事前にアナウンスされていた通り、CES2023ではSHARPの展示ルームで同社が開発中のヘッドマウントディスプレイ(HMD)が展示されていた。今回体験する機会を得られたので、使用感などをレポートする。
180gの超軽量ディスプレイはAndroidスマホが必須
今回展示されていたHMDプロトタイプのスペックは以下の通り。気軽にかけられる軽さと、たたんで持ち運べる形状にこだわったという。
- トラッキング:デュアルモノクロカメラによるインサイドアウト6DOFトラッキング
- 駆動:SnapDragon搭載のAndroidスマートフォン(USB-Cでの有線接続。デモではSharp AQUOS R7を使用)
- 重さ:180g
- 解像度/リフレッシュレート:4K / 120Hz
- 視度調整機能:あり
- IPD:なし。ただし自社製パンケーキレンズが±4mmまでカバー
- スピーカー:左右内蔵
- ハンドトラッキング:あり
- コントローラー:なし
- MR機能:外部RGBカメラ。将来的にはフォトグラメトリ機能を搭載する可能性あり。
なお、搭載コンポーネントの中でSHARPグループ製のものは「装着センサー」「ディスプレイ」「薄型パンケーキレンズ」「中央のRGBカメラ」だという。SHARPグループの総合力を活かした意欲的なプロトタイプだ。
「眼鏡と同じかけ心地」を追求したHMD
実際に着用してみたところ、通常の眼鏡と同じ感覚でかけられるため着脱は容易だった。ただしレンズが非常に目に近く、ガスケットの深さや形状は改良やバリエーション選択を可能にするの余地があるように感じた。
HMDには左右のつる部分内側にスピーカーが搭載されていたが、今回のデモでは音質の確認はできなかった。
ハンドトラッキング&フォトグラメトリ搭載の野望
今回体験したデモでは、HMD本体をSHARP AQUOS R7(Androidスマートフォン)にUSB-Cケーブルで接続し、VR&MRコンテンツを体験できるものだった。CGで製作されたVRのロビーを見回したり、ハンドトラッキングでメニュー操作。さらに中央のRGBカメラで撮影したロボホンをフォトグラメトリで3Dモデル化し、そのモデルをVR空間内に取り込むという体験だった(注:今回は実際にフォトグラメトリは動いておらず、ロボホンのフォトグラメトリ3Dモデルは事前に用意されたもの)。
正直なところAQUOD R7の描画機能が4Kの解像度と120Hzのパネルスペックを活かしきれていない印象で、描画にカクつきがあり、ハンドトラッキングもぎこちないものだった。機能の候補に入っているというPC接続が実装された際には、体験がどのくらい変化するか確認してみたい。
また今回非実装だった中央のRGBカメラでのフォトグラメトリ機能は「身の回りにあるものを手軽にVR空間に持ち込んで欲しい」という意図があるという。生活に溶け込んだVR HMDというコンセプトだ。担当者に確認したところ、実際にどのような機能を搭載するかはCESの反応などを見て検討するため、量産化の時期や価格は未定とのことだった。今後の展開を楽しみに待ちたい。
(TEXT by にしかわ)