身体性のアドリブと柔軟さこそがVRの面白さ」と受け入れることで解決。身内同士の試合は不正もOKだが、他人と遊ぶことが多いランダムマッチの試合は不正NGという線引きも定めた。

筆者が特に面白いと思った問題が、3つめに紹介された「VRはプレイヤーの思考力が低下」すること。VRヘッドセットを被ると、メモなどの外部記憶に頼れないため、次の弾が実弾か空砲か、あやふやになってしまうことが増える。また、VRヘッドセットをずっと被った状態も、恐らく多くの人にとっては、集中して思考することは難しい状態なのだ。「Devil’s Roulette」では、この「思考力低下」という問題もゲームの「ランダム性を高める要因」として受け入れてゲームバランスを調整することによって解決。結果的に、深く考えず適当に遊んでも楽しい敷居のゲームでありながら、真剣に考えて勝ちにいくこともできるゲームになった。


リリースから1ヵ月間、収益化できなかった大失敗

「『CEDEC』の醍醐味は、基本的に他人のトラブルの話です」というユーモアあふれる導入から始まった「未解決および運営トラブル」に関する紹介では、基本無料のマルチプレイゲームとしてリリースしながらもリリースから1ヵ月間、収益化できなかったという大失敗を紹介。当初は買い切り想定で開発を進めていたものの「マルチプレイゲームをを買い切りで販売するのは危険」という会社の判断により、リリースまで1週間を切った時期に基本無料(F2P)に急遽変更。仕様変更に伴う追加実装をする時間がなく、1ヵ月間まるごと収益化のチャンスを逃してしまったのだ。

さらに、パブリックロビーの設計ミスの事例も紹介された。マネタイズの手段としてスキンなどを販売するため、ユーザーがスキンを見せる場所や相手が必要となり、リリースから4ヵ月後にパブリックロビーが実装。それ以前は、ゲームを起動すると個室からスタートし、野良マッチをしたい場合は、ボタン一つでマッチングが始まり4人で対戦がスタート。知り合い同士で遊びたい場合は、カスタムマッチを選択するという仕様だった。

しかし、ゲームを起動すると強制的にパブリックロビーから始まり、マッチをしたいときは、自らテーブルを選び、人数が揃うのを待つという自発的な行動が必要になったことで、ロビーに滞留するだけのプレイヤーと、ただ試合をしたいプレイヤーが断絶。複数あるテーブルで人数も分散されてしまったため、4人のプレイヤーが必要な4人マッチの試合数は約4分の1に減少。ゲームの試合数もユーザー数もみるみる減っていった。

その解決策として、個室とパブリックロビーを併用するスタイルに変更。プレイヤーの設定でスタート地点を個室かパブリックロビーかを選べるようにした。さらに、並行して行われてきたアップデートにより、ロシアンルーレット以外のゲームモードも増えていたため、パブリックロビーのテーブルをモード別にしたことで、プレイヤーの分散問題は解決できた。

セッションのまとめでは、一番のポイントとして、VRゲームでは、どうやったらゲームが進行し、どこに駆け引きが生じるかというゲームデザインに、人間の身体の自由度を上手く取り込むことで、と、アドリブ性や戦略性が増すことを紹介。たしかに、実際にプレーすると、続けて遊びたくなるVRゲームの多くに共通する要素かもしれない。開発者ではなくVRゲームのユーザーでしかない筆者にとっても発見の多いセッションだった。

(TEXT by Daisuke Marumoto


●関連リンク
「CEDEC2025」公式サイト