2月21日、5人組VTuberユニット・ちゃらんぽらん隊がライブハウス上野Untitledにて最初で最後のリアルライブ「ちゃらんぽリアルライブ_魂」を開催した。ちゃらんぽらん隊は、2018年4月よりVTuberユニットとしてデビュー、2020年3月でVTuberとしての活動を卒業することを発表している。
今回行われたライブ「ちゃらんぽリアルライブ_魂」は、今までのVTuberのライブとは一線を画すものとなっており、バーチャルの体ではなく、本人達が生身で出演するライブ形式で開催された。VTuberというコンテンツは、基本的に「中の人」という概念が存在しない。そういう暗黙の了解が界隈にはあるため、VTuberがこの形式のライブを行うことは稀であり、最後の最後のライブで「中の人」が登場するパターンはもちろん前代未聞だ。今回は、そんなちゃらんぽらん隊が示した「未来を提示できるようなライブ」がどのようなライブだったのかレポートしていこうと思う。
ライブ会場に着いて驚いたのが、会場内に入ると、ちゃらんぽらん隊のメンバー(uma、あとり、一角、オリーブ隊長)がお出迎えする形で受付、グッズ販売、プレゼントを受け取っていた。普通のリアルライブではありえる話ではあるが、VTuberのライブと考えると異質な光景なのかもしれない。しかし、実際には会場に訪れていたファンの方たちとの交流が行われ、温かい雰囲気が会場内を包んでいた。生身の体だろうが、そこにいるのは紛れもなくちゃらんぽらん隊のメンバー達であって、姿は違えどファンにとっては憧れの存在なのだ。
ライブ一発目は、あとり、一角、umaによる「心絵」。3人の元気な歌声がステージに鳴り響き、会場からは大きな声援があがった。初めの方は、少し照れた感じで振る舞っていた3人だったが、トークパートで「めっちゃ楽しいな」という一角の言葉にメンバー全員が全力で同意する姿が印象的だった。トークパートに関しては、まさにちゃらんぽらん隊の生配信を見ているようで、調子に乗るumaと一角に対し、あとりが辛辣かつ鋭いツッコミを繰り出していく。3人のトークで生まれる独特の空気感はリアルだろうと健在で、会場全体が終始笑顔で満ち溢れていた。
そしてここからはデュエット曲を連続で披露。この日じゃないと見れないデュエットに、会場は驚きと興奮で大きな歓声があがる。初のライブとは思えない程、堂々としたステージングと、それぞれが全力で楽しもうという姿勢が伝わるライブセット。この日のライブにかける思いが、時間が経つにつれてひしひしと伝わっていくのがわかった。
「MCしろと言われたんで…」そう言って登場したのは、MZMのコーサカ(高坂はしやん)氏だ。まさかのサプライズ出演に会場はどよめきと歓声が鳴り響いた。ちゃらんぽらん隊とMZMの組み合わせといえば、これまでコラボ動画や「mzmのみなさんのおかげです。」といったコント番組での共演でお馴染みだ。いつもはメンバーに対して鋭いツッコミを入れるあとりも、コーサカ氏の前ではメンバー共々ボコボコにされてしまうのもこの組み合わせの魅力だろう。
コーサカ氏がMCを務めるバラエティパートでは、巨大ジェンガを使った「ジェンガ倒したやつ恥ずかしいセリフ言う選手権」とメンバーが質問に答えていく「ちゃらんぽらん隊に聞きたいこと」が開催された。なぜこのサイズじゃないといけなかったのか、謎の巨大ジェンガを使った「ジェンガ倒したやつ恥ずかしいセリフ言う選手権」では、オリーブ隊長も参戦し、白熱した戦いが1時間近く展開された。問題の恥ずかしいセリフに関してだが、この辺は割愛させてもらう。間違ってもあとりに対し「プリリン」と投げかけるのはおすすめしない。
続いておこなわれた質問コーナーでは、ちゃらんぽらん隊の結成秘話やMZMコラボの裏側の話など、この日じゃないと聞けない話が続々と飛び出していた。全てを曝け出すという言い方はちょっと大げさではあるが、VTuber本人がなぜVTuberをすることになったのかを語る機会はなかなか見れないだろう。最後だからこそ聞ける話が質問コーナーではたくさん聞くことができた。
バラエティコーナーが終わると、メンバーそれぞれが歌を披露するソロパートが行われた。このパートでは、メンバーがそれぞれこれまでの活動を振り返り、そして今後の活動について語っていく。メンバーのumaがライブの告知動画で言っていた「未来を提示できるようなライブ」がこのタイミングで訪れることになった。
映画監督への夢を語る一角は、今年から東京で映画を作る仕事に就くそうだ。創作という観点から、一角らしい夢を披露し、「目の前で言うの恥ずかしい」と言いながら、今日のライブに来てくれたファンに向けて感謝を述べていた。続いて登壇したあとりは、これまでの人生を振り返りながらこれまで行ってきた家出の話。コーサカ氏との出会い、そして仲間との出会い。自分を支えてくれた人たちへの感謝を述べながら、卒業後にはumaと新しい音楽ユニットを組むと発表した。
最後に登場したumaは、「僕が音楽を作って歌おうと思ったきっかけは、あとりだったんですよ」と、楽曲制作をすることになった経緯を語った。そしてこの日来てくれたファンへ向けて「花の名」を披露、その後はメンバーについて語り、旅立つ側の思いを込めて、メンバー4人に対して作ったという「青い絵」を熱唱した。
最後は、再び3人が揃ってステージに登壇。「この曲を知らない人はここにはいないよね?」とちゃらんぽらん隊のオリジナル楽曲『魔法なんかじゃない』を最後に披露した。軽快なロックナンバーでどこか懐かしさを感じさせる本楽曲は、ちゃらんぽらん隊の代名詞として多くの人に愛されている。先程までのしんみりムードからは一変、会場全員が一丸となって、がむしゃらに歌い上げる光景が広がっていた。
今後こういう形式のライブが増えていくかもしれないし、これが最初で最後かもしれない。ライブを終えてみると、終始ハートフルなステージを体感することができた。これからちゃらんぽらん隊を見ることができない寂しさもあるが、それぞれが歩む夢を全力で応援したいと思えるような、まさに「未来を提示できるようなライブ」だった。
●セットリスト
1.心絵
2.妄想感傷代償連盟 / あとり・一角
3.ロメオ / 一角・uma
4.ロキ / あとり・uma
5.ジェンガ倒したやつ恥ずかしいセリフ言う選手権
6.ちゃらんぽらん隊に聞きたいこと
7.I LOVE YOU / 一角
8.最愛 / あとり
9.花の名 / uma
10.青い絵 / uma
11.魔法なんかじゃない