#24「ラブライブ!」シリーズ15周年記念トリビュートアルバム 様々な作品が関わったその意味と潮流を振り返ってみた【Pop Up Virtual Music】

LINEで送る
Pocket

ラブライブ!シリーズ15周年記念トリビュートアルバムが、Lantisより2026年1月14日に発売された。

シリーズ15周年を記念したこの作品は、これまで発表されてきた「ラブライブ!」「ラブライブ!サンシャイン!!」「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」「ラブライブ!スーパースター!!」「ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ」の楽曲から11曲がチョイスされ、多くの作品やキャラクター、そして本連載でよく取り扱ってきたVTuberらが揃い、カバー歌唱に参加した1枚だ。

このニュースが2025年9月に初めて公開されたタイミング、また年末に歌唱者がすべて公開されたタイミングで、大いに反響を呼ぶことになった。「キミとアイドルプリキュア♪」「ウマ娘 プリティーダービー」「アイカツ!」「らき☆すた」「BanG Dream!」に、Ado、V.W.P、しぐれうい、樋口楓、そしてTHE IDOLM@STERと初音ミクが歌唱メンバーとして選ばれたからだ。

本連載ではおもにVTuberやバーチャルシンガーについてを取り上げてきたが、この流れに彼女らがチョイスされたことに(他作品の選出も含めて)驚いた方もいるだろう。どうしてこういった作品群が選ばれたのか。今回はその理由や意味について、さまざまに考えてみようと思う。

(C)2013 PL!(C)2017 PL!S(C)2022 PL!N(C)2024 PL!SP(C)PL!HS(C)PL!SIM

「プリキュア」に「アイカツ!」、そこに「ウマ娘 プリティーダービー」と「らき☆すた」、さらに「アイマス」で「BanG Dream!」が絡んでて、V.W.P、しぐれうい、樋口楓のみならず、Adoと初音ミクが参加する。

放映された時間帯や年齢層にそれぞれ違いはあれど、これら作品は間違いなく「ラブライブ!」シリーズとともに時代を彩ってきた。

特に「プリキュア」「アイカツ!」「アイマス」「BanG Dream!」「ウマ娘 プリティーダービー」といった作品は、キラキラとしたまばゆい光やポジティビティへ向かっていく、その最中にある逆境やプレッシャーなどをかいくぐり、跳ね除け、ときにコミカルな笑いを含めながら歩を進める作品であった。

戦ったり、アイドルしたり、バンドしたり、レースへ駆け出したりと違いはあるが、“少女とポジティブな明るさ”という表現テーマを据えているという点で、これら作品はすべて同一線上にあるといえるのだ。

ラブライブ!シリーズ トリビュートアルバム  先行配信第1弾『キミプリ』が歌うAqours楽曲が本日配信スタート!さらにアーティスト・作品の垣根を超えたキービジュアルも公開! | ラブライブ! シリーズ Official Web Site

また「らき☆すた」や初音ミクといった作品は、「ラブライブ!」登場以前にニコニコ動画で大いに存在感を示した存在だ。

女学生同士の学生生活を見守る・男性キャラクターが顕著に少ないといった共通点は、「らき☆すた」と「ラブライブ!」がヒットした土台ともいえるところ。2010年に「 ラブライブ! 」シリーズがスタートする前段階として、「らき☆すた」を始めとする日常系作品がこの土台を組んでいたことが、「 ラブライブ! 」諸作品のヒットへと繋がったといってもいい。

初音ミクに関しては、そのヒットソングの多さは言うに及ばず。歌ってみたや踊ってみたといった文化的な広がりや、関連ゲームやアニメ作品のヒットもあわせて、二次創作というクリエイション・クリエイターの輪を大いに広めた。「ラブライブ!」とともに今日まで鮮烈な影響を与え続けてきた。

じつはこれら2つの作品は、アニメ作品・ゲーム作品として楽しまれただけでなく、ニコニコ動画におけるMAD文化やSNSを通じてインターネットミームとして楽しまれた側面が大いにある。これは作品の特性によって顕著だったというより、当時のインターネット環境が”オタク”的な需要・センスに依っていたからだ。

さて、ここでAdo、樋口楓、V.W.P、しぐれういというシンガー/バーチャルシンガーを見てみよう。彼女らは「ラブライブ!」シリーズからの影響としてのみならず、ここまで記してきたような文化圏から大いに刺激を受けたのはいうまでもない。

また樋口楓やしぐれういのようなYouTube配信と音楽活動を両立している存在は、「日常の姿を見せながら、ステージの上でアイドルとして輝く」という活動を地でこなしており、その活動に「ラブライブ!」らしさを受け取る人がいるかもしれない。

加えてVTuberの特徴である、キャラクターの3Dモデル(もしくはLive2D)を用いたリアルタイムのトーク・歌唱配信をおこなうという点は、2023年にスタートした「蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ」の活動に大きな影響・ヒントを与えたはずだ。

専用のゲーム&生配信アプリ「Link!Like!ラブライブ!」で使って活動をしており、各キャラクターの担当声優がそのままモーションキャプチャーも担当している。この点もVTuberと大いに類似している。

【2023/5/17 YouTube配信】 めぐ党のみんな、会いに来たよ

こうしてみると、「ラブライブ!」トリビュート作品にVTuberやバーチャルシンガーが起用されることに大きな違和感がないのが分かるし、もっといえば2020年代も半ばに差し掛かった中でファン側も”VTuber”的な視点で楽しめるように変化してきたのがわかる。

またAdoと樋口楓に関しては、デビュー時から「ラブライブ!好き」を公言しており、「生きる希望をもらった」と語っているほどにその愛情は深い。ちなみにAdoは園田海未、樋口楓は黒澤ダイヤをそれぞれ好きなキャラとして挙げている。

こうしてみると、今回集まった面々は「ラブライブ!」シリーズをふくめて、そもそも日本におけるアニメ・ゲーム・ネットカルチャーの熱を大いに引き上げた存在として数えられるものばかり。

「ラブライブ!」15周年記念と謳っているが、こうしてみると射程はより長くなる。つまり、この日本の四半世紀で少女や女性をヒロインにした作品で一世を風靡した作品、それらに感化・影響を受けたであろう作品や人物たち、そしてほぼ同時期に競い合うようにしてシーンを彩った作品とキャラクターが、このアルバムに一同に介したのだ。

まるで美少女作品コンテンツの豪華なフルコース料理(ラブライブ!仕立て)なんて謳いたくなるような、目眩がしそうなくらいに魅力的なラインナップが揃ったわけである。

では今作の歌唱曲をみてみよう。

1曲目「決めたよHand in Hand」は「ラブライブ!サンシャイン!!」で歌われる挿入歌で、「プリキュア」シリーズから2025年時点で最新作である「キミとアイドルプリキュア♪」が選ばれ、キュアアイドル(CV:松岡美里)、キュアウインク(CV:高橋ミナミ)、キュアキュンキュン(CV:高森奈津美)が先頭を切ることになった。同シリーズでも意識されていた「アイドル」が全面に出た1作であり、まさにうってつけな組み合わせだ。

2曲目には「ラブライブ!」μ’sの「僕らは今のなかで」を「ウマ娘 プリティーダービー」のウマ娘たちが歌唱する。出だしのイントロには関連曲でよく聴かれるファンファーレが加わっているのをはじめに、曲中の管弦楽を活かしたシンフォニックな響きや合唱パートが加わり、より”らしさ”全開となっている。

このように、曲によっては歌唱者にあわせたアレンジメントが効いているのが、今回のトリビュート作品の魅力的な部分だ。

3曲目の「ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ」の「Dream Believers」を歌ったのは、「アイカツ!」シリーズから、星宮いちごの歌唱を担当するわかと、大空あかりの歌唱担当のるかの2人だ。

MONACA所属で「アイカツ!」関連曲を多く手掛けている石濱翔が編曲を担当しており、こちらの楽曲はかなり原曲に寄せたアレンジになっている。原曲よりも音の出し抜きがよりハッキリしており、弦楽器・ドラムス・ベースのハネる感覚が前に出ることで2人のボーカルが映えて響く。

「らき☆すた」の泉こなた(CV:平野綾)、柊かがみ(CV:加藤英美里)、柊つかさ(CV:福原香織)、高良みゆき(CV:遠藤綾)が歌った4曲目「キラーチューン☆」は、同作品の主題歌かつ代表曲「もってけ!セーラーふく」と同じ掛け合いと出だしになっている。

ベースラインを強調したアレンジメント、曲途中で「dddddだぁ!」と声が連打されるような一節も含めて、フレーズも音色すらも「もってけ!セーラーふく」に寄せている。Liella!原曲へのリスペクトではなく「らき☆すた」らしさでこの曲を表現したことがわかる。

ちなみにこの曲の声色について、「今回のトリビュートは”らき☆すたのメンバーが本人で歌う”というディレクションのもと」で制作されたということだ。

つづく5曲目「soldier game」を歌ったAdoは、原曲で西木野真姫(CV:Pile)・園田海未(CV:三森すずこ)&絢瀬絵里(CV:南條愛乃)の3人にあわせて、まるで3人の歌い手がいるかのように声色を調整して歌い分けている。

Adoの声色がクセの強いため”似ている”という域にはいっていないが、複数人分に声色を分けたことでAdoの歌唱力の高さを裏付けている。2024年から25年にかけてのAdoは古いアニソン主題歌のカバーをこなしおり、「アニソンカバーをこなすAdo」の流れにもしっかりと符号していることも書き記しておこう。

ここからは、V.W.P、しぐれうい、樋口楓、VTuberやバーチャルシンガーが連続して連なっていく。

まずV.W.Pは三船栞子(CV.小泉萌香)による「酸欠」を歌う。原曲は歪んだギターサウンドと鍵盤にバッキングが光る1曲で、スローテンポのなかに妬みや僻みが渦巻く。

V.W.Pのバージョンは原曲よりもすこしだけ速めのリズムになり、印象的なギターサウンドよりもむしろこのリズムを刻むキックサウンドの方が印象的かもしれない。とはいえ、原曲には聞くことのできないギターカッティングのフレーズは左右のチャンネルから聴かせてとてもグルーヴィであり、曲終わりのアウトロでは原曲にないパートも加えられている。原曲にあるロック色を薄めすぎていない。

このアレンジの変化は、V.W.Pが5人のボーカルグループであることに起因している。人の歌声はギターサウンドや鍵盤がリードを取る音域と被ることが多いため、原曲で聞けていたギターサウンドや鍵盤によるリードを引っ込め、より5人のボーカルが印象的に映えるようにしているのだ。

では5人のボーカルはというと、ワンセンテンスを次々にリレーしていくいつものV.W.Pらしい流れにまとまっている。ギターと鍵盤が空けたことにより、5人のボーカルはもとよりコーラスワークもしっかりと在るのが感じられる。

またV.W.Pといえば、”楽曲タイトルが漢字2文字で統一されている”というのが美学としてあるのだが、楽曲タイトルは「酸欠」で美学もしっかり踏襲しているのは、ファンからすればニンマリとしてしまうところだろう。

つづくはしぐれういによる「フォーチュンムービー」。

原曲は、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブのグループであるスリーズブーケのファーストシングルからなのだが、2025年12月時点でまだアニメ化していない「ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ」からの楽曲を選んでくるのがなんとも通らしく、しぐれういのオタクっぽさにピッタリとハマる。

また原曲がバンドサウンドで横ノリの楽曲だったところ、しぐれういバージョンではシンセサウンドへと置き換わったシンセポップとなっている。その結果、シンセサイザーと打ち込みをふんだんに使った楽曲でヒット曲を生んでいるしぐれういのディスコグラフィーに並んでいても、ほとんど違和感のない局長となっている。

原曲での日野下花帆(CV:楡井希実)、乙宗梢(CV:花宮初奈)のボーカルに、負けず劣らずのキュートさを振りまくしぐれういのボーカルも聞きどころだ。

樋口楓は、自身が大好きな「ラブライブ!サンシャイン!!」Aqoursの楽曲「Landing action Yeah!!」を歌唱した。

樋口楓とAqoursをつなぐのは先に書いたような愛情だけでなく、彼女のオリジナル曲にも見いだせる。「MARBLE」「ビューティーMYジンセイ!」「Baddest」など、彼女のオリジナル曲を多数手がけているのが、Aqoursの楽曲制作に多く携わっていた光増ハジメなのだ。そもそも樋口楓が現在Lantisに所属しているのも「ラブライブ」シリーズがキッカケであり、光増を自身の楽曲制作をお願いするのも至極当然。

光増が手掛けた「ラブライブ!サンシャイン!!」楽曲といえば、「君のこころは輝いてるかい?」「青空Jumping Heart」「未来の僕らは知ってるよ」など重要な楽曲が揃っている。そのなかで「Landing action Yeah!!」が歌唱するのは、ギターワークが耳につきやすいからだろう。

AメロBメロでギターバッキングの刻みがリードし、それにボーカルの声がつられるように響く。原曲でもカバーバージョンでもこの流れは踏襲しているが、樋口によるカバーバージョンはバンドサウンドとなっているからかよりハードな質感にしあがっている。

オリジナル曲でもロック色のつよい楽曲をリリースしている樋口楓、彼女らしい選曲とアレンジメントでこのアルバムを彩っているのだ。

残るは初音ミク、Poppin’Party、「THE IDOLM@STER」のメンバーたちだ。

初音ミクは以前コラボしたことのある「ラブライブ!サンシャイン!!」の楽曲かと思いきや、「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」からのセレクトになった。

2023年10月に同名アルバムが発表されており、このときのコンセプトが”ラブソング”ということで各メンバーのソロ曲もさまざまな視点の”ラブソング”が揃っている。そのなかで「Fly with You!!」を歌唱したのだ。

ラブソングといえばもっぱら異性への愛情ばかりだが、ここではより普遍的な愛情について取り上げている。Always With Love(常に愛を持って)と歌詞にあるように、わたしとあなた(あなた達)と共に歩みを進めていこうという強い意志を宿した1曲である。

また曲の途中で「TOKIMEKI のストーリー KAGAYAKIの軌跡 その続きを」と既存曲のタイトルを含ませており、ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のライブではアンコールや終盤で歌われ、ファンの一体感をより強固にさせてくれる。

いわゆるシリーズ指折りの”アンセム曲”な1曲なのだが、その広大なスケール感の愛を歌うのが初音ミク。この曲で歌われる”共創”のメッセージは、まさに初音ミクのイメージにピッタリだ。

10曲目は、「ラブライブ!」μ’sの楽曲から「KiRa-KiRa Sensation!」を、THE IDOLM@STERから天海春香(CV:中村繪里子)、如月千早(CV:今井麻美)、星井美希(CV:長谷川明子)、萩原雪歩(CV:浅倉杏美)、菊地 真(CV:平田宏美)が歌うこととなった。

「ラブライブ!」第2期第12話の挿入歌だが、終盤へ向けてへ進んでいくストーリーのなかでとても印象的に描かれている。ちなみにアルバムジャケットで天海春香が着ている衣装は、「KiRa-KiRa Sensation!」を披露した際の衣装となっている。

「アイドルマスター」と「ラブライブ!」といえば、2023年の「異次元フェス アイドルマスター☆?ラブライブ!歌合戦」を筆頭にして、2019年の「バンナムフェス」で共演ライブを行ったことがあるが、明確に共同ライブを開催したは1度きり。

同じ”アイドル”作品ということでお互いに大いに影響しあったことだろう。歌詞で記される「僕たち」「みんな」「僕と君」はどうしたって両作品がオーバーラップするし、奇跡や輝きをつかもうとするアップテンポな曲調とイメージは、両作品の内容にピッタリと符合する。まるでこれまでの歩みを、”キラキラで素晴らしい足跡を残してきたね”と振り返るようですらある。

これでアルバムが見事締まってもいいのだが、ラストを締めるのは「BanG Dream!」からPoppin’Partyによる「START!! True dreams」だ。

トリビュートアルバムということで、ここまで10曲のカバー歌唱曲は原曲とそこまでアレンジに違いはなかったが、もしかすると聞く人によっては、Poppin’Partyによるこのカバー歌唱は原曲ともっとも近しく、大きな違いを感じず聞くことができるだろう。

ラブライブ!シリーズ15周年記念企画 トリビュートアルバム先行配信第1弾!『キミプリ』が歌うAqours楽曲が配信スタート! - 画像一覧(5/7)
「START!! True dreams」(歌:『BanG Dream!』Poppin’Party)

今回は「ラブライブ!」のトリビュート作品として集まったが、もしも「アイマス」「プリキュア」「アイカツ!」「BanG Dream!」「ウマ娘 プリティーダービー」のトリビュート作品として制作されていたとしても、同じようなラインナップが揃っていても不思議ではなかったろうし、同じように特大の驚きを与えていたのではないだろうか。

もともとは別々に灯っていた蛍火が、一つにキュッと集まることで大きな火となって眼の前に現れる。山々のなかにあった小さなせせらぎが、せき止められることなく徐々に一つに集まり、橋ががかるほどの川となり、最後には海へとまっすぐに繋がっていく。

今作のラブライブ!シリーズ15周年記念トリビュートアルバムを見ていて、筆者はそんな自然風景をイメージしてしまう。時間をかけて生み出された大きなうねり・潮流は、各々の作品や活動がスタートしたときには想像もできなかったもので、だからこそファンの胸を打つのだ。

今後「ラブライブ」を中心に各作品が長く愛され、進行していくことで、一体どんななことが起こるのか。そんな未知が来ることが、いまから楽しみである。

(TEXT by 草野虹

*連載一覧はこちら → Pop Up Virtual Music