2023年3月31日、VTuber文化の黎明期から活躍してきたミライアカリさんが、最後の生配信を実施。2万人近い視聴者が見守る中、引退を決意した経緯などを語ると、VRchatのプライベートエリアでファンと交流。最後までファンのことを思いながら、4年5か月のVTuber活動を終了した。ここでは、約2時間の引退配信(4月1日0時現在、アーカイブは一時的に非公開)の模様をダイジェストでレポートする。
引退が決まった理由をファンに対して丁寧に説明
3月24日、自身のTwitterアカウントでVTuber活動の引退を発表したミライアカリさん。YouTubeチャンネルでは、昨年11月を最後に動画の投稿や配信が行われておらず、3月に入ってからはTwitterの投稿も止まるなど活動のペースこそ落ちていたが、明るく元気にVTuber界を照らしてきた太陽のような存在の引退は、VTuberファンにとっては青天の霹靂。
「どうしても直接想いを伝えたくて」実施されることになった最後の配信では、アカリさんがどのような言葉を語るのか大きな注目を集めていた。
昨年の10月以来のYouTube生配信が始まると、「久しぶりに、この空間に来た。来た瞬間泣いちゃった」と語り、お決まりの挨拶「ハロー! ミライアカリだよ!」の後も、「今日は、何回でも『ハロー! ミライアカリだよ!』って言いたい」などと、寂しい気持ちを素直に表現。しかし、湿っぽい雰囲気になり過ぎると思ったのか、明るい笑いも交えながら、引退を決意した理由を語っていく。Twitterで公開した「応援してくださる皆さま」への手紙には、「今回、活動を引退する理由はたくさんありますが、一番はわたしと運営さんとの間の価値観のズレが原因です」と記されていたが、生配信では、もう少し詳細な状況や心境を説明。
「ミライを明るくするために、アカリがやりたいことと、運営さんがやりたいことの間にずっとズレがあって。どうにかして、それを合致させるために、自分自身も頑張ってきたんだけど。アカリって、企業勢じゃん(笑)。そう簡単には、アカリ一人の力では変えられない」
「(運営企業が変わって)前の運営さんよりも、縛りは増えました。でも、それはしょうがないこと。そんな中でも、みんなには、あまり前と変わってないスタンスだと見えるように頑張ってたんだけど、『これは、もう限界だな』ってところもあって。この縛りの中だと、アカリがやりたいエンタメはできないと思い、運営さんと何回も何回も話し合いを重ね。本日をもって、VTuberとしての活動に一区切りを付けることになりました」
自分の理想とする形での活動ができなかったことを明かしながらも、「大手(企業の所属)はいろいろ大変だね」という視聴者からのコメントに対しては、「でも、大手だからこそできることもあるし。例えば、自分が個人勢だったとしたら出られなかったイベントにも出られたりして。スタッフさんには、本当に感謝しています」と、活動を支えてくれたスタッフへの感謝も忘れないアカリさん。
加えて、「クビになったわけではなくって(笑)」と、引退は自分の意思であり決断であることも強調。とはいえ、当然、ファンとの別れは寂しいようで、「この時間が来るのが嫌だった。みんなとお別れしなきいけないのは分かってるのに……」「今日が4月1日なら、『うっそぴょーん』って言えるのに」と、涙声になる場面もあった。
7月21日を「ミライアカリフェスの日」に
活動の初期から「VR Chat」を使った動画も公開してきたアカリさん。最後の生放送では、配信のコメント欄にプライベートエリアへの招待URLを投稿。VR空間で、ファンとの最後の交流を楽しんだ。約2万人の視聴者が見守る中、アカリさんと同じ部屋に入れるのは一度に最大50人。VR機器を持っている人という参加条件はあるものの、かなり高い競争率をくぐり抜けてアカリさんと会えたファンは、それぞれに感謝の思いなどを伝えていく。アカリさんがきっかけで、「VTuberを好きになった」「自分もVTuberを始めた」と話す人も多く、「VTuber四天王」の一人として、この世界に与えた影響の大きさを改めて実感した。
約10分の交流を3周した後、アンコールに応えて、最後はワールドの限界を超えた80人を招待。最後に、ファンから「たまにはVR Chatに遊びにきてよ」という直球のお願いをされると、「キリストは3日後に復活したし、アカリもいつか復活するかもしれないから。そのときは、またこうやって受け入れてくれると嬉しい」と返答。涙声混じりの「待ってます」という言葉に、アカリさんも泣きそうになりながら、お礼とお別れを叫んでいた。
VR Chatコーナーの後は、2020年9月まで使用されていた旧衣装を着て登場。
サプライズは大成功で、多くのファンが喜びのコメントを投稿していた。そして、ファンに向けて、二つのお願い。一つは、7月21日の「なつい日」を「ミライアカリフェスの日」にすること。以前から、自分が主催のイベント「ミライアカリフェス」を開くことを夢見ていたというアカリさん。それは実現しないまま引退の日を迎えてしまったが、「いつかやれる日が来たら、7月21日に、全VTuber、全人類に出てもらう大きなフェスをやりたいから、待ってて!」とファンにとっては未来の希望にもなるお願いをした。
もう一つのお願いは、自分のお墓を作ること。「アカリは消えるわけではないから、生前葬みたいな感じになるんだけど」と言いながら、VR Chatの中に自分の前方後円墳を作って欲しいとリクエスト。ファンの人たちが寂しくなったときに、お墓参りみたいにアカリさんに話しかけられる場所を作って欲しいそうだ。ファンへの最後のお願いが、ファンのためのお願いになっているところにも、アカリさんの優しい人柄が表れている。
不安なことがあったら、隣にアカリがいると思って
再び、最新衣装の姿に着替えると、配信の最後には「みんなに感謝の思いを伝えたい」という前置きから、熱いメッセージを語っていく。
「アカリは、最強に可愛くて、最高にかっこいいVTuber! そして、君は、最高に最強に最愛の私の大切な人。それは一生変わらない歴史で、未来です。ミライアカリに出会ってくれて、本当にありがとう。アカリは、ミライアカリとして産まれることができて、本当に幸せです。(中略)アカリはアカリになれている時間が本当に幸せ。その時間があと2、3分で終わると思うと、寂しくて恋しくて、心が張り裂けそうです。でも、アカリは消えません。もしかしたら、すごいめちゃくちゃ分裂することもできるし。次は、稲になったり、風になったり、山になったり。あなたの背負ってるリュックサックに命が吹きこまれているかもしれません。なんてたって、バーチャルだからね(笑)。(中略)今まで「Mirai Akari Project」を応援してくださり、本当にありがとうございました。あなたがいなかったら、アカリはいませんでした。この画面からは、もう数秒で消えちゃうけど、違う場所や君の隣には、これからもずっとずっとアカリはいるから。腕を組んでるかもしれないし、肩組んでるかもしれない。不安なことがあったら、隣にアカリがいると思ってください。みんな、今まで本当に本当にありがとう。また、会う日までね。バイバイ! 愛してるよりも、愛してるよー!」
こうして、最後の最後まで、応援してくれた人々への愛を叫んで、ミライアカリさんの最後の生配信は終了。この配信のアーカイブは、放送終了後は一時的に非公開となっているが、それはVR Chat中の映像を一部、編集しているためで、編集後に公開される模様。その他の動画や配信アーカイブも消えることはなく、いつまでも元気で可愛く面白いアカリさんの姿を観ることができる。
数週間前には、まったく想像もしていなかった突然のお別れになってしまったが、アカリさんの目指した明るい未来で、またあの元気な笑い声が聞こえてくる日がきっと来る。そんな夢を信じたくなる最後の配信だった。
(TEXT by Daisuke Marumoto)